精密シャフトの高精度輪郭形状 測定用位置合わせ治具の開発 地方独立行政法人 鳥取県産業技術センター 機械素材研究所 生産システム科 特任研究員 木村 勝典 1 研究背景 (西 暦 ) 出 荷 台 数 (万台 ) 1000 3000 2025 市場からの要求 小型化 軽量化 高機能化 高精度化 2000 ハードディスク用 流体軸受け等微小 高精度加工部品の 増加 予測 ハードディスク 関連製品出荷台数 1975 ハードデ ィスク関連出荷台数 予測 (パソコ ン白書参照) 1.微細部品の小型・軽量化および高機能化等に伴い構成している部品 の微細化が進むと共に部品の加工精度も向上している。 2. 微細高精度部品の評価技術は中小企業では進んでおらず、品質管理 の向上 が求められている。 3. 公差がマイクロメートルオーダーの高精度部品について、測定によ る不確かさを最小限に抑え、より正確な測定結果を導く手法につい ては確立されていると言えない。 2 研究背景 評価時間の増大・形状評価が困難 課題 解決 微細部品の正確・迅速な評価技術の確立 微細化及び高精度化している機械加工部品及び電子部品 の輪郭形状をより正確にかつ短時間で測定評価できるよう になることで、県内中小企業が製造する部品の信頼性向上 につながる。 また、研究成果を活用することで、企業からの技術相 談・依頼試験における適切かつ迅速な対応に繋がる。 3 精密シャフト 輪郭形状測定のイメージ図 測定対象物 A G B C D E° F° 測定結果及び解析結果 4 研究概念図 設計 加工 組立 KK NN XX GG 品名 材料 ・・・・・・・ S US420J2 設計 ・・・ 検図 ・・・ 照合 加工条件へフィード バ ック 組立条件へ反映 輪郭形状評価 ①測定手順・手法の検討 ②位置決め手法の検討 ③位置決めによる影響把握 ④最適測定条件の確立 ⑤測定治具の開発 5 高精度測定のための課題 測定軸 測定軸 測定 し たい ラ イン 測 定し たい ラ イン 軸の傾きがある場合 軸のずれがある場合 輪郭形状の測定物を測定機に設置する場合、測定機の測 定軸からずれていると本来測定したい個所とは異なる場 所の測定をしてしまう。また、測定の繰り返し精度が悪 くなるとともに、測定者によるデータのばらつきも大き くなり、測定データの信頼性が低下する。 6 高精度測定の実現 ・被測定物を測定機上へセッティングする際の 位置合わせが重要。 ・最適測定条件・設定の抽出 測定条件・位置決め方法の検討 ① 測定範囲による測定値への影響 ② 測定物の傾斜方向による測定値への影響 (平面・曲面・表面粗さ) ③ 位置決め精度による軸測定への影響 ④ 位置決め精度による角度の影響 7 ①測定範囲による測定値への影響 真直度 (μm) 0.14 防振有 0.12 防振無 0.10 Left Cent er Ri ght 測定範囲 0.08 0.06 120mm 0.04 測定対象物:フラットゲージ (オプチカルフラット) 測定長さ :各エリア 40 mm 0.02 L eft Center Right 8 ②-1測定物の傾斜方向による 測定値への影響(平面) (μm) 真直度 0.20 0.15 0.10 0.05 測定対象物:フラットゲージ (オプチカルフラット) 測定長さ :40 mm 測定回数 :各傾斜 3回測定の平均値 0.00 Down 10deg Down 5deg Flat 0deg Up 5deg 9 ②-2測定物の傾斜方向による 測定値への影響(曲面) 基準球参照値との差 (μm) 1.5 1.0 0.5 0.0 up up-down down -0.5 -1.0 測定対象物:校正用 基準球 測定長さ :各エリア 10 mm 測定回数 :各傾斜 3回測定の平均値 -1.5 -2.0 10 ②-3測定物の傾斜方向による 測定値への影響(表面粗さ) (μm) 表面粗さ 3.10 3.05 3.00 2.95 測定対象物:校正用 粗さ標準片 評価長さ :各傾斜時 4 mm 測定回数 :各傾斜 2回測定の平均値 校正値 :Ra 3.0μm 2.90 Down 45deg Flat 0deg Up 25deg 11 ③位置決め精度による 軸測定への影響 測定軸 (半径mm) 測定終了点 母線軸 測定曲線から求めた半径値 140000 120000 10m m 20m m 100000 30m m 40m m 80000 50m m 60m m 60000 測定開始点 40000 20000 測定対象 物:金 型用固定 シャフ ト シャフト 径:3 mm 0 測定範囲 :1 0~60 mm(10 mmピ ッチ) 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 ( deg) 位置決め 範囲: 60 mm 位置決め 方法: 測 定開始 位置での 移動テ ーブルに より最 高点に セット後 、回転 テーブル により 60 mm測 定軸を移 動させ た 場 所を最 高点にセ ット。 この位置 合わせ を2回 繰り返す 。 ※オプチ カルフ ラット測 定結果 3回測 定(2 回解析 不可、1 回約5 7万 mm) 12 ④位置決め精度による 角度の影響 測定値 (deg) プリズム角度測定結果 90.6 90.5 90.4 90.3 90.2 90.1 測定対象物:プリズム 位置決め方法:傾斜面にスタイラスを接触 させた状態でスライドさせ 0. 1deg以下まで調整 ずれ角度付加:回転テーブルによる 90.0 89.9 0 1 2 3 4 5 ずれ角度(deg) 13 測定条件の検討結果 1.測定範囲は測定機中央、防振機能有りが良好 2.フラットな測定物の測定時には、角度による影響は 0.1μm以下と小さいが、測定面が測定軸と平行になるよ うにセットした方が良い。 3.曲面を有する測定物の測定では測定範囲内にUPとDOWN の両方を組み込むこと。 4.表面粗さ測定を同時に行う場合は、その傾斜角度の影響 は無視できる。 5.シャフト測定の際には10mmを越える測定長さの場合、 位置合わせは0.1deg以下になるまで行う必要がある。 6.角度の評価を行う場合は、測定軸と測定面の交角を1deg 以下になるまで行うこと。 14 従来の位置合わせ治具 15 現場での治具を使用したセッティング例 16 従来技術とその問題点 1.微細な部品の位置合わせを対象としていない 2.フラットな面で挟み込むタイプが主流でシャフト等に適し ていない 3.単機能なものが多い 4.多機能とすると、重量・サイズ・コストアップとなる 5.操作が容易で無い 1.評価したい形状に合わせた専用の治具をその都度製作する 必要がある 2.多品種・短サイクルへの製品開発への対応が困難 17 測定治具設計コンセプト 1.測定精度の向上 精密シャフト(以下シャフト)の輪郭形状を高精度に測定する際に問題とな る位置合わせの精度向上を目指す。 2.利用できる対象物の拡大 シャフトは測定機の測定軸に対して、一般的には平行に設置する場合がほと んどあるが、垂直及び直立を加えた3通りを想定し全ての位置合わせに対 して利用できること。また、通常サンプルφ3~6mmを網羅する範囲とする。 3.操作性の向上・位置合わせ時間の短縮 操作を容易にするため、シンプルな構造を検討。位置合わせを行う軸はX・ Y軸、回転軸、傾斜軸の4つが対象だが、必要最小限に抑える。またかかる 時間は、現在使用されているような一般的な治具に比べて半分以下に短縮 する。 4.コストの軽減等 シンプルな機構とすることで治具の製造コストを抑える。また重量は扱いに 不便でない程度の重量にするとともに、位置合わせをした後にずれ等を生 じない程度の重量とする。 18 開発した測定治具の仕様 1.測定精度の向上 軸合わせ機能:0.1deg以下/50mm 2.利用できる対象 物の拡大 メイン対象物:シャフト シャフト径 :φ2~8mm 測定軸に対して水平・垂直・直角の3方 向にセット可能 3.操作性の向上・ 機構はY軸、回転軸のみとし単純化。 位置合わせ時間 10分程度かかる位置合わせ時間を1/5 以下に短縮 の短縮 4.コストの軽減等 最終組立治具重量1.97kg、シンプル機 構で低コスト化 19 開発した治具(図解) 20 開発した治具(写真) 固定パターン1 固定パターン2 固定パターン3 21 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 • 出願番号 • 出願人 • 発明者 :シャフト用治具 :特願2006-345209 :地方独立行政法人 鳥取県産業技術センター :木村勝典 (意匠登録 第1315532号 シャフト固定用治具片) 22 お問い合わせ先 地方独立行政法人 鳥取県産業技術センター 担当コーディネーター 企画管理部 TEL FAX e-mail 企画室 玉井博康 0857-38 -6205 0857-38 -6210 tamaih@ pref.tottori.jp 23
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