とRMC5000 VT マッチング機能で相関性に差があった1例

34 Symposium:第 47 回埼玉不整脈ペーシング研究会
●一般演題
CARTO3 Pace Mapping Software
(PaSo)
と RMC5000 VT
マッチング機能で相関性に差があった 1 例
さいたま赤十字病院臨床工学技術課
さいたま赤十字病院循環器科
柳
松
吉
小
岩
平
根
新
川
田
田
野
拓
泰
幸
澤
尾龍
木 田順
真・富 沢 直 樹・池 添 稜 人・澁 澤 未 来
佳・岡 部 知 徳・須 賀 太 洋・齋 木 啓 太
司・中 島 修・鈴 木 綾 子・齊 藤 達 也
実・鑓 田 晋 治
司・林 洋 介・李 基 鎬・渡 辺 敬 太
彦・稲 村 幸 洋・鈴 木 雅 仁・加 藤 信 孝
謙・佐 藤 明・大 和 恒 博・松 村 穣
一・淺 川 喜 裕
8899/100991 beats(8.8%)と増加を認めたため
はじめに
CARTO3 pace mapping software
(PaSo)
は基
準として取り込んだ Clinical VT/PVC 波形と
pace mapping 波形を比較し相関性を調べるこ
2015 年 11 月カテーテル治療目的に当院へ紹介
入院した。
身体所見:身長 160 cm,体重 58 kg,特記す
とができる。また,日本光電社製臨床用ポリグ
べき異常所見なし。血液検査所見は甲状腺機能
ラフ RMC 5000 でも VT マッチング機能を用い
含め異常所見を認めなかった。clinical PVC を
ることで基準波形と pace mapping 波形の相関
性を調べることができる。今回 PVC に対するア
図 1 に示す。胸部 X 線上心拡大は認めず,心臓
ブレーション施行時に CAR TO 3 と RMC 5000
で pace mapping 波形を同時に取り込み,PaSo
と VT マッチング機能を用いてそれぞれのマッ
チング率を取得し,1 症例について比較検討し
得たので報告する。
1 症 例
43 歳,女性。
主訴は動悸。数年前から動悸症状を自覚して
おり,2014 年 3 月ホルター心電図にて PVC を
3623/105759 beats(3.4%)認めるも無治療にて
経過を観察した。動悸症状の増悪があり,2015
年 10 月 ホ ル タ ー 心 電 図 を 再 検 し た と こ ろ,
図1
clinical PVC
Takuma Yanagawa, et al.:A case of a correlation difference between CARTO 3 Pace Mapping software(PaSo)and
RMC5000 VT matching
Therapeutic Research vol. 37 no. 5 2016
Symposium:第 47 回埼玉不整脈ペーシング研究会 35
通電部位
ヒス電位記録部位
Pace map部位
アブレーション成功部位
RAO
LAO
図 2 pace mapping を行った 16 ポイント
(%)
100
(%)
100
p<0.05
90
90
マッチング率 80
PaSo 80
70
70
n =16
r =0.2
p =0.45
88.3±3.7% 81.2±4.9%
60
60
60
PaSo VTマッチング機能
図4
図 3 16 ポイントのマッチング率
超音波検査は壁運動正常であった。
成功通電部位の pace mapping マッチング率
70
80
90
VTマッチング機能
(%)
100
16 ポイントのマッチング率の相関性
数の差を比べると,PaSo ではⅡ,aVL,V4,V5,
V6 誘導で多く,VT マッチング機能ではⅠ,Ⅲ,
はPaSo 88.8%,VTマッチング機能 79.8%であっ
aVF,V1,V2 誘 導 で 多 い 結 果 と な り,両
た。pace mapping を施行した 16 ポイント
(図 2)
software 間で high score となる誘導が異なった
の平均マッチング率は,PaSo 88.3 3.7%,VT
(図 5)
。
マッチング機能 81.2 4.9%で PaSo が有意に大
きかった(p < 0.05)
(図 3)
。
2
考 察
また,各ポイントにおけるマッチング率に相
PaSo より算出されるマッチング率はアルゴ
関性は認められなかった
(r = 0.2,p = 0.45)
(図
リズム上電位の大きさは違っていても波形の相
4)。
似性が近ければ高いマッチング率で算出する特
16 ポイントの各誘導において,PaSo で 90%
性がある。VT マッチング機能より算出される
以 上,VT マ ッ チ ン グ 機 能 で 80 % 以 上 を high
マッチング率は,波形の相似性を評価した後,
score とし,両 software 間での誘導別 high score
電位の大きさの評価を加えてマッチング率を算
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36 Symposium:第 47 回埼玉不整脈ペーシング研究会
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
12
9
0
12
VT マッチング機能
16
3
5
12
5
4
high score の差
-4
6
-5
0
4
-1
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
aVR
aVL aVF
V1
PaSo
aVR aVL aVF
9
3
V1
V2
V3
V4
V5
V6
4
9
16
16
13
12
11
13
16
15
12
8
-7
-4
0
1
1
4
V2
V3
V4
V5
V6
8
6
PaSo
高値
4
2
0
−2
VT
マッチング −4
高値
−6
−8
図5
誘導別 PaSo と VT マッチング機能の high score 数
基準波形と pace map 波形を空間ベクトルに置き換える
2 つの空間ベクトルの
なす角度を算出
2 つの空間ベクトルの
大きさを算出
角度からマッチング率を算出
(波形の相似性を評価)
大きさからマッチング率を算出
(波高値を評価)
表1
PaSo と VT マッチング機能の特徴
PaSo
VT マッチング
機能
相似性の評価
○
○
波高の評価
△
○
波形の相似性と波高値の両方を考慮したマッチング率を算出
(角度のマッチング率+大きさのマッチング率)÷2
図6
VT マッチング機能のマッチング率算出方法
出する(図 6)。マッチング率の差は,VT マッチ
ング機能が電位の大きさの評価を加えてマッチ
ング率を補正した結果であると考えられる。ま
た clinical PVC と pace mapping 波形との重ね合
わせにも両 software 間でアルゴリズムの違いが
ある。今回の症例において両 software の優劣を
考えることはできないが,異なる特徴を有する
ことを認めた
(表 1)
。マッチング率を参考にし
て PVC の治療を進めるには,算出されるマッチ
ング率の特徴を考慮する必要がある。
(Therapeutic Research vol. 37 no. 5 2016. p.480 – 2 に掲載)
Therapeutic Research vol. 37 no. 5 2016