アプタマー創薬をめざした生体分子シミュレーションと構造生物学

FS-9
日時: 2016 年 10 月 26 日 14:00-15:30
場所: 407
アプタマー創薬をめざした生体分子シミュレーションと構造生物学
Structural Biology and Computer Simulation toward the Development of Aptamer-based
Therapeutic Agents
開催趣旨:
アプタマーは,Systematic Evolution of Ligands with EXponential enrichment (SELEX)法という進化分子
工学的な手法によって得られる核酸分子であり,抗体医薬品と同様に分子標的薬としての利用が期待
されている.核酸分子,特に RNA は血中で分解されやすいため,治療薬として利用するには化学的に
修飾する必要があるが,活性を保持したまま化学修飾するためには試行錯誤が必要となり,多くの時間
と研究費が費やされている.一方,低分子の医薬品開発では,Structure Based Drug Design (SBDD)が
有効な手法となっている.アプタマーに関しても,立体構造に基づいた化学修飾が可能となれば,アプ
タマー創薬の効率が飛躍的に向上することが期待される.本セッションでは,アプタマー研究に携わっ
ている 4 人の先生方に,アプタマーの創製およびアプタマーの特徴,さらに生体分子シミュレーションに
よるアプタマーの改変からアプタマー創薬についてご講演いただく.
モデレーター:
山岸 賢司 Kenji Yamagishi
石川 岳志 Takeshi Ishikawa
日本大学 Nihon University
長崎大学 Nagasaki University
1. 細胞膜タンパク質を標的とした高効率なアプタマー創製法の開発
高橋 理貴 Masaki Takahashi
東京大学 医科学研究所 「RNA医科学」社会連携研究部門 The University of Tokyo
細胞膜タンパク質に対するアプタマー創製法として,細胞を標的とした Cell-SELEX 法が有効とされ
ているが,効果的手法とされていながらも効率が低いという問題があった.そこで我々は,本手法を
発展させ,高効率な膜タンパク質アプタマー創製技術“Icell-SELEX”を開発した。本講演では,この
技術の概要と有効性評価の結果について紹介する.
2. アプタマーの立体構造と標的タンパク質との相互作用
坂本 泰一 Sakamoto Taiichi
千葉工業大学 先進工学部 生命科学科 Chiba Institute of Technology
アプタマーは特徴的な立体構造を形成し,標的タンパク質に対して非常に強く,特異的に結合する.
また,X 線結晶構造解析,NMR,ITC などの解析から、標的タンパク質の分子表面にフィットするよう
に結合することも明らかとなっている.本講演では,アプタマーと標的タンパク質の立体構造と特徴
的な分子間相互作用の解析結果について紹介する.
3. 生体分子シミュレーションによるアプタマーの最適化
山岸 賢司 Kenji Yamagishi
日本大学 工学部 生命応用科学科 Nihon University
アプタマーを実用化するためには化学修飾を行うことが必須である。どのような修飾をどこに入れる
かは経験と勘に頼っており、多くの時間と費用が必要であった。そこで我々は、生体分子シミュレー
ションによるアプタマー最適化手法の構築を目指し研究を進めている。本講演では、現状の解析結
果について紹介する。なお、本研究は第一回 JST マッチングプランナープログラム「探索試験」の支
援により行われた。
4. アプタマー創薬
藤原 将寿 Masatoshi Fujiwara
株式会社リボミック 研究開発本部長 兼 開発研究部長 Ribomic Inc.
アプタマーを医薬品に応用する試みは,1990 年後半より開始された.2004 年には,Macugen が加齢
黄斑変性症を適応症として FDA で承認された.現在も,複数種のアプタマーの臨床試験が実施さ
れており,Fovista が第Ⅲ相臨床試験段階にある.(株)リボミックでは,アプタマー創薬事業を 2005
年より開始,アプタマーの医薬品創製技術の構築に努めてきた.本講演では,(株)リボミックのアプ
タマー創薬事業の概要について紹介する.