FRPケーブルの性能を最大限に 引き出す定着構造体 国立研究開発法人 物質・材料研究機構 構造材料研究拠点 輸送機材料分野 高分子系ハイブリッド複合材料グループ 主幹研究員 小熊博幸 グループリーダー 内藤公喜 1 背景 『革新的イノベーション創出プログラム』 Center of Innovation Science and Technology based Radical Innovation and Entrepreneurship Program (COI STREAM ) • 文部科学省(MEXT)、科学技術振興機構(JST) • 「革新材料による次世代インフラシステムの構築」 • 強度、環境、標準化・規格化 • 複合材料の適用範囲の拡大(航空宇宙分野から自動車、 土木建築分野など) • 長大軽量構造物 2 複合材料の適用範囲拡大 「複合材料の耐震補強材としての利用」 CABKOMA Outer: 1031 rods (14.110~15.750m) 3 海洋構造物への適用 • 緊張係留式プラットフォーム Tension Leg Platform (TLP) • 鉄管最大2000m程度 Buoyancy 重量(作業性) 腐食 • D > 3000m海底資源 • 大深度海底資源開発 • 新たな技術や材料が必要 D > 3000m 自重 共振(疲労) 座屈 Platform Tendon © MODEC, Inc. 『複合材料により新たな道を切り開く!』 4 新材料と接合技術の開発 「設計」 • 新材料(複合材料)の開発 • 締結・接続技術の開発 「製造」 信頼性 「使用」 t = 2.5cm W = 2kgf 20cm http://www.bbrnetwork.com 炭素繊維/ガラス繊維 複合材料 炭素繊維複合材料 (短繊維) 『材料の真の実力を引き出す』 5 供試材 熱可塑性炭素繊維複合材料 炭素繊維:PAN‐based T700 (東レ株式会社) ガラス繊維: E‐class Glass (日本電気硝子株式会社) 熱可塑性樹脂(ナガセケムテックス株式会社) CABKOMA™ Impregnation process 材料特性 Material The number of CF Diameter [mm] Specific density [g/cm3] Volume fraction of CF [%] 24K1P 24000 2.3 1.76 24.6 24K2P 48000 2.7 1.74 38.3 24K3P 72000 3.1 1.70 46.2 6 材料強度試験 線材軸荷重、曲げ (静的、疲労) Test specimen Target for extensometer Test specimen Hydraulic grip Strain gauge Grip Strain gauge Actuator 引張試験 軸荷重疲労試験 7 従来技術とその問題点 締結方法「どのように端部を固定するか?」 Rod Failure point Plates Adhesive Steel pipe 1cm Rod 10cm タブ 鉄管+接着剤(膨張) ピン 応力集中、保持力(せん断) 応力集中、保持力(せん断)、腐食、重量 曲率、摩耗、座屈 8 新技術の特徴 定着構造体が定着された状態の繊維強化プラスチック(FRP) ケーブルは、その張力が集中しやすい定着構造体近傍にお いて損傷を受けやすい。したがって、FRPケーブルが損傷を 受けることを効果的に抑制可能な技術が求められる。 目的:繊維強化プラスチックケーブル の端部を良好に保持可能とする技術 を提供する。 FRPケーブル 繊維強化プラスチック 傾斜部・保持部から構成される 9 新技術の特徴 巻きつけ角 巻き数 FRPシートの種類 例:平織、綾織、繻子織 10 従来技術との比較 従来技術 新技術 定着構造体の端部で応力集中が生 じる。 定着構造体の端部での応力集中を 小さくできる。 大型化に伴い金属部が重くなり、作 業性が低下する。 全体として非常に軽量であるため、 作業性が向上する。 環境(海洋、沿岸、温泉地など)によ り腐食や電食が生じる恐れがある。 金属を用いないため、腐食環境にお いて特に有用である。 最適な接着剤(樹脂)の選択ならびに FRPシートの種類、巻く角度、巻き数 管の径や長さなどの決定や安定性 の調整で最適な形状を決めやすい (形状、硬化締め付け力)の確保が (高い信頼性)。 難しい。 11 実施例(引張・疲労試験片) (a) 引張 (b) 圧縮 F 保持力 (c) 曲げ 12 実施例(引張・疲労試験片) • 評価部による破断を確認 • 材料の真の強度特性を明らかにすることができる Failure point Grip section Gauge 1cm 破断試験片 13 引張試験結果 Volume fractions of the hybrid rods Material Stress‐strain curves Volume fraction [%] CF GF Matrix Void 24K1P 24.6 39.8 25.5 10.2 24K2P 38.3 29.6 24.5 7.5 24K3P 46.2 23.2 23.4 7.3 破断伸び:2%程度 cf. タブを用いた試験では1.5%程度 • 直線的な応力‐ひずみ関係を示す。 • 炭素繊維の体積率の増加に伴い弾性率と引張強さは上昇 した。 14 Tensile strength 200 2 150 1.5 100 1 0.5 50 0 0 24K1P 24K2P 24K3P Al alloy HS Steel Elastic modulus and tensile strength 70 60 n = 10 Specific rigidity Specific strength 1400 1200 50 1000 40 800 30 600 20 400 10 200 0 0 24K1P 24K2P 24K3P Al alloy HS Steel Specific rigidity and specific strength • 引張特性 ρAL = 2.8 g/cm3 ρHS Steel = 7.8 g/cm3 弾性率: E = 80 GPa ≈ EAl 引張強さ: σB= 1.8 GPa (1800 MPa) ≈ σB, HS Steel • 比剛性、比強度 CF/GF rod >> Metal 長大構造物への利用に適している 15 Specific Strength σB/ρ [kN∙m/kg] Elastic modulus 2.5 Specific rigidity E/ρ [103kN∙m/kg] n = 10 250 Tensile strength σB [GPa] Elastic modulus E [GPa] 引張試験結果 引張試験結果(Weibull分布) Weibull distribution PF 1 exp L.ult L.0 mL 1 mL ln L.ult mL ln L.0 ln ln 1 PF Cumulative probability of failure PF i n 1 Weibull plots of tensile strength • ワイブル係数 (形状係数): mL 炭素繊維1本: ~ 10 CFRPs: ~ 30 強度のバラツキについて議論が できる 信頼性の向上へつながる • 低いボイド率、高強度の複合材料が狭い強度分布を示した。 16 疲労試験結果 24K1P 1829 ‐0.117 24K2P 1869 ‐0.085 24K3P 1947 ‐0.084 σw: 550MPa σw: 300MPa • 疲労強度:24K3P, 24K2P > 24K1P • 24K2Pと3PのS‐N曲線の傾きは24K1Pと比較して小さい。 • 緩やかな傾き 炭素繊維において見られる傾向 17 疲労試験結果(24K1P 応力比) R = 0.9 850MPa R = 0.1 625MPa 450MPa 350MPa 300MPa 応力比の増加(平均応力の上昇)に伴い、時間強度は高くなり、S‐N曲線 の傾きは小さくなった。 引張が大きくなるにつれて炭素繊維の特性がより明瞭に現れる。 18 変形例(応用例) FRPロープの強度試験 金型とFRP材を用いた定着構造体の作成 例:短繊維複合材料の使用 19 変形例(応用例) テーパ部で荷重を受ける 炭素繊維複合材料 (予定) FRPロープの定着構造体 (軽量、耐腐食) 20 想定される用途 • 長大構造物:軽量化 吊り橋、高圧電線、コンクリート構造体,グラウンドアンカー • 海洋構造物:耐腐食 緊張係留式プラットフォーム • 基盤研究(材料強度試験) © MODEC, Inc. 材料および構造の設計と製造の信頼性向上 材料の真の実力を引き出す 21 実用化に向けた課題 • 定着構造体製造の自動化と大型化 現時点では手動で製作(巻き付け)を行っているが、定着構 造体を安定に製造するため、機械化ならびに自動化が必要 である。 • 最適設計(形状、材料選択) 定着構造体の設計手法の確立する。 • 張力調整機構(FRPロープ) 張力を調整するための機構を定着構造体に組み込む。 22 企業への期待 • 定着構造体の自動(連続)製造機の開発 手動では巻き付ける大きさ、数に限界がある。 • フルスケール・実地試験(大型構造物の試作、強 度試験、耐久試験、曝露試験など)の実施 実際の構造物(例えば海洋構造物)への導入により現場で の評価を行い、本技術の有効性を示す。 23 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 繊維強化プラスチックケーブルの定着構造体及びその製造 方法、強度試験方法、並びに強度試験用サンプル • 出願番号 特願2015‐137298 • 出願人 国立研究開発法人物質・材料研究機構、小松精練株式会社 • 発明者 内藤公喜、小熊博幸、林豊、中山武俊、野田穂奈美 24 産学連携の経歴 • • • • • 2006年‐2008年 2009年‐2010年 2009年‐2010年 2013年‐2016年 2014年‐現在 キヤノン株式会社と共同研究実施 株式会社羽生田鉄工所と共同研究実施 NTT‐AT株式会社と共同研究実施 トヨタ自動車株式会社と共同研究実施 水戸工機株式会社と共同研究実施 25 お問い合わせ先 国立研究開発法人 物質・材料研究機構 外部連携部門 事業展開室 TEL:029-859-2600 FAX:029-859-2500 e-mail: [email protected]
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