ハノイの中心ホアンキエム湖周辺の週末の歩行者天国化 カーフリーデージャパン 望月真一 2016 年 9 月 9 日 ハノイ、あるいは、ベトナム全体にとっても象徴のようなホアンキエム湖を中心とした地区が、今 年の 9 月 2 日のベトナム建国記念日に合わせて毎週末、バイクや車から解放され、ホアンキエム湖廻 りとそこにつながる道路 10 本が歩行者天国として実施されることになり、運よく実施に立ち会えるこ とになったので報告します。 実はそれに先立ち、2014 年には、ホアンキエム湖の北側の旧市街 36 ストリート地区内の 6 本の道 路が、週末の夜間の交通止めで、露店も出てナイトバザールのような利用が定着していました。その 旧市街は 800 人/ha という超過密居住地区であるとともに、歴史的に活発な商業地でもあり、今では 観光客が必ず訪れる観光のメッカともなっています。担当セクションとしては歴史的環境保全事業を 進めているものの、その活発な都市活動は大量のバイクにささえられているものの、大量の通行量と 駐車があり、ハノイの中心部として南北交通の主要通行ルートでもあるという非常に困難な交通問題 を抱える、特殊な地区となっています。多くの外国コンサルタントや大学からの提案があるものの、 いずれも満足できるものではなかったことから、私との議論に興味を持っていただき、この一年ほど 意見交換をしてきました。最初は 10 月 1 日開始予定だったため、カーフリーデーを参考としたいとの ことで打ち合わせの予定が、実施の立会にかわってしまいました。 8 月 17 日時点でのニュースでも、10 月 1 日から毎週末にホアンキエム区周辺を歩行者空間に解放す ると市長が公表していたのですが、直後に事態は進展し、スタッフには市長から急きょ建国記念日か らスタートすると大号令があり、議論相手のセクションが実施部隊となりました。予定が突然変わる ことは、ベトナムでは日常事なのですが、この大事業の準備を考えると、2 週間前の決定は乱暴すぎる と驚きました。しかし、小さな事業でさえ何年も時間をかけて、結局何もしないか、本来の姿を大き く後退させて形だけの実施でお茶を濁すころに慣れきっている我々の日本よりは、正直、数段いいこ とと感じました。 今後は、金曜日の午後 7 時から日曜の深夜 12 時までをホアンキエム湖周辺の 10 の道路を、車、モ ーターバイクの進入禁止地区とし、ホコ天とするというものですが、最初の今回は建国記念日が金曜 日であったので、一日前の木曜日午後 7 時から開始となりました。北側の旧市街と違い、ここはオペ ラ劇場につながる 1 本の道路だけ商業街区なので、日中にバイク、車を止めても都市活動に大きな支 障はないようです。その意味でも、都心を歩行者優先のエリアにするという将来の交通政策上の戦略 からというよりは、日本のホコ天とほぼ同じといえます。 周辺部には、バイクの駐車スペースをしっかり確保し、交通規制の警官は、必要十分な人員と対応 で、この種の行動は経験豊富と見受けられました。急な実施で、最終的な実施内容は、ごく一部の関 係者しか知っていないのではないかと思うぐらいでしたが、十分な情報が市民に流れていないにもか かわらず、具体的な規制内容を知らずに交通止めのバリアのところまで来ても、臨機応変に対応して いてほとんどトラブルは見受けられませんでした。 通行止めの開始の時は、進入止めの柵を道路の真ん中に設置することから始まる光景は、数々の都 市でのカーフリーデーの開始と全く同じ風景でした。特に、1997 年のラ・ロッシェルでの最初のカー フリーデーの瞬間と被りました。それは、今の私の活動につながる最初の瞬間でもあり、ほぼ 20 年た った今、今度はベトナムでこうした時間に居合わせることになり、感慨深いものがありました。 9 月 1 日の最初の夜は、偶然居合わせたか、ごく一部の人々が様子見に来た程度で、車道上はまば らでしたが、翌日の午前も道が人であふれるというほどではなかったのですが、夜になると人が増え てきました。特に、商業街区を抱えるオペラ劇場につながるタンティエンストリートは、文字通り、 身動きがとれないほどの人だかりでした。評判を聞きつけ、集まってきた家族や、連休なのでハノイ の来た人々であふれ、想像を超える出来事でした。翌日の土曜日になると、街の中心の解放された道 路空間を人々が広がって普段車が通る道路の真ん中を楽しむ姿は、世界中同じでした。ローラーボー ド、スケーターや、セグウェイのような一人乗り等の乗り物があり、路上でのゲーム、展示、ステー ジでの演奏もあり、既にすっかり定着した風景となっていました。 急な実施のため、十分な準備ができない、少し乱暴な展開ではありましたが、とにかく人に解放さ れた都市空間を提供することは、都市の重要な機能であり、世界中のどこでも人々が期待されている ことと認識させられました。 我々としては、この実施の際には、交通量のデータやアンケート調査を実施し、将来の計画に結び 付けることが必要、また、バスは通常通りのルートでサービスをするべきと主張しているのですが、 今回の状況を観察するに、まずは、ホコ天空間の提供でも、集まってくる人々を見ていると、ともか く、大きな意味はあったと認めざるを得ず、建国記念日に急きょぶつけ、強引であったものの、すべ きことはすぐにでもするというリーダーの判断を理解したいと思いました。 ○ホアンキエム湖周辺地区の歩行者道路実施個所 ○隣接道路の駐輪場 ○人民委員会横の広場 ○伝統ゲームの企画 ○自転車レースの実施 ○中央郵便局前 ○タンティエン通り
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