高度医療に対応した中央診療棟

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VISION
長崎大学病院
2016 . 9
長崎の医療の未来を描く
再開発物語《4》
高度医療に対応した中央診療棟
今年3月末、高度医療に対応した中央診療棟が完成した。手術室や集中治療室の数を増やし、中央診療部
門を集約した。近年高難度手術が増える傾向にあり、さらにドクターヘリを活用した救急医療へのニーズも
増えている。こうした社会の医療ニーズに合わせて、大学病院の機能を強化している。
手術室を増設
6月2日。新しく完成した中央診療棟のオープニ
ングセレモニーが挙行された。県内の医療機関など
の関係者約 70 人が出席。増﨑英明病院長は「高度
医療に対応できる施設が整った。本院の地域医療に
おける役割を果たしていきたい」とあいさつした。
平成24年11月、中央診療棟は病棟・診療棟の
改築、病院本館の改修に続く一連の再開発事業とし
重症患者の管理を充実させた集中治療室
て改修工事に着手した。地上7階建ての建物には手
術部、集中治療部などの手術・麻酔部門をはじめ、
伴い、心臓血管外科、脳神経外科の疾患、外傷への
検査部門、病理部門を集約。本院経営を支える「柱」
きめの細やかな手術が可能になった。
となる機能の充実が図られることになった。
手術部の永安武部長は「どの手術室でも同じ手術
近年の手術件数をみると、平成23年度に 8951
ができるようにするのが、今回のコンセプトであ
件だった入院患者の手術件数は平成27年度には
る」と話す。今後、患者の高齢化や重症疾患患者の
9821 件に増えている。この5年間で約900件弱
増加に伴い、手術が複雑化することを想定し、さま
近く伸び、手術へのニーズは確実に高まっている。
ざまな機材を配置できる広々としたスペースを確保
平成27年には初めて月 1000 件を超えたときも
した。また高精細画像で手術時の画像をより鮮明に
あった。
表示させるシステムを導入し、より緻密な手術を支
こうした手術件数増加を見込んで、手術室を15
援する。
室から19室に増設する計画が持ち上がった。高難
手術室の増室に併せて集中治療室(ICU)も
度手術など本院が担うべき医療機能の強化と効率化
16床から20床に増床した。本院のICUの特徴
を図りつつ、県内の医療ニーズへの答えが今回の中
は厚労省が定める施設基準ではトップクラスの「特
央診療棟建設ともいえる。
定集中治療室2」を取得し、スタッフと施設ともに
手術室の1室は放射線撮影装置を組み合わせたハ
管理体制を充実させている点がある。ICU—Aは
イブリッド手術に対応している。
これにより、
カテー
集中治療専従医を配し、最重症の患者に対して24
テル治療や血管造影しながら手術する手技の増加に
時間365日体制で対応する体制を整えている。一
▼本院へリポートに着陸したドクターヘリ
▲新しく設置したハイブリッド手術室
をかけて整備し、本院が担うべき救急医療や高度医
療への対応をより明確にし、質の高い医療を目指し
ていく。
長崎県が運用するドクターヘリの基地は長崎医療
センターで、要請があればここから現場へ向かう。
本院ではヘリポートが建設される以前、ドクターヘ
リによる本院搬送は松山陸上競技場に着陸した後、
患者を救急車に移し替えて搬送していた。その件数
は平成25年度の35件から、平成27年度には約
2倍の69件に伸びていた。ヘリポートの設置に
方、各診療科の専門科医師が中心となって治療にあ
よって直接搬送が可能になるため、約30分の短縮
たるICU - Bの病床でも、急変時などにも迅速に
につながるとみている。また本院は肝臓、肺などの
対応することができる。
臓器移植の役割を担う病院でもある。臓器移植の際
ドクターヘリの運用
にも早急の臓器搬送が必要な場合にはヘリが利用さ
れることもある。
時代や社会の変化に合わせて、大学病院の機能も
中央診療棟屋上には臓器移植や離島からの救急医
変化している。
「これからも長崎大学病院は地域医
療に対応するため、ヘリポートを新設し運用を始め
療の動向を見据えながら、県内唯一の大学病院とし
た。8月26日にはドクターヘリ3機が患者を搬送
て県内の医療を支えていきたい」
。増﨑病院長はこ
し、迅速な処置で患者を救った。
う強調する。
ヘリポートは県地域医療再生基金事業で約1億円