2016年台風10号に関する緊急調査(今村文彦教授,佐藤翔輔助教)

2016年9月6日公開
2016年台風10号に
関する緊急調査
東北大学災害科学国際研究所
今村文彦,佐藤翔輔
2016年9月4日 実施(いずれの写真も同日撮影)
経路:盛岡IC→軽米IC→国道395→久慈→県道7号→岩泉
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目的(全体)
• 我が国の統計開始以来初めて東北に上陸した台風10号(平
成28年8月30日)の影響による洪水,土砂,高潮災害を受け
て,東北地方各地における被害箇所・状況について緊急調
査
• 当時の情報の流れ,各地域での防災体制などの実態も併せ
て調査
• 情報や避難体制に課題(行政と住民とのギャップ)
• また,東北地方では,水災害のリスクが高まると予想されま
すので,今後の対応についても検討
• 2014年及び2015年にみんなの防災手帳を作成(岩手県
版),全戸に配布(24時間テレビ基金).その活用状況と課
題
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久慈市 久慈駅前
約1m
• 片付け作業が本格化.住
民だけでなく,ボランティア
も活動.水道も使用.
• 久慈駅前の浸水深さ
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県道7号線上の被害状況(南下方向)
道路崩落
↓
沢からの土石流
本来の道路
緊急迂回路
• 県道7号線の道路寸断パター
ン①:安家洞付近.川沿いの
道路が崩落し,緊急の迂回路
が設置
• 県道7号線の道路寸断パター
ン②:山側の沢から,土石流
が河川方向に流出(写真は土
石流を応急撤去後).
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岩泉町民会館・避難所内の様子
9月4日時点で約200名が避難
←乳幼児優先
•
町内の物資拠点.救援物資の管理.
持ち出したものの管理(受付).物資
の種類ごとに整理.衣類は性別・年
代(大人・子ども)・大まかな種類で
整理.
•
施設内の部屋ごとに避難.ごった返
している状況ではない.写真は乳幼
児親子優先の部屋.
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岩泉町向町(町中心部)・被害状況
1.6m
清水川
(上流が龍泉洞)
小本川
漂流物(樹木)が
橋にひっかかり,
河川流をせき止め
2m
矢印方向に
土地が低い
浸水が深刻なエリア
3m
●岩泉町役場
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岩泉町向町の被害拡大要因
①土地の低さ
②2つの川の合流地点
小本川(濁流)
今後,主流の小本川から
清水川(清流) の逆流の確認が必要
矢印方向に
土地が低い
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岩泉町向町の
対応状況
住民による片付け(9/4は台風12号の影
響で避難指示が発令しれ,ボランティア
活動が中止).廃車の移動(JAF).岩手
県建設協会によるガレキ搬送
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岩泉町乙茂地区の被害
岩泉乳業
グループホーム
「楽ん楽ん」
小本川
コンクリート(固い)構造
物周辺では洗掘され,
流れが集中化しやすい
以前
現在
コンクリート構造物の破壊
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岩泉乳業
同社は2004年の設立。パックの牛
乳を生産していたが、09年にヨーグ
ルトに転換し、15年度には13億円
余りを売り上げた。山下社長は「町
を支える基幹産業になりつつあると
ころだったのに」と悔やむ。
東京・銀座にある県のアンテナ
ショップ「いわて銀河プラザ」でも、加
糖タイプやプレーンタイプ(いずれも
1キロ税込み832円)などを販売し
ていた。担当者は「台風以降も『在
庫がありますか』と問い合わせがあ
るほどの人気商品なので、(休止
は)残念」と話す。山下社長は「『い
つまでも待っている』というお客の声
が届く。社員が一丸になって復旧に
向けて頑張りたい」と話した。(船崎
桜、大塚晶)
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対応の整理
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30日午前9時に町内全域に避難準備情報を発令
しかし,避難(移動)された施設はなし(現在の確認の状況)(自治体=>
地域)
ハザードマップの配布なし(県=>自治体)
乙茂地区へは避難指示・勧告の発令はなし(自治体=>地域)
タイムラインに沿った避難体制は整備しておらず(自治体=>地域)
特に,避難準備情報の内容と個々の事業所での具体的な対応の検討
(地域=>自治体)
岩泉では,1時間当たりの雨量が70.5mmを記録
雨量は,248mmに達した(8月1か月分の降水量)
午後8時に小本川赤鹿橋の水位
午後6から午後7時にかけて約2メートルの上昇
8時にピーク6.6mを超える)
河川の水位の監視では避難が出来なかった状況である.
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一方,過去の経験と対応
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「ぴーちゃんねっと事業(正式名称:岩泉町地域情報通信基盤整備事業)」
http://www.town.iwaizumi.lg.jp/iwaizumi_blog/archives/24531
https://www.town.iwaizumi.lg.jp/docs/2016022200869/
平成26年12月から
昭和22年頃に豪雨があり浸水の経験
現在の町役場はその後に高台に移転(要確認)
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国交省 災害リスク情報の活用と連携による まちづくりの推進について
平成24年3月
岩手県岩泉町では、町立小本小学校児童などによる避難通路の現場点検を実
施し、避難経路が 津波に向かって逃げる方向であることを確認した。 この避難
訓練の実施を踏まえ、国道45号線へのアクセス避難階段(130段)を整備し、小
学校から指 定避難場所までの経路を短縮し、より安全なルートとした。 避難階
段の整備後も避難訓練を継続的に実施し、東日本大震災の際には、児童88人
が避難階段を 駆け上がり、5~7分ほど時間を短縮して避難場所に避難すること
ができた。
http://www.mlit.go.jp/crd/city/sigaiti/tobou/anzenanshinmachidukuri.pdf
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まとめ
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水災害のリスクは高まっている.自助・共助・公助の役割の認識
ソフト・ハード対策の地域での整備と活用, 国・県・自治体・地域・国民の
連携
災害リスク情報(過去の経験や教訓も含めて)の活用と連携によるまちづく
りの推進
災害情報(防災気象情報など)
は信頼性向上(特に予測),詳細化されているが,高度化のために利活用
については課題が残されている(自治体,市民の間)
今後の課題
防災体制(情報,訓練,啓発)の整備と災害に強いまちづくり
山間部の整備(道路整備による崖崩れの多発)
産業の回復(龍泉洞などの観光,岩泉乳業などの主産業)
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災害リスク情報の活用と
連携によるまちづくりの推
進について
国交省 平成24年3月
http://www.mlit.go.jp/crd/
city/sigaiti/tobou/anzenans
shinmachidukuri.pdf
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