遺伝統計学 夏の学校@大阪大学 川上 英良 Eiryo Kawakami 理化学研究所 医科学イノベーションハブ推進プログラム 統合生命医科学研究センター 上級研究員 2016遺伝統計学夏の学校@大阪大学 2001年 2007年 神奈川県立横須賀高校卒業→東京大学理科三類 東京大学医学部卒業、医師免許取得 が、しかし… 2007年 〜2013年 臨床研修をせずに東大大学院入学 インフルエンザウイルスの 増殖メカニズムの実験研究 @東大医科研 2016遺伝統計学夏の学校@大阪大学 2013年〜 システム生物学・バイオインフォマティクスのDry研究 主な研究テーマはネットワークバイオロジー 北野宏明 理研GD SONY CSL 所長 OIST教授 SBI CEO 2016遺伝統計学夏の学校@大阪大学 情報 【デジタル大辞泉】 1 ある物事の内容や事情についての知らせ。イ ンフォメーション。「事件についての情報を得 る」「情報を流す」「情報を交換する」「情報 がもれる」「極秘情報」 2 文字・数字などの記号やシンボルの媒体に よって伝達され、受け手に状況に対する知識や 適切な判断を生じさせるもの。「情報時代」 3 生体系が働くための指令や信 遺伝情報 2016遺伝統計学夏の学校@大阪大学 号。神経系の神経情報、内分泌 系のホルモン情報、遺伝情報な ど。 2016遺伝統計学夏の学校@大阪大学 入力 結果 刺激 応答 Licensed under Creative Commons 4.0 ©Togo picture gallery by DBCLS 生命の情報処理の例 酵母が熱に応答してheat shock proteinを作る 免疫細胞が病原体を感知し てサイトカインを出す 神経細胞が神経伝達物質を 感知して電位を変化させる 1. 確率的 2. ロバスト 3. 省エネルギー 4. 自律的 2016遺伝統計学夏の学校@大阪大学 毎回同じことが起こ るとは限らない 1. 確率的 2. ロバスト 3. 省エネルギー 4. 自律的 2016遺伝統計学夏の学校@大阪大学 環境のさまざまな変 化に対して強い 1. 確率的 2. ロバスト 3. 省エネルギー 4. 自律的 2016遺伝統計学夏の学校@大阪大学 京(スパコン)の消費電力: 12.6MW(約3万世帯分) 脳の消費エネルギー: 20W(電球1個以下) 1. 確率的 2. ロバスト 3. 省エネルギー 4. 自律的 2016遺伝統計学夏の学校@大阪大学 指示を出さなくても 勝手に動く 1. 確率的 2. ロバスト 3. 省エネルギー 4. 自律的 2016遺伝統計学夏の学校@大阪大学 化学反応とフィードバッ クに基づいた 並列情報処理システム 2016遺伝統計学夏の学校@大阪大学 ゲノムプロジェクト 1990年〜 2000年 現在 国際ヒトゲノム計画スタート ヒトゲノムが大体解読される 4000以上の生物種のゲノムが解読されている 2016遺伝統計学夏の学校@大阪大学 生命の部品は 大体わかった 外部刺激 レセプター シグナル 伝達 代謝 細胞周期 免疫応答 転写制御 mRNA 2016遺伝統計学夏の学校@大阪大学 生命システム は理解できる 無理 外部刺激 レセプター シグナル 伝達 代謝 細胞周期 免疫応答 転写制御 部品同士のつながり =ネットワーク を理解することが重要 mRNA 2016遺伝統計学夏の学校@大阪大学 生命のシステムをネッ トワークとして捉え、 ネットワーク理論を使っ て性質を調べたり、重 要な因子を推定したり する研究分野 Albert-László Barabási 2016遺伝統計学夏の学校@大阪大学 Uri Alon 現実世界のネットワークが満た す3つの性質 1. スケールフリー性 2. スモールワールド性 3. クラスター性 2016遺伝統計学夏の学校@大阪大学 おすすめ! 2016遺伝統計学夏の学校@大阪大学 Uri Alon 2016遺伝統計学夏の学校@大阪大学 1. 今までの文献を調べる 実験データ 生物学的 知見 標準表現 PbS2 phosphorylates Hog1 Msn2-Mck1 Regulates Hsp42 transcription Ste20/Cla4 Activates Ste11 2016遺伝統計学夏の学校@大阪大学 1. 今までの文献を調べる 膨大な文献 Nutrient Adaptation Heat Shock Response ~900 論文 24 刺激 ~2000 分子種 Pheromone Response Ion Homeostasis Osmotic & Cold Stress Response Oxidative Stress Response Comprehensive molecular interaction maps 2016遺伝統計学夏の学校@大阪大学 1. 今までの文献を調べる Kawakami et al. 2016 npj Systems Biology and Applications 2016遺伝統計学夏の学校@大阪大学 1. 今までの文献を調べる 利点 欠点 反応の詳細(反応の種類、向き、順 文献をひたすら読むのが大変 番など)を取り込める (ちゃんとした知識がある人がやれ ば)間違った知見を除くことができる 重点的に研究されているところとそう でないところで情報の密度が違う(網 羅的でない) 人によって記述の仕方が違ってしまう ことがある 2016遺伝統計学夏の学校@大阪大学 2. 網羅的測定データを使う 遺伝子発現データ 転写因子結合データ タンパク質相互作用データ Licensed under Creative Commons 4.0 ©Togo picture gallery by DBCLS 次世代シーケンサー 質量分析器 2016遺伝統計学夏の学校@大阪大学 2. 網羅的測定データを使う 転写制御 転写制御 ネットワーク 網羅的ChIPデータ mRNA http://www.utsouthwestern.edu/labs/bioinfo rmatics-core/assets/chip-seq.jpg 2016遺伝統計学夏の学校@大阪大学 2. 網羅的測定データを使う 7000 網羅的ChIPデータ >450 の転写因子の結合情報 遺伝研スパコンで 解析パイプラインを構築 http://wpgsa.org/ でデータ公開中 2016遺伝統計学夏の学校@大阪大学 2. 網羅的測定データを使う 利点 欠点 網羅的に情報が取り込める 実験ごとに条件が違ったりするので標 文献的に分かっていない(明文化され 準化が難しい ていない)関係が明らかになることが 反応の詳細は分からないことが多い ある 解析環境を用意するのが大変 2016遺伝統計学夏の学校@大阪大学 1. 特徴的な部分構造(ネットワークモチーフ)を見つける 2016遺伝統計学夏の学校@大阪大学 2. 制御因子を予測する TF 1 DOWN 負の制御 因子 UP TF 2 DOWN ネットワークにもとづいたEnrichment解析 正の制御 因子 UP 2016遺伝統計学夏の学校@大阪大学 約100種類の制御因子 の影響の推定値 2. 制御因子を予測する Kawakami et al. 2016 Nucleic Acid Research 1. 高精度で多面的なネットワークの構築 さまざまな網羅的測定データを組み合わせる 文献的な知見をテキストマイニングや機械学習を使って取り入れる 2. ネットワークを使った上流因子推定 生命現象・疾患を特徴づける制御因子を突き止める 未知のレセプターを見つける 2016遺伝統計学夏の学校@大阪大学 1. ネットワーク状態遷移理論 細胞の状態が変化していくときに、ネットワークの状態はどのように 変わっていくのか 細胞・個体の状態変化を予測 2016遺伝統計学夏の学校@大阪大学 2. 生命を応用した情報処理システムの開発 自律性・ロバスト性など、生命を特徴づける性質を情報理論によって 理解する 生命のような振る舞いをするシステムに必要な性質を抽出し、それ を人工的な化学反応系で再構成 化学反応をベースとした人工知能をつくる 2016遺伝統計学夏の学校@大阪大学
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