≪小論≫知識人材育成の目的

≪小 論 ≫ 知識人材 育成の目的
㈱ シ ー ド ウ ィ ン [email protected]
組織の人材育成目的は、組織が成果をあげ続けるために行う。発展しているときは、
さらに発展させ、厳しい時は、厳しさに耐えられるようにし、プラスへと転換させられ
る人材群を育てる。
育 成 目 的 は 、 日 常 の 3 つ の 業 務 目 的 「 今 日 の 成 果 」「 機 会 発 掘 」「 次 期 商 品 の 作 成 」 を
遂行する人材である。さらに、組織資源になる人材の7つの能力、資源である。7つの
資 源 は 「 機 会 生 産 」「 ビ ジ ョ ン 生 産 」「 革 新 持 続 」「 最 適 化 推 進 」「 資 源 人 材 育 成 」「 科 学
論 理 生 産 」「 新 資 源 生 産 」 を 行 う 人 材 で あ る 。 業 種 、 職 種 に よ っ て 、 内 容 は 少 し ず つ 違
うかもしれないが、育成目的は同じである。
――育成には必ず目的があるはずである。
伝えるのが目的ではない。優れた人材になってもらうのが目的である。組織人として成
果をあげ続けるのが目的である。個人は、自己実現として、組織を活用しながら、自らを
活かすのが目的である。個人にとっては、成果の有り様は組織と違うかもしれないが方向
は類似する。各個人のあり様が違っていて当然である。業務推進のプロセスで、各人が形
作っていく。育成の目的と狙いは、組織と個人の成果にある。
「育成する」
「 学 ぶ 」の 意 味 と 目 的 を 、教 え る 者 、学 ぶ 者 の 双 方 共 に 理 解 す る の が 肝 心 で あ
る。何を成そうとしているのかを認識しておきたい。如何なる人材になるかである。
目標とする具体的な組織の育成成果は、大きく二つある。
共に日常業務の中で実現させねばならない短期目標と、組織の力強さと革新力とする長
期目標がある。但し、共に、一人で背負う必要はない。元々、知識を活用して業務を行う
人材には、専門分野になる知識、技術を持っている。専門分野は、卓越する方向へと励ま
なければならい。もう一方に、専門分野を活かす知識、技術が大切である。
ここでは、専門を活かすための知識であり、目的である。
――
第一の3つ目的
1. 今日の業務を推進する。今日の成果をあげる。
2. 新たな(隠された)機会を発掘する。
3. 次の業務、次の商品を作り出す。
一人材が、3つの業務(役割)をこなすのが望ましいのは言うまでもない。しかし、多
く の 場 合 、「 今 日 の 成 果 」 に 終 始 し 、「 機 会 発 掘 」 と 「 次 期 商 品 」 に つ い て は 考 え て い な い
ようだ。異なる仕事として扱われているのかもしれない。仕事の現場が、一番、多くを知
っているはずである。市場の状況、社会と市場の関わりを職種、職務に関わらず得られて
いる。全組織人が、3つの役割を理解し、知覚し、行動していたら、組織の全体成果は大
きくなるはずである。全組織人が、3つの項目を目指すのを当然としよう。
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医学部の教師陣は、教育、診療、研究の3つを仕事としている。他学部の教師陣も同じ
で、教育、研究、産学共同の3つである。さらに、後、一つ、二つ加わる可能性がある。
起業化、またはその支援などがある。
他職業についても、同じように3つある。業務推進、研究、育成である。これらを通し
て 、「 今 日 の 成 果 」「 機 会 発 掘 」「 次 期 商 品 」 が 絡 み 合 う 。
「今日の成果をあげる」は誰もがしている。成果の意味と是非、成果のレベルが問題にな
る。仕事をする者が、成果を意識しているかにも関わる。
成果を構成している要素を挙げてみた。縦軸に8種類の条件、横軸に思考または視点深
度になる要素である。条件は8種類だけでなくもっとある。経済を条件に入れれば、ミク
ロ、地域、グローバル経済も入ってくる。流通も入ってくる。成果は、多くの条件を満た
して、最大の成果が得られる。
仕 事 の 結 果 を 成 果 で あ る と す る の で あ れ ば 、仕 事 の 結 果 が 的 外 れ に な る 確 率 は 高 く な る 。
決められた事柄を決められたようにしていると、成果を分からずじまいに終わる。成果を
仕事の結果であるとしてはいけない。無駄な仕事を成果にして、満足してしまう。もし、
上司が部下に指示通りを望んでいるとすれば、大した上司にはならない。部下の育成もで
きず、成果が悪ければ、他の責任にしてしまうだろう。指示の程度と範囲にもよるが、指
示するのが上司の役割であるとすれば、おのずと成果のレベルは下がってしまう。
現場で仕事をする人は、成果の意味を良く理解した方が良い。成果の条件と要素を取り
出し、状況を把握すると確実に成果はあがる。成果の転換もできる。成果の質、成果の継
続、成果の拡大は、この知識と視点に関わっている。ここに、育成の意味がある。さらに
はマネジメントの理解にもつながっていく。ただ、成果をあげよと強要したところで挙げ
られるはずもなく、継続もしない。成果をあげるには、知識と技術、絶え間ない観察と、
最適化させる知恵が必要なのだ。逆に、分かれば誰もができるのも間違いない。
「 今 日 の 成 果 」「 機 会 発 掘 」「 次 期 商 品 」 は 実 は 一 体 な の だ 。 成 果 は 何 か と 考 え れ ば 、 3
つが一つになってくる。成果を掘り下げ、続けて成果をあげようとすれば、機会発見へと
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つながる。成果の意味が、次の機会へ、気付いていない機会を示すのだ。
先に図に表した成果の条件と緑の要素の部分への意識で、機会発見と次期商品が見いだ
される。職務の立場に関わらず、次期商品への視線は動くはずである。売れ行きが少し下
がった、上がった、などは兆候の一つである。精度の最適さを追えば、顧客群を観察する
しかない。顧客だと思っていても、全体の顧客群に変化があるかもしれない。
如何なる優れた商品もいずれ陳腐化する。市場に慣れて陳腐化するのか、他の知識・技
術の登場から陳腐化するのか、社会変動なのかは分からない。市場で飽和状態になれば、
い ず れ 市 場 は 変 化 す る 。市 場 変 化 が 起 き て 、従 来 の 商 品 が そ の ま ま 持 続 す る の は 稀 で あ る 。
組織規模が大きくなり過ぎれば、どこかで分割せざるを得ない事柄が発生する。間違い
のないことで、適正規模と社会変化、価値変化は見逃してはならない。
認識し、知覚する必要がある。その対象が上図の条件と要素である。安全を望めば、負
のサイクルに陥り易く、正の方向へ進もうとすれば、リスクを追う。リスクを避ければ負
へと向いてしまう。
認識、知覚は、知識に影響される。知らなければ、知識体系を持っていなければ気付か
ないところが多い。挑戦をしようとすれば、リスクを知ってしまうから、リスクを最小限
にしようとする。これも知識に影響される。
業種、職種によって、条件と要素のとらえ方か違ってくる。上図の項目はほとんど変わ
らない。原則だからだ。自社の状況を分析するとこめから始める必要がある。分析して体
系化しておかねばならない。そして、定期的に再分析を行い、変更を加える必要がある。
体系化をしておく理由は、変化への知覚のためである。これらを伝える努力をしなければ
ならない。
――2つ目の大きな目的、7つの資源人材の育成である。
人材が資源になっている。貴重で、尽きることなく、拡大していく資源である。形ある
モノはいずれ尽きる、壊れる。人自身が使った知識、技術、経験は尽きることなく、人材
自身の知恵と工夫、学習と経験で拡大していく。昔、労働力として、人は金の卵だと言わ
れた次期があった。一つの労働力が一つの利益の一部を担う故の言葉だった。今は知識が
モノを作る。知識が新たなモノを創造する。思想が思いもしなかったモノを世に送り、革
新を起こす。人が持つすべてのモノで、社会に、組織に新たな道をつける。一つの知識が
多数のモノを創りだしていく。
知識社会であり、知識を活用した仕事が急増している。流通を検討するのも、社会の状
況から新商品を見いだすのも、知識を必要としている。生産工程の効率を計ったり、社会
変化をいち早くキャッチして商品に転嫁するなども知識労働の一つである。今、新しく産
まれてくる商品の大半を知識が創造している。人事部は知識を分析し、人を分析し、組織
を分析して、知識を集約させているはずである。知識を持ち、十分に知識を活用させる人
材が、資源人材である。
資源人材を養成するには時間がかかる。直ぐにはできない。知識を積み上げ、経験をし
てもらう。知識が十分に活用されれば、組織成果に、如何に影響するかを知ってもらう。
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同時に、各人が持っている専門化された知識を活用する方向へと導いていく。
人材に関わる資源は限りなく大きくなっていく。人材への育成を怠らなければ、刺激を
続ければ、人材が常に学べば、成長を続ける。組織を発展させ、成長させるのは人材資源
である。求める人材資源は次の7つである。
「機会生産」
「 ビ ジ ョ ン 生 産 」は 組 織 活 動 の 先 頭 に 立 っ て い る 。進 む 方 向 を 探 り だ し て 道
をつける。
「革新持続」
「最適化推進」
「 資 源 人 材 育 成 」は 組 織 を 維 持 、発 展 、拡 大 し て い く
だ け で な く 、 社 会 の 衝 撃 を 受 け 止 め る 役 割 を 果 た す 。「 科 学 論 理 生 産 」「 新 資 源 生 産 」 は 革
新を促し、組織に力強さと観察の時を増やす。組織の余裕である。
分かろう、知ろうとする姿勢は大切である。学ぶ者には学ぶ責任があるとする根拠であ
る。考え続ければ、いずれ分かることばかりであるが、育成の良い所は、伝えた所から始
まる。その分、発想の幅が広がり、工夫の時間が多くなる。当然、考える時間と新たな試
しのチャンスも広がる。知らなければ、知るべきことを探りだすところから始めなければ
ならない。もしかしたら、知るべき事があると気付かないかもしれない。
一人で7つの資源、能力を持つのは困難である。一人では、一つ、二つの資源を持つだ
けでも十分である。そのような人材が多数いるのが理想的ではある。
一人が一つの資源を持てたとしても、継続して資源活用をするのも難しい。多人数でチ
ームを構成して、一つの資源を作り出し活用するのが、実現性が高い。一つのチームが7
つの資源を、順次、時に応じて活用できればもっとも良い。そのような状態が常に各部署
で 起 こ っ て お れ ば 、組 織 は い つ も イ キ イ キ と し て い る 。
「革新持続」
「最適化推進」
「資源人
材育成」は各部署が維持していたい資源である。
第 一 に 挙 げ た 3 つ の 目 的 「 今 日 の 成 果 」「 機 会 発 掘 」「 次 期 商 品 」 は 常 に 実 行 す べ き 事 柄
である。成果の条件と要素は、組織内の育成では絶対条件である。知識人材を必要として
いるならばである。その上に7つの資源が乗っかる。業種、職種によって、成果の有り様
が違ってくるから、7つの資源の実現の仕方も変わる。各組織のミッションは特有である
はずだから、資源活用の材料と方法、方向は違ってくるはずである。
「機会生産」の機会は、組織内にあるのではなく、社会にある。成果、利益は組織外にあ
るのだから当然である。機会生産は組織外に向けて検討される。結果、市場が発見または
形成される。機会の生産を試みるとき市場は確立されていない。手がかりの発見は、社会
に存在している市場を取り出し、互いの関連性、重なり程度を分析する必要がある。個人
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またはチームメンバーの知識、感覚では、社会に存在する市場のすべては取り出せない。
しかし、直接、間接に関わりある市場は取り出せているだろう。
市場の種類数がどれほどあるか分からない。できればすべての市場を取り出し、市場の
成 長 程 度 が 測 定 で き る の が 良 い 。ト レ ン デ ィ ー な の か 、人 気 が 出 て き て い る と こ ろ な の か 、
定番になっているのか。定番から落ち着いて継続的な市場を構成しているのか、消えて行
くのかである。如何なる市場もいずれは他のものと入れ替わる。各市場の成長プロセスの
位置が分かり、自社との関係がある種の数値で表されれば、重要な検討材料になる。
一産業で一つの市場とすれば、約35種類ほどの市場が存在する。区分が大きすぎて変
化をつかみ難い。変化が目立つとすれば、産業構造の変化のときだ。
一つの商品に一つの市場とすれば、市場は無数にある。ある程度のブロック化して検討
するのが適切だろう。ブロック化する基準を決めるのも考え方に関わってくる。モノのブ
ロックを基準にした市場、流通、対象顧客、顧客用途、市場機能等々の基準の持ち方があ
り、それぞれに機会が存在する。いくつかの組み合わせで成立するのも間違いない。自社
の特異性、知識と技術、既存の市場との関わりからの検討もある。
機会は人が行動するところに現れる。人の噂から行動へ、考えから行動へと変化すると
き、最大の機会になる。機会発見は、人々の行動観察から始まる。機会生産は人々の行動
を誘う。または創り出す。行動の結果に対しての確信を持たせるのがポイントになる。
機会発見は変化を探すとか、ニーズを探る、他市場の組み合わせを試みるなどがある。
顧客群、非顧客群を観察して見つかる場合がある。機会生産は、機会自体を創りだす。
機会生産には、3つ+1つの視点が必要である。自社市場以外の市場の動向、商品(製
品 &サ ー ビ ス ) と 市 場 の 関 係 性 、 人 々 の 行 動 で あ る 。 そ し て 、 機 会 生 産 の 元 に な る 自 社 の
知識、技術を広くとらえた活用である。これらに関わる知識群を学ばねばならない。
機会生産に関わる知識、技術及び観察視点と検討事項は、他の6つの育成目的の要素と
重なる。人材育成の基本になる事柄である。
「ビジョン生産」の中心になる視点は社会である。組織は、社会があって活動できる。社
会なくして、組織だけで活動のしようもない。ある大手企業の代表の「企業と社会の共存
を計るために・・・」などの発言をたまに聞くが、大きな間違いである。社会は一つの企
業 を 必 要 と し な い 。し か し 、企 業 は 社 会 を 必 要 と す る 。企 業 が 社 会 で 機 能 し て い な け れ ば 、
社会はその企業を無視する。経営学書にも「企業と社会の共存」などの語句をたまに見か
けるが、経営前提が間違うと方向性も間違う可能性が高くなる。
現代は組織社会であると言われ、一つの組織が、社会の一つの機能を果たす。社会の一
つの機能を、類似機能を持つ複数の組織がまかなう。社会は組織がなくては機能しなくな
った。それでも組織と社会の共存はない。組織は入れ替わる。組織機能が陳腐化すれば無
くなる。社会が進歩し、変化すれば、社会に適応した新しい組織が産まれる。シュンペー
ターの言う「創造的破壊」が常に起こっている。
社会には、企業があり、NPOがあり、社会事業がある。これらはすべて組織としての
活 動 を し て お り 、一 つ 一 つ の 組 織 が ミ ッ シ ョ ン を 持 ち 、事 業 目 的 を 示 し て 活 動 を し て い る 。
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組織は人を人材として抱え、人材の知識・技術と役割をまとめて成果をあげている。
組織の最大成果をあげるためのマネジメントがあり、その大きな役割が3つある。
第一に、組織特有の使命すなわち目的を果たすことである。
第二に、組織に関わりのある人たちが生産的な仕事を通じて生き生きと働けるようにする
ことである。
第三に、自らの組織が社会に及ぼす影響を処理するとともに、社会の問題に貢献すること
である。
ドラッカー著『マネジメント』
組織特有の使命が、組織活動の第一として挙げられ、成果をあげ、利益を上げる。
労働形態が変化してきた。日本で終身雇用が発達したが、崩れてきている。正社員、契
約社員、派遣社員、パートがある。サービス業の主だったところがアウトソーシングされ
るようになっている。
給与形態、勤務形態、福利厚生のシステム等々は、個人の生活スタイルを定めている。
労働形態に伴って、高度な知識を必要とする業務が増えて、教育システムにも変化が起き
ている。働く人材の生活を規定するのも組織活動の一部である。
第二の「生産的な仕事を通じてイキイキと働ける」は組織の任務であり、個人生活を作
る手助けになる。
組織は社会で機能する。自らが持つ知識、技術で社会の問題を解決するのも組織の役割
である。
ビジョン生産は、マネジメントの3つの役割と直結している。商品と労働スタイル、社
会 の 課 題 に 向 き 合 っ て 、ブ ラ ン ド が 出 来 上 が っ て い く 。マ ネ ジ メ ン ト の 3 つ 役 割 に つ い て 、
自社特有の解を導きだし、活動する必要がある。一般解では、組織の特異性は現れない。
ビジョン生産は、人と社会に向き合って出来上がっていくのだ。
「革新持続」ができれば、社会および市場でリーダーシップが取れる。リーダーシップが
取れる最大の利点は、市場価格を設定できる。商品機能の先端を維持でき、市場占有率も
最大になる。革新の対象は組織内ではない。社会であり、市場である。市場を対象とした
革新は機会生産にもつながる。市場革新に伴う組織変革は、組織の改善であり、単なる変
更 に 過 ぎ な い 。組 織 を 革 新 し た と し て も 、市 場 、社 会 に 革 新 が 起 こ せ ね ば 変 革 に な ら な い 。
一つの革新を狙うべきではない。一つの革新が他に波及し、別の革新を産む。波及しな
ければ直ぐに消え、革新にはならない。
革新のための道具はない。敢えて挙げるとすれば、廃棄システムを機能させる。廃棄シ
ステムのない組織には、革新機能はない。業務に偶然などを考える経営者はいないが、革
新にぶつかるときがある。この革新機会を生かせる場合は少ない。廃棄システムをもって
いなければ革新の機会、ヒントを見いだすのも難しい。予算拡大を成果の評価とみている
限 り 、革 新 は な い 。維 持 に 関 わ る コ ス ト は 常 に 減 少 し て い な け れ ば 業 務 維 持 も し て い な い 。
必然として予算が拡大したとき、当初の計画が間違っていたのだと考えねばならない。
まず、廃棄システムを作らねばならない。廃棄検討基準を定めて置く必要がある。売り
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上げの減少、利益率の減少、サービス経費の増減、セット商品の追加、クレームの増大、
クレーム内容、質の変化、などである。経費、売り上げの想定ない変化は問題ないが、想
定を超えたとき、必ず内容を調べておく必要がある。セット商品の追加、削減、クレーム
変 化 は 、確 実 に 何 か が 起 こ っ て い る 。こ れ ら は 革 新 機 会 で あ り 、最 適 化 対 応 の 機 会 で あ る 。
革新への着手はいつでも良いのではない。機会が必要である。だが、革新の準備を怠って
はならない。
革新を起こそうとしても、革新に成り得るものは分からない。革新の答えがどこかに転
がっているのでもない。革新は組織内部で起こるのではなく、外部で起こるのだからコン
トロールもできない。革新に成り得るものを推測し、社会に提供していくだけである。た
だ、提供していく時、革新に成り得る戦略は立てられる。
革新に成り得るものは、自社、自身の理想と社会とのギャップから計る。未来の分かり
様はないのだから、理想形に向かって進むのが論理的である。理想形は、自身から始まっ
て い る 。自 身 か ら 社 会 を 視 て 、こ う あ る べ き だ と 考 え る 。
「 こ う あ る べ き 」と し た そ の 範 疇
は、自身、自社の分野である。社会全体ではなく、自社の分野から見た理想である。だか
ら 、理 想 は い く つ も 存 在 す る 。い く つ も が 集 ま っ て 理 想 社 会 へ と 向 か う 。小 さ な 理 想 で も 、
成し難い理想でも構わない。理想形がなければ、次の一歩が踏み出せない。
理想を作るには5つに分類してお
く 。H P の マ ネ ジ メ ン ト 考『 理 想 か
ら始める』を参照
http://www.seedwin.co.jp/manage
ment.html
日 々 、市 場 と そ の 周 辺 を 観 察 し 、理 想 と 比 較 す れ ば 良 い 。ギ ャ ッ プ を 埋 め て い く 過 程 で 、
革新すべき事柄が見つかる。
注意しておかねばならない事柄がある。他社、または他の人の理想をそのまま使っては
いけない。誰かのモノをヒントにしたとしても、自らの理想を導き出さねばならない。も
う一つ大切なのは、見いだした理想が、最終のモノではない。理想も成長し、進化する。
今 、気 付 い て い る 理 想 は 、今 の 知 識 の 範 囲 で 、今 の 認 識 の 範 囲 で あ る 。知 識 、技 術 が 増 え 、
経験が理想を育てている。
「最適化推進」は日々のチェックであり、思考と行動において、モノに関わる短期の調整
行為である。その延長線上には中長期計画がある。モノの市場と社会への最適化である。
人材の持てるモノを目的に向かって発揮させる。市場、社会に向けての自社行動を社会
変化の先頭に向かわせる。
最適化推進には、社会、市場、モノ、人の関わりを読んでいなければならない。社会は
社会変化であり、市場の構成要素である。市場は自社の一つの市場ではなく、自社市場を
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中心にして、関連市場の構成と連携している状態の把握である。当然、市場を形成してい
る商品構成を観察している必要がある。商品構成は自社商品だけでなく、関連、周辺商品
も含める。自社顧客群を中心にして、顧客が必要としている商品構成を観察しなければな
らない。顧客の買い物カゴの中の商品構成が重要である。自主商品との関連ではなく、顧
客 思 考( 顧 客 志 向 と し て も 良 い が 、志 向 の 軸 に な る 思 考 の 方 が 大 切 )、行 動 ス タ イ ル に 関 わ
る商品構成である。これらは最適化に不可欠な要素である。
最適化には特定の人材ではなく、できるだけ多くの人材の思考と行動が重要である。人
材の知識、技術だけでなく、如何なる行動をするかである。人材の優秀さは過去の成果か
ら見るのは必然である。だが、適材適所率が最大の割合で3割であるとすれば、他の7割
の 人 材 成 果 は 真 の 姿 で あ る か 当 て に な ら な い 。彼 ら の ス テ ー ジ が 適 切 で な か っ た の だ か ら 、
最高の成果が挙げられていなかったはずである。7割の人材にとっては不幸であり、組織
にとっては時間と費用が浪費になり、利益が負へと向いてしまった。
3割の人材は、適材適所であったとしよう。だが、1割の人材が組織の9割の成果をあ
げていて、9割の人材が集まって1割の成果をあげていると言う。この二つに数字の矛盾
がある。また、3割の中の1割が9割の成果をあげているとは限らず、7割の不適切な職
場からであったとしたら、別の力が働いていると考えねばならない。
2つの可能性が考えられる。一つは成果があげられるシステムが存在している。この場
合は社会平均以上の人材がおればよい。システムは各業務の内容の精度と連携と機能であ
る。生産ラインを想像すれば理解できるははずだ。生産ラインが始まった頃は多数の人材
を必要した。進化して、人数が減り、生産量は急増した。
もう一つはカリスマ性の高い人材の存在である。しかし、カリスマ性の高い人材は次期
組織を疲弊させる。人材が育ちにくいからである。同時に、カリスマ的人材が居なくなっ
たとき、組織成果は落ちてしまう。組織は多数の優秀な人材を必要とするが、スーパーマ
ン は 必 要 で な い 。成 果 を あ げ る の は 仕 事 で あ り 、誰 も が 成 果 を あ げ ら れ る よ う に す る の が 、
組織の役割であり、マネジメントである。
人材と各職務を徹底して分析しなければならない。各人材は何を持ち、何を持って得意
とし、強みにできるかである。人材が向いている方向を確かめておく必要がある。向いて
いる方向は、考える視点を示し、行動を確定させる。職務の内容を分析し、構成している
知識と技術を洗い出しておく。課題と知識、技術の関連、課題変化と知識、技術の変化を
明らかにしておく。他部署との関連を明確にしておく。業務の内容が変わったとき、不適
な時、各業務のウエイトが変えられ、集中すべき内容を決められる。
人材群を強み別とレベル別に分類できているとすれば、業務変化と業務戦略に応じて、
優秀な人材を集中させられるようになる。
「資源人材育成」は、資源人材を育成する人材の育成である。
知識を伝えるのは教育、育成の初歩の一部である。伝える内容のレベルが高くても、伝
えるだけでは育成にはならない。知識を機能に置き変えなければならない。機能に置き換
える方向と方法を示さねばならない。但し、機能に置き換えるのは学習者自身である。職
務や環境、その時の目的によってするべき事柄が変わるのだから、学習者自身が機能化す
る方法を身につけねばならない。これは育成に関わる前提である。
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資源人材の要素は、ここで挙げている7つの資源である。7つの資源を構成する要素を
持ち、要素を活用して、組織ミッション及び事業成果をあげる。成果は、最適にして最大
へと向かうようにしなければならない。これらを全うする人材が資源人材である。人材が
組織の資源になり、同時に社会の資源になる。故に、自己実現が可能になる。
人材は、組織を道具にして自らを機能させる。組織は人材群を登用して成果をあげ続け
る。二つの組み合わせが自己実現を育む。人材は、自らの専門を活かすと共に、活かす機
会 を 見 つ け 続 け ね ば な ら な い 。合 わ せ て 、仲 間 た ち を 、組 織 と 社 会 に 活 か さ ね ば な ら な い 。
知識を使って、視点の対象を認識し、思考、行動のバランスを計る。そのキーワードが次
の17単語である。
5つの各バランスと17単語の視
点 対 象 。H P の マ ネ ジ メ ン ト 考『 思
考 &行 動 の 最 適 化 を 図 る 』 を 参 照
http://www.seedwin.co.jp/manage
ment.html
「科学論理生産」は科学的な事柄から、日常の業務に至るまで体系化して、論理化する。
技能化、技術化できない知識は役に立たない。知識化できない技術は発展しない、他に
伝えられない。初めて体系化された事柄の是非は問う必要はない。まず体系化しようとす
る。体系化しようとして、観察が始まり、実験が行われ、是非が問われる位置にくる。こ
こから論理化が始まる。如何なる行動も論理化される対象になる。次に行う時に検討され
る環境が整い、伝承されやすい状態になる。失敗の記録は、リスクを小さくする。
論 理 化 に は 、1.基 礎 科 学 か ら の 研 究 、2.応 用 科 学 の 構 築 、3.商 品 開 発 研 究 、4.ビ ジ ネ ス モ
デ ル の 構 築 、 さ ら に 5.行 動 科 学 、 6.認 知 工 学 、 7.知 識 体 系 化 が 挙 げ ら れ る 。 科 学 と し て 既
に形成されている論理化は、元々の科学の論理に従いやすい。科学への前提とアプローチ
が固定している。当然、新規性は想像の範囲になり易い。競争も激しくなる。
応用科学の構築は、基礎科学の組み合わせと目的によって、前提が変化するが故に新し
さが現れやすい。
論理化対象として、1の基礎科学から7の知識体系化を挙げた。1が最も方向、方法、
アプローチの範囲が小さく、7の知識体系化が最も広い。1 の基礎科学についても扱い方
と目的設定の方法によっては広くなる場合もあり、広くなったとき、意外な発見にぶつか
ったりする。7の知識体系化は、個人によって違ってくる。8割以上は共通するが、残り
の部分が個別化する。1から7に行くほど外部要素が増えてきて論理化が難しくなる。各
人材にとっては、自らの知識、技術の体系化が常に課題なる。知識と経験、目的と方法、
研究実験と成果を積み上げて、知識体系化ができるようになる。
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1 基礎科学、2 応用科学は、研究開発の元、組織活動の元になる。組織自身が自らの元
は認識しておく必要がある。ビジネスとして実現させるのは、3 商品開発と 4 ビジネスモ
デルである。5 行動科学、6 認知工学は、日常活動の分析と成果の関わりを組み立てる。
そして 7 の個人の知知識体系になり、集められて組織としての知識体系が整えられる。組
織としての知識体系化は組織特異になり、組織活動の最も大切な事柄である。
業種によっては、挙げた 7 つの論理と異なるものがあるかもしれない。各人材が、自ら
の活動、部署と組織の活動を見て、論理化するべきものを見定めておく必要がある。言う
ま で も な い が 、先 の 図 に あ げ た「 5 つ の 各 バ ラ ン ス と 1 7 単 語 の 視 点 対 象 」は 重 要 で あ る 。
「新資源生産」の新資源は、人が創りだしてくる。
初 め て 電 力 が 人 々 と の 生 活 に 関 わ る よ う に な っ て 100 年 以 上 が 過 ぎ る 。そ の 間 に 技 術 革
命、生産革命、知識革命があった。コンピュータができて、インターネットが産まれ、知
識 と 情 報 の 流 通 が 一 気 に 速 く な り 、時 間 と 距 離 を 限 り な く ゼ ロ に 近 づ け た 。1995 年 だ っ た 。
知 識 流 の 革 新 に な っ た 。 1976 年 宅 急 便 が 現 れ た 。 物 流 を 大 き く 変 え 、 産 業 構 造 を 変 え た 。
宅配とインターネット、携帯電話は、社会の資源になり、生活や労働環境を変えた。
市場が最も活性化させるのは資源の投入である。自然資源ではなく、人材が創りだす資
源である。自然資源は有限であるが、人材が創りだす資源は無限である。何が出てくるか
は分からない。しかし、知財に成り得るモノは至る所に転がっている。
アイディアの数は、組織の人材数よりも多い。各人が相違工夫をしている。各人が、そ
れぞれの眼で、それぞれの知識をもって観察をしている。組織の各部署を丁寧に観察して
い く と 知 財 の 可 能 性 が 必 ず 1 つ 2 つ あ る 。全 部 署 の 可 能 性 を 組 み 合 わ せ れ ば 、具 現 化 で き
るかなりの量が発見できるはずである。事業化要素として検討すれば探しやすいかもしれ
ない。知財発掘のための専門チームがあっても良いだろう。
――変革人材などはない。変革する組織は存在する。チームが、組織人が3つの目的を果
たし、7つの資源に取り組めば、変革する組織が姿を表す。
人材分析からの組織分析は、組織の3つの目的の達成レベル、7つの資源のレベルと構
成を導きだし、次へのステップの手がかりを見いだす。
参考文献
P.F.ド ラ ッ カ ー 著 『 創 造 す る 経 営 者 1994 年 』『 断 絶 の 時 代 1969 年 』
『 新 し い 現 実 1989 年 』『 ネ ク ス ト ・ ソ サ エ テ ィ 2002 年 』
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