1 地域医療構想の策定は慎重に 高 木 顯 地域医療構想は医療法では、 構想区域における、 全体の実情からも高度急性期は新潟医療圏・長岡 病床の機能区分ごとの将来の医療需要を参考にし 医療圏に限定せざるを得ない。東京都の医療構想 ながら、各医療機関の自主的な取り組みや医療機 策定の資料では人工心肺を廻した心臓手術、消化 関相互の協議を通じ、適切な医療提供体制の構築 器の重大手術の施行と高度急性期病床数には正の を目指すものである。 2025年の医療需要を推測し、 相関があり、県央地区ではそのような手術は行え 地域に必要とされる病床機能の充実に向け、医療 ないのが実情である。鹿児島県では地域医療構想 機関による自主的な転換・収れんを目指す。平成 策定の検討の中で高度急性期病床は鹿児島市に限 27年3月には厚生労働省は「地域医療構想」策定 定することを決断している。 ガイドラインを発出している。 地域医療構想策定指針には、広く専門家の意見 この稿では、特に県央基幹病院基本構想の中の を聞き、その地域の実情にあった構想策定を求め 高度急性期病床(救命救急センター)について考 ていて、地域医療構想策定部会がその責務を担う えてみたい。平成25年6月から県央地域の基幹病 とされている。したがって、県央基幹病院基本構 院構想について基本構想策定委員会が開催され、 想策定委員会にその資格はない。このような状況 平成28年5月にはその計画が報道機関に公開され にあって、何の異論も出ないまま高度急性期病床 た。その基本計画の中で、高度急性期病床を20床 の設置が決定されれば、今後に重大な禍根を残す としている。また7月22日には県から整備基本計 ことになる。もうひとつ、私が危惧するのは、医 画として医師数75 ~ 90名、看護職員410 ~ 430名 療介護総合確保基金の按分は、都道府県の地域医 とするなどの概要が示された。この間地域医療構 療構想の作成過程の進行を見ながらこれを決定す 想を各都道府県で策定するようにと、国の指針が るとされていることから、国の指針を無視した県 示され状況は根本から変化した。 のやり方にペナルティが課され、基金が減額され 県医師会では、平成26年度には国際医療福祉大 はしないかと言う事である。高度急性期病床はほ 学教授高橋泰先生、平成27年度には産業医科大学 かの3種病床より低く、稼働率を75%として算定 教授松田晋哉先生を講師に迎え医療政策講演会を するように国の策定指針で示されている。次々に 開催し、新潟県内の実情分析を専門家の視点から 重症の患者さんが搬送されてきたかと思うと、2、 解説いただいた。 高橋先生の県央地区の分析では、 3日後には回復し、急性期病床などに移ってしま 2010年人口24万人から2025年には21万人と12%減 い閑散とすることも多い。運営の経費がかさみ、 少し、医療機関も全身麻酔の手術が少なく、新潟 医師・看護職の数も多数必要となる。高額な建設 医療圏への依存度が高くなるとされている。松田 費・運営費用はどこから捻出し、その後の経営を 先生の県央地区の分析では2次医療圏に設定しな 維持できるのか。また、医師・看護職の異動が県 い方がよく、高度急性期病床の推定があるとすれ 内の医療機関の疲弊につながってはならない。地 ば12床との見解を示された。 域医療構想の策定は慎重に。 地域の住民、医師会員にとって高度急性期病床 (県医理事) が地域内の病院にあるに越したことはないが、県 新潟県医師会報 H28.8 № 797
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