日時 場所 座長 演者

The Central Japan Association of Orthopaedic Surgery & Traumatology
第 127 回中部日本整形外科災害外科学会・学術集会
2016 年 9 月30 日(金)∼ 10 月1日(土)
ALPSセミナー 12
日時
座長
場所
演者
本セミナーでは、下記のいずれか 1 単位を取得できます。
■専門医資格継続単位(N)1 単位 必須分野 [7] 脊椎・脊髄疾患
■教育研修会脊椎脊髄病単位(SS)
本セミナーは整理券制ではございません
共催:第127回中部日本整形外科災害外科学会・学術集会/
Abstract
札幌医科大学 整形外科
山下 敏彦
厚生労働科学研究によると、全国で推定 2,800 万
急性の非特異的腰痛は、多くの場合、発症後 1 ヵ月
人が腰痛を有している。一方、腰痛症例の 85%で
で急速に改善する。一方、腰痛患者の約 60%が再
は、種々の検査によってもその原因を特定すること
発を経験し、12 ヵ月後にも腰痛を有している。治療
ができないとされる。このような「痛みは腰部に起
に際しては、まず患者に重大な異常がないことを説
因するが、下肢に神経障害がなく、重篤な基礎疾患
明し安心させることが肝要である。安静保持は必ず
も有しない 病 態」は 非 特 異 的 腰 痛(nonspecific
しも有効とは言えない。非ステロイド性抗炎症薬
low back pain)と呼ばれる。非特異的腰痛は、原
(NSAIDs)
、アセトアミノフェンなどの薬物療法を併
因不明の腰痛などと呼ばれ、イコール難治性疼痛と
用し、可及的早期に活動性を高めていく。
誤解されがちである。しかし、その大部分は、筋肉、
筋膜、椎間関節などに由来する腰痛で、むしろ心配
一方、慢性腰痛としての非特異的腰痛には、心理・
のない腰痛であると言える。今後は、
「非特異的」
社会的要因の関与を伴う場合がある。薬物療法とし
とされる腰痛の病態、疼痛発生源を詳細に分析し、
ては、NSAIDs のほか、抗不安薬、抗うつ薬、オピ
より明快な診断法や分類を確立する必要がある。
オイドなどが用いられる。慢性腰痛に対する運動療
法の有効性には高いエビデンスがある。体幹の安
『腰痛診療ガイドライン』によれば、まず腰痛を、
「重
定性獲得のための筋力強化訓練と、脊柱・下肢の
篤な疾患による腰痛」「神経症状を伴う腰痛」
「非
可動性改善・維持のための脊柱・下肢のストレッチ
特異的腰痛」にトリアージする。重篤な疾患を疑う
ングが主体となる。難治症例には認知行動療法が
red flag signとしては、安静時痛、体重減少、発熱
考慮される。慢性腰痛患者における典型的な認知
などがある。危険信号や神経症状を有する症例に
の歪みは、
「痛みのために何もできない」であり、こ
対しては MRI が推奨される。
れを「痛いけれどやるべきことはやれるし、生活も
楽しめる」という状態に変容させる。認知行動療法
を有効に行うには、複数の診療科・職種が連携した
集学的診療体制が必要である。