The Central Japan Association of Orthopaedic Surgery and Traumatology 第 126 回中部日本整形外科災害外科学会・学術集会 2016 年 4 月 8日(金)∼ 9日(土) 家康セミナー 17 変形性関節症の 痛に対する 薬物療法の現状と未来 2016 年 4月9日 (土) 12 :10 ∼ 13 :10 E 会場 (4F 43 会議室) アクトシティ浜松 静岡県浜松市中区板屋町 111-1 座 長 演 者 日本整形外科学会教育研修単位 1 単位 (1 単位:1,000 円) 松田 秀一 先生 京都大学大学院医学研究科 感覚運動系外科学講座整形外科学 教授 園畑 素樹 先生 佐賀大学医学部 整形外科学教室 准教授 ●認定単位:専門医資格継続単位(N)1 単位 ●必須分野:[11] 骨盤・股関節疾患、[12] 膝・足関節・足疾患 共催:第 126 回中部日本整形外科災害外科学会・学術集会 / あゆみ製薬株式会社 Abstract 変形性関節症の 痛に対する 薬物療法の現状と未来 園畑 素樹 佐賀大学医学部 整形外科学教室 准教授 はじめに 2010 年以降、非がん性 痛に対する新規薬剤、適応拡大、剤型変更などを合わせると、10 種以 上の薬剤が新たに使用可能となっている。しかし、使用可能な薬剤が増えるに伴い、どの患者にど の薬剤をどの順番で処方すればよいのか、判断に迷う場面も増え、これまでの非ステロイド性抗炎 症薬 (NSAIDs: Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs) 中心の 痛コントロールの時代か ら、新たな 痛コントロールのストラテジーの構築が必要となる時代へ変化した。本セミナーでは、 疾患修飾型変形性関節症治療薬(DMORDs: disease modifying osteoarthritis drugs)の可 能性、現在処方可能な薬剤の使用基準、今後使用が可能となる可能性がある治験進行中の薬剤に ついて概説する。 DMORDs 生物製剤を中心とする疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs: disease modifying anti-rheumatic drugs)と同様に、変形性関節症(OA: osteoarthritis)に対するDMORDs の開発が期待され ている。現在臨床上効果が報告されている薬剤にはカルシトニン、ゾレドロン酸水和物、ラネル酸 ストロンチウム、誘導型一酸化窒素合成酵素阻害剤などが報告されている。しかし、膝 OA 患者だ けでも2400 万人という報告もあり、さらには膝 OA の進行を抑えるためには長期間の投与が必要 である。そのため、高い安全性、費用対効果など、様々な問題がある。 現在使用が可能な薬剤 NSAIDs は多くのガイドライン(GL: guideline)で高く評価されているが、高齢者 痛管理の GL では投与は慎重にするべきとしている。アセトアミノフェンは、高齢者に対するGLも含め、ほとん どの GL で安全性が高く評価され、第一選択薬として推奨されている。オピオイド製剤を第一選択 としているGLはないが、上記薬剤での 痛コントロールが得られない場合は、高齢者であっても使 用が推奨されている。外用 NSAIDs は、膝 OAに対しての推奨度は高いが、股 OAに対する推奨 はほとんどない。外用 NSAIDsは、局在化した侵害受容性 痛に対して内服 NSAIDs の代用とな ることを記載しているGLも多い。 治験中の薬剤 デュロキセチンは、変形性膝関節症への適応拡大の治験が実施されており、Phase IIIまで進んでいる。 抗 NGF 抗体であるタネズマブは変形性関節症による中等度から重度の 痛の適応、強オピオイド であるオキシコドンは、非オピオイド鎮痛剤及び弱オピオイド鎮痛剤で治療困難な中等度から高度 の慢性 痛における鎮痛の適応に対する治験がそれぞれ Phase IIIまで進んでいる。それぞれ、 近い将来使用可能となる可能性がある。 今後も変形性関節症の 痛管理の薬剤は変化する可能性が高く、各薬剤の特徴を十分に理解する ことが大切である。
© Copyright 2024 ExpyDoc