東書文庫所蔵品 小平邦彦先生が手がけた数学教科書 小平邦彦先生(1915年~1997年)は,日本 究する学問であるのと同様な意味で,数学は数 の数学者で, 「数学のノーベル賞」とも称される 学的現象を研究する学問であると考えざるを得 「フィールズ賞」を,日本人として初めて受賞さ ません。 数学は論理的であると同時に高度に感覚的な れました。 数学教育にも熱意を傾けられた小平先生は, 学問です。数学を理解するにはその論証を追っ 1970年~1990年頃に,東京書籍の算数・数学 て行くだけでは不十分で,その数学的現象をい 教科書の執筆,監修を務められました。その間, わば感覚的に把握しなければなりません。」 昭和59年度の中学校教科書の改訂にあたって, のこ 小平先生が教科書に込めた思いは,数学者と して「数学的に筋の通ったものとすること」は 次のような言葉を遺しておられます。 「数学は学問のいろいろな分野に広く応用さ もちろんのこと,とりわけ「数学的な感覚を大 れて実に不思議なほど役に立ちます。その様子 切にし,わかりやすく親しみやすいものとする を見ると,数学は知性の自由な創造物であると こと」でした。その思いは,教科書編集の根幹 いっても,それは人間の知性が勝手につくり出 になる精神として,現在の教科書にも引き継が したものではなく,数学的現象というようなも れています。 のが実在して,たとえば物理学が自然現象を研 (東京書籍数学編集部) 小平先生が監修された中学校数学教科書 ▲小平邦彦先生 46 教室の窓 ▲数学教育現代化の時代(昭和53年度本) ▲基礎・基本の時代(昭和59年度本)
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