英国:EU 離脱と石炭火力発電所閉鎖計画

英国:EU 離脱と石炭火力発電所閉鎖計画
2016 年 9 月 1 日掲載
8 月 23 日付けの地元報道によると、英国の EU 離脱決定にて、全石炭火力発電所の閉鎖と古い原子力
発電所を閉鎖する 15 年計画が妨げられる。英国は、15 年計画にて 23GW の発電能力を削減するが、今ま
で以上に天然ガスや電力の輸入に頼らざるを得なくなる。
国際法律事務所 Hogan Lovells 社の電力市場と電力設備の専門家によると、石炭火力発電所は、計画よ
り長い間、英国のエネルギー供給の重要部分で有り続けるだろうとした。同専門家は、英国の EU 離脱計
画では、クリーンエネルギー利用に挑戦するとなっているが、今度は、英国は、2025 年期限と自らに課し
た石炭火力発電所を維持しなければならないとした。石炭の維持にて、英国は 2008 年気候変動決議(温室
効果ガスを 2050 年までに 1990 年レベルの 80%まで削減)の義務を果たせなくなる。
前エネルギー大臣は、2025 年までに、石炭火力発電所に二酸化炭素回収・貯留(carbon capture and
storage : CCS)技術の導入が可能であれば、石炭火力発電所の閉鎖は必要ないとした。このため、ここ数カ
月、補助金を受け、低炭素技術への投資が急激に増加している。しかし、この投資は、英国の全体発電能
力には 1 MW も貢献せず、逆に、実際は縮小となるとした意見もある。
英国の主要な送電会社 National Grid 社は、今冬には国内供給予備電力は 0.1%となり、5 年前の 17%か
ら激減すると警告した。停電の危険性は、主として、送電網が幾つかの古い石炭火力発電所(一時的な供給
契約)とは接続していないからである。この石炭火力発電所も計算に入れると、供給予備電力は 5%を期待
できる。
2015 年、英国は最後の坑内掘り炭鉱を閉鎖した。一時は、100 万人以上の労働者を雇用していたが、300
年間の石炭産業の歴史に幕を下ろした。だが、石炭は未だ英国のエネルギー源の約 25%を占めている。
(石炭開発部 辻
誠)
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