微生物検査サーベイ実施の手引き

微生物検査サーベイ実施の手引き
Ⅰ.概要と試料の取り扱い
微生物検査サーベイは,フォト(設問1,設問2,設問3),同定検査(試料31,
試料32,試料33),薬剤感受性検査(試料31,試料32,試料33)があります.
検査を始める前に本手引をよくお読みのうえ,以下に示す実施項目,内容,注意点等を
確認してください.
注 意:コンピュータ処理の関係上,回答欄以外のフリーコメント欄などに記載された内容
は一切評価に反映されません.
「必須入力」の項目が未回答の場合,評価対象外となりますので,入力漏れがない
か必ず確認してください.
1.実施項目
微生物検査サーベイの実施項目(○印)は,以下の表に示したとおりです.なお,付
加試験や付加コメント等のコメントの回答については,評価の対象としません.また,フ
ォトサーベイにおける評価対象は推定微生物名のみです.
フォト
設問1
設問2
設問3
同定検査
薬剤感受性検査
○ 評価対象
(推定微生物名のみ)
試料31
○
評価対象
○
評価対象
試料32
○
評価対象
○
評価対象
試料33
○
評価対象
○
評価対象
2.送付内容および全体的注意事項
2-1.送付内容
微生物検査サーベイ用試料等の送付内容は,以下の表に示したとおりです.
試料は感染の危険性のあるものとして取り扱って下さい.
内容
送付形態
試料31
菌株試料
斜面培地(1本)
試料32
菌株試料
斜面培地(1本)
試料33
菌株試料
斜面培地(1本)
※貴施設の施設番号は問い合わせや連絡時に必要となりますので,必ず控えておいてくだ
さい.
2-2.全体的注意事項
結果の記入あるいは入力の不備等から,一部については集計から除外せざるを得な
いものがみられています.結果の入力後は必ず印刷して内容を再度確認し,これを
保存しておいてください.
3.参加項目設定とコード選択時の注意事項
参加項目設定で参加にチェックして下さい.チェックがない項目は回答できません.
測定方法・検量方法・測定試薬・測定機器の該当コード表は,回答入力画面のPDF
ファイルを参照してください.また,該当コードがない場合は“その他”を選択し
てください.
試料の測定値が記入されていても,解析に必要な設問に空欄があると評価が行えま
せん.最後に必ず【未入力チェック】を実施してください.
4.微生物検査測定機器について
測定機器は,機器一括設定「測定装置マスタ一覧.PDF」を参照してください.なお,用
手法はAAZ901を選択してください.
MIC を検査のご施設で,機器を使用せず目視判定している場合は,
「用手法(コード:AAZ901)」を選択してください.
Ⅱ.サーベイ実施内容および注意事項
1.フォト(設問1,設問2,設問3)
設問1(写真C-1-1, C-1-2,C-1-3)
評価対象(推定微生物名)
【患者背景】54 歳,男性.CPA 蘇生後,ICU にて全身管理中であった.急性腎不全のた
め透析導入され,ブラッドアクセスカテーテルが留置されていた.39℃の発熱を認めたた
め血液培養が施行された.同日の白血球数 11,400/μl,CRP14.0mg/dl であった.
【微生物検査】血液培養 2 セットで 20 時間後に培養陽性化を認めた.血液培養ボトルか
ら採取した培養液のグラム染色像(1,000 倍)を(写真C-1-1)に示した.35℃,48 時
間培養後にサブロー寒天培地に発育したコロニーを示した(写真C-1-2).発育した菌
は発芽管テスト陽性であり,コーンミール・ツイーン 80 寒天で 25℃,48 時間培養後に菌
糸の先端に厚膜分生子が観察された(写真C-1-3).
微生物を推定し,微生物菌名マスター一覧から該当のコードを選択してください.
設問2(写真C-2-1, C-2-2)
評価対象(推定微生物名)
【患者背景】82 歳,女性.慢性呼吸不全にて通院加療中.咳と喀痰が増加したため受診し,
Miller & Jones の分類の P3 に評価される濃性痰が採取された.
【微生物検査】グラム染色像(1,000 倍)において,起炎菌を黄色矢印で示した(写真C2-1).また,35℃,48 時間好気培養後にヒツジ血液寒天培地に発育した分離菌の集落
を示した(写真C-2-2).分離菌は,オキシダーゼ陽性,OF 培地においてブドウ糖を
酸化的に分解した.41℃での発育は認められ,4℃では認められなかった.ゼラチン液化
試験,アシルアミダーゼ試験,アルギニン加水分解試験は陽性であった.
微生物を推定し,微生物菌名マスター一覧から該当のコードを選択してください.
設問3(写真C-3-1, C-3-2,C-3-3)
評価対象(推定微生物名)
【患者背景】50 代,男性.海水浴後に中耳炎となり受診.耳漏が出ていたため,培養検査
を実施した.
【微生物学的検査】グラム染色像(1,000 倍)において,起炎菌を示した(写真C-3-1).
また,35℃,24 時間好気培養後にヒツジ血液寒天培地に発育した分離菌のコロニーを示し
た(写真C-3-2).TSI 寒天培地において,35℃,24 時間好気培養後の性状は,-/-,
H2S(+)であった(写真C-3-3).オキシダーゼ(+),カタラーゼ(+)
,DNase(+)
であった.
微生物を推定し,微生物菌名マスター一覧から該当のコードを選択してください.
2.同定検査および薬剤感受性検査(試料31,試料32,試料33)
2-1.試料31,試料32,試料33の由来(患者情報および検査データ)と
問題を以下に示します.
試料31
評価対象
検査材料:血液培養
症例:40 代,女性.胆管炎で入院加療中.悪寒,発熱,関節痛が出現したため,
血液培養 2 セットを採取した.18 時間培養後の血液培養 2 セットから本菌が分離
された.
薬剤感受性検査の薬剤は, CAZ ,CMZ,MEPM,LVFX です.
4薬剤のうち貴施設で実施している薬剤について報告して下さい.
貴施設の方法によって菌を分離し,同定検査および薬剤感受性検査を行ってくだ
さい.
試料32
評価対象
検査材料:喀痰
症例:70 歳,女性.脳卒中の治療後,リハビリテーション科で入院加療中.喀痰
培養から本菌が分離された.
薬剤感受性検査の薬剤は, CAZ ,CMZ,MEPM,LVFX です.
4薬剤のうち貴施設で実施している薬剤について報告して下さい.
貴施設の方法によって菌を分離し,同定検査および薬剤感受性検査を行ってくだ
さい.
また,評価対象外ですが,付加コメントとして薬剤耐性および病院感染対策につ
いて回答して下さい.
試料33
評価対象
検査材料:標準菌株.一夜培養後の新鮮菌体を使用して下さい.
薬剤感受性検査の薬剤は, PIPC,CAZ ,MEPM,CPFX です.
4薬剤のうち貴施設で実施している薬剤について報告して下さい.
なお,試料33のみカテゴリー判定(S・I・R)の記載項目はありません。
貴施設の方法によって菌を分離し,同定検査および薬剤感受性検査を行ってくだ
さい.
※薬剤感受性の判定は,CLSI(Clinical and Laboratory Standards Institute)M100-S22
の基準を用いて下さい.
※なお,細菌の発育が認められない場合には,川崎医科大学附属病院 石松 昌己まで
ご連絡ください.
[℡(086)462-1111 内線23121]
2-2.同定検査(試料31,試料32,試料33)における注意事項
前項(2-1)に示した患者情報と検査データを参考に検査を実施し,入力画面上の選択肢
からそれぞれ該当するコードを選択してください. 選択肢は《マスタ一覧》PDF ファイル
で表示できます.
該当の試料
内容
備考
コード表の菌名と完全に一致しなくて
も,日常的に推定あるいは可能性が高い
と報告している菌名がある場合には,同
定不能あるいは菌属レベルにとどめず,
同定または推定菌名
該当する菌名を選択.
※菌が発育しなかった場合はコード
9996,非常にまれなバイオタイプあるい
は該当する菌名コードがないなど,同定
不能の場合にはコード9997 を選択.
同定成績に関するコメント 試料ごと1 種のみ選択可能.
従来法による検査と結果
試料31
試料32
試料33
付加試験と結果
付加コメント
測定機器
試薬および培地
同定サーベイの実施状況
日常的に実施しているものがあれば検
査し,同定キットから得られた性状を回
答しない.
最大3 項目まで選択可能.
試薬マスタに該当するものがない場合
か,検査が必要と判断された場合に限り
実施.
最大3 項目まで選択可能.
コメントが必要と判断された場合に限
り使用.
微生物検査装置から1 種を選択.
機器を使用しない場合は,用手法(コー
ドAAZ901)を入力.
1 種のみ選択可能(複数のものを使用し
た場合には,同定
の最終決定に使用したものを選択).
機器やキット以外の試験管確認培地等
の方法を使用した場合は,従来法による
同定(コード5991)を入力.
試料ごとに1 つを選択.
外部委託検査を選択した場合は,回答し
ない.
注)従来法1,従来法2,付加試験とその結果,付加コメント,は便宜的に収載したもので,
日常的に実施している場合や結果から判断して必要と考えられる場合に選択的に実施また
は回答してください.
2-3.薬剤感受性検査(試料31,試料32,試料33)における注意事項
【検査指定抗菌薬】
試料31の検査抗菌薬を再度以下に示します.
検査抗菌薬
1:CAZ(セフタジジム)
2:CMZ(セフメタゾール)
3:MEPM(メロペネム)
4:LVFX(レボフロキサシン)
試料32の検査抗菌薬を再度以下に示します.
検査抗菌薬
1:CAZ(セフタジジム)
2:CMZ(セフメタゾール)
3:MEPM(メロペネム)
4:LVFX(レボフロキサシン)
試料33の検査抗菌薬を再度以下に示します.
検査抗菌薬
1:PIPC(ピペラシリン)
2:CAZ(セフタジジム)
3:MEPM(メロペネム)
4:CPFX(シプロフロキサシン)
※薬剤感受性の判定は,Clinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)M100-S22
の基準を用いてください.
※上記検査薬が常備されておらず回答できない場合は集計対象から除外され,評価には影
響しません.
※複数回測定でデータが乖離した場合(S→R,R→S 等),耐性側の結果を回答として採用
してください.
入力画面上の選択肢からそれぞれ該当するコードを選択してください.
選択肢は《マスタ一覧》PDF ファイルで表示できます.
該当の試料
内容
阻止円径
1 つ選択.
※CLSI M100-S22 の基準を使用.
測定値を入力.
MIC 符号
1つ選択.
MIC 値
測定値を入力.
最大3 項目まで選択可能.
試薬マスタに該当するものがない場合
か,検査が必要と判断された場合に限り
実施.
付加試験をここでは選択しない.
最大3 項目まで選択可能.
コメントが必要と判断された場合に限
り使用.
微生物検査装置から1 種を選択.
目視判定による希釈法またはディスク
拡散法の場合は,用手法(コードAAZ901)
を入力.
抗菌薬1 剤ごとに選択.
ディスク拡散法の培地は生培地と自家
製培地ではコードが異なるので注意.
方法と結果が矛盾しないよう注意.
(希釈法・E テスト→MIC 値,ディスク
拡散法→阻止円直径)
指定薬が常備されていない場合は「実施
せず」を入力
試料ごとに1 つを選択.
外部委託検査を選択した場合は,回答し
ない.
判定
付加試験と結果
付加コメント
試料31
試料32
試料33
備考
測定機器
試薬および培地
感受性サーベイの実施方法
感受性サーベイの実施状況
注)付加試験と結果,付加コメントは便宜的に収載したもので,日常的に実施している場
合や結果から判断して必要と考えられる場合に選択的に実施または回答してください.
【測定機器,方法,試薬(パネル・培地など)の選択】
測定機器,方法および試薬(パネル・培地など)は,入力画面上の選択肢からそれぞれ該
当するコードを選択してください.
選択肢は《マスタ一覧》PDF ファイル等で表示できます.
特に注意を要するのは,以下の点です.
①抗菌薬1 剤ごとに測定機器および試薬の入力または記入が必要となっています.
3 剤それぞれの検査に用いた機器および試薬等の該当のコードを選択してください.
②入力した方法(測定機器)に当てはまらない結果が入力されていた場合
…評価の対象から除外されます.
例)方法:微量液体希釈法,結果:MIC 値 123μg/mL
…評価対象から除外され,集計されません
③必須入力項目(判定,阻止円径,MIC 符号,MIC 値,実施方法等)に未入力(空欄)が
あった場合
…評価の対象から除外されます.
【希釈法による成績の記載】
希釈法の成績の記載については以下の点にご注意ください.
①MIC 値のケタ数:整数部分は3 ケタ,小数点以下は2 ケタとなります.
例: 0.032μg/ mL → 0.03μg/mL
0.063μg/ mL → 0.06μg/mL
0.125μg/ mL → 0.12μg/mL
②MIC 値符号:MIC 値の表記に使用する不等号は,以下に示すコードで入力してください.
なお,等号(=)は,日常検査では通常使用しませんが,入力ミス等の
チェックのため入力してください.
=
≧
≦
>
→
→
→
→
0
1
2
3
例:16μg/mL→ =16μg/mL
③不等号の向き:不等号を左側,MIC 値を右側に配した場合で回答してください.
測定濃度以下の場合はすべて“≦(コード2)”としてください.
例:4μg/mL 以下 → ≦4μg/mL
測定濃度以上の場合は,バイテックご使用の施設では機器から出力される
“≧(コード1)”をそのまま使用してください.
それ以外の方法では,測定の最高濃度に“>(コード3)”を付してください.
例:最高濃度32μg/mL で菌発育 → >32μg/mL
④合剤の成績:合剤2 剤分の結果は入力できません.主剤のMIC 値のみとしてください.
例:ABPC/SBT のMIC が4/2μg/mL → ABPC のMIC 値“4”のみ入力
【ディスク拡散法による成績の記載】
ディスク拡散法の成績の入力については,以下の点にご注意ください.
阻止円が認められない場合は,すべて0mm としてください.
阻止円なし→ 0mm
【判定(解釈)の記載】
感受性の判定(解釈)は,以下のとおりコードで入力してください.
CLSI/NCCLS 標準法およびE テスト
S → 0
I → 2
R → 3
Ⅲ.問い合わせ先
微生物検査サーベイに関する不明な点や疑問点等についての問い合わせは,
川崎医科大学附属病院 石松 昌己までご連絡ください.
[℡(086)462-1111
内線23121]