シークエンステンプレートへの コンタミネーションの影響

遺伝子解析システム
Application Information No.9
CEQ / GeXP
シークエンステンプレートへの
コンタミネーションの影響
テンプレートやプライマーの純度が低い場合、正確なシークエンスを読むことができません。複数のプライマー、プ
ラスミド DNA や PCR 産物が混入する場合、シークエンスが長く読めない、波形がシャープに現れないといった 症
状が見られます。特に PCR 産物が複数混在する場合、PCR 反応時に末端に取り込まれている non-templated A
のピークが複数現れます。
正常なシークエンス反応時の Raw data では、同一箇所のピークで赤と黒、青と緑の蛍光が互いに漏れこんでいる
ことが観察されますが、複数のテンプレートやプライマーが混在する Raw data では赤/黒、青/緑の組み合わせ
以外の蛍光色が同一箇所のピークで観察されます。
今回、プライマーを強制的にシークエンス反応に添加することによってコンタミネーションの状態を再現し、その
結果どのような影響が現れるかを検討しました。
Materials & Methods
① 1本のバンドが確認された PCR 産物(細菌 16S rRNA)のシークエンス反応を、センスプライマーを用いて
シークエンス反応を行いました。なおシークエンス反応時にアンチセンスプライマーを加えて、PCR 産物の
プライマーコンタミネーションの影響を再現してみました。
Component
Volume
Extra primer として
DTCS Master mix
8μL
Primer (1.6μM)(sense)
2μL
① 0μM
⑥ 0.1μM
Template
3μL
② 1.6μM
⑦ 0.05μM
DNase / RNase free water
5μL
③ 0.8μM
⑧ 0.025μM
Extra primer (antisense)
2μL
④ 0.4μM
⑨ 0.0125μM
⑤ 0.2μM
② シークエンス反応および反応後の精製、泳動は CEQ8000 ケミストリープロトコルに準拠
Results and Disscussion
① Extra primer
非存在下
„ 個々のピークがシャープで分離
している
„ ベースラインが平坦
„ 同一ピークで赤・黒、青・緑以外
の組み合わせがない
„ ベースラインが平坦
② Extra primer
1.6μM 存在下
„ ピークにシャープさがない
„ ピークの分離が悪い
„ 複数のピークが同じ場所に
現れる
„ 赤・黒、青・緑以外の組み合わ
せが同一ピークに現れる
„ ピークが等間隔に現れない
③ Extra primer
0.8μM 存在下
„ ピークのシャープさが低く、1 つ
のピークの分離が悪い
„ 一見データが得られているよう
だが正確ではない
„ ピークが重複している
„ 赤・黒、青・緑の組み合わせ
以外のピークが見られる
„ ベースラインが汚い
④ Extra primer
0.4μM 存在下
„ ピークのシャープさが低く、1 つ
のピークの分離が悪い
„ 一見データが得られているよう
だが正確ではない
„ ピークが重複している
„ 赤・黒、青・緑の組み合わせ
以外のピークが見られる
„ ベースラインが汚い
⑤ Extra primer
0.2μM 存在下
„ 比較的良好なベースコールが
得られるが、N の確率が高い
„ 1 箇所に複数のピークが見られ
る
„ 赤・黒、青・緑の組み合わせ以
外のピークが見られる
„ ベースラインが汚い
⑥ Extra primer
0.1μM 存在下
„ 良好なベースコールが得られる
„ ベースラインにわずかな乱れが
見られる
„ ベースラインの乱れは見られる
が比較的ピークは良好に分離
している
⑦ Extra primer
0.1μM 存在下
„ 正確なベースコールが得られる
„ 若干のベースラインの乱れが
見られる
⑧ Extra primer
0.1μM 存在下
„ Extra Primer 非存在下のデー
タと遜色がない
„ 若干のベースラインの乱れは
見られるが、ベースコールに
影響は与えない
⑨ Extra primer
0.1μM 存在下
„ Extra Primer 非存在下のデー
タと遜色がない
Conclusion
シークエンス反応を行ううえで最も重要なことは、きれいなテンプレートを作成することです。プラスミド DNA の場合
はシングルコロニーを選び、PCR 産物の場合 1 本バンドが得られるような PCR 条件を設定することが重要です。
(実例) テンプレートがコンタミネーションを起こしているデータ
„ Non Template A:PCR 産物の特
徴。ここでひとつの PCR 産物の伸
展が終了。
„ 同じプライマーで増幅される
非特異的な PCR 産物
このデータでは、1 つのプライマーから 2 つのシークエンス反応が進んでいます。同時に 2 種類のテンプレートの蛍
光を検出することから 1 箇所のピークに赤・黒、青・緑の組み合わせ以外のピークが同時に検出されています。
この場合、シグナルが出ているのに、シーケンス結果が期待している配列とは異なるといった状況が発生します。
このような結果には、シークエンス反応では対処できません。テンプレートを作成するとき、PCR 産物が 1 つだけ
増幅される PCR 条件を検討する必要があります。
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