平成 28 年8月 26 日 東京都病院経営本部 駒 込 病 院 乳がん患者の

平成 28 年8月 26 日
東京都病院経営本部
駒
込
病
院
乳がん患者の予後予測に有効な血中循環腫瘍細胞検出システムの開発について
当院の澤田 武志 腫瘍内科医師、小泉 史明 臨床検査科医長のグループは、コニカミ
ノルタ株式会社、国立研究開発法人産業技術総合研究所との共同研究により、血中循環
腫瘍細胞(以下「CTC」という。※1)を高感度に検出する新たなシステム「Fluidic Cell
Microarray Chip System(以下「FCMC System」という。)」を開発しました。また、
このシステムを用いて検出した CTC の数が、乳がん患者の予後を予測する指標として
有効であることを明らかにしました。
この研究成果が、平成 28 年7月 27 日付けの「EBioMedicine」
(※2)オンライン版
に掲載されましたので、お知らせします。
1 経緯
CTC は、がんが転移する際に大きな影響を及ぼす細胞であり、CTC の研究が進む
ことで、がん転移メカニズムの解明に大きく寄与することが期待されている。
当院の澤田武志腫瘍内科医師、小泉史明臨床検査科医長のグループは、本邦におけ
る CTC 検出システム開発の中心となっており、これまでにも他の研究機関との共同
研究により複数の CTC 検出システムを開発するなど、様々な知見を国内外に発信し
ている。
2 結果
今回、当グループは、当院と国立がん研究センター中央病院の進行乳がん患者の末
梢血 2mL から、当グループが開発した FCMC System により、患者の予後情報に関わ
る CTC を検出した。
この CTC の検出数について、当グループが、現在 CTC 検出システムの国際標準と
されている「CellSearch システム」
(※3)と比較したところ、
「CellSearch システ
ム」が0~88 個(中央値0)であったのに対し、FCMC System は0~12,400 個(中
央値 9.4)と、極めて高感度に CTC を検出できることが明らかになった。
また、生存時間解析(※4)の結果、このシステムにより検出された CTC の数が、
乳がん患者の予後を予測する指標として有効であり、病気が進行する可能性が高い患
者を明らかにできることが分かった。
3 意義
FCMC System を用いることで、高感度に CTC を検出し、より正確な病期(ステ
ージ)の診断、治療選択に寄与することが期待される。また、今後様々な CTC 研究
が促進され、がん転移メカニズムの解明に貢献できる可能性がある。
4 今後の予定
乳がんに加え、肺がん、消化器がん、口腔がんといった他がん種にも対象を広げた
臨床試験を計画しており、検討症例数をさらに増やし、FCMC System の有用性を検
証していく。また、進行がんだけでなく、早期がん患者の症例検討も行うことで、血
液検査によるがんの早期診断、再発・転移の早期診断の可能性についても、解析して
いく。
5 その他
本研究は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研
究開発プロジェクトである「がん超早期診断・治療機器の総合研究開発」の共同研究
として実施された。
【用語注釈】
※1 「CTC」は、がん組織から血中に流れ出たがん細胞で、がん転移に密接に関わる
重要な細胞である。 血液中の CTC 数を測ることにより、従来のステージ分類など
では把握しきれなかった患者の予後を正確に把握できる可能性がある。
※2 「EBioMedicine」は Cell 誌 と Lancet 誌が編集プロセスをサポートし、基礎
研究と医療を橋渡しするトランスレーショナル研究の成果を掲載するオンライン
ジャーナルである。
※3 「CellSearch システム」は、現在、進行乳がん、進行前立腺がん、進行大腸が
んにおいて米国 FDA の承認を受けている、唯一の診断システムである。
※4 「生存時間解析」は、ある時点から注目する事象が起きるまでの時間を解析する
手法である。今回、CTC 検出数と、治療後がんが進行するまでの時間(無増悪生
存時間)との関係を解析した。
問合せ先
駒込病院事務局庶務課 電話:03-3823-2101(代表)