建築のプロセスを考える その3

建築計画Ⅰ 第10回
建築のプロセスを考える その3
ーフィールド・ワークー
次の中で一番好きな食べ物はどれか(グループ分け)?
❸
❶
カレー
❷
寿司
❹
ラーメン
❺
パスタ
ピザ
❼
❽
❾
うに・いくら丼
ケーキ
フルーツ
ステーキ
❻
フィールドワーク(英: field work)とは?
調査対象について学術研究をする際に、そのテーマに即した場所
(現地)を実際に訪れ、その対象を直接観察し関係者には聞き取り
調査やアンケート調査を行い、そして現地での史料・資料の採取を
行うなど、学術的に客観的な成果を挙げるための調査技法である。
フィールドワークの意義・目的は何か?
フィールドワークには下記の2つのタイプがあります。
1. 課題解決型フィールドワーク
→計画・設計に必要な情報を得るためのフィールドワーク。ここ
では調査目的を明確にする。 2. 課題発見型フィールドワーク
→計画・設計テーマやコンセプト発見のためのフィールドワー
ク。これにより目的外の発見もある。
フィールドワークはいつやるのか?
・企画・プログラミング段階のフィールドワーク
→例:敷地選定、施設種別・構成決定、規模計画のための調査 ・計画・設計段階のフィールドワーク
→例:敷地調査、施主・ユーザーニーズ、類似・既存施設調査
・竣工後のフィールドワーク
→例:施主・ユーザー満足度調査、施設の使われ方調査
「フィールドワークの実践∼建築デザインの変革をめざして∼」朝倉書店より引用
グループワークー1
集合住宅の課題を思い出して、グループごとに設計のた
めにどんなフィールドワークをするべきだったか?
下記、考えなさい!!
・調査項目
・調査目的
・調査手法
フィールドワークの道具にはどんなものがある?
・長さ(高さ・距離など)をはかる/測定する →例:定規、コンベックス、GPS、レーザー距離計、測量機器、コンパス。
・行動をはかる/記録する
→例:デジタルカメラ、ビデオカメラ、数取機、ボイスレコーダー。
・環境をはかる/測定する
→例:温度・湿度計、照度計、騒音計、空気質測定器・気体採取器。
コンベックス レーザー距離計 数取機 ボイスレコーダー
これらの道具の名前は?どう利用するのか?
照度計
実測調査
観察調査
ヒアリング調査
これらはどんな調査か?目的は?
測定調査
フィールドワークで何を対象に調査するのか?
人
利用者数、滞在場所、動線、ニーズ
環境
音、光、通風、エネルギー
物
搬出入動線、占有率、数や大きさ
建物
デザイン、構造・設備、材料、管理
地域
景観、土地用途、交通、ランドスケープ
グループワークー2
下記の3つに関連する(なるべくユニークな!!)フィー
ルドワークの事例を考え(グループごとに選択)、その
調査目的、調査内容、調査道具を考えなさい!!
・人に関するフィールドワーク
・建物に関するフィールドワーク
・地域や街に関するフィールドワーク
GPSを利用した調査の事例
「建築・都市計画のための調査・分析方法」日本建築学会編 井上書院より引用
「建築・都市計画のための調査・分析方法」日本建築学会編 井上書院より引用
「フィールドワークの実践∼建築デザインの変革をめざして∼」
朝倉書店より引用(左下)
「建築・都市計画のための調査・分析方法」
日本建築学会編 井上書院より引用(上・右下)
「フィールドワークの実践∼建築デザインの変革をめざして∼」朝倉書店より引用
「フィールドワークの実践∼建築デザインの変革をめざして∼」朝倉書店より引用
次のどんな調査をやってみたいと思うか?
1. 集落を実測して集落の図面を作成する
2. 街路の建物ファサードのデザインサーベイをする
3. 小学生にGPSをつけて学区の遊び場の調査を行う
4. 病院で看護師の追跡調査をして空間利用調査を行う
5. 開設年度の異なる美術館の展示空間の比較調査を行う
POE(Post-Occupancy Evaluation)とは?
「建物完成後に、実際に使われてから、システマティックに、そし
て厳格な方法で評価するプロセス」
→1960年代後期:アメリカにおいてケーススタディとして調査研究
(医療施設等)が実施され、建物に対するユーザーの不満、施設機
能不備を科学的に分析するためにスタートした。
→1970年∼1980年代:体系的・専門分野横断的な評価法として発展
した。建築家の興味が審美性に向けられ、機能や心理面への配慮不
足が背景としてある。
POE(Post-Occupancy Evaluation)の目的は何か?
・建物の要求性能との適合性を判断する。
・組織変化などに伴うニーズの変化との適合性を判断する。
・他の建物にも応用できるプログラミングを進化・改良させる。
・建物やその利用に対するユーザーの意識改善につながる。
・建物に導入した新しい概念の有効性を検証する。 ・イニシャルコストやランニングコストの正当性や無駄を確認する。
POEの空間評価手法にはどんなものがあるか?
1. 心理的空間評価手法
例:セマンティック・ディファレンシャル法(SD法) レパートリーグリッド発展手法
2. 認知的空間評価手法
例:イメージマップ法、サインマップ法、エレメント想起法、
パズルマップ法
3. 行動的空間評価手法
例:空間レイアウト調査、空間利用調査、行動観察調査、
アンケート・ヒアリング調査
4. シミュレーション
例:写真、ビデオ、模型、パース、CG
SD法:形容詞対を用い、相互関係を因子分
析等により、いくつかの尺度に集約。 →質問が容易、分析手法が確立している
が、個人差や形容詞対の選択、評価の階層
性(評価理由)まで明らかにできない。
「建築・都市計画のための調査・分析方法」日本建築学会編 井上書院より引用
レパートリーグリッド発
展手法:評価項目とその
構造を回答者自身の言葉
を用いて抽出し、評価項
目の上位・下位の項目を
ラダーリングによって誘
導・補完し、評価項目相
互の関連を明確化。 →評価の階層性が明らか
にできるが、評価を導き
出す効果的手段必要。
住宅居間の定性的評価構造モデル
図中、太線は5名以上、細線は2
名以上の被験者が、ラダーリング
において両者を関連させたことを
示す。各評価項目の数字は、評価
項目を使用した被験者の数を示し、
10名以上が使用したものは太線で
示した。
「建築・都市計画のための調査・分析方法」日本建築学会編 井上書院より引用
グループワークー3
レパートリーグリッド法を使って「千葉大学工学部10号
棟4階製図室の空間分析しなさい!!
1.イメージマップ法:被験者に白紙を配付し、対象空間を自由に描写させる。 2.サインマップ法:被験者に枠組み要素が記入された図を配布し詳しく描写させる。 3.エレメント想起法:予め要素を記入した図を見せ、その後の想起率で意識把握。 4.パズルマップ法:空間を単位ごとに分割したものを組み合わせることで意識把握。
「建築・都市計画のための調査・分析方法」日本建築学会編 井上書院より引用
高学年コーナー独立型レイアウト�
低学年コーナー独立型レイアウト�
低学年クラス拡張型レイアウト�
「疑似実験手法を用いた行動観察」
新治小学校行動観察調査
高学年クラス拡張型レイアウト�
小学校オープンスペースのレイアウトを変更して、そこで の児童の行動の変化を観察し、物理的環境と行動の関係を 探る。疑似実験手法はフィールドワーク(現場で実際の調 査対象を見れる)と実験(変数を固定化できる)の両方の メリットを生かせる手法である。 「模型操作による意識調査
新治小学校模型操作実験
実際の作業の様子
児童のグループに予め用意した家 具模型を動かさせながら、環境へ
の意識を探る。アンケート調査は
児童には難しい上、よく使われる
イメージマップなど自由描画手法
に比べるとより現状の課題や意識
を直接的に探りやすい。準備は時
間がかかる。
「POE調査/行動観察・空間レイアウト」
ぐんま国際アカデミー
C+A作成
「POE調査/行動観察・空間レイアウト」
幕張インターナショナルスクール
「建築・都市計画のための調査・分析方法」日本建築学会編 井上書院より引用
次のどんな調査をやってみたいと思うか?
1. SD法を使って複数の美術館の展示空間評価をする。
2. イメージマップ法を使って子どもの遊び領域を把握。
3. カフェの行動観察によって座席の選択傾向を把握。
4. 女子高生へのヒアリングで校舎内の居場所を把握。
5. バーチャルリアリティで集合住宅の居室評価をする。
グループワークー4
利用者にとってより西千葉駅を魅力的にするための「西千葉駅改
修」のための調査をするとして、下記の調査計画書を作成する!!
1. 調査対象施設・対象者
2. 調査内容
3. 調査目的
4. 調査方法
5. メンバーとそれぞれの調査担当/役割
6. 調査道具リスト