リアルタイムPCR 再入門 日本バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社 ライフサイエンス事業本部 amplification Z5255 0512A リアルタイムPCR再入門 概要 • • • • リアルタイムPCR原理 蛍光検出ケミストリー 遺伝子発現リアルタイムPCR実験フロー PCR時間を短縮できるプロトコール紹介 amplification PCRでの定量性の限界 PCRでは理論上2倍づつ増幅 さまざまな要因によりPCR後 半では理論通りには増幅が 行われない PCR後電気泳動での定量性 には限界がある amplification リアルタイムPCRの原理 リアルタイムPCRでは、 ある一定の増幅DNA量 (Threshold) まで達した時 点のサイクルの差を求め る 達したサイクルが早けれ ば、それだけ初期鋳型量 が多い amplification 蛍光増幅曲線 蛍光増幅曲線グラフ例 (108,106,104,102 コピー、IL-1β) Threshold Cycle = Ct amplification 検量線 Threshold Cycle 初期鋳型量 検量線 amplification 蛍光検出ケミストリー SYBR Green I ・安価かつ簡便 デメリット ・非特異的な産物も検出 amplification 蛍光プローブ ・特異的な検出 ・マルチプレックス可能 デメリット ・蛍光プローブが高価 ・蛍光プローブ設計が必要 SYBR Green I Denature Annealing Extension amplification 蛍光プローブ/TaqMan Denature Annealing Extension amplification 蛍光プローブ/Molecular Beacon Annealing Extension amplification 遺伝子発現解析における リアルタイムPCR実験フロー プライマー/ プローブ設計 発現解析 サンプル調製 プロトコール 条件検討 amplification プライマー/プローブ設計 ・ Primer3 プライマー/ プローブ設計 プライマー/プローブ設計サイト 発現解析 ・ RTPrimerDB qPCRプライマー/プローブデータ ベースサイト ・ Beacon Designer 設計ソフトウェア サンプル調製 amplification プロトコール 条件検討 サンプル調製 プライマー/ プローブ設計 ・ 迅速なRNA精製 発現解析 ・ 純度の確認 A260/A280=1.9-2.1 ・ RNA非分解の確認 18S/28S rRNAチェック サンプル調製 amplification プロトコール 条件検討 プロトコール条件検討 プライマー/ プローブ設計 ・ まずプライマーでの 増幅の確認 発現解析 ・ 温度グラジェント機 能と融解曲線の組 み合わせ サンプル調製 amplification プロトコール 条件検討 温度グラジェント機能 最適なアニーリング温度の検討が可能 amplification 融解曲線機能 SYBR Green Iでは副産物の有無を確認 プライマーダイマー発生例 amplification 検量線による増幅効率 希釈系列から検量線を作成し、相関係数(直 線性)と増幅効率を確認 PCR増幅効率 = [10 (-1/slope) ] - 1 amplification 発現解析 プライマー/ プローブ設計 ・ 発現解析定量方法 - 検量線法 - 比較Ct法 発現解析 いずれもハウスキーピング遺伝子 をリファレンスとして目的の遺伝子 の発現量比を求める サンプル調製 amplification プロトコール 条件検討 遺伝子発現 定量方法 検量線法 比較Ct法 ・増幅効率が100%でなくても 定量可能 ・検量線を毎回設定しなくも 定量可能 デメリット ・ 毎回検量線を設定する必 要あり amplification デメリット ・ 増幅効率が100%近くでな ければならない 検量線を用いた定量 目的の遺伝子の 初期鋳型量 ハウスキーピング遺 ハウスキーピング遺伝子でノー 伝子の初期鋳型量 マライズしたターゲット遺伝子 の相対量 試料A 10 pg 10 pg 10/10 = 1 試料B 60 pg 15 pg 60/15 = 4 試料Aに対して試料Bでは遺伝子発現量比が4倍 amplification 検量線法でのプレートセット • プレートセットアップ例 SYBR Green検出系 スタンダード 102-108コピー 4段階希釈系列 HKプライマーセット スタンダード 102-108コピー 4段階希釈系列 TGプライマーセット 試料A HKプライマーセット 試料A TGプライマーセット 試料B HKプライマーセット 試料B TGプライマーセット ブランク HKプライマーセット ブランク TGプライマーセット HKプライマーセット=ハウスキーピング遺伝子に対するプライマーセット TGプライマーセット=目的遺伝子に対するプライマーセット amplification 比較Ct法/ΔΔCt法 実例 DCtsampleA = CtTG_sampleA - CtHK_sampleA = 24 – 12 = 12 DCtsampleB = CtTG_sampleB - CtHK_sampleB = 15 – 12 = 3 D(DCt) = DCtsampleB - DCtsampleA = 3 – 12 = - 9 発現量比 = 2-D(DCt) = 2-(-9) = 512 amplification 試料Aに対して試料Bは512倍の発現量比 ΔΔCt法でのプレートセット • プレートセットアップ例 SYBR Green検出系 試料A HKプライマーセット 試料A TGプライマーセット 試料B HKプライマーセット 試料B TGプライマーセット ブランク HKプライマーセット ブランク TGプライマーセット HKプライマーセット=ハウスキーピング遺伝子に対するプライマーセット TGプライマーセット=目的遺伝子に対するプライマーセット amplification 比較Ct法のノーマライゼーション • DDCt – 100%の増幅効率が前提 – 1つのリファレンス遺伝子のみ設定可 Simple • Pfaffl 改法 – 増幅効率を考慮した算出法 – 1つのリファレンス遺伝子のみ設定可 • Vandesompele 改法 – 増幅効率を考慮した算出法 – 複数のリファレンス遺伝子の設定可 Complex amplification DDCt法 DCt control = Ct GOI_control – Ct REF_control DCt sample = Ct GOI_sample – C tREF_sample D(DCt) = DCt sample 発現量比 = - DCt 2-D(DCt) control コントロール試料=control 対象試料=sample 目的の遺伝子(Gene of Interest)=GOI リファレンス遺伝子(Reference Gene)=REF amplification Pfaffl改法 (Ct GOI (control) - Ct GOI ) (sample) EGOI 発現量比 = (Ct REF (control) - Ct REF (sample)) EREF E = 1 + (h/100) h : 増幅効率(%) もし100%なら、E=2となり、 ΔΔCt法と同じ結果になる コントロール試料=control 対象試料=sample 目的の遺伝子(Gene of Interest)=GOI リファレンス遺伝子(Reference Gene)=REF A new mathematical model for relative quantification in real-time RT-PCR. Michael W. Pfaffl. Nucleic Acids Research, 2001, Vol. 29, No. 9 e45 amplification Vandesompele法 対象試料の相対量 リファレンス遺伝子の相対量の相乗平均 (CtGOI(control)-CtGOI(sample)) E(GOI) = (Rel Quant Ref1 * Rel Quant Ref2 * . . . * Rel Quant Ref n)1/n Accurate normalization of real-time quantitative RTPCR data by geometric averaging of multiple internal control genes. Vandesompele, J.Katleen De Preter, Filip Pattyn, Bruce Poppe, Nadine Van Roy, Anne De Paepe and Frank Speleman. Genome Biology 2002, 3:research0034.10034.11 amplification コントロール試料=control 対象試料=sample 目的の遺伝子(Gene of Interest)=GOI リファレンス遺伝子(Reference Gene)=REF 発現解析 プライマー/ プローブ設計 ・ 発現解析の定量方 法 発現解析 - 検量線法 - 比較Ct法 まずは検量線法で実験を行ってい き、実験に慣れてきて、サンプル数 が多くなってきたら比較Ct法を行う ことをおすすめします サンプル調製 amplification プロトコール 条件検討 PCR時間を短縮できる プロトコール • 既存のサーマルサイクラーやリアルタイム PCRシステムで、PCR時間を大幅に短縮す るためのプロトコール(Fast PCRプロトコー ル)が実行可能です amplification PCRのプロトコールでは何がスピードの 決め手となっているのか? 実際のPCR実行時間は以下のものに影響されます: • ステップおよびサイクル数 • それぞれのステップにおける時間の長さ • それぞれのステップの温度に到達するまでの時間 の長さ (ランピング時間) amplification いかにPCR実行時間を短くするか? PCR実行時間を減らすには以下のことを実施します: • ステップおよびサイクル数を最小限にする • それぞれのステップでの時間を短くする • ステップ間の温度差を減らし、ランピング時間を最 小限にする 変性 変性 伸長反応 アニーリング/伸長反応 アニーリング 標準的なPCRプロトコール amplification Fast PCRプロトコール より速いPCRのためには どのようにプロトコールを改変するのか? 250 bp以下のターゲットでのFast PCRプロトコールを実行するための改 変方法は: • Tm値が64–69℃のプライマーを作製 (Tm値はSanta Lucia nearest-neighbor法にて計算します) • 最初のテンプレート変性/酵素活性化ステップを98℃、30秒に変更 • それぞれのサイクルでの変性ステップを92℃、1秒に変更 • アニーリングと伸長反応ステップを、70℃、20秒の1つのステップに 結合 * 注: プライマーのTm値が上記範囲内にはいらない場合、2-3bp長くする か、あらためて設計する必要があります。 amplification プロトコール変更例 通常のプロトコール 95℃ 10分 95℃ 15秒 35 x 温度を高く、時間を短く 98℃ 30秒 温度を低く、時間を短く 92℃ 1秒 60℃ 30秒 72℃ 30秒 72℃ 10分 終了までの 実時間: 改変“Fast”プロトコール 1 時間 28分 アニーリングと伸長反応ステップを 70℃の一つのステップにし、時間を 短く 70℃ 20秒 ステップ削除(250 bp以下の短い PCR産物では通常最終伸長反応 は必要ありません) 34 分 短縮時間 = 54 分 amplification x 35 Fast PCRと標準PCRプロトコールの PCR産物泳動結果 ターゲットは 約150∼250 bpで、Tm値は63–67℃と違いがあるもので検証し、Fastプ ロトコール(F)と標準プロトコール(S)両方で実行しました。iCyclerサーマルサイクラー を用いて、iTaq DNAポリメラーゼにてPCRを実施し、アガロース電気泳動による結果 を示します。 標準プロトコール: 95℃/3分→(95℃/15秒→62℃/30秒→72℃/30秒) x 35サイクル→72℃/10分 Fastプロトコール: 98℃/30秒→(92℃/1秒→70℃/20秒) x 35サイクル amplification リアルタイムPCRでの 正確な定量結果 MiniOpticonリアルタイムPCR解析システム用いて、リアルタイムPCRの実施結 果。相関係数=0.995、増幅効率=99.3% PCR実行時間 = 33 分 プロトコール: 98℃/ 30秒→(92℃/1秒→70℃/5秒→plate read) x 30 サイクル amplification Fast PCRプロトコール まとめ • プロトコールを改変するだけでPCR実行時間は 1.5∼2.0時間から30∼40分間に減少させること が可能です。 • 特殊な機器を導入しなくても、既存のサーマルサ イクラーやリアルタイムPCRシステムでPCR時間 を短縮することが可能です。 • より詳細な情報 -Fast PCRチュートリアル PDF版は弊社Webサイトhttp://discover.bio-rad.co.jpよ りダウンロードが可能です。 amplification
© Copyright 2024 ExpyDoc