金属の腐食測定法

金
属
の
腐
食
測
定
法
近 畿 大理 工 ・吉村 研 ・研 究員
伊
藤
征 司郎
金 属 が 腐 食 す る と 云 う 現 象 は 、 純 化 学 反 応 あ る い は 電 気 化 学 反 応 に よ り、変
質 又 は 破 壊 さ れ る こ とで あ る。 腐 食 に 関 与 す る 因 子 は 金 属 あ る い は 環 境 等 に よ
つ て 異 な るが 、 腐 食 因 子 の 作 用 は 測 定 方 法に題 っ て 異 な るが ら、 測 定 法 を 変 え
る と耐 食 性 の 順 序 も 変 化 す る こ とが 往 々 に あ る 。 従 っ て 測 定 法 は な る べ く 実 際
の 環 境 に 近 い 条 件 で 行 うの が 望 ま しい が 、 これ が 困 難 な 場 合 が 多 い 。 短 時 間 で
行 な わ れ だ 腐 食 試 験 の 結 果 か ら直 ち に そ の 金 属 の 耐 食 性 を 判 断 す る の ぱ 、 は な
は だ危 険 で あ る。
ま た 腐 食 の 様 式(全
面 腐 食 、 粒 界 腐 食 、 孔 食 、 応 力 腐 食 割 れ 、 腐 食 疲 れ 等)
に 適 応 し た 方 法 で 行・Lな1お
ね ば な らな い。
次 に種 々の腐 食測 定 法 の 概 略 を述 べ る。
1.外
観 及 び 顕微 鏡 襯 察
この方法 では 定 量的 結 果憾 得ア
られ な い が 腐 食郊 全 面 的 で あ る か 局 部 的 で あ
るか 。 局 部 的 な ら孔 食 等 の 有 無 を 講 ぺ ℃、 必 要 な らば 他 の 適 当 な 試 験 を 行 な
う。
2.機
械 的 性 質…⑳ 測 定.
腐 食 の 前 後 に お け る 機 械 菌 性 質 を 測 定 す る 。 例 え ほ 全 面 腐 喰 の 場 合 に'は 引 ・
・
張 り の 強 さ、 孔 食 等 の 場 合 は 屈 げ 試 験 、 弾 性 率 等 を 求 め る 。
3.腐
食 に よ る重量 変化 の測定
金 属 誠 験 片 姿 腐 食 環 境 に 浸 漬 し て 腐 食 に よ る 減 量 を 測 定 オ1、
る こ とに よ り 、
腐 食 速 度(covosionr㌔te)を
求 め る方 法 で、 腐 食速 度 ∫ は 次 式 に よ り求 め
脚 隔 灘 ∴
る こ と が で き る。
-13二
ま た 腐 食 の 進 行 に よ り ど の 程 度 の 厚 さ に 侵 され た か を現 わ す 、 侵 食 速 度
(Penetra七ion)Pは
次 式 で 現 わ さ れ る 。
P==△W・d/s・T
△w:腐
食 減 量(ジr)
d:密
度(9・
ノ㎡)
但 し
s:表
T:時
面 積(2㎝)
閥(year)
更 に 、 腐 食 抑 制 剤(Corresioninhibit。r)壱
率(lnhibiti。n%)も
こ よ る防 食 効 果 を 現 わ す 防 食
重 量 変 化 か ら 求 め る こ と が 出 来 、 次 式 で 示 され る。
防 食 率1=(△WB-△W工)/△WB×100
但しぐ1::難 黙 蕪1農 灘
4.ガ
㌍
ス 発 生 量 の 測 定
ア ル カ リ 水 溶 液 中 に 於 け る ア ル ミ ニ ウ ム の 腐 食 は 陰 極(カ
ソ ー ド)か
ら 水
素 を 発 生 す る 水 素 発 生 型 の 腐 食(hydr。genevoluti。ntype。fCorro
si。n)が
起 る 。 そ こ で 、 カ ソ ー ドか ら の 水 素 ガ ス の 発 生 量 を 測 定 す る こ と
に よ り腐 食 量 を 求 め る こ と が 出 来 る 。 但 し、 酸 素 消 費型 の 腐 食 を 伴 う場 合 に
は 、 溶 液 中 の 酸 素 の 消 費 量 も 測 定 す る 必 要 が あ る 。 即 ち 、 カ ソ ー ド反 応 は
2H++2・
一 ・-H2↑2H++1/2・2+2・
一 ・=H2・
と な る の で 糠
の 消 費 量 のVa[」
定 を 要 す る 。
5.電
気 抵 抗 の 測 定
試 験 片 が 棒 の 様 な 場 合 、 腐 食 前 後 で は 断 面 積 が 変 化 す る こ とを利 用 し た 方
法 で あ る 。
6.電
気 化 学 的 方 法
(a)自
然 電 極 電 位 の 測 定
図 の よ う な 装 置 を 用 い て 自 然 電 極 電 位 の 経 時 変 化 を 求 め る こ と に よ り金
属 表 面 の 状 態 や 腐 食 性 を 判 断 す る こ と が で き る 。 一 般 に 電 位 が 時 聞 と 共 に
一Pt14一
貴 と な る と 保 護 皮 膜 の 生 成 を 意 味,し 、 腐 食 が 抑 制 さ れ る 過 程 を 示 し 、 逆 に
卑 に な る と 皮膜 の 破 壊 が 起 り、 腐 食 の 進 行 を 示 す 。 し か し逆 の 傾 向 を 示 す
こ と が し ば し ば あ る が 、 こ れ は そ の 腐 食 反 応 が ア ノ ー ド支 配 を 受 け る か 、
カ ソ ー ド支 配 を 受 け る か に よ っ て 異 な る 。 故 に こ の 方 法 単 独 で 用 い る よ り
次 に 述 べ る分 極 特 性 と 併 用 す る と効 果 が あ る。 そ の 他 自 然 電 極 電 位 の 測 定
に よ り各種 金 属 の腐 食 の 順位 を 決 め る こ とが で き るが、 複 雑 な因 子 が 作 用
して実 際 的 では な い。 また、 金 属 表 面の電 位 の分布 を 測定 す る こ とに よ り
甘 乗 電 極
自然 電 極電 位 の 測定 図
㊥1電
位差計
金 属 表 面 上 の ア ノ ー ド部 分 と カ ソ ー ド部 分 を 知 る こ と が 出 来 る 。 即 ち 、 ア
ノ ー ド部 分 を 知 る こ と に よ り 寓 食 さ れ や す い 箇 所 が 判 る 。
(b}外
部 分 極 曲 線 よ り求 め る方 法
定 電 位 法 又 は 定 電 流 法 に よ り外 部 分 極 曲 線 を 求 め て 腐 食 速 度 を 推 定 す る
一15・一
・
に は次 の方 法 に よれ ば よい。
Aゴ \
①
甘 景 電 極
④=電 流計
②:電 位差計
⑦:電 圧計
カ ソ ー ド、 ア ノ ー ド分離 し 得 る場 合 の 分 極 曲 線
の決定 回路
(1)外
部Tafe1線
よ り 求 め る 方 法 〔1)
腐 食 反 応 が 活 性 化 分 極 に よ
電 位
っ て 支 配 さ れ て い る場 合 、 そ
の 分 極 はTafel関
係 式 に し た
雪)
が う 。 故 に 図 の 様 にTafel線
の 交 点 か ら 腐 食 電 流icorrを
求 め る こ と が で き る。
電
一16一
流(1。gii):
(2)Pea。
。。。 の 式(2)(M。D。
図 に お
。。 。nの
い てABCを
式(3))C
■q
Q
ア ノ"ド
分 極 曲 線 、A
なニ
ヨア
DEを
カ ソ ー ド分 舳
澄A
線 と す る こ の 曲 線 上 の(E
折 点
をB、Dと
し 、P
BQ編iq,PD=ipと
れ ば 全
す
く 幾 何 学
△QAOと
的 に
△QPDに
電
流(1。gi)
於 い て
AOAQ
=今AO=ic。
「「 ・QB=iq,i?D==iPで
あ る か
ら
PDAQ+AP
icorrAQ
篇
①
iPPQ
△PAOと
△PQBに
i.corrAP
於 て
も 同 様
に
=②
iqPQ
icorr。iGorrAQAP
①+②+・=+・ipiqPQPQ
ll
icorr(十
一)==1
ユPエq
ユP● ■q
故 にic。rr==と
ip十iq
こ と が で き る 。 な おiq,ipは
な
り こ の 式 よ
り 腐 食 電 流
の 近 似 値 を 求
め る
ア ノ ー ド及 び カ ソ ー ド反 応 の 平 衡 電 位 に 対
応 す る も の と す る 。
(3}そ
の
外部 分 袖
他
線 か ら内 部 分 融
線 を 求 め る方 法 ω や 、 迅 齢
が あ る。
一17一
極 測 定 法{5辱
以 上 、 外 部 分 極 曲 線 よ り腐 食 電 流 の 近 似 値 を 求 め る 方 法 に つ い て 略 述 し た
が・ 腐 食 の反 応速 度 は腐 食 電 流 に対応 す る電 位 の変化 す る過程 を知 れ ば求 め
る こ と が で き る 。 し か し 、 分 極 特 性 が ど の 段 階 に あ る か に よ り 、 次 の5種
分 か れ る・
①
カ ソ ー ド支 配
②
ア ノ ー ド支 配
C
→
C
E
小ー
E
A
A
→
③
ユ
混
→i
合 支 配
④
抵 抗
支 配
E
小I
C
起
E
A
A
→i
⑤
拡
→
散 支
配
C
拳l
E
→i
・-18一
ユ
に
c)電
位ptPH図
に よ る 方 法
金 属
水 の 系 に つ い て 電 位PHの
関 係 を 求 め る こ と に よ り、 この
図 か ら 腐 食 現 象 を 平 衡 論 的 に 説 明 で き る 。 作 成 の 原 理:Ox,Redを
そ れ ぞ
れ 酸 化 、 還 元 型 と す る と 一 般 に 酸 化 還 元 反 応 はXOx+mH++nel2yRed+
ZH2・ で劾
この式岬
され る・ この反応 の平儒
齪
数 をKと す ると・一会 警
+解2争"劔
き の 化
一跡 碗o)伽
Aff20=1と
な
働
る か
罫 工・K誌(蔀x物
水 素 電 極
ら250Cで
を 基 準
脚,
6.
響,」
..
, 凸
凸 ・■o
と す
る と ■S'H・t・=・O/Pt'enO.
従 つ て〃
熱 力 学 的 デ ー タ ー が 得 ら れ れ ば 、E-PHの
+1.4十1
レ
は
恐PH+α £5911・9暑 妻賂
ア ノ
レ ミニ ウ ム ー
酔 器ln欝
・は そ れ ぞ れ の 物 質 の 活 量 が ・の と
学 ポ テ ン シ ヤ ル 、Eは
E-EL・
位EはE一
・ ・そ の 他 の 関 鮒
る
関 係 を 図 示 で き る。 例 え ば 、
水 系 の 腐 食 図 を 次 に 示 す 。
.2
¶
一… 一
...{ .1/202+H20+2e220H一
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蝿
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の
他
電 気 化 学 的 試 験 法 に は そ の他 塗 膜 な ど の 保 護 被 膜 の 性 質 を 調 べ る の に 有
効 な 交 流 試 験 法 等 が あ る。
以 上電 気 化 学 的腐 食測 定 法 の概 略 を のべ た 。
文
献
P
る
M.s七ern.Corrosion●13.775(1957)
鋤
J●M・Pearson,TransElec七roGhem.soc.,81.485(1942)
鋤
W.T.SGhwerdtfeger,0.N.McDorman;J.EleGtrQchem
。Soc.,99,
40'7(1952)
(4)岡
㈲
本 、 久 保 田 、 永 山 、 電 化;22,8(1954)
岡 本 、 佐 藤 、 永 山 、 電 化:距,166(1957)
参考 資 料
金属 表 面工 学
大 谷 南 海 男 著(日
金属 防 蝕 技 術 便覧
電気化学便電
刊 工 業 新 聞 社)
日本 学 術 振 興 会 編(日
電 気 化 学 協 会(丸
一20一
善)
刊 工 業 新 聞 社)