食品加工用などの衝撃波発生装置 の小形軽量化と低価格化

食品加工用などの衝撃波発生装置
の小形軽量化と低価格化
熊本高等専門学校
教授
情報通信エレクトロニクス工学科
大田
一郎
2016年8月23日(火)
10:30~10:55
JSTホール
1
衝撃波により食品等を加工する方法
衝撃波を発生
水中を伝搬
食品の細胞膜を破壊→軟化
衝撃波発生
水中
食品
圧力容器
○ 瞬時に非加熱で加工
○食品の香りや栄養分が殆ど
破壊されない.
伊東繁,「食品の処理方法」特開2012-147800
2
衝撃波を発生する方法
(1) 爆薬を用いる方法
×取り扱い者の資格が必要
×前準備と事後処理の手間が掛かる
(2) 水中放電による方法
○ (1)の問題はない
×高耐圧大電流の外部スイッチ(20~60万円)が必要
×装置の小形軽量化・低価格化が難しい
家電品までは至っていない(実験や業務用)
本特許では
① 外部スイッチ無しで水中放電できるしくみ
② 高速充電できる高電圧発生装置
3
従来の衝撃波発生装置
外部スイッチS
商
用
電
源
整
流
回
路
昇
圧
Vout
回C
路
水中
電圧
Vout
コンデンサ
0
放電
電極
食品
圧力容器
3.5kV
充電
充電できない
放電
時間
4
提案の衝撃波発生装置
①外部スイッチ無し
アクリル
昇
パイプ
圧
Vout
回C
空気
水中
または
路
真空
コンデンサ
食品
②高速充電
圧力容器
3.5kV
整
流
回
路
電圧
Vout
商
用
電
源
0
放電
時間
5
購入可能なスイッチ素子と提案スイッチの比較
高耐圧大電 メカニカルス
特注の半導体スイッチ
提案
流スイッチ
イッチ※
SCR
MOSFET
IGBT
スイッチ
耐圧
12kV ~120kV ~36kV ~36kV 30kV~
ピーク電流
50kA ~ 16kA
~ 3kA
~ 5kA 制限なし
価格
約20万円
40~60万円
数千円
※ロス・エンジニアリング社製 高電圧リレー EA12-NC-20
アクリル
パイプ
外部スイッチでは
17cm
スイッチの接点
でアーク放電
が生じて放電
電極間には十
分な衝撃波が
発生しない.
水中
空気
または
真空
圧力容器
①外部スイッチ無し
6
充電電流
0
0
クロック
0
時間
×充電時間
が遅い
時間
×突入電流
が大きい
時間
従来方法
3.5kV
電圧Vout
電圧Vout
0
一定周波数
0
指数関数で増加
0
商
用
電
源
整
流
回
路
昇
圧
回C
路
Vou
クロック
の制御
時間
3.5kV ○充電時間
が早い
時間
充電電流
クロック
② 高速充電する方法
○突入電流
が小さい
時間
提案方法
7
fc=2kHz
IItr2
i
1000
4
Ii
Itr2
500
0
充電電圧Vo (kV)
0
2000
6
4000
6000
Time t (ms)
8000
2
Vo
80
2000
fc
fc
1500
Ii
Itr2
500
0
10000
0
0
Vo
時間 t (s)
従来方法(一定クロック周波数)
60
40
1000
時間 t (ms)
Ii
100
Vout
2500
充電電圧Vo (kV)
1500
Vo
Vout
充電3.5秒
1000
2000
3000
Time t (ms)
20
Clock frequency f c (kHz)
充電電流I
i (V)
Input
current Itr2
(A)
8
fc=20kHz
2000
3000
120
0
4000
時間 t (ms)
Vo
Ii
充電電流I i (A)
2500
10
充電電圧Vo
Output
voltage Vout(V)
(V)
Vo
Vout
3500
Input currenti I(A)
tr2(A)
充電電流I
充電8秒
3000
12
充電電流I i (A)
充電電圧Vo
(V)
Output
voltage Vout
(V)
3500
クロック周波数f c (kHz)
充電電圧と電流波形 (上:解析,下:実験波形)
時間 t (s)
提案方法②(指数関数増加クロック) 8
7kA
0
Iout
Io
-2000
-40kA
-3000
-4000
0
20
40
60
Time t (μs)
80
Vout
2000
49kA
1000
0
-93kA
-1000
-2000
50kA
Io
-3000
-4000
0
100
20
40
60
Time t (μs)
100
提案スイッチ(空気ギャップ)の場合
各放電方法の比較
提案スイッチ
従来
放電方法
方式
空気
真空
平均放電電流 18.9kA 37.8kA 40.7kA
12kHz 17.3kHz 17.4kHz
共振周波数
57.7μs
57.6μs
放電電圧Vo
(V)
Output
voltage Vout (V)
従来スイッチの場合
83.3μs
80
時間 t (μs)
時間 t (μs)
共振周期
Iout
4000
160
140
120
100
80
60
40
20
0
-20
-40
-60
-80
-100
Vo
3000
Vout
2000
51kA
1000
0
-98kA
-1000
-3000
Iout
57kA
Io
-2000
-4000
0
20
40
60
Time t (μs)
80
放電電流Io (kA)
-1000
Vo
3000
Output current Iout(kA)
43kA
1000
160
140
120
100
80
60
40
20
0
-20
-40
-60
-80
-100
Output current Iout(kA)
Vo
Vout
Output voltage Vout(V)
(V)
放電電圧Vo
2000
4000
Output current Iout(kA)
3000
160
140
120
100
80
60
40
20
0
-20
-40
-60
-80
-100
放電電流Io (kA)
放電電圧Vo
(V)
Output voltage Vout (V)
4000
放電電流Io (kA)
放電実験の電圧・電流波形
100
時間 t (μs)
提案スイッチ(真空ギャップ)の場合 9
放電試験直後のリンゴの写真
従来スイッチの場合
提案スイッチ(空気ギャップ)の場合
従来方法とのリンゴ加工の比較
放電
従来
提案スイッチ
方法
スイッチ
真空ギャップ
軟化 半分までしか
全体が軟化
状態 軟化できない
提案スイッチ(真空ギャップ)の場合10
新技術の特長・従来技術との比較
①放電スイッチ
損失
ピーク電流
耐圧
価格
従来技術
×損失有り
△~数万A
△~数万V
×20万円~
新技術
◎ 無損失
◎ 制限無し
○ 数万V以上
◎ 数千円以下
②充電回路
充電時間
突入電流
回路規模と
価格
従来技術
新技術
×長い
○ 短い(半分以下)
△大きい
○ 小(1/3以下)
クロック制御回路のみ追加で
パワー回路は同じ→差は僅か
11
ジューサー加工での電気代の比較
リンゴジュースを作る場合
電気代
消費電力
加工時間
240W
20秒
0.033円
300W
5秒
0.010円
(1kWh当たり25円)
ジューサー
衝撃波加工
(充電時間)
ジューサーと比較して電気代は約1/3
12
想定される用途
【食品加工装置】
• 業務用調理器具(病院や老人ホーム等での
咀嚼が困難な人や高齢者用に)
• 家電品としての調理器具(ヘルシー食品)
【食品以外の加工装置】
• 物質の軟化,粉体化,抽出浸透
• 殺菌装置
• 金属等の瞬間圧力整形
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実用化に向けた課題
試作装置でリンゴの軟化が実証できたが,
• アクリルパイプをスライドする速度が遅く,パイプ
を完全に引き抜く前に衝撃波が発生して,パイプ
が破壊される(真空ギャップの場合).
• アクリルパイプをスライドする速度の最適値と
その機構を求める必要がある.
• 今後,リンゴ以外の食品について実験データを
取得し,充電電圧,電極間距離,電極と食品間
の距離 などの最適値を求める必要がある.
14
企業への期待
• 未解決のアクリルパイプをスライドする高速化
については,機械加工技術により克服可能.
• メカニカル技術をもつ企業と共同研究を希望.
• また,衝撃波加工は食品以外にも多種多様な
応用分野への展開が可能なので,新規事業
を考えている企業には,本技術の導入が有効.
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本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :①衝撃波発生装置
②充電装置,衝撃波発生装置
及び充電方法
• 出願番号 :①特願2016-042179号
②特願2016-097485号
• 出願人
:国立高等専門学校機構
• 発明者
:大田一郎,寺田晋也
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産学連携の経歴
• 2003年-2005年 JST大学発ベンチャー創出事業に採択
(情報機器用超薄型IC電源の開発 )
• 2005年-2011年 大学発ベンチャー企業エスシパワ㈱設立
• 2012年-2013年 平成24年度A-STEP探索形に採択
(衝撃波を用いた食品加工用小形高電
圧発生回路に関する研究開発)
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お問い合わせ先
熊本高等専門学校 熊本キャンパス
情報通信エレクトロニクス工学科
大田 一郎
TEL&FAX 096-242-6062
e-mail
[email protected]
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コーディネーター 井手口 健
TEL
096-242-6194
e-mail
[email protected]
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