規格外海藻からの 先端機能性食材の開発 熊本大学大学院 先端科学研究部 環境材料化学分野 助教 キタイン アルマンド テイビギン 1 背 景 ワカメは褐藻コンブ目チガイソ科ワカメ 属の藻類。 日本近海で広く採られ、食用として用 いられており、年間1人当たり約2 kg消 費している。日本と朝鮮半島以外では ほとんど食べられない。 フコイダン 抗腫瘍・抗がん作用 抗菌作用 抗ウィルス作用 フコキサンチン 脂肪を燃焼・肥満予防 糖尿病の治療 前立腺癌の予防効果 フコキサンチン フコイダン 2 背 景 課題 全世界における年間生産量 2002: 30万 トン 2006: 240万トン 2008~: 180万トン ●2002年から急激に増えている。 ・廃棄、規格外のものが多い ●ニュージーランドで国内ほぼ 全海域に広がっている。 ・ニュージーランド人は食べない ・生態系を破壊する ・ムール貝に付着して繁殖 規格外ワカメの有効利用 ムール貝に付着したわかめ 3 従来技術とその問題点 従来の抽出法・・・有機溶剤や高温加熱を用いたもの 〈問題点〉 •有機溶剤の残留 •熱分解による変質 等の問題があり、広く利用されるまでには至っていない。 従来の乾燥法・・・凍結乾燥やオーブン乾燥 〈問題点〉 •乾燥物の収縮固化 •凍結による亀裂 等の問題があり、広く利用されるまでには至っていない。 4 発明のスキーム 規格外ワカメ SCCO2 抽出 マイクロ波抽出 フコキサンチン フコイダン SCCO2含浸 SCCO2 乾燥 フコキサンチンの含浸 フコイダンベースの エアロゲル 5 超臨界二酸化乾燥法 超臨界乾燥法・・・超臨界流体を用いた乾燥法。 超臨界流体・・・臨界点(ある温度と圧力)を超えた領域の流体。超 臨界二酸化炭素(SCCO2)は臨界点が低く、化学的に安定。 ×表面張力 高い拡散性 (気体) 二酸化炭素の状態図 高い溶解性 (液体) 構造を保ったまま乾燥 6 フコイダンの抽出 フコイダン0.3808g アルギン酸 9.28g ワカメ5g + 水(150mL) マイクロ波(2h、90℃) 冷却器 温度計 溶液 +1%CaCl2 アルギン酸 残渣 上澄み液 + エタノール フコイダン マイクロ波加熱 7 エアロゲル エアロゲル 超臨界乾燥法を用いて得られ た低密度の乾燥ゲルのこと。 〈メリット〉 • 再溶解性に優れる • 多孔質状 〈応用〉 • 機能性食材 • 医薬品など 実験フロー 8 ハイドロゲルの作製 抽出物 ヘキサメタリン酸ナトリウム 2.5% 撹拌 0.5h 常温 リン酸水素カルシウム1.5% 撹拌 1h 40℃ 撹拌 5min 20℃ 冷却 15h 4℃ グルコノデルタラクトン 1.5% 容器 エタノール 置換 50%(2h),75(2h),100%(12h,24) 9 エアロゲルの作製 PG-1 PG-2 PG-3 BPR1 冷却器 抽出器 CO2 ヒーター プレヒーター ヒーター ガスメーター ポンプ SCCO2装置 分離器 実験条件 SCCO2 乾燥1 SCCO2 乾燥2 圧力 25MPa 10MPa 温度 60℃ 50℃ 50℃ 時間 6h 12h 24h 流し方 流し続ける 滞留させる オーブン乾燥 10 フコキサンチンの抽出 PG-1 PG-2 PG-3 BPR1 抽出器 CO2 ヒーター プレヒーター ヒーター 冷却器 ポンプ 共溶媒 圧力 25MPa 温度 40℃ 時間 5h ガスメーター SCCO2 装置 ドライココナッツ(DC) 試料 ワカメ : ドライココナッツ (1:1, 1:2) 分離器 ココナッツオイル (中鎖脂肪酸 ) CO2の溶解度を上げる 回収率が上がる 特徴 肥満予防 美容効果 アンチエイジング アルツハイマー予防 11 結果(フコキサンチンの抽出) 12 結果(フコキサンチンの抽出) フコキサンチンの回収率 120 100 93 回収率 (%) 100 80 60 ワカメ:DC (w : w) ♦1:1 ■1:2 40 20 0 0 1 2 3 4 5 6 時間 (h) フコキサンチンの回収率の比較 (ワカメ:DC (w : w) ♦1:1■1:2) 13 結果(エアロゲルの作製) 外観 オーブン乾燥 SCCO2乾燥1 SCCO2 乾燥 2 SEM写真 オーブン乾燥 ×5000 SCCO2 乾燥1 ×5000 SCCO2 乾燥2 ×5000 14 想定される用途のイメージ 高齢者向け機能性食品 機能性食品・サプリメント 医薬品等への応用 15 想定される用途 • 本技術を健康食品・医薬品製造に適用すること で、より高付加価値な製品の開発に応用可能。 • 原料費が安い海洋系バイオマスから高価な化 合物を抽出する本技術は、他原料への技術展 開の可能性が大いに有り。 • 海藻から有価成分を高品質に得られるため、事 業化の可能性あり。 16 実用化に向けた課題 • 現在、海藻の成分を用いたエアロゲルの作製 が可能なところまで開発済み。しかし、一度に 大量に生産できない点が未解決。 • 今後、成分の機能性について実験データを取 得し、健康食品・サプリメントに応用するため の条件設定を行う。 • 実用化に向けて、エアロゲルの表面積をより 向上できるよう技術を確立する必要あり。 17 企業への期待 • 機能性食品への応用性を明確にするため、得られ たフコキサンチン・フコイダンにおけるメタボリックシ ンドローム予防効果などを我々と一緒に検証する 企業を求める。 • 天然物の抽出技術及びカプセル化技術を有する 企業との共同研究を希望する。 • 機能性食品・サプリメントを開発中の企業、ライフイ ノベーション分野への展開を考えている企業に対し、 本技術の導入は有効ではないか?と考えている。 18 本技術に関する知的財産権 • • • • 発明の名称 :多孔質体及びその製造方法 出願番号 :特願2016-099705 出願人 :国立大学法人熊本大学 発明者 :キタイン アルマンド、 木田徹也、佐々木満、高橋奈央 19 産学連携の経歴 • 2004年~2010年 民間A社と共同研究を実施 • 2007年 METI 地域資源活用型研究開発事業 に採択 • 2008年 METI 地域イノベーション創出研究開発事業 農商工連携に採択 • 2004年~2010年 民間B社と共同研究を実施。 • 2009年 民間B社より製品化 「民間B社の保湿クリーム」の商品名で販売開始。 6か月後、1,100万円以上の売上(2010年2月)。 • 2006年~2010年 民間C社と共同研究を実施。 • 2009年 JST 平成21年度「シーズ発掘試験」に採択 • 2010年~ 民間D社と共同研究を実施 • 2015年 JST A-STEP FSステージ 探索タイプ に採択 20 お問い合わせ先 熊本大学 社会連携課・研究コーディネーター 松浦 佳子 TEL 096-342 - 3145 FAX 096-342 - 3239 e-mail y-matsuura@jimu.kumamoto-u.ac.jp 熊本大学 イノベーション推進機構・准教授 緒方 智成 TEL 096-342 - 3967 FAX 096-342 - 3239 e-mail t_ogata@kumamoto-u.ac.jp 21
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