1.1冥王星が惑星から降格したこと

2016/08/13
1.1 冥王星が惑星から降格したこと
1. 太陽系の惑星たち
1.1 冥王星が惑星から降格したこと
最初に、太陽系の惑星、準惑星、小惑星の区分のことから記そう。惑星の仲間だった冥王星が、最
近、降格したことが、強く印象に残っている。
冥王星は小さ過ぎた
スイキンチカモク、ドッテンカイメイ、と、子供の頃に暗誦した人が多かろうが、私は六十を過ぎ
てから友人に教わった。水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星は、太陽系
の惑星である。
ところが、2006 年国際天文学連合の総会で、一番端の冥王星は惑星の名を剥奪された。1930 年に
発見された冥王星は、公転周期 248 年だから、その軌道をまだ1/3 ほどしか行かないうちに惑星の
座から降ろされた。
惑星失格の理由がいくつか挙げられたが、なんといっても、冥王星は小さ過ぎた。
地球の質量(M地球)に対し、冥王星はわずか 0.0023M地球でしかない。
その次に小さい水星が 0.055M地球だから、冥王星の質量は水星の1/24 で、惑星仲間では桁違いに
小さかった。
そして、冥王星は衛星より小さかった。月(0.0123M地球)は冥王星の 5.3 倍もある。
冥王星(地球質量の 0.0023 倍)よりも質量が大きい衛星は、次のとおりである。
冥王星は惑星としての貫禄がなかったということだ。
地球
表 1.1.1 冥王星より大きな衛星
衛星の名前
質量(冥王星質量
に対する倍数)
月
5.3 倍
木星
イオ
6.5 倍
ヨーロッパ
3.5 倍
母 星
ガニメダ
10.8 倍
クリスト
7.8 倍
土星
タイタン
9.9 倍
海王星
トリトン
2.2 倍
摘 要
逆行衛星
冥王星と海王星の緊張関係
冥王星は、公転周期 248 年のうち 20 年間は海王星軌道の内側に入り込んで公転している。
これまで 46 億年間、公転している間に、両者は数え切れないほどすれ違ってきて、よくぶつから
なかったものだ。
海王星には逆行衛星トリトンがいるが、その質量は冥王星の 2.2 倍もある。冥王星は、トリトンと
すれ違うたびに、肩身の狭い思いをしただろう。
そして、トリトンが逆行しているということは、あとになって海王星に捕らえられたものだから、
冥王星は、自分も海王星の衛星に捕えられることを恐れているだろう。
冥王星が、どうして海王星に捕えられずにきたか? その理由はあとで触れたい。
11
2016/08/13
1.1 冥王星が惑星から降格したこと
冥王星は二重惑星
発見された時、冥王星の質量はもっと大きかったが、観測のたびに質量が減じ、ふしぎがられたそ
うだ。冥王星のいるカイパーベルトは遠すぎた。
そして、とうとう、冥王星(直径 2,274km)のすぐ近くに、2万 km 離れて、大きな衛星カロン(直
径 1,172km)が発見され、これらがいっしょにされていたことがわかった。二重惑星注1だった。
二重惑星とは、惑星同士の連星で、特に距離が短いものをいう、と解したい。
衛星と連星の違いは、微動だにしない大きな天体の周りを小さな天体が回るのを衛星、円の大小は
あってみてもも互いの周りを回るのを連星と区別されよう。
衛星、そして連星には、地球と月のように、はじめから衛星関係にあったものと、海王星の逆行衛
星トリトンのように、あとになって捕らえられた衛星がある。
連星の多くは、
「渦巻きベルト」が巻き取られる段階で接近したものであると、私は考えている。
準惑星の仲間
冥王星は、惑星ではなく、
「カイパーベルトの天体」であるということになった。
それでも冥王星は、新たな「準惑星」という分類で、惑星の兄弟分の地位に留まっている。
私は、いろいろとおもしろい話題を提供してくれる冥王星だから、これまで通り、惑星に準じて扱
いたい。
準惑星には、冥王星の他に、これまで最大の小惑星と見なされていた小惑星帯のセレスが昇格した
し、冥王星のさらに外側にいて冥王星よりもやや大きなエリスが、準惑星になった。また、カイパー
ベルトのマケマケとハウメアが準惑星に分類されたそうだ。
私は、エリスのことを知らなかった。
それにしても、冥王星よりも大きな天体が発見されていたのに、どうして、世間は、
「新惑星発見!」
と騒がなかったのか?
当時から、いずれ、冥王星を惑星から外そうという魂胆が、関係者の間にあったのだろう。
なお、余計なことかも知れないが、準惑星にも惑星のように和名を付けて欲しいものだ。
セレスなんか、ケレスと書かれることもあって、どっちの呼び名も本当なんだろうが、最初は違う
星かと思った。
惑星・準惑星・小惑星の区分
最初、冥王星が降格して「矮惑星」になったという記事を読んだ時、おやおやと思ったが、最終的
に「準惑星」という分かりやすい言葉になってよかったと思う。
「矮惑星」と「小惑星」と並べた時に、
「矮」の惑星は「小」の惑星より大きいとは読み取れない。
惑星、準惑星、小惑星というぐあいに、その大きさによって区分するのは、わかりやすいことであ
る。
「準」と「小」とどちらが大きいか? と首を傾げる人はいまい。
なお、
「矮星」
「準矮星」というのがあって、ヘルツスプラン・ラッセ図(HR図)で、次のように
義されている。合わせて、
「巨星」も定義されている。注2
ここでは、星の大きさは容積で表しているようである。
そして、この定義では、準矮星は、矮星より大きいのだ。
超巨星 太陽の 50 倍以上の大きさ(容積)の星
準矮星
太陽の1/10~1/50 の星
巨星
太陽の 50~10 の星
矮星
1/50 以下の星
注1
注2
宇宙の事典 p171
手にとって見る宇宙 p187‐188
12
2016/08/13
1.1 冥王星が惑星から降格したこと
矮星という呼び方
私には、
「矮」の字に、別なイメージがある。
「褐色矮星」は原始星のまま終わった星の最後の姿である。
「白色矮星」は、核融合を途中まで行って、寿命を終えた、太陽規模の星の成れの果てを言うから、
矮星という言葉の私の受け取り方は、矮小な星というよりは、朽ちた星ということである。
さらに、
「白色矮星」が老化したのを、
「黒色矮星」と呼ぶそうだ。注3
ここまで書いたら、Aさんに、
「矮星は dwarf の訳だ」と、教えてもらった。英和辞書で引いたら、
dwarf は小人、そして「矮星」の意味があった。
また、Aさんは、
「準星、クエーサーも、問題だ」と、指摘された。
準星、クエーサー
銀河中心部にある、とんでもなく巨大な電波源(電波望遠鏡による)である「クエーサー」に、
「準
星」と言う言葉は当てはまらない。
日本では、
「クエーサー」でまかり通ることだから、
「準星」という言葉は死語になると私は思う。
念のため、クエーサー、quasar の語源を確かめたら、 quasi-stellar radio sources(私訳 準恒
星の電波源)であった。
また、チャート式地学 p353 では、「恒星のような天体(Quasi Stellar Object)を略して、クェーサ
ー(準星)と名付けられた」とあった。
そうしたら、
「宇宙の起源 99 の謎」
(冨田憲二 p193)に、次のような記述があった。
「準恒星状電波源 QSS と準恒星状銀河(青い恒星状天体)QSG とを、合わせたものが、準恒星状天体
QSO である。クエーサー、
「準星」は、QSO の略号と考えてよい」
なお、この本は、高度な内容を概説したもので、専門家の卵たちが読むものだと思われる。
観測で未知の天体がどんどん現われる。そして、この宇宙の全体像はまだ描かれていないから、性
急に安易な命名がなされてきた嫌いがあると私は思う。
電波望遠鏡で見つけた電波源が、光では見えないがため、クエーサー(準恒星状天体)
、そして日本
では意訳して「準星」という称号になったのだと、私は理解した。
でも、私は、とても巨大な星の残骸、すなわち銀河の中心星の超巨大ブラックホールを、
「準星」と
呼ぶのは当たらない、と抗議したい。
星の死骸の扱い
私の手元にある宇宙の入門書、解説書で、
「連星は明るいのが主星、暗いのが伴星だ」という記述が
ある。
しかし、大きな星の方の寿命はすごく短いから、主星の寿命が尽きて死骸となって暗くなろう。ブ
ラックホールになれば、わからなくなる。
太陽の 40 倍大きな質量の星は、ブラックホールになるというから、この宇宙には、見えないブラッ
クホールに拘束されている星たちがたくさんあるのだろう。
公転運動している星たちに「固有周期がある」というのは、ブラックホールと連星関係にあって、
共に公転運動していることに他ならない。
だいたい、
「星の摂動」などと言う文学的な言葉があるのがおかしい。星がゆらぐように微妙な動き
をするのは、それぞれ明確な理由があるわけである。
そして、
「星団」を恒星の集りだと考えるのがおかしい。いっしょに星の死骸があるはずだ。例えば
球状星団の中心には、中心星が進化した巨大ブラックホールが潜んでおり、その周りを大小のブラッ
クホールが囲んでいる、と私は考える。
注3
宇宙のしくみ、新星出版社 p111
13