超音速ジェットレーザー分光によるL-チロシンの コンフォメーション安定性

超音速ジェットレーザー分光によるL-チロシンの
コンフォメーション安定性の研究
(広大院理、コロラド州立大)小林悠亮、○井口佳哉、伊東孝文、
Elliot R. Bernstein、江幡孝之
チロシン
• 天然に存在する3種類の芳香族α-アミノ酸の一種
• アミノ酸の代謝、蛋白質の三次構造
⇔ アラニン部位のコンフォメーションと密接に関係
• フェノール部位のOH基の配向による回転構造異性体の存在
(アラニン部位)
フェニルアラニン�
チロシン�
チロシンLIF
A
C
B
E
I
H
D
J
F
G
{
{
LIF of Tyrosine
Levy and co-workers, J. Mol.
Spectrosc. 156, 421 (1992). 同じコンフォマーの回転異性体の振電バンド?
スペクトルパターンが類似している、という事実のみ
本研究
•  チロシンの異性体(コンフォマー)の数は?
•  その形態は?
■ 蛍光励起スペクトル、蛍光寿命測定
■ UV-UVホールバーニング分光
■ IR-UV二重共鳴分光 実験について
ジェット冷却条件
��(チロシン+ウラシル)/He�3atm
樹脂製ノズル
��Tsample ~ 90 ℃
UV-UV
1 µs
IR-UV
50 ns
蛍光励起スペクトル
Tsample = 90 ℃
これらの振電バンドにはいくつの異性体が含まれているのか?�
UV-UVホールバーニング(HB)分光
LIF
HB
振電バンドの相関
Tsample = 114 ℃
2.5
5.7
6.6
2
7.9
τ (ns)
4.9
4.1
3.5
2.1
3.6
2.4
4.5
5.0
4
7.1
3
2.8
2.1
2.1
蛍光寿命
1
蛍光寿命の短い(< 3 ns)振電バンドは熱分解生成物ではないか�
HBスペクトルを再度比較してみる
LIF
12
4
6
5
7
14
15
X
X
X
X
X
X
HBスペクトル~S1振電バンド構造の比較~
4
低振動モードの出現パターンが
似通っているものがある
6
5
低振動モード
→ 主にアラニン部位に由来
7
14
15
12
アラニン部位のコンフォメー
ションが同じでOH基の配向だけ
が異なる回転異性体ではないか
回転構造異性体の関係
分裂幅(cm-1)
d1
a1
a2
b1
b2
H�
a1, a2
31
b1, b2
21
c1, c2
5
d
0?
c1
c2
~0
X
X
X
X
X
X
119a
aOikawa
et al., J. Phys. Chem., 88, 5180
(1984). a, b → gauche-type isomers
c, d → anti-type isomers
gauche
anti
S0 赤外スペクトル
a1
分子内水素結合
a2
H-bonded OH
of COOH
NH
OH
b1
b2
OH
of COOH
OH
c1
c2
d1
OH
of COOH
H-bonded OH
of COOH
NH
分子内水素結合
OH
OH
各組で赤外スペクトル
が一致
コンフォメーションが同
じでOH基の配向が異な
る回転異性体である
a, dはCOOHのOH基が
N原子に水素結合した
コンフォマーである
フェニルアラニンとの関係
ベンゼンー
COOH
分子内
水素結合
A
gauche
×
B
anti
○
C
gauche
×
D(最安定)
gauche
×
X
gauche
○
E
anti
×
A
B
分子内
水素結合
a
gauche
○ b
gauche
×
c
anti
×
d
anti
○
分裂幅の大きい
Gauche-typeはより大き
くレッドシフトする
D
E
C
X
アラニン部位と発色
団との相互作用はチ
ロシンの方が大きい
d
a
フェノール
ーCOOH
フェニルアラニン�
b
チロシン
c
まとめ
• LIFスペクトル上で7種類の異性体を確認。
フェノールCOOH
COOH…NH2
水素結合
a1, a2
gauche
○
b1, b2
gauche
×
c1, c2
anti
×
d
anti
○
d1
a1
a2
b1
X
X
X
b2
c1
c2
X
X
X
■今後の目標
• コンフォマーの同定(フェニルアラニンとの比較、分子軌道計算)
• アミノ酸-水クラスター
→ 双性イオンの生成
• 金属イオン-アミノ酸クラスター
→ 金属の電子状態とアミノ酸分解反応の関係