超薄膜グラファイトシートの 作製技術 国立大学法人福井大学 大学院工学研究科 電気・電子工学専攻 准教授 橋本 明弘 1 研究背景:Grapheneとは? 2 Grapheneの特徴 • • • • グラファイトの単原子層 巻かれていないカーボンナノチューブ ナノチューブの基本的な性質はGraphene由来である。 Grapheneを使ったデバイス作製には従来のプレーナー プロセスが適応できる。 • 理想的には電子の流れが妨げられない。(抵抗がない) バリスティック伝導 • 電子が静止質量のない粒子のように振舞う。 光が止まれないのと同じように電子もGraphene内で は止まれない。波動性の強く出た電子系。 3 Grapheneの作り方 従来のgrapheneの形成手法 • スコッチテープ法 • 溶液分散法 Low Technology? 4 作り方の基本的な考え方 メカニカル 機械的にGrapheneを引き剥がす ケミカル 溶剤中に分散させる 5 Scotch Tape Method HOPG (Highly Oriented Pylolytic Graphite) 図1 Scotch Tape Methodによるgraphene形成プロセス 6 Scotch Tape Method 結果 5μm 5μm 転写したSiO2基板の光学顕微鏡像 Intensity(a.u.) 0.6 0.55 2690.5 0.5 AFM像(1um x1um) ~2 layer 1.002 nm 1585 0.45 0.4979 nm 0.4 0.35 3000 断面図 2500 2000 1500 -1 Raman Shift(cm ) ~2 layer ~4 layer 薄いGraphene層が確認された ラマンスペクトル 7 Solution Dispersion Method 結果 + 50um 超音波処理 HOPG粉末 Tetrahydrofuran (THF) Functionalized graphene in THF 塗布後のSiO2基板 (光学顕微鏡) 3.43[nm] ~10 layer 断面図 AFM像 (1um×1um) 厚いgraphene層のみが観察された。 8 従来技術とその問題点 ・従来の手法で得られるグラフェン層は、せい ぜい100μm2程度である ・grapheneが形成される場所を制御できない 9 新技術の特徴・従来技術との比較 • 従来技術の問題点であった微小面積の転写を改良すること に成功した。 • 従来は面積の点で先端的なリソグラフィー技術を用いた基礎 的使用に限られていたが、大面積化ができたため、各種基 板上の電気配線及びセンサーヘッドなど種々の応用に簡便 に利用することが可能となった。 • 本技術の適用により、種々の基板上の任意の場所に超薄膜 グラファイトシートが形成できるため、作製コストが1/2~1/3 程度まで削減されることが期待される。 10 我々のアプローチ 転写するときのシード層に着目 ・HOPGを用いたgraphene形成(従来の手法) grapheneのドメインが小さい graphene and/or FLG SiO2/Si substrate ・6H-SiCのSi サブリメーション ◎表面の真空熱分解で大面積にグラフェンを形成 graphene and/or FLG 6H-SiC 11 6H-SiCのSi昇華法によるgraphene形成 表面の真空熱分解(~1600℃)によって6H-SiC(4°off,N-dope)基板からSiを昇華 させ、表面を炭化させる。 Si 原子 C 原子 SiC層 これによりgrapheneがテラス上に形成される。 図9 Si 昇華の模式図 Graphene/6H-SiC(4°0ff)表面構造について [11-20] 4° テラス graphene ステップ graphene 1nm 図11. graphene/6H-SiC(4°off)表面構造模式図 図10 graphene/SiC(4°0ff)基板表面のSTM像 12 6H-SiCによるgraphene形成において、原理的に大きさに制限はな さそうである 大面積graphene層の形成が可能 Graphene/SiCをシード層として、基板上に大面積grapheneを転写できな いか? Graphene/SiCをシード層として、グラフェンの大面積基 板上への転写に可能性を示すことに成功した。 13 graphene転写プロセス Weight SiO2/Si substrate Weight Contact Graphene/SiC Heater Heater Graphene 評価方法 ◎光学顕微鏡 ◎ノマルスキー顕微鏡 ◎顕微ラマン分光法 SiO2/Si substrate 14 Raman スペクトル c b 1583.5 d e 10 um 1 Intensity(a.u.) a graphene/SiO2 0.5 e 1584 d 1585.5 c Raman測定ポイント 1582 b 1582 a 0 1800 1700 1600 1500 1400 -1 Raman Shift(cm ) 1300 1200 各点におけるラマンスペクトル G-Band振動数に対するgraphene層数 A. Gupta et al., Nano Lett. 2006, 12 (6)., 2667-2673 15 G 0.25 1583.9 Intensity(a.u.) 0.2 3~layer G 5~layer G 2~layer 1582.9 0.15 0.1 1584.4 0.05 988.9 SiO2由来 のピーク 971.37 0 2000 G-Band振動数に対するgraphene層数 1800 1600 1400 Raman Shift(cm 1200 -1 ) 1000 A. Gupta et al., Nano Lett. 2006, 12 (6)., 2667-2673 2~5 Mono-Layer Graphene on SiO2/Si Substrate Area Size : 0.1mm×0.1mm 16 想定される用途 • 本技術の特徴を生かすためには、種々の電子・光デバイス 製造に適用することで配線抵抗や配線遅延などの低減にメ リットが大きいと考えられる。 • 上記以外に、電子の量子波としての効果が得られることも期 待される。 • また、達成された大面積化に着目すると、将来、水質浄化用 の電気化学用作用極や高感度センサーといった分野や用途 に展開することも可能と思われる。 17 Graphene/SiCパターン基板の光顕画像 500um 500um 500um 18 センサーヘッド部(graphene/SiC基板設置後) 19 想定される業界 • 想定されるユーザー 環境ビジネス関連メーカー 半導体デバイスメーカー プリント基板製造メーカー 電気化学機器製造メーカー 各種センサーに関する研究所等 • 水質浄化などの環境関連ビジネス。 → 2010年には5683億円の市場規模 20 実用化に向けた課題 • 現在、12mm×8mmのSiC基板の炭化について数モノレー ヤーの超薄膜グラファイトシード層の形成が可能なところま で開発済み。しかし、大面積化の点が未解決である。また、 直接転写のついては、0.1mm×0.1mmまでの転写は開発 済み。 • 今後、大面積化について実験データを取得し、大面積化に 適用していく場合の条件設定を行っていく。 • 実用化に向けて、膜厚制御の精度を1モノレーヤー、面積を 10mm×10mm程度まで向上できるよう技術を確立する必要 あり。 21 企業への期待 • 炭素を用いた高集積高感度センサーヘッドについて は、超薄膜グラファイトシートの作製技術により種々 の問題点を克服できると考えている。 • 各種センサーヘッド作製技術やナノインプリント技術 を持つ、企業との共同研究を希望。 • また、高感度センサーや水質浄化システムを開発 中の企業、環境分野への展開を考えている企業に は、本技術の導入による新製品の開発が有効と思 われる。 22 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :グラフェンシートの製造方法 • 出願番号 :特願2007-233535 特願2007-261188 • 出願人 :国立大学法人 福井大学 • 発明者 :橋本明弘、田中 悟 23 お問い合わせ先 国立大学法人 福井大学 産学官連携コーディネーター 吉田 芳元 TEL FAX e-mail 0776- 27 - 8019 0776- 27 - 8955 [email protected] 24
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