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◇ 共同研究
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共同研究(2012-010)
都市型産業集積の 10 年(1)
~東大阪産業集積地域における機械・金属工業の売上高変化~
摂南大学経済学部准教授
田中幹大
キーワード
東大阪
鋲螺工業、機械・金属工業
売上高
1.はじめに
2.機械・金属工業の地域別売上高の変化
3. 東大阪産業集積地域における機械・金属工業の売上高の変化
4. 小括
【本レポートについて】
本レポートは、工業集積研究会(代表:慶應義塾大学経済学部・植田浩史教授)と帝国データバ
ンクによる共同研究プロジェクトの成果の一部であり、摂南大学経済学部・田中幹大准教授に
よる「都市型産業集積の 10 年」レポートの第 1 回目である。本レポートを含む 2 本のレポー
トでは、現在、縮小を余儀なくされている都市型産業集積にあって、2000 年代以降も成長を続
けている企業、なかでも鋲螺工業企業の特徴について新規取引先の開拓という点から検討を行
う。第 1 回目の本稿では、東大阪地域鋲螺工業企業を検討する前提として、東大阪地域の機械・
金属工業の 2000 年前後以降の売上高の変化を、他地域の動向も含め、概観する。
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1.はじめに
本レポートは、東大阪地域の産業集積を代表する金属工業、特に鋲螺(ボルト・ナット類製造)
工業を対象に、2000 年代以降の売上高と新規取引先の開拓について検討する1。
鋲螺工業は、建築、家電、自動車用をはじめとして、現代のさまざまな工業に用いられる必要
不可欠な製品を生産しているが、東大阪地域においては、伸線、作業工具などとともに古くから
展開してきた「地場産業」であり、近年においてもその生産額が上位に位置している重要産業で
ある2。しかしながら、バブル経済崩壊後の「失われた十年」以降、東京の大田、東大阪に代表さ
れる都市型産業集積地域では、製造業事業所数が減少、縮小し続けており、そのなかで東大阪地
域鋲螺工業もまた、厳しい経営環境におかれている。とはいえ、当然ながら都市型産業集積の縮
小は、同地域のすべての製造業企業が成長しなくなったことを意味しない。企業によっては積極
的に企業改革を行い、新たなビジネスモデルを発掘し、あるいは新規の販路開拓を行うなどして
業績を伸ばしている。本レポートでは、2000 年代以降の東大阪産業集積地域の鋲螺工業で売上高
を伸ばしている企業の特徴を、新規取引先の開拓という点から抽出する。
帝国データバンクの COSMOS2 データ3(以降 C2 データ) は、企業別年別に売上高と取引先(主
要販売先)1~5 位が記載されており、売上高と取引先の変化を確認することができる。そこで、
本レポートでは、「レポート(1)」で、東大阪地域鋲螺工業企業を検討する前提として、東大阪
地域の機械・金属工業4の 2000 年前後以降の売上高の変化を、他地域の動向も含め、簡単に跡づ
ける。そのうえで、「レポート(2)」において、東大阪地域鋲螺工業企業の売上高増減が新規取
引先開拓とどのように関わっているかを検討する。具体的には、「レポート(1)」で、機械・金
属工業の 1997 年、2002 年、07 年、10 年の 4 時点の売上高を取り上げ検討し、「レポート(2)」
で、東大阪地域鋲螺工業企業の 2002 年、07 年、10 年の 3 時点の売上高と取引先を取り上げて検
討する5。なお、本レポートでは、箇所によって売上高伸び率の平均値を用いているという問題が
1
ここで東大阪産業集積地域としているのは、東大阪市、八尾市、大阪市東部(平野区、生野区、東成
区)である。
2
鋲螺工業が東大阪地域の「地場産業」であるという点については、湖中齊『都市型産業集積の新展開
-東大阪市の産業集積を事例に』
(御茶ノ水書房、2009 年)、同『東大阪の中小企業 中小企業の街から
発信 改訂版』(東大阪商工会議所、2001 年)を参照。
3
帝国データバンクでは、訪問調査による信用調査報告書以外にも、聞き取り項目の少ない「企業概要
データ(COSMOS2)」を電話調査などにより毎年更新している。COSMOS2 には、「企業所在地」
「創業年」
「従業員数」
「資本金規模」「売上高」などが入力されており、その他のデータ項目に関しては帝国デ
ータバンクウェブページ(http://www.tdb.co.jp/lineup/cnet/cn_conct_c2.html#01)を参照されたい。
4
機械・金属工業とは、「金属製品製造業」「一般機械器具製造業」
「電気機械器具製造業」「輸送用機械
器具製造業」
「精密機械・医療機械器具製造業」を指す。
5
C2 データでは、主要販売先企業が最大で 5 社まで記載されているが、企業名のみの記載であるため、
同一名称の企業や名称変更した企業が存在する場合を考え、逐一企業を確認する名寄せ作業が必要不
可欠となる。名寄せ作業には、厖大な作業時間を要するため、「レポート(2)」では、2002 年,07 年,10
年の 3 時点に限定して分析を行っている。
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1
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あるが、各地域の売上高動向の概観を把握することを目的に同値を使用することとする6。
2.機械・金属工業の地域別売上高の変化
はじめに、1997 年・2002 年、02 年・07 年、07 年・10 年の東大阪産業集積地域の売上高伸び率
の変化を、他地域の変化を含めて確認する。図表1は、愛知県、東京都大田区、東京都、神奈川
県、大阪府、東大阪地域の機械・金属工業中分類別の平均売上高伸び率の変化を示したものであ
る。ここから次の点が指摘できる。
図表1 売上高伸び率(中分類別)
金属製品製造業
1997~2002年
企業数
平均値
愛知県
1075
94.6%
東京(大田区)
369
85.2%
東京都
2292
86.2%
神奈川県
1154
91.8%
大阪府
2419
84.9%
東大阪地域
770
84.4%
一般機械器具製造業
企業数
平均値
1809
97.1%
578
90.1%
2749
90.6%
1582
207.4%
2561
91.5%
682
91.0%
電気機械器具製造業
企業数
平均値
559
110.6%
332
80.3%
2493
96.2%
1363
130.2%
1022
93.9%
230
93.4%
精密機械・医療機械器具製造業
輸送用機械器具製造業
企業数
平均値
企業数
平均値
654
108.4%
110
121.4%
59
79.9%
90
99.7%
379
86.9%
840
96.3%
373
92.5%
193
107.1%
287
86.8%
198
95.7%
70
93.2%
54
89.9%
金属製品製造業
企業数
平均値
1134
125.6%
316
104.4%
2004
108.0%
1109
120.2%
2351
116.1%
792
115.6%
一般機械器具製造業
企業数
平均値
2040
127.9%
514
113.4%
2483
116.7%
1507
120.0%
2534
120.4%
705
122.2%
電気機械器具製造業
企業数
平均値
600
131.4%
263
110.5%
2131
112.6%
1331
126.9%
964
119.0%
225
117.7%
輸送用機械器具製造業
精密機械・医療機械器具製造業
企業数
平均値
企業数
平均値
680
155.1%
110
119.2%
62
129.5%
77
110.1%
356
162.8%
747
108.9%
377
132.2%
203
122.3%
263
107.9%
195
113.2%
67
108.6%
53
113.2%
一般機械器具製造業
金属製品製造業
2007~2010年
企業数
平均値
企業数
平均値
愛知県
1483
81.9%
2474
77.7%
東京(大田区)
308
79.9%
503
80.5%
東京都
1984
84.3%
2510
83.9%
神奈川県
1102
81.3%
1545
81.7%
大阪府
2448
89.0%
2618
80.9%
東大阪地域
838
82.5%
732
78.2%
出所:C2データより筆者作成。
注:分析対象となっている期間で、業種分類が変更している企業は除外している。
電気機械器具製造業
企業数
平均値
733
83.7%
251
82.8%
2049
84.3%
1325
468.5%
1014
83.6%
235
82.1%
輸送用機械器具製造業
精密機械・医療機械器具製造業
企業数
平均値
企業数
平均値
924
82.3%
122
98.1%
58
78.1%
68
92.2%
358
87.2%
743
102.1%
391
87.5%
236
80.9%
280
89.1%
214
93.4%
71
85.9%
51
87.3%
2002~2007年
愛知県
東京(大田区)
東京都
神奈川県
大阪府
東大阪地域
第1に、全体として 97・02 年に売上高は下がり、「景気回復過程」と言われた 02・07 年では売
上高が上がり、リーマンショックをはさんだ 07・10 年では売上高は下がるという軌跡を描いてい
る。ただし、この軌跡に当てはまらない地域・業種も存在する。
第 2 に、「景気回復過程」の 02・07 年では、どの地域も 5 業種すべてで売上高が上がっている
が、特に輸送用機械器具製造業での伸び率がもっとも高い。これは同期間の自動車生産拡大によ
るものと考えられる。したがって、自動車産業集積地域がある愛知県ではその売上高は大幅に伸
びている。逆に大阪府と東大阪地域では、107.9%、108.6%と他地域よりも伸び率が低く、同地域
が自動車生産との関連が相対的に薄いことを示している。このことは同地域の輸送用機械器具製
造業の企業データ数自体が少ないことからも窺える。
もっとも、輸送用機械器具製造業に分類されていないとしても、自動車産業に関連した生産を
行っている場合も当然考えられる。しかし、5 業種平均でみた場合でも、02・07 年売上高伸び率
は、大阪府と都市型産業集積である東大阪地域・東京都大田区が、愛知県はもとより、東京都、
6
データ企業の従業員数規模の構成などにより売上高には偏りが存在するため、厳密な分析においては、
最大値、最小値、中央値などのデータを補足する必要がある。
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2
◇ ■ 共同研究
神奈川県よりも低くなっている。これが第 3 に指摘できる点である。
図表 2 は、従業員数別に図表 1 の地域の売上高伸び率を示したものである7。これをみると、図
表 1 の場合と同じく、例外はあるものの全体として 97・02 年で売上高は下がり、02・07 年で上が
り、07・10 年では下がる、という変化になっている。
図表2 売上高伸び率平均(従業員類型別)
1~3人
4~9人
10~19人
20~29人
30~49人
50~99人
100~199人
200~299人
300~499人
500人以上
1997~2002年
企業数 平均値 企業数 平均値 企業数 平均値 企業数 平均値 企業数 平均値 企業数 平均値 企業数 平均値 企業数 平均値 企業数 平均値 企業数 平均値
愛知県
338
99.9%
692
98.7%
623
99.4%
253 104.8%
317 101.3%
293 102.4%
163 102.8%
48 107.2%
36
99.9%
79 102.3%
東京(大田区)
178
85.5%
263
87.4%
221
88.5%
75
93.3%
72
95.3%
81
90.8%
34
88.6%
6
79.0%
10
89.8%
18
89.2%
東京都
989
84.2%
1635
89.9%
1104
91.1%
407
92.3%
479
99.5%
461
97.3%
278
94.9%
77
93.9%
77
93.3%
237
94.2%
神奈川県
549
87.1%
888
97.9%
593
96.2%
208 101.2%
233
99.1%
214
96.5%
118 100.0%
44
93.2%
30
96.1%
58
92.4%
大阪府
474
88.6%
1201
89.9%
1023
90.0%
414
90.5%
396
92.4%
335
94.0%
184
89.5%
41
86.2%
47
94.1%
69
96.6%
東大阪地域
136
82.2%
355
87.9%
313
88.3%
113
85.1%
105
88.0%
93
95.6%
45
92.0%
7
94.3%
7 103.8%
8
99.0%
2002~2007年
愛知県
東京(大田区)
東京都
神奈川県
大阪府
東大阪地域
1~3人
4~9人
10~19人
20~29人
30~49人
50~99人
100~199人
200~299人
300~499人
500人以上
企業数 平均値 企業数 平均値 企業数 平均値 企業数 平均値 企業数 平均値 企業数 平均値 企業数 平均値 企業数 平均値 企業数 平均値 企業数 平均値
492 109.4%
867 122.2%
672 123.8%
271 123.3%
304 129.6%
273 169.4%
158 136.4%
44 126.5%
35 143.3%
78 155.6%
202
98.8%
243 103.0%
195 107.0%
68 111.0%
65 120.8%
69 116.5%
35 156.0%
8 131.0%
12 170.3%
13 140.6%
1120 103.6%
1547 104.4%
1023 106.4%
390 150.3%
410 113.6%
426 120.1%
248 126.9%
69 127.0%
76 138.1%
216 137.6%
662 102.7%
931 111.2%
585 113.8%
200 111.2%
236 120.9%
197 132.4%
105 128.5%
39 129.2%
26 132.3%
47 128.4%
675 104.3%
1373 112.2%
1004 116.3%
351 115.8%
409 121.1%
311 123.7%
169 129.4%
37 126.1%
41 122.7%
62 134.5%
209 104.2%
441 114.9%
330 116.7%
112 117.1%
104 120.6%
89 125.3%
35 145.7%
4 122.8%
7 121.5%
8 133.8%
1~3人
4~9人
10~19人
20~29人
30~49人
50~99人
100~199人
200~299人
300~499人
500人以上
2007~2010年
企業数 平均値 企業数 平均値 企業数 平均値 企業数 平均値 企業数 平均値 企業数 平均値 企業数 平均値 企業数 平均値 企業数 平均値 企業数 平均値
愛知県
845
80.2%
1228
79.1%
793
81.3%
349
80.2%
375
90.3%
353
79.3%
184
81.5%
64
82.4%
44
80.6%
89
83.6%
東京(大田区)
221
83.2%
270
86.1%
188
80.8%
60
82.9%
63
78.9%
70
77.1%
37
77.8%
7
76.7%
7
69.5%
11
73.8%
東京都
1259
90.7%
1624
87.2%
1038
83.8%
396 100.1%
424
80.0%
462
81.8%
255
81.4%
78
87.4%
87
85.4%
223
79.1%
神奈川県
749
81.3%
1007
83.9%
662
82.3%
254
84.2%
260
80.8%
208
76.4%
118
80.2%
46
72.8%
37
85.2%
55
82.4%
大阪府
919
81.6%
1582
86.2%
1135
84.4%
426
85.7%
425
85.0%
319 114.6%
178
84.3%
39
84.8%
44
87.5%
66
89.1%
東大阪地域
271
77.9%
481
83.6%
364
82.1%
138
82.9%
108
84.0%
88
81.5%
37
76.1%
8
74.2%
6
98.5%
7
91.4%
出所:C2データより筆者作成。
注:分析対象となっている期間において、従業員類型が変更している企業は除外している。
図表 2 から指摘できる特徴としては、02・07 年の売上高伸び率が従業員数規模に応じて高くな
っていることが挙げられる。すなわち、従業員数が多いほど、売上高伸び率は高くなり、従業員
数が少ないほど伸び率は低くなっている(ただし、これも図表 1 と同じく、伸び率の水準自体は、
全体として他地域より愛知県が高くなっている)。また、売上高が全体として下がった時期である
97・02 年では、従業員数規模が多いほど売上高の減少率が低い傾向にあるが、07・10 年では、売
上高の減少率と従業員数規模が対応しているというわけではない。つまり従業員数が少ないから
といって売上高の減少率が高いわけではない。
以上から、1997 年から 2010 年までの東大阪地域の機械・金属工業の売上高伸び率の変化を他の
地域と比較しながら見ると、02・07 年の売上高が上がっていた時期の売上高伸び率は自動車生産
との関連が相対的に薄いことによって低かったこと、02・07 年の売上高伸び率はどの地域でも従
業員数規模が多いほど売上高伸び率が高かったこと、逆に売上高が下がっていた 07 年・10 年の時
期では売上高の減少率と従業員数規模とに対応関係はなかったことが確認できる。
3.東大阪産業集積地域における機械・金属工業の売上高の変化
次に東大阪産業集積地域における機械・金属工業の売上高の変化について、より立ち入ってみ
7
帝国データバンクの C2 データでは、従業員数に事業主と役員の人数が含まれておらず、原則として
正規雇用者数を意味する。
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3
◇ ■ 共同研究
てみよう。
(1)1315 社の総売上高の推移
図表 3 は、1997 年、2002 年、07 年、10 年の 4 時点すべてに売上高データがある 1315 社を対象
にその総売上高の変化を示したものである。97 年から 02 年にかけて総売上高は若干下がり(約
460 億円減)、その後 07 年には大幅に上がっている(約 3200 億円増)。そして、10 年にかけてま
た下がっている(約 2100 億円減)。97 年から 02 年にかけての減少額と 07 年から 10 年にかけての
減少額とでは 5 倍の差がある。リーマンショック後の 10 年時点で、売上高の総計は 97 年、02 年
の水準近くまで減少した。いかにリーマンショックの影響が大きかったかということが確認でき
る。
図表3 東大阪産業集積地域における機械・金属5業種(企業数1315)における総売上高の
推移(百万円)
1600000
1400000
1200000
1000000
800000
600000
400000
200000
0
1997年
2002年
2007年
2010年
出所:C2 データより筆者作成。
(2)1315 社の売上高変化
図表 4 は、上記の 1315 社を対象に、97・02 年、02・07 年、07・10 年の売上高伸び率が 100%
以上と未満それぞれの企業数をみたものである。02・07 年では、約 6 割の企業が売上高伸び率 100%
以上になっているのに対し、97・02 年では逆に約 7 割の企業が 100%未満、07・10 年では約 8 割
の企業が 100%未満となっている。
ここから確認できることは、第 1 に、売上高が伸びていた時期である 02・07 年であっても、そ
の伸び率が 100%未満の企業が存在していたこと(約 4 割)
、第 2 に、リーマンショック後であっ
ても売上高を伸ばしている企業が存在していたこと(約 2 割)、である。すなわち、全体的には売
上高が伸びていた時期である 02・07 年にその変化をうまくつかめた企業とつかめなかった企業が
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4
◇ ■ 共同研究
存在し、また、リーマンショック後に全体として売上高が減少するなかでも、売上高を伸ばした
企業が存在するということである。
図表4 売上高伸び率100%を基準とした企業数
97・02年
02・07年
07・10年
売上高伸び率
企業数 割合 企業数 割合 企業数 割合
100%以上
348 26.5%
822 62.5%
262 19.9%
100%未満
967 73.5%
493 37.5% 1053 80.1%
出所:C2データより筆者作成。
注:1997、2002、2007、 2010年の4時点すべてに売上高データ
がある企業(1315社)を対象としている。
さらに図表 5 は、97・02 年、02・07 年と 02・07 年、07・10 年のそれぞれ 2 期間で売上高伸び
率 100%を基準に企業数を示したものである。97・02 年では売上高伸び率 100%未満であったが、
02・07 年で 100%以上になった企業数と、02・07 年では 100%以上であったが、07・10 年で 100%
未満になった企業数がそれぞれ約 5 割でもっとも多い。しかし、一方で両期間とも 100%以上とな
っている企業、他方で両期間とも 100%未満の企業がある。すなわち、全体として売上高が伸びて
いた 02・07 年で売上高を伸ばし、その後もさらに売上高を伸ばしている企業と、02・07 年でも売
上高が伸びず、その後さらに下がっている企業とがある。02・07 年、07・10 年の 2 期間でみれば、
環境の変化に応じて売上高が上がって下がった企業が約 5 割、両期間とも上がっているのが約 1
割、両期間とも下がっているのが約 3 割という構成になっている。
ここで 1 つの検討項目として挙がるのは、02・07 年で売上高が増加し、07・10 年で減少した企
業と、02・07 年、07・10 年で売上高が増加し続けている企業とでは何が異なるのか。また、売上
高が下がり続けている企業は、他の場合と何が異なるのか、ということである(これについては
「レポート(2)」で新規取引先の開拓という点から検討する)。
図表5 売上高伸び率100%を基準とした企業数
97・02年売上高 02・07年売上高
企業数
割合
伸び率
伸び率
100%以上
100%以上
223
17.0%
100%以上
100%未満
125
9.5%
100%未満
100%以上
599
45.6%
100%未満
100%未満
368
28.0%
出所:C2データより筆者作成。
02・07年売上高 07・10年売上高
企業数
伸び率
伸び率
100%以上
100%以上
144
100%以上
100%未満
678
100%未満
100%以上
118
100%未満
100%未満
375
割合
11.0%
51.6%
9.0%
28.5%
注:1997、2002、2007、 2010年の4時点すべてに売上高データがある企業(1315社)を対象
としている。
(3)従業員数規模別・売上高類型別売上高伸び率
先の 1315 社について、従業員数規模別に売上高伸び率を見ておくと(図表 6)、図表 2 で見られ
た特徴と同じく 02・07 年では従業員数規模が多くなるほど、
売上高伸び率が高くなっていること、
97・02 年では、従業員数規模が多いほど売上高の減少率は低い傾向にあるが、07・10 年では従業
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5
◇ 共同研究
■ 員数規模と売上高減少割合は対応していないことが確認できる。
図表6 東大阪地域における売上高伸び率の推移(従業員類型別)
1997-2002
2002-2007
企業数
売上高伸び率
1~3人
84
4~9人
233
10~19人
230
20~29人
84
30~49人
78
50~99人
75
100~199人
40
200~299人
5
300~499人
6
500人以上
6
出所:C2データより筆者作成。
企業数
85.2%
89.0%
88.0%
87.0%
88.3%
90.9%
91.4%
90.8%
104.0%
103.9%
2007-2010
売上高伸び率
111
281
244
92
89
80
35
3
7
7
企業数
110.4%
109.0%
115.2%
118.6%
121.0%
125.5%
145.7%
112.9%
121.5%
141.3%
売上高伸び率
133
305
257
110
90
83
34
6
6
7
75.1%
82.9%
83.1%
80.3%
82.7%
81.5%
76.9%
70.0%
98.5%
91.4%
注:1997、2002、2007、 2010年の4時点すべてに売上高データがある企業(1315社)を対象としている。
注:分析対象となっている期間において、従業員類型が変更している企業は除外している。
さらに 1315 社について売上高類型別で売上高伸び率 100%を基準にその企業数を見たものが図
表 7 である。ここからは、第 1 に、02・07 年において売上高伸び率 100%以上になっている企業
数が 100%未満を上回るのは、売上高1億円以上5億円未満から上位の層であること、第 2 に、07・
10 年の売上高伸び率は、売上高類型が高いほど、売上高伸び率 100%以上となる企業が比較的多
くなることがわかる。
図表7 売上高類型別売上高伸び率100%を基準とした企業数(1315社)
売上高類型(2002年基準)
97・02年売上
高伸び率
100%以上
100%未満
5000万円未満
企業数
22
80
割合
21.6%
78.4%
5000万円以上1億円未満
企業数
23
145
割合
13.7%
86.3%
1億円以上5億円未満
企業数
181
505
割合
26.4%
73.6%
5億円以上10億円未満
企業数
55
104
割合
34.6%
65.4%
10億円以上50億円未満 50億円以上100億円未満
企業数
55
115
割合
32.4%
67.6%
企業数
5
13
割合
27.8%
72.2%
100億円以上
企業数
7
5
割合
58.3%
41.7%
売上高類型(2007年基準)
02・07年売上
高伸び率
100%以上
100%未満
5000万円未満
企業数
35
69
割合
33.7%
66.3%
5000万円以上1億円未満
企業数
75
94
割合
44.4%
55.6%
1億円以上5億円未満
企業数
374
240
割合
60.9%
39.1%
5億円以上10億円未満
企業数
157
44
割合
78.1%
21.9%
10億円以上50億円未満 50億円以上100億円未満
企業数
147
41
割合
78.2%
21.8%
企業数
21
3
割合
87.5%
12.5%
100億円以上
企業数
13
2
割合
86.7%
13.3%
売上高類型(2010年基準)
07・10年売上
高伸び率
5000万円未満
企業数
100%以上
16
100%未満
141
出所:C2データより筆者作成。
割合
10.2%
89.8%
5000万円以上1億円未満
企業数
34
168
割合
16.8%
83.2%
1億円以上5億円未満
企業数
126
483
割合
20.7%
79.3%
5億円以上10億円未満
企業数
47
123
割合
27.6%
72.4%
10億円以上50億円未満 50億円以上100億円未満
企業数
31
118
割合
20.8%
79.2%
企業数
2
12
割合
14.3%
85.7%
100億円以上
企業数
6
8
07 年の売上高類型に基づいて、売上高 1 億円以上 5 億円未満、5000 万円以上 1 億円未満、5000
万円未満の企業の従業員数規模を示したのが図表 8 であるが、売上高 1 億円以上 5 億円未満では、
従業員数規模 4~9 人、10~19 人に企業数が集中していることがわかる。売上高 5000 万円以上 1
億円未満では従業員数規模 1~3 人、4~9 人に、5000 万円未満以下では 1~3 人に企業数が集中し
ている。
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6
割合
42.9%
57.1%
◇ ■ 共同研究
図表8 2007年時点売上高類型別従業員数別企業数
売上高類型
1~3人
5000万円未満
67
5000万円以上1億円未満
60
1億円以上5億円未満
29
出所:C2データより筆者作成。
従業員数規模
4~9人 10~19人 20~29人 30~49人 50~59人
20
0
0
0
0
99
7
0
0
0
232
259
72
19
1
以上から、02・07 年で全体として売上高は伸びていたが、売上高 1 億円未満で従業員数規模 9
人以下の企業層では、売上高を伸ばすのが難しい企業が多かったこと、また、07・10 年では売上
高類型が小さい企業ほど売上高を回復させることが難しかったことがわかる。ただし、そのよう
な傾向にはあるが、売上高 1 億円未満、従業員数規模 9 人以下でも 02・07 年、07・10 年で売上高
を伸ばしている企業も存在していることに留意する必要がある。
(3)業種別売上高伸び率
図表 9 は、機械・金属工業中分類別に売上高伸び率を示したものである。これをみると中分類
別で売上高伸び率に大きな差があることは示されない。しかし、図表 10 の細分類レベルでの売上
高伸び率では、売上高伸び率に差があることがわかる。とはいえ、金属工業の細分類レベルで、
売上高伸び率 100%を基準にした企業数をみると(図表 11)、同じ細分類であっても、02・07 年で
売上高伸び率 100%以上の企業もいれば、100%未満の企業もあり、07・10 年でも同様である。細
分類レベルで売上高の平均伸び率に差はあるものの、同じ細分類でも企業によって売上高を伸ば
している場合とそうではない場合とがある。
図表9 産業中分類別売上高伸び率100%を基準とした企業数
02年・07年売上
金属製品製造業
一般機械器具製造業 電気機械器具製造業 輸送用機械器具製造業 精密機械・医療機械器
企業数
割合
企業数
割合
企業数
割合
企業数
割合
企業数
割合
高伸び率
100%以上
345
62.7%
321
63.2%
105
64.4%
34
63.0%
17
42.5%
100未満
205
37.3%
187
36.8%
58
35.6%
20
37.0%
23
57.5%
一般機械器具製造業 電気機械器具製造業 輸送用機械器具製造業密機械・医療機械器具製造
07・10年売上高
金属製品製造業
企業数
割合
企業数
割合
企業数
割合
企業数
割合
企業数
割合
伸び率
100%以上
113
20.5%
87
17.1%
40
24.5%
12
22.2%
10
25.0%
100未満
437
79.5%
421
82.9%
123
75.5%
42
77.8%
30
75.0%
出所:C2データより筆者作成。
注:産業分類は07年時点に基づく
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7
◇ ■ 共同研究
図表10 売上高伸び率の推移(金属製品製造業における細分類別)
97・02年
02・07年
07・10年
企業数
売上高伸び率
企業数
売上高伸び率
企業数
売上高伸び率
金属容器等製造
6
84.2%
6
103.1%
6
89.6%
洋食器製造
x
x
x
機械刃物製造
4
95.5%
4
111.7%
5
90.1%
利器工匠具等製造
2
293.0%
2
99.8%
2
88.9%
作業工具製造
11
77.2%
11
106.7%
12
81.9%
その他の金物類製造
41
91.0%
46
127.1%
46
76.9%
配管工事付属品製造
21
83.0%
24
118.3%
22
82.3%
ガス・石油機器製造
5
102.0%
5
84.5%
4
96.1%
温風等暖房装置製造
3
101.3%
x
x
他の暖房等装置製造
x
建設用金属製品製造
7
68.0%
12
119.1%
12
78.5%
建築用金属製品製造
35
85.4%
35
105.7%
35
77.2%
製缶板金業
28
74.0%
30
131.3%
33
76.4%
パレット製造
x
x
x
金属熱処理
17
89.1%
17
128.6%
17
81.5%
金属製品塗装業
18
85.8%
19
97.3%
18
87.5%
溶融メッキ業
17
99.7%
14
193.8%
12
82.0%
金属彫刻業
2
127.3%
x
x
電気メッキ業
17
84.1%
19
102.7%
24
88.3%
他の金属表面処理
18
79.0%
20
103.6%
20
75.9%
アルミ加工品製造
14
82.2%
12
92.6%
12
80.1%
金属プレス製品製造
68
90.5%
73
109.4%
78
86.8%
くぎ製造
3
72.3%
3
148.5%
4
76.8%
他の金属線製品製造
42
93.7%
45
100.1%
46
89.0%
出所:C2データより筆者作成。
注:1997、2002、2007、 2010年の4時点すべてに売上高データがある企業(1315社)を対象としている。
注:分析対象となっている期間で、業種分類が変更している企業は除外している。
注:該当企業が1社しか存在しない場合、xで表記し、伸び率データは表記していない。
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8
◇ ■ 共同研究
図表11 産業細分類別売上高伸び率100%を基準とした企業数
02・07年
07・10年
100%以上
100%未満
100%以上
100%未満
金属容器等製造
4
2
1
5
洋食器製造
0
1
0
1
機械刃物製造
2
2
1
4
利器工匠具等製造
1
1
1
1
作業工具製造
8
3
2
10
その他の金物類製造
26
20
7
39
配管工事付属品製造
17
7
5
17
ガス・石油機器製造
2
3
1
3
温風等暖房装置製造
1
0
0
1
建設用金属製品製造
7
5
1
11
建築用金属製品製造
17
18
5
30
製缶板金業
19
11
6
27
パレット製造
1
0
0
1
金属熱処理
13
4
2
15
金属製品塗装業
9
10
6
12
溶融メッキ業
13
1
3
9
金属彫刻業
1
0
1
0
電気メッキ業
11
8
9
15
他の金属表面処理
12
8
5
15
アルミ加工品製造
6
6
3
9
金属プレス製品製造
35
38
15
63
くぎ製造
2
1
0
4
他の金属線製品製造
23
22
11
35
鋲螺類製造
69
20
20
71
金属スプリング製造
10
0
1
9
他の金属製品製造
17
5
4
19
出所:C2データより筆者作成。
注:1997、2002、2007、 2010年の4時点すべてに売上高データがある企業(1315社)を対象としている。
注:分析対象となっている期間で、業種分類が変更している企業は除外している。
4.小括
以上の 1997 年、2002 年、07 年、10 年の間での東大阪産業集積地域における機械・金属工業の
売上高の変化をまとめると以下のようになる。
第 1 に、売上高は 97・02 年で下がり、02・07 年で上がり、07・10 年で下がるが、02・07 年の
売上高の上昇は自動車生産の拡大によると思われ、愛知県ではその伸び率は高いが、東大阪産業
集積地域では売上高は伸びているものの、その伸び率は相対的に低い。これは東大阪地域が自動
車生産と関係の薄い産業集積であることによると考えられる。
第 2 に、東大阪産業集積地域では 02・07 年で売上高は伸びたが、リーマンショック後の 10 年
では、97 年、02 年水準まで落ち込んだ。
第 3 に、「景気回復過程」にあたる 02・07 年に売上高を伸ばし、リーマンショックを挟んだ 07・
10 年では売上高が下がった企業数がもっとも多いが、両期間で売上高を伸ばしている企業も、ま
た両期間で売上高を減少させている企業も二極端に存在している。
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9
◇ ■ 共同研究
第 4 に、02・07 年で売上高を伸ばすことが難しかった企業層は、売上高1億円未満、従業員数
規模 9 人以下であり、また 07・10 年では売上高類型、従業員数規模が多いほど、売上高を伸ばす
企業が多くなっている。
第 5 に、業種別には中分類では売上高伸び率の差に大きな違いはなく、細分類では差はあるも
のの、同じ細分類業種であっても売上高を伸ばす企業と伸ばさない企業とがある。
経営環境の変化に応じて売上高が増減する企業が多い中で、経営環境の変化によることなく売
上高を増加させている企業も、東大阪産業集積地域には存在しており、鋲螺工業企業においても
同様のことが言える。それでは、売上高を伸ばしている鋲螺工業企業にはどのような特徴がある
のか、「レポート(2)」では新規取引先の開拓という点に焦点をあてて検討することとする。
分析・執筆
田中幹大 (摂南大学経済学部准教授)
データ加工
藤本迪也 (産業調査部[当時] 客員研究員)
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10
◇ ■ 共同研究
当レポートに関するデータ分析や産業調査分析を用いた提言、
コンサルティングをご希望のお客さまは、下記までご連絡ください。
【購入に関するお問い合せ】
株式会社帝国データバンク
顧客サービス統括部 先端データ分析サービス課
北村慎也
Tel: 03-5775-1092
弊社が発行する経営情報誌、「TDB REPORT」をご購読いただきますと、
今回の発表資料で使用した図表・グラフが
弊社サイト「TDB REPORT online」から無料でダウンロードできます。
執筆、研究、プレゼンテーションなどにぜひご活用ください。
TDB REPORT の年間・半年購読者様はダウンロード方法について
ご案内致しますので、お手数ですが下記までご連絡ください。
【TDB REPORT に関するお問い合わせ】
株式会社帝国データバンク 顧客サービス統括部 情報企画課
TEL03-5775-3163
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利用いただき、私的利用を超えた複製および無断引用を固く禁じます。
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