日本企業の中国事業 JST/CRCC中国研究シンポジウム 2015年2月12日 丸川知雄(東京大学社会科学研究所) 1 日本のビジネスマンは中国経済と中 国事業の将来に悲観的? • 2014年4月に日経リサーチが日本のビジネス マン3352人に行った調査で、今後10年の見 通しとして5%以上の成長を予想したのは3分 の1、残りは10年以内にバブル崩壊して経済 混乱と予想。また前年の同調査で3分の2近く は日本経済にとって中国の重要性は下がる と予測。 2 実のところ2010-13年は日本企業の第3次対中 投資ブームであった。どこで? 図1 日本の対中国直接投資フロー 16,000 14,000 12,000 百万ドル 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 19791980198119821983198419851986198719881989199019911992199319941995199619971998199920002001200220032004200520062007200820092010201120122013 日本の対中国直接投資(財務省・日銀統計) 日本の対中国直接投資(中国側統計) 年 (出所)財務省・日銀統計:ジェトロ(2014a,2014b)、中国側統計:国家統計局編(各年) 3 対中投資残高は年々増加。撤退ももちろんある だろうが、進出が撤退を上回っている。 30000 120000 25000 100000 20000 80000 15000 60000 10000 40000 5000 20000 0 (万ドル) (企業数) 図2 日本の対中国投資ストック(企業数、投資額残高) 0 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 日系外資企業の登記数(左目盛) 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 直接投資残高(右目盛) (出所)登記数:国家統計局貿易外経統計司編(各年)、直接投資残高:ジェトロ(2014c) 4 投資形態の変遷 • 模索期(1979-92年):輸出なら委託加工、国 内市場は難しいが許されれば合弁企業 • 第1次投資ブーム(1993-2000年):輸出なら委 託加工または独資、国内市場なら合弁 • 第2次投資ブーム(2001-2009年):国内市場 もなるべく独資 • 第3次投資ブーム(2010-2014年):委託加工 は転換迫られ、独資へ。 5 合弁7割(1997年)から独資7割(2012年)へ 図3 日本企業の中国における現地法人(日本側出資比率別の企業数内訳) 100% 90% 80% 70% 100% 60% 75%以上 100%未満 50%超 75%未満 50% 50% 40% 25%以上 50%未満 25%未満 30% 20% 10% 0% 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 (出所)経済産業省(2000~2014)より作成 6 合弁から独資、そして再び合弁の時 代へ • 日本企業の中国現地法人の売上に占める輸出の割 合は1997年の5割以上から2012年の3割弱へ低下。 • 唐沢製作所の例:1993年合弁設立。98年合弁解消し て独資設立。若い中国人を経営者に据えたところ大 成功し、販売量70倍に。2011年経営者が7割保有する 合弁に。 • 海信日立の例:海信と日立が独自に中央空調市場を 開拓したが成功せず。2003年対等出資の合弁を設立 し、日立の技術と海信のマーケティングを結合。 • 味千ラーメンの例:合弁で香港・北京に進出したが失 敗。香港人の会社にフランチャイズ権を与えたところ、 600店舗以上に成長。 7 なぜ合弁? • 国有企業が合弁相手だった時代はどのよう にその悪風の侵入を防ぐかが課題だった。 • 中国の市場経済の歴史が長くなるにつれ、中 国市場でのマーケティングなどに優れた経験 とノウハウを持つ中国企業、経営者が増えて きた。また、企業の目標、企業文化における ギャップも縮小。 • 日中双方の優位性を結合した合弁企業が成 功する可能性が大きくなった。 8
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