頚部に創の残らない甲状腺内視鏡手術 経皮穿刺型鋼線筋鉤の開発 鹿児島大学 消化器外科・内分泌外科 鹿児島大学病院 手術部 助教 中条哲浩 頸部に創の残らない甲状腺内視鏡手術 前胸部アプローチ 吊り上げ 整容性に優れる 術後20日目 Kagoshima University Hospital 頸部に創の残らない甲状腺内視鏡手術 前胸部アプローチ 吊り上げ 広頸筋下層の剥離範囲 キルシュナー鋼線の幅 7cm 右鎖骨 3cm 4cm 3cm Working space 5mm カメラ 右葉切除 左葉切除 Kagoshima University Hospital 頸部に創の残らない甲状腺内視鏡手術 口腔アプローチ 吊り上げ Detachment area 整容性に優れる 術後20日目 Kagoshima University Hospital 吊り上げ式前胸部アプローチによる甲状腺内視鏡手術 前頸部の皮膚を剥離した後に吊り上げて、甲状腺周囲に ワーキングスペースを作り、手術操作を行う。 本考案の背景 内視鏡下甲状腺切除術 (前胸部アプローチ) は、頸部に皮膚切開 を置かずに、鎖骨の下の小切開部(約3cm)より手術器具を挿入して 操作を行う術式。 手術器具の挿入部位が小さいため、大きな器具は挿入できない。 直接臓器や周囲組織を触らない(器具で触る)。 本考案の背景 特に頸部の内視鏡手術は操作スペースが極端に狭い。 甲状腺の前面には、前頚筋が存在する。 頸部より離れた創から甲状腺周囲の筋肉を側方に牽引して甲状 腺を露出する操作は難しい。 通常は良好な視野を得るために前頚筋群を切離せざるを得ない。 そこで 我々は狭い頸部のスペースにおいて、 効率的に筋肉を牽引できる筋鉤を考案した 経皮穿刺型 鋼線筋鉤 (原型) 穿刺部分(柄) Handle 柄が針状となっており、皮膚の内側から外側に向けて穿刺し 皮膚外から柄を牽引して使用する。 経皮穿刺型 鋼線筋鉤 (原型) 柄 筋鉤の種類は数種類の形状を用意し、 使う場面に合わせて最適なものを選択 する。 中途で入れ替えて交換することが可能。 牽引は写真のハンドルではなく、ラチェット式に固定する外部 の固定器具を考えている。 経皮穿刺型 鋼線筋鉤 (原型) 本発案は、鋼線のワイヤーで作成した鍵型の筋鉤である。 把持する柄の部分の先端が穿刺針となっており、術野(皮膚の 内側)から経皮的に外に柄を出して(穿刺)、皮膚の外から牽引 することで、頸部の皮膚に切開創を加えることなく前頚筋を牽引 することが可能。 経皮穿刺型 鋼線筋鉤 (原型) 前胸部の小さな皮膚切開創から 筋鉤の本体を皮下のスペース に挿入し、前頸部に皮膚切開を置くことなく、また前頚筋群を切断 することなく、狭い頸部に有効なスペースを作ることが可能 良好な視野の下で安全かつ迅速な甲状腺摘出が可能となる 鋼線筋鉤の使用の実際 ビデオ映像 鋼線筋鉤 と 固定器具 本発案器具は、外に出した柄の部分(ワイヤー)に調節可能な固 定器具を取り付けることで、症例に応じてベストな柄の固定距離 を調節できる。 通常の筋鉤は助手が持続牽引する作業を担わなければならな いが、固定器具を装着することで、人間の手(助手の作業)をフ リーにすることが可能であり、手術効率の点からも有用である。 本発明の特徴 経皮穿刺により筋鉤の柄の部分を内側から外側に出すことで、 皮膚の外から筋鉤を把持して牽引が可能。 筋鉤の先端の形態はあらかじめいくつかのバリエーションを用 意しており、状況に応じていつでも交換可能である。 外に出した筋鉤の柄の部分に固定装置を付けることで、助手 が把持することなく視野展開が可能となり、通常はヒトが行うべ き作業を器械に代替できる。 本筋鉤で穿刺した傷は針穴であり、術後は跡形も無く消失する。 整容性を求める頸部手術に必要な要素をすべて満たしている 画期的な考案器具であり、頚部の内視鏡手術の普及に貢献す る発案と考える。 (使い始めると手放せない器具) 本発案機器の展望 Disposableの機器として発売可能。 甲状腺疾患(手術)は女性に多い疾患であり、整容性に優れる内視 鏡手術は非常に有用で、患者の希望も多い。 日本では頚部内視鏡手術の保険適応が目前であり、本発案の製品 化は今後の内視鏡手術の普及に大きく貢献する。 北米やヨーロッパでは甲状腺疾患の患者数は断然多く、世界的に は数多くの手術が行われている。 本製品も学会発表やPR活動を 行うことで、全世界の外科医が興味を示すことが予想される。 今日の内視鏡手術は増加の一途を辿っており、世界的需要が見込 まれる。 本技術に関する知的財産権 発明の名称:経皮穿刺式筋鉤及び筋鉤器具 出願番号: 特願2008−102695 特開2009−247796 出願人: 鹿児島大学 発明者: 中条哲浩、他1名 お問い合わせ先 鹿児島大学 産学官連携推進機構産学官連携部門 准教授 中武 貞文 TEL FAX e-mail 099-285-8492 099-285-8495 office@rdc.kagoshima-u.ac.jp
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