「面積と確率 ―ビュフォンの針と円周率π―」

高校生のための現代数学講座
「確率と統計」
講義 (4) 白石 潤一
東京大学
玉原国際セミナーハウス
2016 年 7 月 23 日
「面積と確率 ―ビュフォンの針と円周率 π―」
サイコロでは、起こりうる事象の数は 6 で、例えば、1 の目が出る確率は 1/6 で
す。どんな問題でも、起こりうる事象の数が有限個であれば、そこから導き出され
る確率は有理数となるのが普通でしょう。
では、確率がなにか面白い (有理数ではない) 実数で与えられるような問題を考え
ることはできるでしょうか?18 世紀の博物学者ビュフォンが考えた問題はそのよう
なもののうち最も古いものです。
ビュフォンがどんな人物であったか、後で少し調べてみてください。ちなみに私
は今、たまたまパリでこの原稿を書いてます。つまり、数百年前には彼が暮らして
いたパリで、偶然、彼の問題について思いを巡らすことになりました。そんな確率っ
て、一体どのぐらいなんだろうか · · ·
ビュフォンは微積分の方法を確率に持ち込もうとしました。そうすると、当然、連
続に分布する事象や、(有理数ではない) 実数で与えられる確率に出会うことになり
ますね。
それでは、ビュフォンの考えた針の問題について説明します。ここでは、話をよ
り具体的にするために、色々な数値パラメータを私の勝手で決めてしまうことにし
ます。一般のパラメータでやり直すのことは、興味を持ったみなさんへの宿題にし
ておきます。
まず、模造紙を x-y 平面に見立てます。 x 軸に平行な直線を 20cm 間隔でたくさん
引きましょう(以下の図では 11 本です)。次に、平行線の間隔の半分の長さ 10cm
の針をたくさん(N 本としましょう)握りましょう。では、その針を模造紙の上に
バラバラバラっと無作為に撒いてください。
撒かれた針は、平行線のどれか一つ(かつ一つだけ)と交わるものと、どの平行
線とも交わらないものに分けることができます。平行線のどれかと交わる針の数を
M 本としましょう。
ビュフォンは
lim
N→∞
M 1
=
N
π
となることを示しました。先ほど言ったように、連続に分布する確率密度という考
え方と、微積分の応用が必要となります。sin θ, cos θ といった三角関数の扱いとその
1
2
積分について少し勉強しておかなければいけないことになります。ここまで考えて
来た私は、チョット頭が痛くなってきたので実験してみることにしました。
この実験では N = 200 としました。平行線と交わる針を数えた結果は M = 62 で
した。
M 200 100
=
=
= 3.22581 . . .
N
62
31
ウム、それほど悪い結果ではないような気がスル · · ·
では、この続きの解説は黒板でのお楽しみということで · · ·