大阪市北区、 富国ビル歯科勤務 前田早智子 (24回生)

第182回 臨床談話会
矯正と補綴の接点
大阪市北区、富国ビル歯科勤務前田早智子(24回生)
特にこの数年、一般歯科
学、TMJ等に関する知識を必要とする場合も
医の為のMTMに関する特
多い。しかるに、前述のように、このような成
集が、歯科雑誌や本によく
人患者は、これからますます増加の途をたどる
みられるようになった。と
であろう0それに対応する為には矯正医といえ
思っていると、最近では、
ども、より高度最近の歯科学を必要とするし、
歯科界のみならず、ごく一
般のメディアにも歯並びに関する記事が散見さ
れる。それはおそらく、社会的要求でもあるの
だろう0実際、私の診療所においても、男女を
問わず成人の矯正希望者が増加している。成人
の場合、子供の矯正とちがって、治療には種々
の制約がある。時間的制約であり、審美、発音
障害等の社会生活上の制約であり、さらに個人
的な口腔内状態による制約である。ゆえに、ベ
ストの治療をめざすならば、本格的矯正が望ま
しいが、ある程度妥協的な治療計画を余儀なく
される場合もあり、また、複雑な口腔内状態ゆ
えに、矯正のみならず、高度な補綴学、歯周病
また一般歯科医も矯正歯科学を知っているべき
であろう0しかし、ここでいう矯正歯科学とい
うのは、さきほどから言っているように、通常
の矯正歯科学というよりは、成人MTM、成人
矯正歯科学というような別の体系を持った医療
として考えるべきではなかろうかというのが、
最近、矯正歯科医として自戒をこめて痛感して
いることである。MTMは非常におもしろい分
野である。これは私にとってだけでなく、一般
歯科医の先生方にとっても同じと思う。今後さ
らに研鉾を積んでゆきたいと思っている。その
意味で、この講演の機会を与えていただいたこ
とに非常に感謝している。
神戸市開業清水敏郎(S.46年入)
本格矯正では、習慣的に
ト、すなわちP症との関連や根充歯の移動、術
資料採得するが、MTMで
後保定などを解説した0またMTMに伴う矯正
は、補綴のための前準備と
学的な諸注意、すなわち矯正力とその方向、作
いうこともあって、資料採
用時間、調節量、来院間隔などを述べ、加えて
得が不十分となることが多
成人症例に伴う注意点、例えば校合調整や
い○ スライドの不備もあっ
TMJの問題などに触れた。
て、期待には答えられないと思うが、床装置、
DBS、舌側弧線装置などの装置別に10症例ほど
を提示し、その個々の症例の注目すべきボイン
最近はストレスの増加もあって、顎関節症と
認識される患者が増加し、当然ながら多種多様
な不正嘆合と直接的に関係するために、顎関節
症と矯正治療という立場から、開岐症例と反対
配、軟組織側貌、校合高径と顎位、不正校合の
岐合症例について考察を加えた。これは学童期
種類と校合平面や岐合力との関係など、補綴と
における早期治療の重要性を再認識することに
矯正の接点として捕えることができる。
なる。
義歯と矯正…、無関係のように感じられるが、
歯科は岐合学が重要と、20歳までは矯正、20
∼40歳代はクラウンブリッジワーク、40歳以降
校合の再構成という意味においても、矯正学的
はデンチャーワークが主と考えて、日常臨床に
な知識が義歯の作製に参考になることを説明し
た。高齢化社会を迎えて、義歯が第三の歯とな
従事している。結果的には矯正専門医も含めた
ホームドクターとして、患者を縦断的に診る姿
るためには、有歯顎時の校合を考慮して作製さ
が表現できれば幸いである。
れるべきである。不正校合と顔貌との相関、乱