第3 章 生物学的処理

第3章
生物学的処理
3.1 活性汚泥法
活性汚泥法は、ばっき槽の中に有機物(BOD 成分)を吸
⑦ BOD-汚泥負荷(図 3.1.1 参照)
着・分解する活性汚泥を入れ、ここに空気(酸素)を送って
ばっき槽中の MISS 1kg あたり 1 日に流入する
汚濁水を浄化する方法である。
kg-BOD 数で単位は(kg-BOD/kg-MLSS・日)である。
図 3.1.1 に活性汚泥法の基本フローシートを示す。活性
汚泥法の基本となる設備は次の①②③である。
標準活性汚泥法では BOD-汚泥負荷を 0.2~0.4
(kg/kg-MLSS・日)程度とする。
① 流量調整槽:活性汚泥法の処理は 24 時間連続処理を原
⑧ BOD-容積負荷(図 3.1.1 参照)
則とする。
ところが実際の排水は流量や濃度が変動する。
ばっき槽 1 m3 あたり 1 日に流入する kg-BOD 量で
そこで、
汚濁水の流量と濃度の均一化を図る目的で流量
単位は(kg-BOD/m3・日)で表す。
調整槽を設ける。
標準活性汚泥法では BOD-容積負荷を 0.3~0.8
kg/m3・日程度にとる。
② ばっき槽:排水と活性汚泥を混合して空気(酸素)を吹き
込み、
バクテリアによって有機物の吸着や生物分解を行
い汚濁水を浄化する。
● 活性汚泥法の処理方式
③ 沈殿槽:活性汚泥のフロックを沈殿させる。上澄水は放
流し、
沈殿したフロックの一部は余剰汚泥として引き抜
き、残りは返送汚泥としてばっき槽に戻す。
表 3.1.1 に主な活性汚泥法の運転条件を示す 1)。
図 3.1.2 に活性汚泥法のフローシート例を示す。
① 標準法、長時間ばっき法:ばっ気槽入り口では酸
素消費量が大きく、出口は小さいのでばっ気量の調
● 活性汚泥法で使う用語
整が必要。BOD 汚泥負荷に応じて返送汚泥量の調整
① SS(Suspended Solid:懸濁物質)水中に浮遊している不
など、きめ細かな維持管理が要求される。
溶解成分の総称。乾燥重量(mg/L)で表わす。
標準法と長時間ばっき法の流れは同じである。
② ML(Mixed Liquor:混合液)ばっき槽の中の原水と活性汚
泥の混合水。
長時間ばっき法は、ばっき時間を 18~24 時間と
長くとり、活性汚泥が自己消化により減量化するこ
③ MLSS(Mixed Liquor Suspended Solid:混合液中の浮遊
とをねらっている。中小規模の浄化槽や生物処理設
備に適している 2)。
物質)主に微生物の量を(mg/L)で表わす。MLSS の中には
無機物などの SS も含まれる。
② 分注法:ばっ気槽の全面に原水を分割注入する方
④ MLVSS(Mixed Liquor Volatile Suspended Solid : MLSS
法。ばっ気槽全体に分散注入されるので汚泥への悪
量を強熱してその減量で表す)
影響を防止できる。
通常、MLSS の 75~85 %を占める。MLSS よりも生物量に
③ 汚泥再ばっき法:通常、沈殿槽に沈んだ汚泥は酸
近い数値を意味する。単位は mg/L である。
欠状態になっている。これをそのままばっき槽に返
⑤ SV30(Slidge Volume:汚泥容量)1 L の ML をメスシリン
送して空気を送っても活力を回復するまでに時間
ダーにとり 30 分沈降させ沈殿物の容量(mL)を読み次式で
がかかる。そこで、汚泥再ばっき槽で汚水と高濃度
計算。汚泥沈降のしやすさを表す。
の活性汚泥にばっ気して、吸着物質を予め分解して
SV30(%)= 沈降汚泥容量(mL)/1000 mL×100
安定化したのちばっ気槽に流入させる。
産業排水では通常 20~30%である。
④ 酸化溝法:回転ブラシなどの機械ばっ気装置によ
⑥ SVI(Sludge Volume Index:汚泥容量指標)
りばっ気と流動を同時に行なう。構造が簡単で維持
SVI は活性汚泥を30 分間静置した時の1g の活性汚泥の占
める容量を mL で示す。
管理が容易であるが大きな設置面積が必要となる。
写真 3.1.1 は活性汚泥の代表例である。
SVI = SV×10000/MLSS
図 3.1.3 は活性汚泥生物と糸状性細菌例である。
正常な活性汚泥のSVI は 50~150 であるが 300(mg/L)以上
細菌の集合体であるズーグレアは粘着物質を出し
ではバルキングの可能性がある。
てお互いに凝集する。バルキングが起こると糸状細
菌が優先して繁殖し、固液分離ができなくなる。
27
表 3.1.1 活性汚泥法の運転条件
項 目
標準活性汚泥法
長時間ばっき法
分注ばっき法
汚泥再ばっき法
酸化溝法
BOD 負荷
容積負荷
汚泥負荷
(BOD-kg/m3・日) (BOD-kg/kg-SS)
0.3-0.8
0.2-0.4
0.15-0.25
0.03-0.05
0.4-1.4
0.2-0.4
0.8-1.4
0.2-0.4
0.1-0.2
0.03-0.05
MLSS 濃度
(mg/L)
1,500-2,000
3,000-5,000
2,000-3,000
2,000-8,000
3,000-4,000
空気量
(m3/m3・排
水量)
3-7
15 以上
3-7
12 以上
―
滞留時
間 (h)
返送汚泥
率 (%)
BOD 除去
率 (%)
6-8
18-24
4-6
5 以上
24-48
20-30
50-150
20-30
50-100
―
95
75-90
95
90
95
計量槽
ばっき槽
流量調整槽
沈澱槽
有効容量V(m3)
汚泥濃度CA(mg/L)
原 水
排水量
Q=m3/日
処理水
排出量
Q=m3/日
P
BOD濃度
L0(mg/L)
BOD濃度
Le(mg/L)
空気
返送汚泥
ズーグレア(Zoogloea)
返送汚泥濃度CR(mg/L)
繊毛虫類
500~1000μm
余剰
汚泥
返送汚泥量q(m3/日)
カルケシウム (Carchesium)
細菌の集合体
100~200μm
写真 3.1.1 活性汚泥の代表例
ΔS(kg/日)
図 3.1.1 活性汚泥法の基本系統図
流量調
整槽
ばっ気槽
沈殿槽
流量調
整槽
枝別れ
ばっ気槽
フロック形成細菌
繊毛虫類
ズーグレア
ボルティセラ
枝別れ
バルキングが
発生すると糸
状細菌が繁殖
スフェロチルス
沈殿槽
繊毛虫類
カルケシウム
分注法
標準ばっき法、長時間ばっき法
後生動物:ロタリア
ノストコイダ
活性汚泥生物
流量調
整槽
ばっ気槽
沈殿槽
ミクロス
リックス
糸状性細菌
図 3.1.3 活性汚泥生物と糸状性細菌
ばっ気槽
沈殿槽
汚泥再
ばっき槽
汚泥再ばっ気法
酸化溝法
1) 日本下水道協会(1984)より一部抜粋
2)長時間ばっ気法は標準法と同じ流れであるが、BOD- 汚泥
図 3.1.2 活性汚泥法のフローシート例
負荷、BOD-容積負荷が小さく、ばっ気時間が長いので余剰
汚泥の発生量が少ない。
28
第3章
生物学的処理
3.2 膜分離活性汚泥法(MBR)
活性汚泥法は、ばっき槽の後段に汚泥分離のための沈殿
槽が必ず付属している。
● 膜の構造
図 3.2.3 は MF 膜モジュールの形状例である。
沈殿槽は懸濁水をためて沈殿物を沈めるだけできれいな
膜本体の構造は、平膜、管状膜、中空糸膜などがあ
上澄水を簡単に分離できるので、古くから使われ、今でも
り、設置形式では、浸漬型、槽外設置型がある。
広く普及している。しかし、沈殿槽を置くための設置スペ
図 3.2.4 は平膜モジュールの構造例である。
ースが必要で、活性汚泥の性状によっては分離効率が左右
平膜は ABS 樹脂で成形したろ板に、スペーサーをは
されるので、維持管理が難しいなどの問題点があった。
さんで、塩素化ポリエチレンを素材とした精密ろ過膜
この不都合を改善する手段として MF 膜を用いて汚泥を
(細孔径 0.4μm)を 2 枚融着して 1 枚の平膜カート
リッジ(0.49×1.0m、0.8m2)としてある。
分離する膜分離活性汚泥法(MBR: membrane bioreactor 法)
が開発された。
膜モジュールは平膜を数十枚重ねて、上部にある集
MBR 法はMF膜を活性汚泥槽の中に設置して吸引ポンプで
水を引っ張り、懸濁物をろ過分離する単純な原理である。
水ノズル管からポンプで水を吸引ろ過して回収する。
同時に、膜面の閉塞防止とばっ気を兼ねてユニット下
部から空気を送る。
● 標準活性汚泥法と膜式活性汚泥法の比較
平膜は①膜の強度がある、②膜に物理的・化学的耐
図 3.2.1 は標準活性汚泥法と膜式活性汚泥法の概要を
比較したものである。
久性があるため、高濃度の次亜塩素酸ソーダなどの酸
化剤を膜の洗浄に使用することができるなどの利点
図の上段は標準活性汚泥法のフローシートである。下段
の膜分離活性汚泥法は、
基本的にスクリーン、
流量調整槽、
ばっき槽、MF 膜だけで構成されており、単純な流れである。
図 3.2.2 に示す MF 膜の細孔は 0.2μm~0.4μm と小さい
がある。
短所は、他の膜と同様に①価格がまだ高い、②定期
的な膜の洗浄や交換が必要、③ばっ気槽の水質が安定
しにくく発泡しやすいなどがあげられる。
ので固液分離性能は従来の活性汚泥法以上の機能をもって
いる。処理水中には、浮遊物をはじめ大腸菌などがほとん
ど含まれず、消毒なしでも高品質の処理水を得ることがで
きる。
● 膜式活性汚泥法フローシート
図 3.2.5 は膜式活性汚泥法フローシート例である。
膜カートリッジには 0.1~0.5μm 程度の MF 膜が使
活性汚泥(MLSS)の濃度は標準活性汚泥法の MLSS 2,000~
用される。汚泥分離のための沈降時間が不用なので、
8,000mg/ℓ に対し MBR の MLSS は 8,000~15,000mg/ℓ と高
ばっ気槽の MLSS 濃度を通常の 3 倍(15,000mg/ℓ )
負荷での運転が可能で BOD-容積負荷を高めることができ
程度に保てる。これにより、ばっ気槽の容積を 1/3 に
る。
縮小することもできる。
膜分離活性汚泥法の長所には下記がある。
膜は長期間使用しているとどうしても汚染する。こ
① 汚泥の管理が容易、
の場合は洗剤や次亜塩素酸ナトリウムなどを使って
② ばっ気槽内の汚泥を高濃度に維持できる
化学洗浄する。
③ 沈殿槽が不要になるので施設がコンパクトになる。
どんな膜を採用した場合でも膜モジュールは複数
短所として下記がある。
準備しておくとよい。
① 膜の価格がまだ高い
洗浄したものを予備として保管しておき、いつでも
② 定期的な膜の洗浄(薬液洗浄)や交換が必要
入れ替えが出来るようにしておくことが重要である。
③ ばっ気槽の汚泥の挙動が安定しにくく発泡しやすい
表 3.2.1 は膜分離活性汚泥処理の原水と処理水の
発泡が激しいときは、汚泥濃度の管理を厳密に行ない、
汚濁水を徐々に投入して活性汚泥に慣らすことが改善のポ
イントである。
水質比較例である。
MF 膜ろ過なので懸濁物の分離が確実で常に 5mg/L
以下を確保できる。
29
ブロワー
流入
M
沈殿槽
スクリーン
流量調整槽
No.1
No.2
ばっ気槽
ばっ気槽
チューブ
放流
集水ノズル
余剰
汚泥
返送汚泥
MF膜(0.4μm)
(塩素化PE)
標準活性汚泥法
スクリーン
集水管
スペーサー
処理水
ブロワー
P
流入
MF膜(0.2~0.5μm)
膜カートリッジ
寸法:0.49×1.0m(0.8m2/1枚)
引き抜き汚泥
ばっ気槽
流量調
整槽
空気
P
散気管
膜カートリッジの構造
膜式活性汚泥法(Membrane bioreactor)
図 3.2.1 活標準活性汚泥法と膜分離活性汚泥法の
膜ユニットの概略図
図 3.2.4 平膜モジュールの構造例
フローシート例
ブロワー ②
砂ろ過
大腸菌
ウイルス
ブロワー ①
処理水
空気
計量槽
MFろ過
P
空気
液中膜
原水
UF膜ろ過
MF膜
RO膜脱塩
1Å
100Å
10Å
P
1000Å
1μm
10μm
100μm
P
1mm
80
流量調整槽
引き抜
き汚泥
散気装置
膜分離活性汚泥槽
図 3.2.2 MF 膜と液中膜の細孔の大きさ
図 3.2.5 膜式活性汚泥法のフローシート例
ろ過水
ろ過水
ろ過水
集水ノズル
P
P
P
表 3.2.1
膜分離活性汚泥処理の原水と
処理水の水質比較例
MF膜
MF膜
MF膜
スペーサー
空気
空気
平膜式モジュー
ル
空気
横式中空糸膜
モジュール
縦式中空糸膜
モジュール
図 3.2.3 MF 膜モジュールの形状例
30
測定項目
原 水
処理水
BOD5(mg/ℓ )
300
<15
COD(mg/ℓ )
200
<20
T-N (mg/ℓ )
20
<5
T-P(mg/ℓ )
7
<1
SS(mg/ℓ )
200
<5
第3章
生物学的処理
3.3 生物膜法
生物膜法は色々な形状の材質に生物膜を生成、付着させ
て排水中の有機物を分解する方法の総称である。
接触ばっき装置は長期間使用するとろ材の付着汚
泥が肥厚し閉塞する可能性があるので逆洗が必要で
その中でも接触ばっ気法、回転円板法、流動床法などが
よく使われている。
生物膜法の特徴は以下の①~⑥である。
ある。
図 3.3.3 はろ材と空気逆洗装置の設置例である。
① 微生物がろ材に付着しているので汚泥返送は不要で、
維
充填材の下 10 cm あたりから逆洗空気を間欠的に分散
持管理が容易である。また、活性汚泥の沈殿槽で見られ
するように送る。ばっき槽の底部は傾斜を設け、剥離
るバルキング現象がない。
した余剰汚泥がたまりやすい構造とする。たまった汚
② 汚泥が浮遊していないので、水量が急に増えても汚泥の
泥は適宜、ポンプでくみ出して引き抜く。
流出はなく、処理水質が安定している。
③ 余剰汚泥の発生が少ない。
● 回転円板法
④ 好気性生物膜の下に嫌気性生物膜が形成され、BOD 以外
図 3.3.4 は回転円板の概略図である。プラスチック
に窒素除去が期待できる。
製の円板を汚水に 40 %程度浸漬し、これを低速で回
⑤ ろ材に付着している微生物の量が決まっているので管
理できる汚濁濃度も決まってしまう。
転すると円板表面に微生物が膜状に生成、付着する。
円板上の生物膜は大気から酸素を取り込み、汚水から
⑥ あまり汚泥負荷を高くするとろ材が肥厚化して閉塞す
る。
は汚濁有機物を吸収して、好気性酸化により水を浄化
する。回転円板法の特徴は①~④である。
① 円板の回転によって酸素補給と汚濁物質の分解を
● 接触ばっき法
行うので初期投資はかかるが省エネルギーでラン
図 3.3.1 に接触ばっ気法のばっ気方式例を示す。
ニングコストが低い。
BOD 濃度の高い水を接触ばっ気法で処理すると生物膜が
急に肥厚してろ材が閉塞し、処理効果が減少する。したが
って、接触ばっ気法は BOD 濃度 BOD 200 mg/L 以下の排水処
② 接触ばっ気と同様に返送汚泥が不要で、汚泥の発
生量も少ないので維持管理が容易である。
③ 好気性生物膜の下層に嫌気性生物膜が形成され、
理に適している。
汚濁水中の窒素除去が期待できる。
接触ばっ気法の中でも全面ばっ気法は空気補給がまんべ
④ ブロワーが不要なので低騒音である。
んなく行き渡るという長所がある反面、ばっ気をあまり強
くするとせっかく付着した生物膜が剥離することがあるの
で注意が必要である。
● 流動床法
図 3.3.5 は流動床法の概略図である。ばっき槽の中
図 3.3.2 は接触ばっ気槽の形状とろ材の充填方法の一例
に流動性のある多孔質のプラスチック製担体を入れ
である。通常、ろ材は 0.5 m3 の大きさのものを 2 個集めて
てこの表面に微生物膜を形成させると高い処理効率
1 m3 とし、これをばっ気槽の大きさに合わせて積み上げる。
が得られる。一例として、5 mm 程度の大きさのポリ
改善前の図(上段)では高さ 3 m、幅 4 m に積み上げて
ビニルアルコール粒は見かけの比重が 1.02 程度なの
片面ばっ気をしているが、これでは左半分(斜線部)のろ
でばっ気により浮遊して流動床を形成する。
材間の水が循環しにくい。その結果、ろ材が閉塞して目標
この方式を採用すると BOD 容積負荷を通常の 10 倍も
水質まで浄化できなくなるなどの不都合が生じる。
大きくできる。流動床法の特徴は以下①~③である。
これに対して、改善後の図(下段)では幅 4 m を 2 m×2
①返送汚泥は不要で、汚泥の発生量が少ない。
に分割し、中心でばっ気をしている。これにより、水の旋
②ろ材の充填を密にすると閉塞するので、充填率は
回が良くなるので閉塞や水質低下の問題は解消する。
50~70 %とする。
これらのことから、ろ材の幅(W)と高さ(H)の比は W:H
③BOD 負荷を大きくとれるのでばっ気槽がコンパクト
=1:1~3 が良い。
で処理効率が高い。
31
空気
空気
駆動モーター
駆動モーター
M
M
回転円盤
水面
片面ばっき方式
中心ばっ気方式
空気
回転円盤
M
正面図
全面ばっ気方式
側面図
機械ばっ気方式
図 3.3.1 接触ばっ気法のばっ気方式
4 m
空気
改善前
3 m
充填材の高さ3m、幅4m
の場合は左側半分(斜
線部)は水が循環しに
くく閉塞しやすい。
閉塞
2 m
空気
図 3.3.4 回転円板装置の概略図
原 水
2 m
空
改善後
スクリーン
充填材の高さ3m、幅2m
に分割すれば水が左右
に分かれて循環するの
で閉塞がなくなる。
3 m
気
スクリーン
出
口
微生物担体
立方体または球形
図 3.3.2 接触ばっ気槽の形状とろ材の充填方法
空 気
充填材
細孔
逆洗用散気管平面図
2 m
細
孔
拡
大
立方形担体
充填材
大
拡
閉ループとし穴は
下向き45度とする
0.7m
細
孔
細孔内部例
細孔
2.5 m
汚
泥
球形担体
図 3.3.3 ろ材と空気逆洗装置
図 3.3.5 流動床法の概略
32
第3章
生物学的処理
33.4 流量調整槽
水処理装置の多くは連続式で運転される。理由は多くの
腐敗防止を兼ねて常に撹拌する必要がある。
水を効率良く処理できるからである。しかし、濃度、流量
空気は調整槽 1m3 あたり 0.5~1.0 m3/m3・h の流量
管理を適切に行なわないとたちまちのうちに処理効率が低
で送る。一例として、最大水深 3.0 m で 100 m3 の流量
下することもある。
調整槽の場合は 100 m3/h (1.7m3/分)圧力 3,000 mmAq
その理由は下記の①②である。
以上のブロワーを選定する。この場合、予算不足を理
① 排水の濃度、温度は常に一定とは限らない。
由に 1 台のブロワーで流量調整槽とばっき槽の両方
② 排水の排出量は変動することが多い。
に空気を送ってはならない。理由は以下のとおりであ
中小規模の生産工場(食品、めっき工場など)では少量
る。流量調整槽は水面が変動するが、ばっき槽の水位
多品種の商品を扱うので、時間とともに上記①②の数値
は常に一定である。もし、流量調整槽の水深が浅いと
が頻繁に変わることがある。
きに同じブロワーで空気を送ったら、ほとんどの空気
そこで、排水の流量を一定に保ち、腐敗を防止する目的
は水深の浅い流量調整槽側に流れてしまう。
で流量調整槽を設ける。
その結果、ばっき槽には空気が補給されなくなり、
嫌気状態となって生物処理が困難となる。
● 流量調整槽の役割
活性汚泥法で汚濁水浄化の主役を演ずるのは言うまでも
なく生物である。生物の集合体である活性汚泥は人間の動
● 流量調整槽と処理槽の水位が異なる場合のポンプ
数の決め方
きと良く似ており急激な変化を嫌う。いつも同じ物を同じ
連続処理を導入する時にもうひとつ留意されたい
量だけ食べていれば生物はそれに慣れて安定した代謝活動
ことがある。それは、流量調整槽と処理槽の水位が異
をするので結果的に良好な処理水を排出する。
なる場合のポンプ数である。
そのために活性汚泥処理では流量調整槽を設けて排水を
一定の流量、均一な BOD 濃度に調整して連続的にばっき槽
に送るようにする。
① 調整槽より処理槽の水位が低い場合
(図 3.4.3)
:流入水が急に増えて 2 台のポンプ(P1、
P2)で汲み上げても間に合わない場合は調整槽の水
工場排水や生活排水は図 3.4.1、
図 3.4.2 に示すように 1
がオーバーフローで移流するように図のように流量
日 24 時間いつも同じ流量で出てくるとは限らない。
調整槽上部に開口部を設けておくとよい。
たとえば、図 3.4.1 の工場は朝 8 時から 18 時が操業時間
で、その間、ほぼ一定の排水量となる。図 3.4.2 の生活排
水の場合は、朝夕に大きな排水量のピークがあり、12 時こ
これにより、汚水が外部への流出をひとまず避け
ることができる。
② 調整槽より処理槽の水位が高い場合
ろに小さなピークが現れたりすることもある。
(図 3.4.4)
:2 台のポンプ(P1、P2)で汲み上げても間
この流量や濃度の変動を均一に調整する目的で設けるの
が流量調整槽である。
に合わない場合は 3 台目の予備ポンプ(P3)が作動す
るように準備しておく。しかし、実際の現場では生産
流量調整槽の容量は(1)式で算出する。
工程の担当者と排水処理管理の担当者の連絡ミスな
V=(Q/T-KQ/24)×T・・・・・(1)
どにより、急激に排水量が増えて、流量調整槽から汚
3
濁水があふれ出る場合がある。この場合は、計算値に
V:流量調整槽必要容量(m ) T:排出時間(h)
3
Q:計画排水量(m /日)
こだわることなく、さらに大きな調整槽(1 日分以上
K:流量調整比
(日平均排水量の 1/24 の 1.5 倍に調整する
の容量)の設置をお勧めする。上記の理由から、実際
場合は 1.5)
には①の水位を優先して設計するほうが望ましい。
図 3.4.5 は超音波装置付き堰式計量槽である。これ
● 流量調整槽内の空気撹拌
は超音波で水面を計って流量を読みとる方式である。
流量調整槽の水はいつも同じ濃度とは限らないので
写真 3.4.1 の堰式流量計は懸濁物質が共存しても
水道を塞ぐことがないので汚泥計測に支障がない。
33
30
計量槽
排水量(m3/h)
工場排水
20
処理槽
調整槽
10
一定水位
高水位
低水位
調整槽ポ
ンプ3台
0
0
8
24
16
P1 P2
時 刻(時)
図 3.4.1 工場汚濁水の排出時間帯例
P3
図 3.4.4 調整槽より処理槽の水位が高い場合
3
排水量(m3/h)
生活排水
2
1
0
0
8
24
16
時 刻(時)
図 3.4.5 超音波装置付き堰式流量計
図 3.4.2 生活汚濁水の排出時間帯例
計量槽
高水位
一定水位
調整槽
処理槽
低水位
P1 P2
調整槽ポ
ンプ2台
写真 3.4.1 堰式流量計
(左側:V ノッチと出口穴、右側:入口と戻り穴)
図 3.4.3 調整槽より処理槽の水位が低い場合
34
第3章
生物学的処理
3.5 BOD と COD
● BOD (生物学的酸素要求量)
が多く生息する。植物プランクトンは光があると
BOD(Biochemical Oxygen Demand)とは微生物が水中の
炭酸同化作用により酸素を吐き出す。
有機物を分解するときに必要な酸素量を mg/L で表したも
BOD は光を遮断して測定するので、試料中に植物
のである。
(図 3.5.1 参照)
プランクトンがあると水中の酸素を消費してしま
BOD は微生物が 5 日間に消費する酸素量を BOD 5 として
う。これでは、せっかく BOD 測定をしてもバクテリ
表わすのが一般的である。分解しやすい生活系や食品系の
アが酸素を消費したのか、植物プランクトンが酸素
排水ならば 3 日程度でほぼ生物分解できる。窒素系化合物
を消費したのか区別できない。したがって、植物プ
は有機物に比べて分解速度が遅いが、それでも 5 日あれば
ランクトンの多い湖沼と海域は COD となった。河川
反応はほぼ終了するとみなされている。
水にも植物プランクトンは存在するが流水なので
測定に障害を与えるような数は存在しない。これら
● BOD5 で分解できる物質とできない物質
の理由で河川水は BOD 評価となった。
工場排水の中には化学的に安定な物質や生物の代謝を阻
● COD (化学的酸素要求量)
害する物質が混入することがある。この場合は BOD 5 で分
COD(Chemical Oxygen Demand)とは水中の被酸化性
解しきれないことがある。
物質(有機物や還元剤など)によって消費される酸素
図3.5.2 ①~④にいくつかの化学物質とBOD-時間曲線の
量(mg/L)のことである。COD には①マンガン CODMn と
関係例を示す。図中の TOD(Theoretical Oxygen Demand)
②クロム CODCr の二通りの測定法がある。
とは C は CO2、H と O は H2O、N は NH3 になるのに必要な理論
CODMn と CODCr の測定法の概要を図 3.5.3 に示す。
的な酸素量を示している。
① マンガン COD
① エチルアルコールは 5 日間でほぼ分解が終了し、10
過マンガン酸カリウム(KMnO4)は硫酸酸性で式(1)
日間かけても同じ数値なので分解しやすい物質とい
のように酸素を発生するので、その消費量から CODMn
える。
を求めることができる。
② アセトニトリルは 2 日目あたりから分解が始まり 5
2KMnO4+3H2SO4 → K2SO4+2MnSO4+3H2O+5[O]・・・(1)
日で急激に分解が進み 10 日ほどでようやく終了する。
③ エチルエーテルは 4 日目あたりからようやく分解が
CODMn は日本における法定測定法なので国内で最も
広く用いられる。CODMn は有害なクロムを使わないう
始まるが 10 日かかっても終わらない。
えに測定時間が短いなどのメリットがあるが、酸化
④ ピリジンに至ってはほとんど分解できない。
力が弱く図 3.5.4 のように CODCr よりも低い数値と
表 3.5.1 は有機物の TOD,COD,BOD 測定例である。
なる事例が多い。
COD で酸化されやすいのはエチレングリコール、クエン酸、
リンゴ酸、酒石酸など、BOD で酸化されやすいのはメチル
② クロム COD
二クロム酸カリウムによる酸素要求量(KCr2O7 -
アルコール、エチルアルコール、クエン酸などである。
COD)は 欧米で広く用いられる方法である。過マンガ
ン酸カリウムよりも酸化力が強いためほぼ全量の有
● BOD 5 の由来
機物が分解される。
BOD は主に河川の水質を表わす指標として用いられて
きた。イギリスのテムズ川の長さは約 356km あり、上流の
測定薬品に有害なクロム、硫酸水銀を使うので試験
後の廃液の処分には注意が必要である。
水が下流に達するのに約 5 日かかる。
その間にどの位の酸
素が必要かを知るという観点からイギリスでBOD 5という
指標が最初に用いられ、これが次第に世界的に普及した。
1) 左合正雄ほか:下水道協会誌.Vol.2, No.11, pp.20-33,
(1965)
● 湖沼水と海水が COD、河川水が BOD で評価される理由
2) 徳平 淳ほか:用水と廃水.Vol.12, No.2, pp.10-12, (1970)
湖沼と海域は水が滞留しているので、
植物プランクトン
35
の一部を参考に作図
希釈試料水+
希釈試料水+
微生物
微生物
Mn COD
操作概要
操作概要
①硫酸酸性下で0.005M KMnO4溶液
10mLを加え、沸騰水中で30分加熱。
植物プランクトンが
光合成しないように
密閉・遮光し、20℃
で5日間放置
初めの酸素濃度
(DO1)を測定
Cr COD
①硫酸酸性下で1/240mol/L二クロ
ム酸カリウム(KCr2O7)を加え、2時
間煮沸。
②0.0125Mシュウ酸ナトリウム溶
液10 mL添加。
②過剰のCr2O7イオンを25 mol/L硫
酸アンモニウム鉄(Ⅱ)溶液で青緑
→赤褐色まで滴定。
③0.005M KMnO4 溶液で滴定。
計算式
計算式
CODMn=(a-b)×f×1,000/V×0.2
DO1-DO2=3.5~6.2mg/L以内、
DO1-DO2/DO1×100=40~70%
の値を採用
CODCr=(a-b)×f×1,000/V×0.2
a:③の滴定数(mL) b:空試験数(mL)
a:水を用いた試験の滴定に要した25
mol/L硫酸アンモニウム鉄(Ⅱ)(mL)
f:空試験のファクター
5日後の酸素濃
度(DO2)を測定
V:検水量(mL)
b:滴定に要した25 mol/L硫酸アンモニ
ウム鉄(Ⅱ)(mL) V:検水量(mL)
検水量は0.005M KMnO4溶液の半分以
上が残るように検水量をとるのがポ
イント。
図 3.5.1 BOD 5 の測定方法
f: 25 mol/L硫酸アンモニウム鉄(Ⅱ)
溶液のファクター
図 3.5.3 CODMn と CODCr の概略測定法
100
CODCr
①エチルアルコール ②アセトニトリル
100
③エチルエーテル
CODMn
BOD5
④ピリジン
酸化率 (%)
50
②
でんぷん
ホルムア
ルデヒド
酢酸
50
エチルア
ルコール
酢酸エ
チル
25
③
安息香酸
④
0
10
0
5
(日)
0
BOD/TOD (%)
75
①
物質名
図
3.5.2 BOD-時間曲線の関係例 1)
図 3.5.4 有機化合物の酸素要求量 2)
表 3.5.1 有機物の TOD,COD,BOD 測定例
薬品名
理論
TOD
酸化百分率
(%)
実測値
COD
BOD
COD/TOD
BOD/TOD
メチルアルコール
75.0
7.6
51.2
10.1
68.3
エチルアルコール
104.3
11.0
66.8
10.5
64.0
エチレングリコール
64.5
50.0
12.8
77.5
19.8
ホルムアルデヒド
53.3
12.6
6.3
23.6
11.8
グルコース
53.3
6.2
38.0
11.6
71.3
ショ糖
56.1
25.4
27.9
45.3
49.7
デンプン
59.3
3.9
25.4
6.6
42.8
安息香酸
98.4
12.0
42.5
12.2
43.2
クエン酸
34.3
27.2
13.6
79.3
39.7
119.1
29.4
79.8
24.7
67.0
ギ酸
17.4
3.2
0.94
18.4
5.4
酢酸
53.3
12.5
23.1
23.5
43.3
リンゴ酸
35.8
27.6
4.0
77.1
11.2
酒石酸
26.7
25.0
8.0
93.6
30.0
L-グルタミン酸
55.8
31.2
43.9
55.9
78.7
フェノール
36
第3章
生物学的処理
3.6 汚泥負荷と容積負荷
活性汚泥処理で BOD 負荷を評価する手段には①汚泥負荷
と②容積負荷がある。
っ気槽内の CA (MLSS)である。
したがって、活性汚泥法におけるばっき槽の容量
図 3.6.1 に汚泥負荷と容積負荷の特徴を示す。
計算は①汚泥負荷による方式が合理的といえる。
①汚泥負荷:汚泥負荷とは 1 日あたり、ばっき槽内の浮遊
微生物群(MLSS) 1kg あたりの BOD 負荷量であ
● 生物膜処理法の容量計算
り、次式で表す。
活性汚泥法はばっき槽の中に MLSS を浮遊させて汚
汚泥負荷(BOD-kg/MLSS-kg・日) =
濁水を浄化する。
L0(kg/m3)×Q(m3/日)/CA(kg/m3)×V(m3)・・・(1)
これとは別に、ばっき槽の中に微生物が付着するよ
(1)式を変形すれば(2)式となり、汚泥負荷の式からばっ気
うなプラスチック製の板や繊維状の充填材を浸漬し
槽の容量 V(m3)が計算できる。
て汚濁水を浄化する生物膜法(接触ばっき法)がある。
3
3
3
3
V(m ) = L0(kg/m )×Q(m /日)×1/CA(kg/m )×
1/(BOD-kg/MLSS-kg・日)
この方法では生物が充填材に膜状に付着するので
・・・(2)
MLSS 濃度の把握ができない。
3
②容積負荷:ばっき槽 1m に対して 1 日に流入する排水の
BOD 量を重量で示したもので、次式で示す。
(4)式を用いて経験的にばっき槽の容量を計算してい
容積負荷(BOD-kg/m3・日)=
3
したがって、生物膜法では実験結果や運転実績から
る。
(図 3.6.4)
3
3
L0(kg/m )×Q(m /日)/V(m ) ・・・(3)
(3)式を変形すれば(4)式となり、ここでも容積負荷の式か
らばっ気槽の容量 V(m3)が計算できる。
V(m3) = L0(kg/m3)×Q(m3/日)×1/(BOD-kg/m3・日)
汚泥負荷と容積負荷のたとえ話
水槽(ばっき槽)の中に金魚(MLSS)が 10 匹いて、こ
・・・(4)
3
こに金魚の数に見合ったえさ(原水 BOD)を 10 粒入
但し、L0:排水の BOD 濃度(kg/m )
3
れたとする。
Q:ばっき槽に流入する 1 日の排水量(m /日)
3
金魚はえさを 1 粒ずつ食べるものとすれば全部食
CA:ばっき槽内混合液の MLSS 濃度(kg/m )
V:ばっき槽容量(m3)
べつくして元気に活動を続けることができる。
この場合、えさは余らないので残渣(余剰汚泥)は
また、汚泥負荷と容積負荷には次の関係がある。
容積負荷(BOD-kg/m3・日)=
発生せず、水槽中の水も汚れない。
汚泥負荷(BOD-kg/MLSS-kg・日)×MLSS 濃度(kg/m3)
つまり、原水の BOD 成分は浄化されたことになる。
これが MLSS 濃度を基準にした汚泥負荷の考え方であ
・・・(5)
る。
(図 3.6.2)
これに対して、水槽中の金魚の数を確認しないで 3
● 活性汚泥法における汚泥負荷と容積負荷の意味
活性汚泥処理でばっき槽の容量を決定するのに①汚泥負
匹しかいないのにえさを 10 粒入れてしまったら 7 粒
も余ってしまう。
(図 3.6.3)
荷と②容積負荷を用いる方法がある。
活性汚泥処理ではどちらの方法でばっき槽容量を計算す
つまり、
余剰汚泥が増えるうえに原水の BOD 成分も
十分に浄化されない。
れば現実的か考えてみよう。
そこで式(2)と式(4)を見比べていただきたい。
これが容積負荷の考え方である。
式(2)ではばっき槽容量の計算に CA[ばっき槽内混合液の
したがって、
活性汚泥処理では原水の BOD 量に対応
3
して MLSS 濃度を調整することのできる汚泥負荷方式
MLSS 濃度(kg/m )]が条件として使われている。
のほうが合理的といえる。
これに対して、式(4)ではばっき槽容量の計算に CA が条
件として使われていない。
活性汚泥処理プロセスで汚濁水浄化の主役を担うのはば
37
汚泥負荷の特徴
容積負荷の特徴
流入BOD(4 kg/日)
1日あたりばっき槽内の
MLSS 1kgあたりの排水
BOD量を示す。
ばっき槽1m3に対して1日
に流入する排水のBOD量
を示す。
(BOD-kg/MLSS-kg・日)
(BOD-kg/m3・日)
生物膜法(接触ばっき槽)の容量
実験結果や運転実績をもとに流入BOD量と充
填材の容量から槽の大きさを計算する
ブロワー
水 面
空 気
①MLSS濃度を基準に負荷
計算をしており、ばっき
槽容量計算として合理的。
①負荷計算にMLSS濃度を
考慮していない。ばっき
槽容量計算は参考値。
②MLSS濃度を調整すれば
原水BOD値が変わっても
対応できる。
②生物膜法では経験的に
容積負荷を用いてばっき
槽容量を計算する。
固定MLSS
充填材
図 3.6.1 汚泥負荷と容積負荷の特徴
流入BOD(4 kg/日)
処理水
図 3.6.4
生物膜法におけるばっき槽内の流れ
汚泥負荷より計算した活性汚泥槽の容量
演習問題 ①
流入BOD量とMLSS量のバランスがとれている
ブロワー
BOD 濃度 250 mg/L、1 日の排水量 200 m3 の汚濁水を
水 面
空 気
BOD 負荷量 0.4 kg/kg・日、MLSS 濃度 3,000 mg/L で処
MLSS:10kg/m3
理するとき、ばっき槽の必要容量はいくらか。また、
その場合の BOD 容積負荷を計算せよ。
処理水
解 答
―ばっき槽の容量計算―
ばっき槽容量(m3)
= 250(g/m3)×1/1,000×200(m3)
図 3.6.2
×1/0.4(kg/kg・日)×1/3(kg/m3)
汚泥負荷における流入 BOD と MLSS
= 41.7 (m3)
のバランス例
―BOD 容積負荷―
BOD 容積負荷(kg/m3・日)
流入BOD(4 kg/日)
= 250(g/m3)×1/1,000×200(m3)×1/41.7(m3)
容積負荷より計算した活性汚泥槽の容量
= 1.2(kg/m3・日)
流入BOD量とMLSS量のバランスがとれない
ブロワー
演習問題 ②
水 面
空 気
BOD 200 mg/L 、1 日 500 m3 の排水をばっき槽容量 200
MLSS:4kg/m3
m3 の活性汚泥処理装置で処理している。
BOD 容積負荷はいくらか。
処理水
解 答
BOD 容積負荷(kg/m3・日)
余剰汚泥
= 200 (g/m3)×500 (m3)×1/200 (m3)
= 500 (g/m3・日)
図 3.6.3
= 0.5 (kg/m3・日)
容積負荷における流入 BOD と MLSS
のバランス例
38
第3章
生物学的処理
3.7 窒素の除去
窒素の除去方法は大別して次に示す①~④の方法がある。
処理方法の概要と特徴を表 3.7.1 に示す。
酸素を消費する。そして BOD 30 mg/L 以下になると
アンモニアの硝酸化が加速され BOD 10 mg/L 以下で
90 % 以上が硝化(NO3-)される。
(2) 硝化菌の作用で生成した NO3-は嫌気性条件下で
● アンモニアストリッピング法
塩 化 ア ン モ ニ ウ ム (NH4Cl) や 硫 酸 ア ン モ ニ ウ ム
[(NH4)2SO4]などの NH4+を含む水にNaOH 等のアルカリを加え
+
4
て pH 11 以上に調整すると式(1)のように NH が NH3 に変化
する。
(図 3.7.1 参照)
脱窒素菌により窒素(N2)に還元されて大気中に
放散される。
この脱窒素反応は還元反応なので NO2,NO3 の酸素受
容体と脱窒素菌の増殖源としての有機炭素源(栄養
NH4+ + OH -→ NH3+ H2O ・・・(1)
源)が必要である。有機炭素源としては一般にメタノ
次いでアルカリ性の水にスチームまたは空気を吹き込ん
でアンモニアを気相に放散させる。
ールが用いられる。メタノールを用いた場合の脱窒素
反応例を式(5)に示す。
放散したアンモニアは触媒反応塔を通して酸化分解し無
害な窒素(N2)として大気に放散する。
5CH3OH + 6NO3- + 6H+ → 5CO2 + 3N2 + 13H2O・・・(5)
式(5)より、脱窒素における窒素(N)とメタノールの
4NH3 + 3O2 -→ 2N2 + 6H2O ・・・(2)
比を計算すると 5CH3OH/6N = 160/84 = 1.90 となり、
アンモニア含有排水の処理は多量の空気と接触させるス
約 2 倍のメタノールが必要となる。
クラバー方式を採用することが多い。
● イオン交換法
● 不連続点塩素処理法
イオン交換樹脂などのイオン交換体を使って窒素成
図 3.7.2 に示すようにアンモニアや有機成分を含んだ排
分(NO3)を吸着する。上水や地下水中に窒素が数十
水に塩素を加えていくと、始めは有機物や還元性物質など
mg/L 程度あり、これを処理して窒素を含まない飲料
が先に塩素を消費するのでアンモニア濃度は変化しない。
水や生産用水にする場合に有利な方法である。
更に塩素添加を続けると残留塩素は増加しながらアンモ
一例として、飲料用の地下水が窒素(NO3)で汚染さ
ニア濃度は徐々に低下し始め、Cl2/NH4-N = 9 倍くらいでほ
れている場合、安全な飲み水を確保する目的で使われ
とんどゼロとなる。この時、塩素濃度は極小値を示す。こ
ている。再生は 7 % 程度の食塩(NaCl)溶液を使う。
の極小値を不連続点と呼ぶ。引き続き塩素添加をすると再
廃液には高濃度の窒素成分(NO3)が含まれるので、別
び残留塩素濃度が上昇し始める。実際の不連続点塩素処理
途処理が必要である。
ではアンモニア以外の成分が共存しているのでアンモニア
NO3 の吸着
R-SO3・Na + NO3- → R-SO3・NO3 + Na+・・・ (6)
の 10~20 倍の塩素を添加することが多い。
再 生
● 生物学的処理法
R-SO3・NO3 + NaCl
→ R-SO3・Na + NO3- + Cl-・・・(7)
生物学的窒素除去は次の工程を経て行われる。
(1) 排水中のアンモニア(NH4+)は生物酸化により
NO2
イオン交換法は用水・排水処理を問わず、一般にイ
3
を経て硝酸イオン(NO )に変わる。
+
4
+
NH + 1/2O2 → NO2 + H2O + 2H
NO2 + 1/2O2 → NO3-
オン濃度の低い原水を処理するのに適している。
・・・(3)
図 3.7.4 はゼオライトの種類と空洞の大きさである。
・・・(4)
アンモニアは pH10 以上になると 80%くらいが NH3
このとき、アンモニア以外に有機物や BOB 成分が共存す
に変化しているので、ゼオライトを充填した容器に通
ると硝化菌はこれらの成分の酸化を優先するのでアンモ
水すれば吸着除去できる。ゼオライトは 1 グラムで
ニアの酸化は後回しとなる。
10~20mg/g のアンモニアを吸着できる。再生は 7%食
一例として、
図3.7.3 のように排水中にアンモニアとBOD
塩(NaCl)で行えば元のゼオライトに戻る。
成分が共存すると BOD 値 30 mg/L 位までは BOD 成分が先に
39
方 法
① アンモニアストリッピ
ング 法
② 不連続点塩素
処理法
③ 生物学的処理法
④ イオン交換法
表 3.7.1 窒素の除去方法
概 要
①pH を 11 以上にあげ NH3 を大気放散
② NH3 を触媒反応塔に通して酸化分解
アンモニアに塩素を作用させて酸化分
解する
硝酸性窒素(NO3-N)を嫌気性菌の作用
で窒素ガスに変換する
①イオン交換樹脂 ②ゼオライトなど
でアンモニアを吸着
①
②
①
②
①
②
①
③
特 徴
処理システムが単純
NH3 による二次公害発生に注意
水道の NH3 除去に使われる
後工程によっては残留塩素の除去が必要
あらゆる窒素に対応可能
NH3 は NO3 に酸化してから脱窒素処理する
除去率が高い ② 再生廃液が出る
希薄溶液に有利
100
存在比(%)
75
アンモニア態窒素硝化率(%)
100
NH3
NH4+
NH4+ + OH-→NH3+ H2O
50
25
0
5
7
NO2 + 1/2O2 → NO3-
75
50
ここから硝化が
早まる
25
0
13
11
9
NH4+ + 1/2O2 → NO2 + H2O + 2H+
0
20
pH
図 3.7.1 アンモニアの pH と存在比
図 3.7.3 BOD 値の低下とアンモニア硝化率の関係
25
50
20
40
残留塩素
15
30
不連続点
NH4-N
10
要求塩素量
消費塩素量
5
20
残留塩素(mg/L)
NH4-N 濃度(mg/L)
80
60
40
BOD (mg/L)
最大孔径:0.70nm
① モルデナイト
孔径:0.75nm
孔径:0.46nm
② クリノプチロライト
10
0
0
0
2
4
6
8
10
Cl:NH4-N比
図 3.7.2 不連続点塩素処理例
最大孔径:0.42nm
最大孔径:0.74nm
③ A型ゼオライト
④ ゼオライトX
図 3.7.4 ゼオライトの種類と空洞の大きさ例
40
第3章
生物学的処理
3.8 リンの除去
水中のリンは窒素とともに富栄養化の原因となるので除去
する必要がある。
た処理水は続いて好気槽に移流し、急に好気条件に
さらされると、今度は、水中のリンが急速に汚泥内に
吸収され、20mg/L あったものが 1mg/L 以下となる。
● 生物細胞にはリンが 1%含まれる
右図 3.8.3 は生物学的脱リン処理のフローシート
植物プランクトンは有機物がなくても、太陽光のもとで
窒素、リンが存在すれば炭酸同化作用により、自分で新た
な有機物を光合成する。
例である。
ばっ気槽の前に嫌気槽を配置し、原水中に有機成分
が存在する状態で 1.5~3.0 時間かけて返送汚泥中に
生物細胞の組成は C60H87O29N12P などからわかるように、細
含まれるリンを汚泥から放出させ、次いで好気槽で
胞の中にリンが約1% 含まれている。したがって、湖沼や
3.0~5.0 時間かけて汚泥を好気状態にするとリンが
閉鎖海域の富栄養化の防止には有機物を除去しただけでは
急速に汚泥中に取り込まれる。これで原水中の T-P は
効果がない。
3~6mg/L から 1mg/L 以下まで処理できる。
このように、水環境中のリンは窒素とともに水質汚濁の
原因物質となるので排水処理で除去する必要がある。
凝集沈殿槽で集めたリンを多く含んだ汚泥は空気
の補給がないので嫌気性雰囲気である。これを長時間
放置しておくと、汚泥がリンを再放出することがある
● リンの除去方法
ので、沈殿で集めた汚泥は早めに脱水機にかけて固液
リンの除去方法は大別して下記①~③がある。
分離するとよい。
① 生物処理法
② 凝集沈殿法
● 凝集沈殿法
③ 晶析法
無機系のリン酸イオン(PO4-P)は、硫酸アルミニウ
ム、ポリ塩化アルミニウムなどのアルミニウム塩や塩
● リンの形態
化第二鉄、硫酸第二鉄などの鉄塩と反応して溶解度の
公共水域に排出されるリンの形態は下記 ①~③に分類さ
低いリン酸塩を形成する。
図 3.8.4 は Al3+および Fe3+とリンの凝集反応例であ
れる。
① オルトリン酸:PO43-、HPO42-、H2PO4-
る。
PO4-P の凝集に最適な pH は Fe3+イオンで 4~5、
Al3+
② ポリリン酸:トリポリリン酸、ヘキサメタリン酸
の場合で 6 付近である。中小規模の工場や事業所の活
③ 有機リン:有機化合物と結合したリン
性汚泥処理設備だけではリンの除去が困難なので、こ
上記のうち、公共水域における③の有機リンは微生物の作
の設備の前段に硫酸アルミニウムによる凝集沈殿装
用により、大部分が無機性のリンに分解されている。
置を設ければ、リンの除去が可能となる。
● 生物の力を利用したリンの除去
● 晶析法
活性汚泥は右図 3.8.1 に示すように、好気的条件下では
図 3.8.5 は晶析材とリンの反応例である。晶析法
リンを過剰に摂取し、嫌気的条件下ではリンを放出するこ
はカルシウムヒドロキシアパタイトと水中のリン酸
とが 1965 年に G.V.Levin、J.Shapino らによって指摘され
イオンを反応させて析出除去する方法である。
10Ca2+ + 2OH- + 6PO43- → Ca10(OH)2(PO4)6 ・・・(1)
ていた。
右図 3.8.2 は活性汚泥処理の嫌気、好気時のリンおよび
COD 濃度の変化例である。
図 3.8.6 は晶析脱リン装置フローシート例である。
調整槽で水酸化カルシウムを加えて pH 調整した処
図の嫌気工程では原水中の CODCr が嫌気性菌の作用によ
理水は晶析槽に流入し、晶析材と接触してリンが除去
って、100mg/L から 20mg/L 程度まで除去されている。これ
される。
とは対照的に、汚泥からリンの放出が行われ、嫌気槽内の
晶析材に吸着したリンは余剰晶析材として間欠的に
リン濃度は 6mg/L から 20mg/L に上昇する。
嫌気工程を終え
排出する。
41
100
嫌気性
3
10
2
PO4-P (mg/L)
混合液中のPO4-Pの変化
(mg/L)
5
4
リンを吐
き出す
1
0
リンを取
り込む
-1
-2
0
4
3
2
1
2
6
4
8
pH
10
12
図 3.8.4 Al3+および Fe3+とリンの凝集反応
図 3.8.1 活性汚泥のリンの取り込みと放出
125
25
100
75
15
リンを吐
き出す
PO4-P
50
CODCr
5
1
0
2
リン
4
OH
OH
リン
晶析材
カルシ
ウム
OH
カルシウムヒドロ
キシアパタイト リン
OH
カルシ
ウム
10Ca + 6PO4 + 2OH
図 3.8.2 リンと COD の経時変化
カルシ
カルシ リン ウム
ウム
Ca10 (OH)2(PO4)6
図 3.8.5 晶析材とリンの反応
カルシウム
空気
M
カルシウムヒドロ
キシアパタイト
リン
時間 (h)
流入
リン
OH
0
晶析材表面にカルシウ
ムアパタイトが析出
OH
晶析材
25
3
リン
カルシ
ウム
CODCr (mg/L)
リンを取
り込む
10
晶析材表面にカルシウ
ム、リン、OHが接近
好気工程
嫌気工程
20
PO4-P (mg/L)
リン(P)の初濃度12mg/L
鉄・リン:PO4 = 2:1
0.01
0
5
時間 (h)
0
Fe3+
0.1
好気性
-3
-4
-5
Al3+
1.0
M
M
流入
M pH
晶析槽
処理水
返送
汚泥
No.2
No.1
嫌気槽
嫌気槽
嫌気槽
No.1
No.2
ばっき槽 ばっき槽
好気槽
沈殿槽
余剰
汚泥
沈澱槽
調整槽
晶析材
処理水
水質の変化例
原水
滞留時間 (h)
BOD (mg/L)
全リン:T-P (mg/L)
溶解性リン: S-P (mg/L)
嫌気槽
好気槽
沈殿槽
1.5-3.0
3.0-5.0
3.0-4.0
処理水
100-120
20-30
〈10
〈10
3-6
10-20
10-20
-
〈10
-
10-20
〈1
〈1
〈1
返送晶析材
図 3.8.3 生物学的脱リン処理フローシート
余剰晶析材
図 3.8.6 晶析脱リン装置フローシート例
42