島崎邦彦氏が指摘する 入倉・三宅式問題の意味

島崎邦彦氏が指摘する
入倉・三宅式問題の意味
平成28年7月31日 @同志社大学 烏丸キャンパス 志高館 SK112
弁護士 甫守 一樹 (ほもり かずき)(大飯原発訴訟 福井弁護団)
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はじめにお断りしますが…
・言えることと言えないことがあります。
・詳しい話は小山先生と長沢先生に
お任せします。
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Q.1 島崎邦彦さんって誰?
A.有名な地震学の先生だよ。
福島原発事故後に原子力規制委員会の委員になって、原発を動かしてもいいかどうかの国の審査に関わっていたよ。
好きなもの:甘いもの
苦手なもの:アルコール類
趣味というほどではないが:
クラッシック音楽、短歌
1946年3月13日 東京都生まれ
地震学、東京大学名誉教授
日本地震学会、日本活断層学会所属
1970年 東京大学大学院地球物理学専攻修士課程修了
同年 東京大学地震研究所助手
1974年 理学博士(東京大学)
同年 カリフォルニア工科大学研究員
1980年 東京大学地震研究所助教授
1989年 東京大学地震研究所教授
2006年 日本地震学会会長
2009年 地震予知連絡会会長
2012年 原子力規制委員会委員(委員長代理)
2014年 同委員退任
ほかに、地震調査研究推進本部地震調査委員会委員、同長期評価部会部会長、地震
防災対策強化地域判定会委員、交通政策審議会委員、同気象分科会会長、中
央防災会議専門委員、日本活断層学会会長、震災予防協会理事などを歴任
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Q.2 島崎先生はどうして原子力規制員会に?
A.東日本大震災とそれに伴う原発事故の反省が
規制委員会の委員を引き受ける動機になったよ。
福島原発事故を引き起こした大津波は
予測することが出来た。
中央防災会議では人生最大の負け犬になって
尻尾を巻いて黙ってしまった。
その時の悔しさが委員になる決意をさせた。
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Q.3 島崎先生の指摘って何?
A.活断層の情報から地震の規模を予測するための科学的な式には色々なものがあるよ。
そのうち、入倉・三宅式と言われるものを使うと、特定の条件下では地震規模が小さくなって
津波の高さを過小に評価してしまう危険性がある、というのが島崎先生の指摘だよ。
2014年活断層学会秋季大会 学会賞受賞記念講演
「事前評価と経験則:断層の長さと震源の大きさ」
・2015年5月 日本地球惑星科学連合大会
・ 同年10月 日本地震学会秋季大会
・同年11月 日本活断層学会秋季学術大会
・2016年5月 日本地球惑星科学連合大会
ほぼ同じ内容で4度にわたり学会発表
岩波書店「科学」2016年7月に論文掲載
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Q.4 入倉・三宅式って何?
A.入倉孝次郎先生っていう、有名な地震学の先生と、その弟子筋の三宅弘恵先生が作った式だよ。
震源になる断層の面積と地震の規模(地震モーメント)との間の関係式だよ。
地震調査委員会っていう文部科学省の機関でも採用されている、権威のある式だよ。
入倉先生
三宅先生
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Q.5 断層の面積って地震の前に分かるの?
A.無理だよ。
活断層が分かっている場合は、その長さとか幅を頑張って調べるけど、調べられるのは、地表に近い
ところだけだよ。
断層の面積は、地表の付近の情報とかから長方形のモデルを作って推測するのが一般的だけど、実際
に地震が起きてみると、全然違ってるかもしれないよ。でも、入倉・三宅式も、他の式も、地震発生後の情
報を使ってできているよ。
島崎先生の指摘は、地震発生前の情報だけから予測する場合、結果的に、地震モーメントを比較的精
度良く当てられた式はどれか、という問題意識がポイントになっているよ。
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Q.6 入倉・三宅式でどれくらい過小評価になるの?
A.傾斜角が垂直か垂直に近い断層だと、1/2から1/4くらいになっちゃうよ。
観測
記録
武村式
山中・
島崎式
松田式
入倉・
三宅式
入倉・三宅/
観測記録
断層
傾斜角
1891年
濃尾地震
180
210
180
130
52
0.29倍
90°
1930年
北伊豆地震
27
32
28
21
7.9
0.29倍
90°
2011年
福島県浜通り
11
17
14
11
5.5
0.5倍
60°
1927年
北丹後地震
46
48
41
19
12
0.26倍
90°
1943年
鳥取地震
36
39
34
18
9.8
0.27倍
90°
1945年
三河地震
10
19
17
9
19
1.9倍
30°
1995年
兵庫県南部地震
24
45
39
20
11
0.46倍
90°
断層幅14kmと仮定
島崎先生が
地震学会で
使った表を
編集して作成
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Q.7 どうしてそんなに問題がある式に「権威」があるの?
A.それはなかなか答えるのが難しい質問だね。
まず、活断層から地震が起きることは、日本全体でも滅多にないし、地震のデータの数はまだ
まだ少ないよ。
だから、地震の規模を事前に予測して、実際に発生した地震が予測と合っていたかどうかとい
う検証は、ほとんど行われていないよ。
それに、もともと地震はとっても複雑な現象で、メカニズムの解明も十分じゃない。予測がはず
れても「ばらつき」の範囲だって言われちゃうよ。
そのことと、一度政府の機関で採用されちゃったこと、入倉先生がとっても偉い先生だっていう
こと、実際に原発の耐震設計とかで使われていることで、他の専門家も異論が挟みにくい雰囲気
が、あったんじゃないかなぁ。
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Q.8 どうして島崎先生の指摘が拡がったの?
A.島崎先生は、学会では、津波の関係だけで入倉・三宅式の問題を指摘していたよ。
でも、ある弁護士の人から、原発の基準地震動にも関係すると言われたよ。
熊本地震で精度のいいデータが得られたこともあり、裁判の文書を書いたのがきっかけだよ。
島崎先生の
陳述書
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Q.9 規制委員会はどう対応したの?
A.2度も島崎先生を呼んで話をしたけど、
基準地震動の見直しは
しないことになったんだ。
6.2
大飯原発差止訴訟のための陳述書を作成
6.11~ 取材で審査のやり直しの必要性を訴える
6.16
田中俊一規制委員長らが島崎氏と面談
6.20
田中委員長が基準地震動の再計算を指示
7.13
規制委が試算結果を発表 地震動は小さくなる!?
7.14
島崎氏が田中委員長宛てに手紙
「納得できない」
7.15
島崎氏記者会見
7.19
田中委員長らが島崎氏と再度面談
7.27
規制委員会会合で検討終了を宣言
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Q.10 どうして島崎先生は声を上げたの?
A.島崎先生は、規制委員会の委員の時は、入倉・三宅式を使った原子力発電所の基準地震
動でOKだと言ってきたよ。
もし入倉・三宅式ではダメだっていうことになったら、自分が担当してきた審査がダメだった
ということになるし、全国の原発に影響するよ。
でも、島崎先生は、同じ過ちを繰り返したくないと思って、勇気を持って声を上げたんだ。
今回は、『変人』と言われる
のを覚悟でしつこく主張して
いきます
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Q.11 結局島崎先生がやったことは無駄だったの?
A 色々な意味で、無駄じゃない、と思っているよ。
国会の調査機関では、規制当局が徹底的に無謬性にこだわったこと、つまりそれ
までの間違いを間違いと認められなかったことが、福島原発事故につながったと指摘
されたよ。それを「安全文化の欠如」って言う人もいるよ。
でも、島崎先生は、どうして規制委時代に気付けなかったのかと批判されるだろう
とか、古巣や研究者仲間によく思われないかもしれないとか、そんな小さなことにこだ
わることなく、今、自分で正しいと信じることに基づいて行動したよ。
そういう姿勢は、今後仮に脱原発を達成するとしても、ずっと考えていかなければ
ならない原子力の安全確保に、必要不可欠な「安全文化」だと思う。
それに、いずれ必ず見直しは行われるはずだよ。
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