平成 27 年度派遣留学生 留学成果報告書 ボルドー美術学校(フランス) 芸術学部デザイン学科 13AD067 柴藤 千夏 『フランスで見つけたたからもの』 石畳の上に一歩を踏み出したとき、とうとう来てしまったと思いました。2 年間夢見てきた外国の地に住むことができるのです。 私は 2015 年の 10 月 1 日から、派遣留学制度を使い3ヶ月間フランスのボル ドーで暮らしました。 ボルドーはフランスの南西部に位置し、ワインでとても有名な地域です。世 界遺産に登録されているこの街は古い建造物が建ち並び、そこを歩くと中世ヨ ーロッパにタイムスリップしたような気持ちになります。 日本を発つ前、私の心は不安な気持ちでいっぱいでした。しかしそんな気持ち も数日でどこかへ消えていくことになりました。 ルームメートと一緒に学校へ行き、多くの友達を紹介してもらいました。 フランス人は"salut "という挨拶と一緒にビズをします。ビズとは頬を合わせ てキスをすることです。 友達であれば同性、異性関係なくビズをします。最初 はとても戸惑いましたが、それも自然と慣れてきました。 フランス語はもちろん英語も上手に話せない私はとても不安を抱いていまし た。しかもフランス人はあまり英語を話さないのです。 とてもクールなフランス人はフランス語を話さない私に声をかけてくることは ほとんどありませんでした。しかし、大学3年間留学生と交流していたことも あり、なんとか友達を作ることができました。 なかなか解決できなかった問題は、授業でした。先生は英語でも説明してく れるのですが、私の英語力が未熟なため理解できていないことが多々ありまし た。留学先のボルドー美術学校では、1 週間にひとつ課題が出され、進行の早い ものは、水曜日の午前中に課題内容が説明され、午後には中間発表をしなけれ ばなりません。次の日にはモデルを提出し、その次の週には作品を提出しなけ ればならなかったため、間違って理解をするとついて行けなくなるのです。ま た自分の作品について明確に説明する必要があり、 “なんとなく”や“かわいい と思ったから”などが通用しない状態でした。“なんでここにこの写真をおく の?右にずらしたらダメ?” “どうしても緑じゃないとダメなの?”といった日 本ではほとんど考えなかったことをズバズバと質問してきます。悩んでいると 先生は他の生徒のところへ行ってしまい、留学生だからといって特別扱いなど はほとんどありませんでした。私の作品を見て“あなたの作品はただかわいい だけね”と、どの先生からも言われ、ついて行けない上に否定ばかりされ悩む ことが何度もありました。 そんなときいつも助けてくれたのがクラスで出会った友人達でした。先生が 私の作品を否定したときは、みんなが私の代わりに説明してくれたり、その作 品の良いと思うところを一生懸命伝えたりしてくれたり、悩んでいると、 「話し てみなよ」といつも耳を傾けてくれ、沢山のアドバイスをくれました。 また、何をやっていいか分からず課題についていけなくなり、家で作業する ことが増えた時期もありました。そのときに友人が先生のところへ話に行き、 私の事で 2 人が言い争いをしていました。その光景は今でも忘れられません。 社交辞令などの習慣があまりないフランスでは、仲良くない人との関わりはあ まりありませんが、友達になると自分のことのように助けてくれました。見て 見ぬ振りをしない彼らの行動に私はとても感動し、羨ましいとさえ思いました。 ボルドー美術学校のクラスメートと(本人右端) 私の留学の目的の一つに、フランス人に日本を好きになってもらう、という ものがありました。なぜなら、日本で出会った留学生たちが、彼らの母国の魅 力を沢山私に教えてくれたからです。 フランス人の多くが日本に興味を持っており、漫画やアニメ、映画など日本 の文化が大好きです。しかし、日本人の友達がいる人は少なく、間違った情報 が溢れ、彼らは日本人が今でも切腹すると思っていたり、ネット上で紹介され ている鶏を追いかけ回しながら歌う日本人風のおじさんがフランスでは有名だ ったりします。残念ながら、私にはそのおじさんもその歌詞も理解することが できませんでしたが。 それらの間違えを訂正し、日本のことについて沢山話しました。また日本食 のパーティーも開き、お味噌汁や白米、いくつかのおかずを用意し、紙皿や紙 コップも日本から持参したものを使い、部屋中を可愛くデコレーションしまし た。フランスには無いかわいいという文化と、日本食をみんなが気に入ってく れました。そして、5 人の友人が今、日本に来る計画を立てています。 友人達も日本を好きになってくれましたし、私もフランスがとても好きにな りました。 フランスの友人のほとんどは、アルバイトをしていません。国からの補助金 で生活をしている状況です。そのためお金はあまりありませんが、時間は沢山 あるため、学校から帰ると、お菓子を持って友達の家に行きティータイムを楽 しんだり、土日は空を見ながら散歩をし、カフェでくつろいだり、2 日間少し食 費を節約して、休日にバスで海に行ったこともありました。 無駄遣いをほとんどしない彼らはとても古い携帯電話を使っています。長年 使っているため、その携帯電話達は名前をつけてもらっていました。私は iphon6 を持ってますが、この子に名前はありません。 フランスに行く前の私は、洋服や雑貨にたくさんのお金をつぎ込んでいまし た。暇さえあれは天神に行き欲しいものをチェックしたり、旅行が好きなため、 休日は色々な土地に行くこともありました。そして肌身離さず携帯電話を持ち 歩いていました。しかし、フランスから帰ってきてそんな生活から一変し、今 はフランスにいたときのような生活をしている。お金を使うよりも時間をゆっ くり使う楽しさを知ったからです。ただ、日本の友人はみんなとても忙しいた め、少し寂しく感じることもあります。 私は今、また外国に行きたいと考えています。なぜなら世界中に友人が住んで いるし、海外での生活がとても楽しかったからです。 高校生の時まで私は be 動詞がなんなのか知りませんでした。しかし大学に入 り、たくさんの外国人と出会い、海外に行ってみたいという気持ちを持ち続け た結果、今回交換留学に行かせていただくことができました。私はこの機会に 心から感謝しています。 もし、あなたが今留学したいと考えているのであれば、その気持ちを持ち続 け、一歩踏み出せば留学は夢ではないと私は思います。 “Take a chance you never know what might happen.” ボルドーの街の風景 以上
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