感覚器・末梢神経系 2 皮膚・筋・関節からの情報 (体性・固有感覚入力)

感覚器・末梢神経系 2
皮膚・筋・関節からの情報
(体性・固有感覚入力)
医学系研究科
神経生理学分野
木田 裕之
今日勉強すること
1. 骨格筋の神経支配
2. 神経の興奮と筋肉
3. 固有感覚(深部感覚)
4. 骨格筋収縮の特性
これまでの復習
・膜電位の定義を覚えていますか?
・脱分極って何ですか?
・全か無かの法則って知ってますか?
・活動電位に寄与するのは何イオンですか?
神経生理学のおさらい
(試験には出しません)
神経は電気信号の集まり
成体電気信号の発見
ヒトの脳波計測
正常脳波
興奮時
安静時
ガルバニの実験(1780)
異常脳波(てんかん)
知覚(心)は脳が作り出す・・・
<刺激>
光
数値で記述できる
<知覚>
見えた!
神経細胞の電気活動
青色・・・400 nm
明るさ・・20 カンデラ
生体内では電気信号で情報を伝える
ニューロンの形態
樹状突起
軸索末端
ランヴィエの絞輪
細胞体
軸索
シュワン細胞
核
ミエリン鞘
樹状突起・・・信号を受け取る(入力)
軸索・・・信号を伝える(出力)
電気信号は軸索上を伝導する
神経の信号は活動電位によって伝わる
伝達物質が
放出される
活動電位はスパイクとかインパルスとも呼ばれる
活動電位による情報表現
例)必要に応じて発揮される力
弱い
強い
筋活動電位
刺激の大きさや反応強度は
(筋)活動電位数で表現する
膜電位
活動電位
受容器電位
閾値
1. 骨格筋の神経支配
運動神経って?
上手に筋肉を動かす
脊髄を経由
筋肉を支配する神経を
運動神経という
α運動ニューロン
骨格筋はα運動ニューロンに支配される
(脊髄前角細胞)
<運動の神経回路>
運動野
細胞体は前角にある
感覚神経
運動神経
(腹側)
(背側)
運動単位
運動単位
1つのα運動ニューロンとそれが支配する
全ての筋線維
3本
運動単位は筋肉の
種類で異なる
2本
力強く大雑把な動き・・・
運動単位は大きい
細やかな動き・・・
運動単位は小さい
筋組織の分類
筋肉は横紋筋と平滑筋に分けられる
自律神経系が支配
NA/Ach作動性
横紋筋
体性感覚系が支配
随意的に動く
Ach作動性
自律神経系が支配
NA/Ach作動性
内臓・血管
骨格筋の分類
骨格筋は白筋と赤筋に分けることができる
筋収縮特性のちがい
白筋
(速筋)
赤筋(遅筋)
赤筋はスタミナ!
赤筋と白筋の性質
赤筋(タイプI) 白筋(タイプII)
疲労
しにくい
しやすい
血流
多い
少ない
収縮の速度
遅い
速い
張力
小さい
大きい
収縮パターン
持続的
瞬発的
グリコーゲン含有量
少ない
多い
脂肪
糖質
エネルギー源
2. 神経の興奮と筋肉
活動電位が筋肉を収縮させる
電気刺激で筋肉は動く!
ガルバニの実験(1780)
筋肉について
筋肉は縮むor緩むことしかできない!
※伸びるのではなく“伸ばされる”
ことに注意!
屈筋・・・曲げるときに働く筋肉
伸筋・・・伸ばすときに働く筋肉
例)上腕二頭筋⇒屈筋
上腕三頭筋⇒伸筋
曲げる
伸ばす
神経筋接合部の構造
運動ニューロンの軸索
神経筋接合部
アセチルコリン
M:筋繊維、T:軸索末端
神経筋接合部の構造(拡大)
伝達物質はアセチルコリン
活動電位が到達
神経筋接合部
終板
筋形質膜の凹凸部
終板上にはアセチル
コリン受容体がある
受容体はニコチン型
※他にはムスカリン型がある
神経筋接合部でのシナプス伝達
① 神経終末に活動電位が到達
② アセチルコリン(Ach)が放出
→受容される
③ Naチャネルが開いてNa流入
④ 終板電位(→筋活動電位)が発生
※筋肉が興奮していないときで
も微小終板電位が見られる
⑤ Ach分解される→再合成
筋収縮に関わる薬
クラーレ:アセチルコリン受容体を遮断する
南アメリカ一帯の原住
民によって狩猟に用い
られている毒物の総称
サリン:アセチルコリン分解酵素を阻害する
筋肉の病気
重症筋無力症
1.
2.
3.
4.
ACh受容体
骨格筋が弱く、すぐ疲労する病気
発症は女性(20~30才)に多い
男女比:1対2、全国で5000-7000人
ACh受容体の抗体ができて、AChがはたらかない
(自己免疫疾患)
筋ジストロフィ
1.筋の異栄養、栄養失調の意味
2.遺伝性である
3.ジストロフィンという筋の糖蛋白が消失する
4.筋が変性し筋力が低下する
3. 固有感覚(深部感覚)
自分と周りの関係
キケン!
近づくのはよそう
生意気だ!
腹へった
生物は効率よく身体内外の情報を知ることが大切
ヒトの感覚
まず感覚の分類をおさえよう
特殊感覚
視覚・聴覚・平衡感覚・嗅覚・味覚
皮膚感覚
触圧覚・温冷覚・痛覚
固有感覚 筋肉を使う時や関節の曲げ伸ばし
(深部感覚) によって生じる感覚
内臓感覚
※2つ合わせて体性感覚という
(今日のテーマ)
自律神経がつかさどる臓器感覚や内臓痛
4つの皮膚感覚
冷たい!
当たった!
痛い!
触覚(圧覚)
温覚
冷覚
痛覚
機械的刺激
温度の変化
機械的刺激など
(体中の感覚点の分布)
痛点>触(圧)点>冷点>温点
皮膚感覚は順応する
例)服を着ている感覚はない
刺激
触覚受容器
すぐに順応する
触られたことをコード
活動電位
刺激
ゆっくり順応
触られ続けることをコード
活動電位
順応
同じ刺激に長くさらされていると、その刺激に
対する感じ方が弱まる効果
固有感覚
固有感覚
筋の収縮や関節の屈伸などによって生じる感覚
次の一歩を踏み出すために・・・
①膝を屈曲/伸展させる
次の段についたと思うところで伸展をやめる
②体を支える
前足にかかると思う体重を関知し調整する
普段の生活で意識にのぼることはほとんどない
様々な固有感覚
目をつぶっていても分かる感覚
位置覚(身体各部の位置)
ポーズをとるときなどに、手足など
各部位の位置関係を感じとる働き
運動覚
運動スキル向上
には必須だよ!
運動の加速度・方向を感じ取る
抵抗覚
自分の体にかかる力を関知する
重量覚
ものの重さを関知する
金メダリストとともに
筋の長さを関知する筋紡錘
筋紡錘
どれくらい伸ばされたのか?を感知する
錘内筋内のセンサー(長さ2~3mm)
静止時
引き伸ばされたとき
筋の張力を関知する腱
ゴルジ腱器官
筋と腱の移行部に存在し、どれくらい力がか
かったのか?を感知するセンサー
(長さが500-1200µm )
力の大きさ
固有感覚の伝導
求心性線維の名前をおさえよう
筋紡錘
下降性伝導路
ゴルジ腱器官
Ib線維
Ia線維
文字式による神経線維の分類
種類
直径(μm)
伝導速度(m/s) 髄鞘
機能
Aα
12~20
60~120
有
筋紡錘・運動神経
ゴルジ腱器官
Aβ
Aγ
8~14
2~8
30~80
15~50
有
有
触・圧覚
筋紡錘の調節
Aδ
B
C
1.5~3
1 ~3
1
6~30
3~15
0.3~0.8
有
有
無
侵害・温度受容
自律神経
自律神経、痛覚
髄鞘化されて太い神経ほど伝導速度は速い
(特に固有感覚)
受容器の性質のちがい
筋紡錘
ゴルジ腱器官
筋肉の
伸び具合を検出
筋肉の
張力を検出
4. 骨格筋収縮の特性
必要に応じて発揮される力
握る力は場合によってちがう
弱い
強い
(筋)活動電位数で表現する
骨格筋収縮の種類
単収縮 1回の活動電位によっておこる筋肉の
速やかな収縮
(例)まばたき
強縮
反復刺激により単収縮が連続して発生
(例)随意運動
前の単収縮が終わらない間に
次の刺激が加えられると2つの
単収縮が重なり、単収縮よりも
張力が強くなる
筋収縮の分類
長さは変わらない(等尺)
力は変わらない(等張)
→静止しているとき
張力 長さ
等張性収縮
筋の張力
等尺性収縮
→動いているとき
授業のまとめ
1 骨格筋収縮はα運動ニューロンに支配される
2 神経筋結合部ではアセチルコリンが受容されて
筋収縮がおこる
3 固有感覚とは筋の収縮や関節の屈伸などに
よって生じる感覚
その他のキーワード
筋紡錘 ゴルジ腱器官
等尺性/等縮性収縮
シナプス伝達
(試験には出しません)
膜電位
1)膜電位の定義
細胞外に対する細胞内の電位
2)膜電位は変化する
静止状態ではおよそ- 60~-70 mV
3)膜電位の変化はイオンの流出入で決まる
細胞膜上のイオンチャネルを通過
+イオン・・・Na, K, Ca
- イオン・・・Cl
脱分極と過分極
膜電位は負に分極している
脱分極
膜電位が静止状態から+方向に変化すること
-60→+20 mV -60→-40 mV
※ 分極を「脱」するから脱分極
過分極
膜電位が静止状態から-方向に変化すること
-60→-90 mV
全か無かの法則
活動電位が出るかでないかは閾値を超えるかで決まる
0か1か?
閾値の意義とは?
活動電位が発生するまでに
Na 流入
Naチャネルが開く
Q. シナプスでは何が
起こっているのか?
膜の脱分極
シナプスの構造
神経伝達物質を介した細胞同士のキャッチボール
神経伝達物質と受容体
神経伝達物質
シグナル伝達に介在する物質で、神経細胞などに
多く存在する
受容体
神経伝達物質を受け取るタンパク質
おもな神経伝達物質
ノルアドレナリン
アセチルコリン
グルタミン酸
GABA
シナプス伝達のメカニズム
1)活動電位が到達
2)Caが入って膜が融合
3)伝達物質放出
Ca
4)伝達物質が拡散
5)伝達物質を受容
6)シグナルを伝達
興奮or抑制?
興奮性細胞と抑制性細胞
興奮性細胞
興奮性神経伝達物質を出して
後膜を脱分極させる
グルタミン酸が代表
興奮
抑制性細胞
抑制性神経伝達物質を出して
後膜を過分極させる
GABAが代表(他はグリシンなど)
抑制
伝達物質でシナプス極性は決まる!
グルタミン酸を受容すると
陽イオンが流入して膜電位が上がる
シナプス前細胞
グルタミン酸
シナプス後細胞
NMDA型受容体
AMPA型
NMDA型
AMPA型受容体
陽イオン(主にNa)を通過させる
脱分極してから→Mgブロック外れる
陽イオンとCaを通過させる
※ 今日はAMPA型のみおさえてくれれば十分
興奮性シナプス
興奮性細胞はEPSP(興奮性シナプス後電位)
(Excitatory PostSynaptic Potential)
を発生させる
膜を脱分極させる
※「活動電位発生」とは言って
いないことに注意
膜電位を上げるには?
+のものが入ってくればいい
ほとんどの場合はNa
抑制性シナプス
抑制性細胞はIPSP(抑制性シナプス後電位)
(Inhibitory PostSynaptic Potential)
を発生させる
膜を過分極させる
膜電位を下げるには?
-のものが入ってくればいい
ほとんどの場合はCl
+のものが出て行ってもいい
ほとんどの場合はK
シナプス電位の加重
シナプス後電位は時間的・空間的に
加重される
時間的加算
空間的加算
閾値と全か無かの法則
まとめて整理しよう♪
興奮性入力
EPSP
IPSP
EPSP + IPSP >閾値なら
活動電位を出す
情報伝達が可能
抑制性入力
神経細胞
「活動電位を出すor 出さない」
(全か無かの法則)
伝導と伝達(まとめ)
伝導と伝達の違いを説明できること