ディーゼル発電機を用いたマイクログリッドの自律分散制御 ~蓄電池

ディーゼル発電機を用いたマイクログリッドの自律分散制御
~蓄電池必要導入量評価~
E02072 津久井崇史
1. はじめに
指導教員
藤田吾郎
PV20[kW]( 出 力 0-20[kW]) , BT50[kW]( 出 力 ± 50[kW]) ,
資源の乏しい我が国は,エネルギー供給の大部分を海
LOAD120[kW] (出力20-120[kW])とする。図2にディーゼ
外に依存している。そこで京都議定書に温室効果ガス削
ル発電機の周波数特性を示す。これは発電機の周波数特
減を国際的に公約したことで,太陽光や風力などCO2を
性にヒステリシス特性を持たせることで,電力が30[kW]
排出しないクリーンなエネルギーが注目されている。こ
のとき発電機をOFFにし,40[kW]のときONにすること
れらの自然エネルギーは環境へ与える負荷が小さく,資
で発電出力の制御を行うものである
源制限が少ないエネルギーであり,温暖化防止に有効な
MATLAB/SIMULINK上でモデル化したものが図3である。
ものとして普及が期待されている。しかし,一方で自然
これらをシミュレーション時間25[h],つまり約1日を想
エネルギーは自然条件に依存することから発電量が安定
定し,検討を行った。
[3]
。これらを
せず,電力系統に影響をもたらす可能性が指摘されてい
る。ここで自然エネルギーと商用電源との共生を構築す
る方法として,マイクログリッドの実用化が期待されて
いる[1]
[2]
。実例として中国ウイグル地区で行われてい
る実証実験[3]を参考とし,シミュレーションモデルを作
成し,調査検討を行った。
2.マイクログリッド
マイクログリッドとは一定の地域で複数の分散型電源
と負荷の情報をIT技術を活用し,地域内の需給制御をす
ることで分散電源の最適運転を行い,環境性と経済性を
図1
想定するマイクログリッド([3]に補記)
実現する電力供給システムである。
国内の例として八戸市で水の流れを電気で返すプロ
ジェクト等の実証実験が行われており,将来の分散型電
力供給システムの中心になるものとして注目されている。
しかし,これらのマイクログリッドはITによる制御を
行い,設備に多大な費用を必要とするため,近い将来に
[Hz]
Operating Range
Stop
51
50.5
50
Start
49
は普及は難しいとされる。そこで近い将来に実現すると
考えられる独立型の自律分散制御について検討を行った。
0
30
40
50
60
70
[kW]
現在,僻地や離島では主な発電設備としてディーゼル
発電機が用いられている。これに分散型電源や電力貯蔵
図2
ディーゼル発電機の周波数特性
設備を組み合わせることによってマイクログリッドを形
成すると,一定の電力品質を維持した上で経済的に電力
供給を行うことが可能となる。
3. シミュレーションモデル
図1は本研究で想定するマイクログリッドの概要図で
ある。ディーゼル発電機(DG)・太陽光発電機(PV)・蓄電
池(BT) により地域一帯の負荷(LOAD)に電力供給を行う。
各 設 備 の 容 量 は , DG70[kW]( 出 力 35-70[kW]) ,
図3
マイクログリッドモデル
4. 検討
5. まとめ
4.1 シミュレーション結果
この検討は,中国ウイグル地区で行われている実証実
以上の条件を元にシミュレーションを行ったところ,
験のデータを基にシミュレーションを行い,100[kW]の
図4のような結果になった。図4では2[h]の時点で電力を
蓄電池を導入することで正常動作が行えることがわかっ
負荷に供給できなかったことや,14[h]の時点で余剰電力
た。太陽光がない場合においては,140[kW]必要で,
を吸収できないことから,蓄電池の容量に問題が生じて
SOCの情報を発電機が得られる場合は93[kW]必要という
い る こ と が 推 測 でき た 。 そ の た め , 蓄 電 池 の 容量を
ことがわかった。これにより蓄電池容量を7[kW]減らす
50[kW]から100[kW]に変えてシミュレーションを行った。
ことに成功した。
その結果を図5に示す。これにより正常に蓄電池が機能
し,電力を供給できていることがわかる。
4.2 検討1
6. 今後の展望
今回の検討では,検討条件のサンプル時間が25[h],で
次に太陽光での発電量がゼロの場合における蓄電池の
あり,最終的なSOC容量が初期値以下のため,サンプル
導入量について検討を行った。図6は,この条件を基に
時間が 25[h]以上になった場合において蓄電池容量や
シミュレーションを行ったときの図で,蓄電池の導入量
ディーゼル発電機の出力についての問題が生じ,検討を
は最低140[kW]が必要だということがわかった。
行う必要がある。また,負荷や太陽光出力は実際一定で
4.3 検討2
はないので,今後ランダム波形を用いることでより実際
また,発電設備の設置条件により,蓄電池のSOCの
に近いシミュレーションができると考えられる。
情報をディーゼル発電機が得られる場合において,蓄電
池容量以外は検討4.1と同様の条件で検討を行った。こ
参考文献
れにより,蓄電池の飽和を軽減し,蓄電池容量を減少さ
[1]
ギーシステム」OHM, vol.92, No.1, pp.48-49(2005. 1)
せることが予想できる。図7にこのときのシミュレー
ション結果を示す。この検討により,蓄電池容量を100
田中愁佳夫「「愛・地球博」における新エネル
[2]
「愛知万博と環境に配慮したエネルギー需給シス
テム」NTTファシリティーズジャーナル, vol.42,
[kW]から93[kW]に減らすことができた。
pp.4-10 (2005.3)
[3]
太陽光発電システム等国際共同実証開発中間年報
新エネルギー・産業技術総合開発機構 (2005.3)
図4
図5
標準的な蓄電池導入量の場合
蓄電池導入量を増加させた場合
図6
図7
太陽光出力が無い場合
蓄電池導入量を減少させた場合