枯草菌 (Bacillus subtilis) の不完全溶原ファージ

総
説
枯 草 菌(Bacillus
subtilis)の
不 完 全 溶 原 フ ァー ジ
吉
I
も同 様で あ る.(2)
(bacteriocidal)作 用を 示す 粒 子 は バ クテ リオ フ ァー
され る.(3)
リオ シンは フ ァー ジ と共 通の 受容 体 を 持つ 場合 が あ る.
注 入,自 己増 殖 し溶 菌 させ る感 染性
(4)
(virulent)を 示す もの と 感染 力 を持 つ と同 時 に あ る
一定 の 頻度 で 遺伝 子 が細 菌 の遺 伝子 の 中 に組 み込 まれ
類 似 の殺 菌 作用 を示 す.(5)
い よ うな粒 子状 で あ る.(6)
ァ
に組 み込 まれ て い る状 態 を溶 原
高 分 子 バ クテ リオ シ ン
バ ク テ リオ シ ン生 成 因
子 を持 つ細 菌 は 同種 のバ クテ リオ シ ンの 殺菌 作 用 を受
けない.こ れ は溶 原菌 が 同 じフ ァー ジ に感染 され ない
よ
(immunity)こ
ぶ のは この よ うな菌 を紫 外 線照射 や マイ トマ イ シ ンC
よ うなDNA合
殖能 を 失 っ
の あ る もの は形 態 的 に フ ァー ジの尾 や 頭 と区別 で きな
増殖 と同 調的 に増 殖 し溶 菌を 起 こさな い性 質(temp-
(MC)の
紫 外 線照 射 に よ り 遺 伝 子 の注 入,増
た いわ ゆ る"フ ァー ジ ゴー ス ト"は バ クテ リオ シ ン と
るか,あ る いは細 胞 質 内 に安定 な形 で 留 ま って細 菌 の
性 ま たそ の よ うな状 態 の細 菌を 溶原 菌(Iysogen)と
バ クテ リオ シ ンは フ ァー ジ と同様 に細
胞 表 面の 特異 的 な受 容 体 と結 合す る.あ る種 のバ クテ
リオ フ ァー ジ には細 菌 に感 染す ると その遺 伝子(DNA
erate)を 持つ フ ァー ジに分 類 され る.temperateフ
バ ク テ リオ シ ンの生 成 は溶 原性
フ ァー ジの 自己増 殖 を誘 発 す る方 法 と同 じ処理 で 誘発
ジ とバ クテ リオ シ ンに大 別 す る こ とが で き る.バ クテ
ー ジが細 菌 のDNA中
寛*
E. coliのP1)や 溶 原 菌 に重 複 感染 した フ ァー ジDNA
序
自然 界 に存 在 す る溶 菌(bacteriolytic)ま た は 殺 菌
また はRNA)を
川
とと同 じで ある.
この よ うな類 似 点か らバ ク テ リオ シ ン とフ ァー ジ粒
成 阻害 剤 で処 理 す る とフ ァー
子 は生物 学 的 に 同 じ起 源 を 持つ近 縁 の もので あ ると考
ジの 自己増 殖 が誘 発 され 溶菌 が起 こ るか らで あ る.
え られ進 化 的 なつ なが りが種 々推 論 され て い る.
バ クテ リオ シンは細 菌 が細 胞外 に生 産す る物 質 で 同
種 また は類 縁 の菌 に殺 菌 作用 を 示す.初 めは いわ ゆ る
フ ァー ジお よび バ ク テ リオ シ ン粒 子 に加 え て1960年
抗 生 物質 の 一つ と考 え られ たが高 分 子 蛋 白質 で あ る こ
代 に種 々の 細菌 の溶菌 液 中 か ら形 態 的 に フ ァー ジ粒子
と,作 用 範 囲 が限定 され て い る こと,作 用 機構 が フ ァ
と全 く同様 の粒 子 が発 見 され た2∼9).こ
れ らは 同種 の菌 を
ー ジの殺 菌 作用 に に類 似 し抗 生物 質 の 作用 と異 な る こ
殺す 作用 を 示す が 感染 性 は全 くな い点 で フ ァー ジ と異
な り,ま た 殺菌 作 用 は示 す が粒 子 中 に遺 伝 因子 で あ る
と,等 か らバ クテ リオ シ ンと総称 され て い る.こ の 中
DNAを
には低 分 子 でト リプ シ ン可 溶性 ・耐 熱性 で 電子 顕 微鏡
両 者 の 中間 に位 置 して進 化 的 にバ クテ リオ シ ンと フ ァ
ー ジをつ な ぐ もの と考 え る ことが で き る.こ の よ うな
で 不 可視 な もの と トリプ シ ン不溶,熱 に弱 く電 子 顕 微
鏡 下で フ ァー ジま たは フ ァー ジ構 成 粒子 状 の物 質 が観
フ ァー ジ様 粒子 は感 染力 が な い こ とと溶 原性 フ ァー ジ
察 され る もの に分 け る ことが で き る1).
と同 様 の方 法 で生 成 が誘 発 され る ことか ら不 完 全 溶原
一 見 全 く異 な って見 え る フ ァー ジとバ クテ リオ シ ン
は 次の よ うな 多 くの共 通 点 を 持 って い る.(1)
フ ァー ジ(defective
バク
prophage)ま
た は殺 菌 粒子(ki-
ller particle)と よば れ てい る.こ の よ うな不 完 全 フ ァ
テ リオ シンの生 成 を支 配 す る遺 伝子 の 多 くは細胞 質 内
に存 在 す るがtemperateフ
含 ん で い る点 で バ クテ リオ シ ン とも異 な り,
ー ジは多 くの細 菌 か ら発 見 されて お り広 く 自然 界 に分
ァー ジの あ る種 の もの(
布 す る もの と考 え られ る.そ れ に もかか わ らず 詳 細 な
A
defective
bacteriophage
* Hiroshi
YOSHIKAWA
(Cancer
Reaearch
PBSH
in Bacillus
subtilis:
研 究 が行 な わ れ た もの は極 め て少 な くよ く知 られ て い
金 沢 大学 が ん 研究 所 生 物 物 理
Institute,
Kanazawa
る もの は大 腸菌 の一種 のE.
Univ.)
1
coli 15のcoliphage
15
(246)
生
と枯草 菌 の一 種B.
物
物
理
Vol. 10 No.6
(1970)
subtilis 168株 の フ ァー ジPBSX,
π お よび μ く らい で あろ う.ま
た これ まで の研究 の
多 くは 電子 顕 微鏡 によ る粒 子 の形 態 の 同定 お よび 粒子
に含 まれ るDNAの
物 理 化学 的 測定 が主 な もので 粒 子
の生 成 機 構 に関 す る研 究 は少 な くまた バ ク テ リオ シ ン
で 詳細 に行 なわ れ て い るよ うな作用 機 作 に関 す る研 究
は皆 無で あ る.
著者 らは枯 草 菌B. subtilis 168株 を マ イ トマイ シ ン
C処 理 した と き生 産 され る不 完全 フ ァー ジ粒子 に つ い
て その生 成 機 構 と粒 子 中 に含 ま れ るDNA分
子 の 物理
化学 的 お よび 遺伝 的構 造 を詳 細 に研究 した10∼12).そ
の結 果
この粒 子 は完 全 フ ァー ジ とバ クテ リオ シンの 中間 的存
在 と して位 置づ け られ るば か りで な く,溶 原性 フ ァー
ジの誘 発 現 象 とは異 な る全 く新 しい機 構 によ り誘 発生
図1.
マ イ トマ イ シ ン処 理 に よ る溶 菌
成 され る ことを 見 出 した.こ の よ うな不完 全 フ ァー ジ
の 研究 は細 胞 内 に存 在す る溶原 性 因子 また は細 胞 質 内
の独立 遺 伝 子 の形質 発 現 および 自己増 殖 と細 胞 自身 の
DNA合
成 との相 関 関係 を 理解 す る上 に極 めて 重要 な
材 料 で あ る と考え られ る.こ の よ うな観 点か ら著者 ら
の研 究 を紹 介 しなが ら問題 点 を明 らか に した い と思 う.
なおB.
る.細 胞 濃 度 が増 加 した り生育 速 度 が遅 い 合成 培地 で
subtilis 168株 の不 完 全 フ ァー ジ粒 子 はす
で にMarmurら
はPBSHの
moto13)らによ り報 告 され て い るが著 者 らがPBSHに
産 生 は10∼5%以
下 か ま たは全 く起 こ ら
な い.
に 発 見 さ れ8),そ の 生 成 機 構 はOka-
つ
これは この不 完全 フ ァー ジの産 生 に最 も特徴 的な こ
い て得 られ た結果 と部 分 的 には よ く一致 して い る.し
とで あ り,溶 原性 フ ァー ジの誘 発 現 象 と異 な り細 菌 の
た が ってPBSHはMarmurら
DNA合
のPBSXと
同一 か あ
成 速 度 に完 全 に依 存 してい る.チ
るい は極 め て類 似 した不 完全 フ ァー ジ様粒 子 で あ る と
態,uv照
考 え られ る.
効 率 が悪 くMCの
射,5-ブ
ロモ ウ ラ シル 処 理 等 に よ る誘発 は
場 合 の5∼10%以
溶 菌 液を80,000g,
II
PBSH粒
不 完全 フ ァー ジ粒 子PBSHの
誘発
維状 のflagellaの 他 に数 多 くの 構 造体 が 観察 され る.
紫外 線 照射 や チ ミン要 求菌 を チ ミン欠 乏状 態 で培 養 す
完 全な フ ァー ジ様粒 子(P),フ
る と き誘 発 され るが マイ トマイ シ ンC
お よび フ ァー ジ頭 様 粒子(HH)が
よ り最 も効果 的 に産 生 され る.図1にB.
の種 々の 変 異株 とW23株
を4μg/mlのMC処
理に
subtilis 168
受性 で あ りW23は
ァー ジ尾 様 粒子(T),
存 在 す る.頭 様 粒
子 の あ る もの はflagellaに 結 合 して い るよ うにみ え る
理 によ
(H).
る溶菌 状 態 を示 した.突 然変 異 株 の 中で は チ ミン要 求
菌 が最 もMC感
下 で あ る.
60分 の遠 心 分離 で 濃縮 した もの
を電 子顕 微 鏡 で観 察 す る と図2の よ うで ある.長 い繊
子 の 産生 は溶原 性 フ ァー ジの産生 と同 様 に
(MC)処
ミン欠 乏 状
濃縮 した 溶菌 液 を比 重1.30g/ccのCsCl中
で 平衡
沈降 させ る とい くつ か の帯 状 に分 離 され る.各 々の 画
この 濃度 のMCで
は 溶菌 され な い.こ の23株 は168株 の近縁 の株 で あ る
分 を 電子 顕 微 鏡 で観 察 し同定 す る こ とがで き る.こ の
が,い か な る方 法 で もPBSHを
方法 で 図2で 観 察 され た完 全 フ ァー ジ粒子 は均一 な比
べ るよ うにW23はPBSHの
PBSH遺
MC感
産 生 しない.後
に述
殺 菌 作 用 を 受 け るか ら
重(1.375)の フ ァー ジ粒 子 と して 精製 され る(図3A).
伝 子 を 持 って い ない 株 で あ る と考 え られ る.
また図2の 尾 と頭 は 比重1.29∼1.32に 濃 縮 され るが形
受 性菌168LTTを
態 的 にみ て 完全 フ ァー ジ粒子 の尾 と頭 の部 分 と全 く同
一 で あ る(図3B)
.こ の こと は尾 と頭 の ア ミノ酸組
す な わ ちPBSHの
用 いて もMCに
よ る溶菌
産 生 を起 こす条 件 は 極 め て 限 られ
て お り生 育 速 度 の速 い非 合成 培地 で対 数期 の 初 期,細
胞 数 が,2×107/ml以
成 の分析 に よ って も裏付 け られて い る.
これ らの こ とか らB. subtilis168LTTはMC処
下 の状 態 の みで 有効 に産 生 され
2
理
枯 草 菌(Bacillus
図2.
粗 濃 縮 溶 菌 液 の 電 子 顕 微 鏡 図(negative
subtilis)の
(247)
不 完 全 フ ァー ジ
staining)
図3.
A)
図.(2と
精 製 フ ァ ー ジPBSH粒
同 様 のnagative
staining)
子 の電 子 顕 微 鏡
B)
精 製 フ ァー
ジPBSHの
尾 と 空 の 頭 部 の 電 子 顕 微 鏡 図(図2と
のnegative
staining)(文
によ って一 種 類 の フ ァー ジ様粒 子を 産生 す るが同 時 に
表1.
PBSH粒
献 番 号10よ
同 様
り 引 用.)
子の大きさ
不 完全 な尾 およ び頭 部 の粒 子を フ ァー ジと ほぼ 同量細
胞 内 に蓄積 して い る ことが 明 らかで ある.こ れ らの不
完 全粒 子 は完 全粒 子 が取 り扱 い中 に破 か い され た もの
か どうか決 定 的 な証拠 はな いが後 述 す る生 成 機構 か ら
考 えて過 剰 に生 産 され完 成 され て いな い粒 子 で あ る と
考 え られ る.
III フ ァー ジPBSH粒
A)
物理 化 学 的性 質
は1.375g/mlで
子 とそ のDNAの
CsCl中 のPBSH粒
あ り粒子 中 のDNAの
子の比重
比重 は1.705g
/mlで あ る.こ れ らか らフ ァー ジのDNA含
量 比で16.5%と 計 算 され る.表1に
性質
精製 した フ ァー ジ粒子 の 尾 の ア ミノ酸 組 成 は表2に
示 す 通 りで精 製flagellaの
量 は重
示 す粒 子 の大 き さ
か らフ ァー ジ粒 子 の容 積 は81×10-18cm3で あ り,比 重
白の起 原 を考 え る上 に興 味 深 い事 実 で あ る.
1.375か ら計 算 す る と粒 子 の分 子 量 は67.5×106 dalton.
したが ってDNAの
く一 致 す る(表3参
フ ァー ジ粒子 か らフ ェノ ール 法 で 抽 出 精 製 され た
DNAは
分 子量 は11.1×106 daltonと 期待
され る.こ れ は実測 値12.35×106
蛋 白 の ア ミノ酸 と極 めて
類 似 の組 成を 示 す こ とが分 か る.こ の こは フ ァー ジ蛋
表3に 示 す よ うな物 理 化学 的性質 を 持 って い
る.分 子 量 は0.2M
daltonと 比 較 的 よ
NaCl中
の沈 降速 度 とCsCl中
zonal沈 降 に よ って 求 め られ たが,い
照).
3
の
ず れ の場 合 も極
(248)
生
表2.
PBSH
物
物
Vol. 10 No.6
理
(1970)
TailとFlagellaの
蛋 白 質 の ア ミノ 酸 組 成
表3.
PBSHお
よびPBSH
DNAの
物理 的諸 性質
図4.
PBSH
DNAの
電子顕微鏡図
めて 明 瞭 な境 界 を示 し分 子 の均 一性 を 示 して い る.変
性DNAも
同様 に均一 な 分布 を 示 し分 子量 は約1/2であ
る.し た が って このDNA分
重鎖DNAで
子 は一 重 鎖 切断 の な い二
あ る.電 子 顕 微鏡 によ る観 察で は 円形構
造 は認 め られ な か った(図4参
これ ま で に発見 され た フ ァー ジはThomasに
そ のDNAの
B)
のB.
照).
生 物 的活 性
い.PBSH粒
よ って
大 きさお よ び形 態 的 に分 類 されて い るが
PBSH粒
子 は調 べ られ た 限 り種 々
subtilisに 対 し感染 力 な くplaqueを
子 を生 成 しない 株W23に
作 用 を示 す が,PBSH生
形 成 しな
は 吸着 し殺 菌
産菌 には 作用 しない.こ
の
分 子 量10×106 dalton前 後 の フ ァー ジは 発見 され てお
ことは 溶原 菌 が 同種 フ ァー ジ に対 して 示 す耐 性,ま た
らずPBSHお
はバ クテ リオ シ ン産 生菌 が 同種 バ クテ リオ シ ンに対 す
よ びBacillus licheniformisの
同様 の14)
不 完 全 フ ァー ジ粒子 が そ の空 間を 埋 め る もの と して注
る耐性 と同 じ現 象 の免 疫 性(immunity)に
目 に値 す る.
と考 え られ て い たがPBSX生
最 近Mazmurら
はPBSH
5'-末端 はdGとdTで
DNAの
末 端塩 基 を分 析 し
産菌 はPBSX粒
よ る もの
子を全
く吸着 しない ことがわ か ってお り,免 疫性 以 前 に生 産
あ るこ とを報 告 して い る27).
菌 はPBSXを
4
吸着 す る受 容 体 を 欠 くか変 異 した耐 性
枯 草 菌(Bacillus
subtilis)の
菌 で あ る と考 え る方 が適 当で あ ろ う.
"killer particle"と して のPBSHの
(249)
不完 全 溶 原 フ ァー ジ
IV
PBSH粒
子 の生 成機 構.
性 質 は まだ全 く
A)
研究 され てお らず その 作用 機 作 はバ クテ リオ シ ン,フ
枯 草菌 のDNAと
その 複製 機 構.PBSH粒
子
ァー ジ ゴー ス トの作 用 との 比較 にお いて興 味 深 い課 題
の生 成機 構 を説 明 す る前 に それ と密 接 な 関連 の あ る菌
で あ る と思 わ れ る.
体 のDNAと
野 性 型 の菌 か ら得 たPBSH粒
あ るB.
子 をPBSH産
そ の複 製機 構 につ い て簡 単 に述べ た い.
枯 草菌 は通 常2個 の核 を 持 って お り各 々 の 核 当 り の
生株で
DNA量
subtilis 168の 種 々 の 栄 養 要求 菌 と適 当な条
は5×10-9μgで あ る.い いか え れば も し染 色
件 下 で 混ぜ ると菌 の多 くの遺 伝 形質 を 野性 型 に転 換 す
体 が一 分 子 のDNAか
る こ とがで き る.こ の現 象 は当 初不 完 全 フ ァー ジ粒子
量 は3×109
に よ る形 質導 入(transduction)で
る研究 で は少 な くと も1/2以上 の大 き さの分 子 が検 出さ
あ ると考 え られ た
らで きて い る とす る とそ の分 子
daltonで あ る.オ ー トラジオ グ ラムに よ
が,後 に フ ァー ジ粒子 が 細菌 表 面 に全 く吸着 しない こ
れ て お り17),生
化 学 的 また は遺 伝 的 に もDNAの
とか ら考 え る と真 の形質 導 入 で はな く,粒 子 中 のDN
造 を支 持 す る結果 が報 告 され て い る18)か
ら枯草 菌 の染色
Aが 一担 粒子 か ら分 離 したの ち細 胞 の 中 に と りこま れ
体 は一 個 の連 続 したDNA分
る形質 転 換反 応 に よ る もの と考 え られ る.こ れ は 反応
思わ れ る.
が菌 の"competence"の
またDNA
状 態 に完 全 に依 存 す る こ と,
この 巨大DNA分
PBSH
子 はつ ね に一定 の点(複 製 起 点)
複製 終点)で 終了 す る.こ の よ うな複 製 方法 を 逐 次 的
DNAに
DNAに
子 で あ ると考 え て よい と
か らは じま り一定 の方 向 に順 に複 製 され て一 定 の点(
aseに よ り阻止 され る こ とに よ って も裏 付
け られて い る.
PBSH
円形 構
よ って 形質 転 換 が 起 こ る こ と は
細 菌のDNAが
示 してい る.temperateフ
な って い る と遺 伝 子 の染 色 体上 の位 置 と集団 全 体 の遺
ァー ジは λ のよ うに菌 の特
伝 子 の頻 度 の 間 に一 定 の関係 が 成 立す る.い ま染色 体
殊 な遺 伝子 を フ ァー ジDNA中
cialized transducer)と
む もの(generalized
複製 とよぶ19).対
数 増殖 期 の細 胞 集 団が 逐 次 的複 製 を行
含 ま れて い る こ とを
の長 さを1と し複 製起 点 を0,終
に取 り込 む もの(Spe-
菌 の遺 伝 子 を 無差 別 に 取 り込
transducer)が知
か らx(0≦x≦1)の
G(X)=21-Xで
られて い る.
点 を1と す る.起 点
位 置 にあ る遺 伝子Xの 頻度 は
あ る.対 数増 殖 期 の菌 集団 か らDNA
E. coliの フ ァー ジP1あ るい はB. subtilisの フ ァ
ー ジPBS1ら は後 者 の フ ァー ジ に属 す るが これ らは感
を 抽 出 し各 々 の遺伝 子 頻 度を 測定 す る と この 函 数か ら
染性 の フ ァー ジ粒子 と非 感染 性 で形 質 導入 性 を示 す フ
枯 草菌 の染 色体 地 図 は この よ うな方 法 で作 られ た もの
ァー ジ に分離 す る ことが で き る15)16).
で あ る.複 製 の順 か ら決 定 され た配 列 に は その 後 の研
PBSHは
各 々 の遺 伝子 の染色 体 上 の位 置 が決 定 され る.図5の
究 でPBS
多 くの 形質 を 転 換 す る ことが で き るか ら
1に よる形 質導 入 に よ って 決定 され た配 列
generalized transducerに 相 当す る.そ こでPBSH粒
とよ く一致 す る ことが示 され て い る.起 点 に最 も近 い
子 の中 でPBSH遺
遺 伝子 はadenine-16,終
体DNAを
伝子 を 持つ フ ァー ジ粒子 と 他 の菌
持 つ粒子 をCsCl中
の比 重 の差 で分 離 す る
ことを試 み た が粒 子全 体 に つ いて もまたDNAに
つい
点 に近 い 遺 伝子 はmethio-
nineとisoleucineで
あ る.し
はade-16とmetの
比 はほ ぼ2に 等 しい.
たが って対 数増 殖 期 に
て も比 重 は極 めて 均一 で あ り異 な る成 分 に分 け る こと
は成 功 しなか った.た だPBSH粒
を示 さない た め も しPBSH粒
子 の 場 合 は 感 染性
子 中極 く小 量 がPBSH
遺 伝子 を 含 む真 の フ ァー ジ粒 子 で あ って も検 出は極 め
て 困難 で あ る.
さてPBSHは
この よ うに菌 体DNAを
無 差別 に と
り込 んで い るが 形質 転換 の頻 度 は形 質 に よ り異 な って
お り特 に菌 体 染 色体 の複 製 起 点 に近 い遺 伝 子 で あ る
図5.
adenine-16の み が異 常 に 高頻 度 に含 まれ る こ とが 明 か
に な った.この こ とはPBSH生
成 機構 お よ び菌 体DNA
合 成 との 関係 を解 明 す る上 に重 要 な事 実 で あ るの で項
を改 め て説 明 したい.
5
B, Subtilis
168株 の 遺 伝 子 地 図
(250)
生
物
物
Vol. 10 No.6
理
枯 草 菌 は通 常 の グル コー ス,ア ミノ酸 合成 培 地 で は
B)
染色 体 当 り唯一 個 の複 製 点で 合成 され る.と ころが さ
PBSH
らに生 育速 度 の速 い非 合成 培 地 中で は染 色 体 当 り複製
で い るが,そ
点が3個 以上 で 複製 が 起こ るこ とが 知 られ て いる20).
が異 常 に高 頻 度 に含 ま れて い る.MC処
この と きの複 製様 式 は 図6に 示 す ような 多分 岐複 製
遺伝 子 頻 度.
(1970)
PBSH
DNAの
DNAは
菌 体染 色 体上 の 多 くの遺伝 形 質 を含 ん
前 述 の よ うに
の頻 度 は 図7に 示す よ うにade-16の
集団 のade-16/metは4.7で
み
理 直 前 の細 胞
あ った.こ の集 団 は対 数
で あ る.多 分 岐 複製 の染 色体 中 の染 色 体の遺 伝 子頻 度
増殖 期 に あ った か らG(X)=2n(1-X)か
はG(X)n=2n(1-X)で
求 め られ る.す なわ ち この条件 で は平 均 して染 色 体 当
表 わ され る21).(こ
こでnは 同一
らn=2.23が
染色 体 で 同 時 に起 こ って い る複 製 サイ クル の数 を 表 わ
り2.23サ イ クル の 同時 合成 が起 こって い る ことを 示 し
す)ま た起 点 と終点 の 遺伝 子 の比(ade-16/met)は2n
て い る.
で あ る.こ の こ とか ら逆 に対 数増 殖 期 に あ る菌 集 団 の
DNAのade-16/metを
G(X)=22.23(1-X)か
測定 す る こ とに よ って複 製 中
らす で に染 色 体上 の位 置が 決定
され てい るcysteine-14以
下6個 の遺 伝 子 の頻 度 を求
の染 色 体 の枝 分 か れ の数 すな わ ち複 製 点の 数を 求 め る
め る こ とがで きる.こ の計 算 値 と実 測 されたPBSH
ことが 可能 で あ る.
DNAの
遺 伝子 頻 度を 比 較 す る と 図7に
示 す よ うに
ade-16を 除 く他 の遺 伝子 は理論 値 とよ く一致 して い る.
この こ とか らade-16を
のぞ く他 の遺 伝 子 は無 差別 に
一定 の 割合 で フ ァー ジ粒 子 に と り こまれ る もの と考 え
られ る.一 方ade-16は
フ ァー ジ粒 子 中 にMC処
理
前 の約5∼10倍 濃 縮 されて お り,こ の変 化 はMC処
理を してか ら溶菌 す る まで の細胞 内のDNAの
存 在状
態 の変 化 に求 め な けれ ばな らない.
図6.
多分 岐複 製 の分 子 モ デ ル
図7.
C)
以上 述 べ たよ うに枯草 菌 は逐 次 的 にDNAを
特 定 の起 点 と終点 を 持 って いる.さ
MC処
PBSH
DNA中
に含 ま れ る遺 伝 子
理 細 菌 に よ るDNA合
の細 菌 集団 を4μg/mlのMCで15分,37℃
複製 し
らに形 質 転換 によ
成
対数 増 殖 期
で処 理 し
濾過 洗 浄 して 再 び新 鮮 な培 地 中 で振盪 す る と約90分 増
り容易 に起 点 と終 点 の遺 伝 子頻 度 を 測定 す る ことが で
殖 後 溶菌 しPBSHを
き る.こ れ らの こ とは細 胞 のDNA合
細 胞 内のDNA合
成 機 構 とそ の制
放 出す る.こ の間 種 々の 方 法 で
成 を追 跡 す る こ とが で き る.
処 理後 蛋 白質 およ びRNAの
御 を解 明 す る上 に極 め て有 利 な方 法 で あ る.
6
MC
合 成 は ほ とん ど正 常 に起
枯 草 菌(Bacillus
subtilis)の
(251)
不 完 全 溶 原 フ ァー ジ
こるが 細胞 分 裂 はい ち じる しく阻 害 され,細 菌 は長 い
filament状 にな る.一 方 溶 菌直 前 までDNA合
継続 し全量 で150∼200%増
DNAの
約30%はMC処
り70%はMC処
成は
加 す る.フ ァー ジ粒 子 中 の
理 以前 の菌 体DNAか
理 後 に合成 され るDNAが
れ る.ま た菌 体DNA全
ら,残
と り こま
体 の約30∼40%がPBSH粒
子 中 に回 収 され て い る.し たが ってade-16の
処 理後 に合成 され るDNAに
増加 は
よ る もの と思 わ れ る.こ
の点を 明 らか にす るに は処 理 後の 細菌 内DNA合
成を
前 述 の遺 伝子 頻 度 を測 定 す る方 法 で解 析 しな けれ ば な
らない.図8,
MC添
9,に
この よ うな実 験 の結 果 を示 す.
加 後約80分 溶 菌 は起 こ らな いか ら60分 まで は菌
体 内DNAを
抽 出す る こ とがで きる.85分 の 標 品 はす
で に溶 菌 が起 こ って い るか ら主 と してPBSH
考 えて よ い.抽 出 したDNAは
DNAと
図8.
精製 し形 質 転換 反 応 に
MC処
理 細 菌 に よ るDNA合
成:菌
のgrowth,
lysisとsampling.
よ り種 々遺 伝形 質 の頻 度 を測 定 す る.測 定 値 は各 々 の
遺伝 子 の形 質 転換 率 の差 を 補正 しな けれ ばな らない の
で 同時 に胞 子DNAに
よ る形 質 転換 を 測定 しそ の遺伝
子 頻度 で補 正 され る.補 正 され た値 をMC処
時 間 に対 してplotと
か な よ うにMC処
理後の
した のが 図9で あ る.図 で明 ら
理 後ade-16/metの
みが 変化 し他
の遺伝 形質 の頻度 は全 く変 化 しな い.ま た フ ァー ジ粒
子 中 のDNAのade-16/metの
値 は 細胞 内DNAの
頻 度変 化 の延 長上 に求 め られ る値 とよ く一致 す る.こ
の こ とか らPBSH
DNAのade-16の
選 択 的な 増 加
は フ ァー ジ粒 子形 成 の ときに突 然 起 こる もので は な く
MC処
理 後細 胞 内 で徐 々 に変 化 した結果 で あ る と考 え
られ る.
ade-16の 頻 度 を選 択 的 に変 化 させ る原 因 は種 々 の 可
能 性 が あ る.第 一 はMCの
直接 的 作用 に よ って 遺伝
形 質 の形 質転 換能 が 失 活 され る ことが知 られ てい るが
何 らかの 理 由でade-16の
能 性 であ る.MCの
みが 失 活 さ れ な い と云 う可
処 理 に よ る形 質 転換 能 の 減少 は全
体 の50%以 下 で あ り,ade-16の
増 加 はMCを
除去 し
図9.
MC処
理 細菌 に よるDNA合
成.
た後 徐々 に起 こ る ことか ら考 え る と この よ うな可 能性
は少 ない.さ らに この 可能 性 は次 に述 べ る5-ブ ロモ ウ
ラシル(5-Bu)を
用 い た実 験 で直 接 的 に否 定す る こと
が で き る.
ade-16がMC処
他 に塩 基類 を 添加 しな けれ ば な らな い ので この よ うな
理 後新 しく合 成 され た ものか ど う
か を調べ るに は新 し く合 成 され たDNAを
元 素 で標 識 し元のDNAか
菌で あ る ことを 利用 して塩 基 添加 合 成 培地 で15分MC
処 理を 行 な い洗 浄 後5-Buを
ら分離 す る ことに よ って 可
能 で あ る.比 重 の重 い元 素 と して は,N15,
が 使 われ るがPBSHの
同位 元 素 は使 用 で きな い.そ こで この 菌 が チ ミン要 求
重 い比 重 の
DNAの
H2, C13等
チ ミンを5-Buで
図10に 示 す よ うに5-Buで
生 産 の よ うな場 合 は生 育 速 度
加 え新 らし く合 成 され る
置換 す る ことを試 み た.
置 き換 え る と時 間 的 には
約30分 遅 れ るが 対 照 と同 様 に溶 菌 を起 こ しPBSHを
を 早 くす る必要 が あ り合成 培 地 で は ア ミノ酸 混合 物 の
7
(252)
生
放 出す る.し か し合 成培 地 で はDNA合
培地 の1/2以下 で あ りさ らに5-Bu存
物
成量 は非 合 成
値も
在 下で は2倍 に増
加 す る にす ぎない.し たが ってade-16/metの
Vol. 10 No.6
理
DNAの70%以
在下 で は対 照 の約
40%に 低 下す る.こ れ に対 応 してade-16/metの
減 少 し対 照 で処 理前 の3倍,Bu存
物
(1960)
上 は新 しく合 成 され たDNAで
あ りそ
の 内50%は 処 理後 に2回 以 上複 製 され たDNAで
あ る.
またade-16は85%以
以上
上 複 製 され た 内50%は2度
複 製 され て い るの に反 しその 他の 遺伝 子 は全 て1度 以
値 が5
上 複製 され る こ とはな く特 にleucineよ
り終 点 に 近 い
倍 以上 に な る非 合成 培 地 で の合成 様 式 を正 し く反 映 し
遺 伝子 の50%以 上 は未 複 製 の ま まで残 って い る.す な
て い る とは い えな いが,少
わ ちMC処
な くと もade-16の 増 加 が
合成 に よ る ものか否 か の 判定 は可 能 で あ る.
理 に よ って約50%の
細 胞 はす で に起 こ っ
て い た複 製サ イ クル を完 了 で きな い程 度 に複 製 が 阻害
されて い る に もかか わ らず 複 製起 点 附近 の み は繰 り返
し複製 が 起 こされて い る ことを示 して い る.こ の こと
か らade-16の
増 加 は他 の 遺 伝 子 の失 活 に よ る相対 的
増 加 で はな く,MC処
理 後 のDNA合
成 に よ って真 に
増 加 した もので あ る こ とが明 らか で あ る.
図10.
5-ブ
lysisとDNA合
5-Bu存
ロ モ ウ ラ シ ル(5-Bu)存
図11
在 下 のgrowth,
成.
在下 の 溶 菌 液 か らPBSHを
DNAをCsClの
精製 しその
濃 度 勾配,平 衡沈 降 に よ り分析 す る
と図11の よ うな結 果 が得 られ る,す
な わ ち,PBSH
8
5-Bu存
在 下 で 生 成 され たPBSH-DNA
枯 草 菌(Bacillus
DNA合
成 に よ ってade-16遺
subtilis)の
伝 子 が選 択 的 に増 加 す
(253)
不 完全 溶 原 フ ァー ジ
(DNA合
成 の阻 害 に よ るinitiationの 誘 発 につ い て は
る原因 に は,次 の二 つ の可 能性 が 考 え られ る.第 一 は
文 献番 号20を 参 照 され た い).
PBSH遺
これ ら2つ の可 能性 を 区別 す るに は合 成 され るade
-16遺 伝 子 の細 胞 内で の 存 在様 式 す なわ ち分 子 の大 き
SH遺
伝 子がade-16の
近 くに位 置 して お り,PB-
伝 子 の 自己増 殖 に伴 ってade-16遺
伝 子 も増 加
す ると い う可 能性 で あ る.こ の 場合 はPBSH遺
の合成 とade-16の
複 製 が菌 体DNAの
さを測 定 す れ ば よいで あろ う.こ の よ うな実 験 の一 例
伝子
合成 と は独 立
を 図12に 示す.菌 を あ らか じめH3-チ
ミジ ンで 標 識 し
に起 こる こ とが 観察 され る はず で あ る.第 二 の可 能性
MCで15分
は菌体DNAの
振盪 を続 け る.一 定 時 間 ご とに一 定 量 の培 地 か ら 全
異 常 複製 によ る もの であ る.MC処
に よ り複 製 の継続 は阻 害 され る(おそ ら くMCに
二 重 鎖DNA間
の結 合 に よ る)が,蛋
理
DNAを
よる
処 理洗 浄 したの ち32Pを 含 む 新鮮 な 培地 で
抽 出 し蔗糖濃 度勾 配 沈 降法 に よ りMC処
のDNA(H3ラ
白質 の 合成 は正
理前
ベル)と 処 理後 に合 成 され たDNA(32P
常 に進 行す るた め新 しい合 成 サ イ クル が次 々Initiate
ラベル)の 分子 量 を 比較 す る.ま た遠 心 分離 され た各
され る.そ の結 果起 点 附近 でMCに
画分 に つ いてade-16の
よ る連結 が 起 こ
って い な い部分 の み が繰 り返 し複 製 され る と期待 され
よ り,ade-16遺
る.こ の場 合 は第 一 の可 能性 と異 な り合成 され るade
-16は 菌 体 染 色体 の一 部 と して 合成 され るは ず であ る.
定す る ことが で き る.
図12.
MC処
この条 件下 で はMC添
理 後 細胞 内 で合 成 され るDNAの
9
形 質転 換 能 を測 定す る こ とに
伝 子 活性 を もつDNAの
分 子 量.
分 子 量 を決
加 後90分 で 溶菌 は終 了 す るか
(254)
生
ら95分 目 の標 品 は フ ァー ジPBSH
DNAの
で い る.図12に 明 らか な よ うにPBSH
物
物
み を含 ん
Vol. 10 No.6
理
自己増 殖 は 認め られ な い.し たが ってMC処
DNAは26S
(1970)
理による
遺 伝子 の 発現 機 構 は完 全 溶原 性 フ ァー ジとは異 な る機
に狭 い帯 状 に 沈降 す るが菌 体DNAは30∼50Sに
不均
一 な幅広 い分 布を 示 す.こ の実 験 か ら明 らか な こ とは
構 が予 想 され る.遺 伝 子 の 自己増 殖 無 しに情 報発 現 が
第1に 新 しく合 成 され る32P-DNAは
DNAのMCに
NAと
全 く同 一 の分 布 を示 す ことで あ りPBSH
に相 当す る26S DNAは75分
2に26S
DNAの
DNAに
H3共
理 に よ って起 点 附近 のみ
度 が増 加 し結果 的 に は 自己増 殖 に よ るDNA増
加 と同
様 に抑 制 され て い る形 質 の 発現 が起 こ るの に十 分 の遺
伝 子 量 に達 す る と考 え る ことが で き る.
高 分子 部分 に存 在 し26S
この 仮説 を 証 明す るた あに はPBSHの
には粒 子 形成 直 前 に そ の一 部分 が移 行 す るの み で あ る.
これ らの 事実 か らade-16の
伝子
の遺 伝子 が 繰 り返 し複 製 され るか ら細 胞 内の遺 伝 子 頻
に一
して合 成 され たの
遺伝 子 ま た
は その 制御 遺 伝子 の染 色 体 上の 位 置付 けが必 須 で あ る
がPBSHは
増 加 は フ ァー ジDNA
の 自己増 殖 に よ る もので は な く菌 体DNAの
伝子 ま たはPBSHの遺
に存 在す る とす るとMC処
転 化す る もの と考 え られ る.第3にade-16
活 性 はつ ね に菌 体DNAの
しPBSH遺
の発 現 を制 御す る遺伝 子 が菌 体 染色 体 の複 製 起点 附近
変 化す る.す なわ ち26S
度30S以 上 の大 きさの 菌体DNAと
よ る異 常 な多 分 岐複 製 に依 存 す る こ と
で あ る.も
まで全 く現わ れ な い.第
直接 合 成 され る もので な く,32P,
ち26Sに
DNA
出現 と同時 にH3-DNAと32P-DNA
は 同 じ割合 で26S
DNAは
起 こる事 実 を説 明す る一 つ の方 法 は,情 報 発 現 が菌 体
元 の菌 体H3-D
感染 性を 持 たず 変異 株 が 得 られ 難 い ため
ま だ成 功 した報告 が な い.多 分 岐 複製 の 結 果 と し て
合成 に よ
る ことが 明 らかで あ るば か りで な く,フ ァー ジ遺伝 子
PBSHの
の 自己増 殖 は実 験 の 精度 内で確 認 で きな い ほ ど,少 量
情報 の 発現 機 構 の一 つ と して多 分 岐複 製 の重 要性 を 考
産生 が 誘 発 され る とす る と抑 制 され た遺 伝
で あ るか また は全 く起 こって いな い こ とが 証 明 され た.
え な けれ ばな らない.多
分 岐 複製 はMC処
紫外 線 照射 チ ミン欠 乏,5-Bu処
D)
PBSHの
誘 発 と生 成機 構
以 上 に述 べ た よ う
酸処 理等 いず れ もDNA阻
な実験 結 果 を基 に して,不 完全 溶 原性 フ ァー ジPBSH
粒 子 のMCに
理,ナ
理 の他 に
ルデ ィキ シン
害剤 で 誘発 され る.
これ らの処 理 は ま た同時 に溶 原性 フ ァー ジや バ クテ
よ る誘 発 と細 胞 内の 生 成 機 構 を考 えて
リオ シ ン生成 を誘 発 す る ことは よ く知 られて い る.溶
み た い.こ の粒 子 の生 成 に特徴 的 な ことは通 常 の溶 原
原性 フ ァー ジ λ の誘 発 に は紫外 線 やMC処
性 フ ァー ジの誘 発 現 象 と異 な りフ ァー ジ遺伝 子 の 自己
まず フ ァー ジDNAの
増 殖 が全 く認 め られ な い こ とで あ る.し か しな が ら一
ッサ ーを 失 活 させ る作 用 を持 つ物 質 が細 胞 内 に生 成 さ
方 で は フ ァー ジ粒 子 を形 成 し溶 菌 に至 る フ ァー ジ遺伝
れ る ことが知 られ て い る25).し
か しこの 化学 的本 体 お よ
子 の発 現 が 正 常 に起 こ って い る.人 工 的 な不 完 全溶 原
び そ の生 成 機構 は全 くわ か って い ない.こ れ らの 研究
フ ァー ジはE.
coliの
λ につ い て多 くの 形 質 の変 異
株 を 用 いて 研究 され フ ァー ジDNA合
に欠 けて い るの は誘 発 後 の菌体DNAの
成 と形 質 発現 の
理により
情 報発 現を 抑 制 して い る リプ レ
合 成 が遺 伝 情
報 発 現 の制 御 にお よぼ す 影響 に関す る研究 で あ る.枯
関係 が 明 らか に され て い る.そ の 結 果誘 発 の初 期 に合
草 菌 のMC処
理 の場 合 の ご と くE.
成 され る酵 素 はDNA合
紫 外 線やMC処
理 によ って 複製 起 点 附近 の多 重 複製 が
成 に無 関 係 に発 現 され るが完
coliの 場合 に も
全 フ ァー ジ粒 子 の形 成 に必 要 な後 期 に発 現 され る酵 素
起 こ るこ とが予 想 され る.そ の結 果 と してPBSHの
の合成 は フ ァー ジDNA合
生 成 の よ うな特 殊 な 遺伝 情 報の 発 現 が起 こ り得 る こと
成 に依 存 す る こ とが 報 告 さ
れ て い る24).同様 の こ と はcoliフ
ァ ー ジT4に
ついて
は十 分考 え られ る こ とで ある.著 者 らはDNA合
も報 告 され て い る23).ま
た あ る種 のバ クテ リ オ シ ン は
MCで
そ の生 成 が誘 発 され るが,MC処
成阻
害 剤 によ り惹起 され る種 々の現 象 の 初期反 応 は この よ
理 に よ って 細
うな細菌DNAの
合 成 の異 常 化 に よ って 起 こる情 報発
胞 内 の バ ク テ リオ シ ン因子 の数 が 増 加 して い る こ とが
現 に よ る結 果 で は ない か と考 え枯 草 菌の 複 製起 点 附近
報 告 されて いる.こ の よ うに細 胞 内 に共 有 す る フ ァー
の遺 伝 子構 造 の研 究 を 進 めて い る.
ジ遺 伝子 や バ クテ リオ シ ン因子 の形 質発 現 に は遺 伝子
PBSH生
成 機構 で 第二 の興味 あ る点 は菌体DNA
の複 製 が必 然 的 に伴 って い るよ うで あ る.し か し情 報
の粒 子 へ の と り込 み に関 す る問題 で ある.巨 大 な菌体
発 現 の 制御 とDNA合
染色 体 が どの よ うに一 定 の大 きさ のDNA分
成 との 関係 は まだ分 子機 構 と し
て 明 らか に され て いな い.
さてPBSHの
場 合 は前 述 の よ う にPBSH遺
子 に分解
され るの か はgeneralized transducerに一 般 的 な問題
で あ る.DNA分
伝子の
10
子 の大 き さはT4フ
ァー ジの よ うに
枯 草 菌(Bacillus
頭 部粒 子 に包 み込 まれ るDNA量
subtilis)の
(255)
不 完全 溶 原 フ ァー ジ
に よ って決 定 され る
の か あ るい は末端 塩 基 の特 異性 と大 き さの認 識 を かね
備 え た酵素 がPBSH生
成 中 に合成 され るの か 今後 の
問 題で あろ う.こ の場合 に もPBSHは
自己増殖 を 起
こさ ない ため 有利 な 材料 で ある と考 え られ る.
V
PBSH
DNAのade-16遺
伝子
起点 附近 の遺伝 子 構造 あ るいは 起点 附近DNAの
化
学 的構 造 を研 究す る上 に フ ァー ジPBSHのDNAは
極 めて 有 利 な材料 で あ る.そ れ はPBSH
一 に起 点 附近 のade-16を 含 むDNAを
DNAが
第
他 の部 分 に比
図13.
変 性PBSH
DNAの
再 生.
し5倍 以上 選 択的 に 濃縮 して い る こと,第 二 に細 菌 か
ら抽 出 され たDNAと
DNA分
DNAが
異 な り一定 の 大 き さの均 一 な
子 で あ るか らで あ る.も しade-16を
起 点 のDNAを
含む
同 時 に含 んで い る とす る と こ
のDNA分
子 は物 理 化学 的 な諸 性質 で 他 の遺 伝子 を 含
むDNA分
子 と異 な って い る こ とが期 待 され る.
この よ うな 期待 か ら遺 伝 子 の比 重,熱 変性 度,酵 素
うに初 めの 数 時間二 次 反応 で起 こ り次 い で一 次 反応 に
によ る失 活 な どの 差 を測 定 したが 特 に注 目す べ き差 は
移 行す る.こ れ はす で に詳 し く研究 され て い る よ う26)に
認 め られ ず これ らの方 法 でade-16を
再生 反応 は二 つ の反応 段 階 …
含 むDNA分
子
の みを 単離 す る試 み は成 功 しなか った.と こ ろが一 度
熱 また は アル カ リで変 性 し一 重 鎖 化 したPBSH
を 中性 で65℃ に保 温 し元 の 二重 鎖DNAに
DNA
… か ら成 り立 って い る こ とを示 して い る.す な わ ち 第
一 段階 の反 応 は一 重 鎖DNAが
互 い に相 補 的 な構 造 を
再 生す る速
度 を各 々 の遺 伝子 につ いて 測定 した と ころ,予 想外 に
ade-16の み が他 の遺 伝子 とは 全 く異 な る挙 動 を示 す
も ったDNAと
ことが 明 らか に な った.PBSH
結 合を 作 る反 応 で"核 化 反応(nucleation)"と
DNAの
熱変 性 と再 生
熱運 動 に よ って遭 遇 し不 安 定 な部 分 的
よば れ
の典 型 的 な実験 結 果 は図13に 示 す.す べ て の遺伝 子 の
る.い うまで もな くこれ は二 次反 応 で あ る.第 二 の 反
形質 転換 活 性 は熱 また は アル カ リの作 用 で も との約2
応 は部 分 的 に結合 した二 本 のDNA鎖
%に 減少 す る.残 存 の活 性 は 自然 に作 られ た分 子間 結
水 素結 合 を作 る過 程 で普 通"Zippering"と
合 の ため に変性 され な いDNA分
り反応 は 一次 反 応 で あ る.
子 に よる もの で あ る.
さてPBSH
(図17参 照)こ れ を65℃ で保 温 し形 質 転 換能 を経 時 的
に測 定す る とade-16以
DNAのade-16の
が徐 々 に完 全 な
よば れ て お
再 生 反応 のkinetics
は図16に 示す よ うに反応 の初 め か ら終 りまで 一次 反 応
外 の形 質 はす べ てmethionine
で代 表 され るよ うな速 度 で再 生 す る.反 応 は極 めて 遅
で あ る.こ の こ とは核 化 の反 応 が極 め て早 く起 こ り第
く再 生 され る活性 は最 大 限,元 の20∼25%に
二 のZipperingが
み であ る.こ れ に反 しade-16は
達 す るの
律 速 反 応 で あ る ことを 示 して い る.
非 常 に早 く しか も効
核 化反応 が早 くな る原 因 と して まず 分子 内 の結 合 に
率 よ く時 には100%以 上 再生 す る.見 掛 け上 活 性 が100
よ って二 重鎖 の完全 分 離 が起 こ らない ことが 考 え られ
%を 超 えて い るの は他 の遺 伝子 が 失 活 され る た め に
る.こ
ade-16の 比 活性 が増 加 す る ため で飽 和量 以 上 のDNA
リ変性 し,ア ル カ リ性蔗 糖 濃度 勾配 中で 沈降 させ る.
この特 殊 な性質 はPBSH
DNAを
(図17)各 々 の画分 を 変 性 した ままade-16の
を用 い た と きのみ 認 め られ る.
adenine-16の
の可 能性 を 調 べ る ためPBSH
DNAに
換 能 を測 定 す る と活性 は もとの約2%で
つ
アル カ
形 質転
あ る が二 つ の
いて の み認 め られ る もの で菌 体 か ら抽 出 したDNAで
peakに
は図14に 示 す よ うに他 の 形質 と同様 の反応 速 度 で約20
なわ ち大 部 分 の一 重 鎖DNAの1.4倍
∼25%再 生 され る.
ちdimerに 相 当す る部 分 で あ る.こ れ は 自然 に存 在 す
菌 体DNAの
再 生 反応 のkineticsは
分か れ る.重 い方 のpeakはO.D.
る分 子 内結 合 を持 つ 分子 で あ る.
図15に 示 す よ
11
peakす
の沈 降恒 数を 持
(256)
生
物
物
Vol. 10 No.6
理
示 して お り,ade-16遺
(1970)
伝 子を 含 むDNA分
子が 二 重鎖 の 間 に結 合 が存 在す る可 能性 は 否
定 され た.
第 二 の可 能 性 と して考 え られ るの は分 子 内
に核 化 を促 進 す る よ うな構 造 が存 在 す る こ と
で あ る.そ の よ うな 構造 の 一 つ と して簡 単 な
塩 基 配 列 の繰 り返 され た構 造 な どが最 も考 え
易 い.こ の よ うにade-16を
のDNA分
図14.
変 性 細 菌DNAの
再生
含 むDNAは
他
子 とは異 な る構 造を 持 つ こ とが再
生 の一 次反 応 か ら推 定 す る ことが で き るが,
さ らにade-16の
はade-16を
み が100%再
含むDNAが
生 され る事実
全 く均 一な 分 子 で
あ る こ とを 示 して い る.普 通菌 体DNAを
抽
出す る とDNA分
子 は 無差 別 に分 解 され るか ら分 子 の
一部 に同 じade-16遺 伝子 を 含ん で いて も全 体 と して
は全 く不 均一 な集 団 で あ るはず で ある.
この よ うな 不均 一 な 分子 を変 性 し再 生 す る と完 全 な
も との二 重鎖DNAに
DNAで
もど らず両 端 が 部 分 的 に一重
あ る よ うな分 子 と して再 生 され る こ とが 多 い.
この よ うな分 子 の形 質 転換 活性 は完 全二 重 鎖DNAよ
り低 い ため平 均 して20∼30%の 再 生 率 しか 得 られ な い.
したが ってPBSH
図15.
細 菌DNAの
再 生kinetics
次 に各 画 分 を 中和 し65℃で 再生 した の ちade-16の
形 質転 換 活 性 を測 定 す る と 活 性 のpeakは
D.のpeakと
含 むDNAは
図16.
一つ でO.
完 全 に一 致 す る.こ の実 験 はade-16を
約2%の
DNAのade-16が100%再
分子 間 結合 を 示す 分 子 を除 き大
部 分 は アル カ リで完 全 に変 性 され る分子 で あ る こ とを
12
フ ァ ー ジPBSH
DNAの
再 成kinetics
生 され
枯 草 菌(Bacillus
subtilis)の
(257)
不 完全 溶原 フ ァー ジ
な 関 係 が あ る と思 わ れ る も の,第
二 はcoli
phage
15
の よ うな通常 の溶 原性 フ ァー ジ と近 縁 の もので あ る.
普 通 不完 全 フ ァー ジを 完 全 フ ァー ジ との比 較 で 考 え る
と き,不 完 全 フ ァー ジ は完全 フ ァー ジが退 化 して 出来
た もの と考 え られ て い る.そ
はP1やPBS1の
の考 え に 従 う とPBSH
よ うなgeneralized
transducerが
自己増 殖 能 を失 い 粒子 の 構成 成 分 を合 成 す る遺 伝子 と
宿 主DNAを
菌 体DNA中
分 解す る能力 を 支配 す る遺 伝 子 の みが
に組 み込 まれて 残 って い る もの で あ り,
coli phage 15は
λの よ うな 溶 原性 フ ァー ジが 感染 機
構 に欠 損 が生 じた もので あ る.
この よ うな退 化説 は現 存 の フ ァー ジを中 心 に 置 いた
考 え方 で あ る.バ クテ リオ シ ンの起 源 につ い て も古 く
図17.
PBSH
DNAの
ア ル カ リ性蔗 糖 液 中 の沈 降.
か ら退 化説 と進 化説 が あ ったが,現 在 で はか な り便 宜
的 に フ ァー ジ形 態 に近 い構 造 体 を持 った高 分 子バ クテ
リオ シ ンは フ ァー ジ の退 化物 で あ り,低 分 子 蛋 白質 を
生 産 す る もの はF因 子 のよ うな エ ピゾー ム の進 化 した
もの で あ る と考 え られ て い る1).
る事 実 はade-16遺
伝 子 を含 むDNAは
子 で あ る ことを 強 く示 唆 して い る.著
のade-16を
含 むDNAの
全 く均 一 な分
エ ピゾー ム,バ クテ リオ シ ン因子 不 完全 フ ァー ジ,
溶 原性 フ ァー ジ,感 染 性 フ ァー ジ,は遺 伝 子 的 に も発
者 らはPBSH
現 され る形質 の 内容 で も極あ て近 縁 の もので あ り,こ
この よ うな 特殊 性 は この分
子 が複 製 起点 か らフ ァー ジ粒 子 に よ って一 定 の大 きさ
れ らの生 物分 子 間 の相 互 関係 を 正 し く認識 す るに はそ
に切 断 され てで きた分 子 で あ るため で あ ろ うと考 え て
れ らの 内の どれ か を 中心 に考 え るので は な く物 質 進化
い る.
の立場 か ら全 体 を把 握 し位 置 づ け な けれ ばな らな い.
その よ うな試 み の 中か らフ ァー ジ の起 源や 進 化 の問 題
VI
総
括
が 正 し く理 解 され る よ うに思 う.最 近 の不 完 全 フ ァー
子 は 感染 性 がな い"killer particle"で あ る
ジの 発見 とその 研究 は,バ クテ リオ シ ンと完 全 フ ァー
とい う こ とか ら不 完 全 溶原 性 フ ァー ジと よばれ て い る
ジの 間隙 を うめ て この方 向へ の 研究 を 促進 す る重要 な
の で あ るが,生 成 機 構 を詳 細 に調 べ る と フ ァー ジ遺 伝
課 題 で あ る と考 え られ る.
PBSH粒
子 の 自 己増 殖 が全 く起 こって い ない ことが わか った.
したが ってPBSHは
この よ うな見地 か らPBSHを
こ とはPBSH遺
自己復製 の能 力を 持 た ない とい
考 え た とき,重 要 な
伝 子 の構 造 とそ の発 現機 構 で あ る.
う意味 で不 完 全溶 原性 フ ァー ジ とい うこ とがで き る.
現 在 の と ころ遺 伝子 構 造 は全 くわか ってい な い が個 々
最近 多 くの不 完全 フ ァー ジ粒子 が 発見 され て い るが不
の形 質 に対 す る遺 伝 因 子 が明 らか に されれ ば 遺伝 子 構
完全 さの 内容 は極 め て多 様 で あ る と思 わ れ る.た とえ
造 を確 立 し,こ れ が フ ァー ジ レプ リコ ンの退 化 で あ る
ばColi
phage
か あ るい は全 く異 った進 化の 過程 に あ る ものか 判 断す
DNAと
比 重 の異 な る フ ァー ジに 固有 のDNAを
15はPBSH粒
子 とは全 く異 な り宿 主
粒子
る ことが で きよ う.ま た発現 機 構 はす で に述 べ た よ う
中 に含 んで い る.し たが って この 場合 フ ァー ジ固有 の
に菌体DNAの
DNA分
子 の 自己増殖 が 当然起 こ って いる もの と考 え
や エ ピゾー ムの形 質 発 現 と異 な って お り,こ の 機 構の
られ る.こ の よ うな フ ァー ジ の場 合 は おそ ら くフ ァー
詳細 な理 解 は この不 完 全 フ ァー ジを進 化 的 に正 く位 置
ジ感 染機 構,た とえ ばDNAの
ず け る こ とを可 能 にす るた め に重要 な 課題 で あ る と考
細胞 内へ の注 入 機 構等
に欠 損 が生 じて い る もの と思 わ れ る.
え られ る.
不完 全 フ ァー ジの起 源 に つ いて は種 々 考え られ るが
大別す る と次 の2種 類 が あ る よ うで あ る.第 一 はPB
SHで
代表 され る型 でgeneralized
transducerと 密 接
13
異常 合 成 に依 存 してい る点 で フ ァー ジ
(258)
生
文
1)
4)
5)
6)
7)
8)
9)
10)
11)
12)
13)
物
献
14)
15)
16)
17)
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2)
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