システムズエンジニアリング入門 ~IoT時代の価値実現に必須となるアプローチ~ 慶應義塾大学システムデザイン・マネジメント研究科 准教授 白坂成功 1 人は見たいモノしか見ない 「Moonwalking Bearに気づかない」 「放射線技師の83%がゴリラを見逃した」 俯瞰的にものごとを捉えるのは簡単ではない だからこそ“武器”が必要 [email protected] 2 自己紹介 • 修士:東京大学大学院工学系研究科 • 博士:慶應義塾大学大学院SDM研究科 • 大手電機メーカにて人工衛星開発(15年間) • 「おりひめひこぼし」 • 「こうのとり」 • 「みちびき」 • 2010年4月より慶應大学専任准教授 • INCOSE日本支部設立メンバー • ISO JTC1/SC7 WG42「アーキテクチャ」 国内主査 • PMI日本支部 PFM/PGM WG [email protected] 3 自己紹介 • 最近の研究テーマ:方法論 • 大規模システムデザイン • 高信頼性システムデザイン • イノベーティブデザイン • コンセプトデザイン/ コンセプトエンジニアリング • etc [email protected] 4 慶應SDM とは? SYSTEM DESIGN 協生社会 の実現 MANAGEMENT [email protected] 5 システム? 著作者:Image Editor Image from <http://www.moneypartners.co.jp/> [email protected] 6 システムの定義 • 複数の構成要素から成り立つ集合体のこと。 • 情報、通信、メディア、ハードウエ ア、 サービスから、人間、組織、社会、地球環 境まで、複数の要素が相互作用するあらゆ るものをシステムと定義する。 (慶應SDM2012年システムデザイ ン・マネジメント序論」講義資料) [email protected] 7 言葉の定義 “システム”の定義 (階層構造:Building Block) システム サブ システム サブ システム システム サブ システム [email protected] サブ システム 8 システムズエンジニアリングの定義 • 「システムに関わる工学を実施するための技 術分野には依存しない仕事の仕方」(豪 Project Performance社) • 「システムの実現を成功させることができる 複数の専門分野にまたがるアプローチおよび 手段 」(INCOSE SE Handbook,2000) 「成功させる」とは? → 「与えられた費用(Cost)、期間(Delivery) 内で、必要な品質(Quality)を満たすものを作り 出す。= QCDの連立方程式を解く [email protected] 9 システムエンジニアリングの構成 システムエンジニアリングを構成する4つの活動 1. システム設計 – 要求から要求分析、アーキテクチャ設計を実施し、下位 への要求を導出する活動 2. インテグレーション – 検証の終わったサブシステムを統合する活動 3. 評価・解析 – エンジニアリング活動における解析および検証 (verification)・妥当性確認(validation)等の活動 4. システムズエンジニアリング管理 – QCDを満たすために、各種活動の計画・実施・評価を行 う活動 [email protected] 10 Vモデル システム要求 システム Validation システム 設計 システム 試験 システム試験計画 サブシステム要求 サブシステム Verification サブシステム 試験 サブシステム試験計画 サブシステム 設計 コンポーネント要求 コンポーネント 設計 コンポーネント コンポーネント 試験 コンポーネント試験計画 プロダクト 図面 製造 システムエンジニアリング管理 11 [email protected] Vモデルに関する間違え • Vモデルは、時系列的なプロセスとなっている 考え方を表したものである [email protected] 12 Vモデル システム要求 システム システム 設計 システム 試験 システム試験計画 サブシステム要求 サブシステム サブシステム 試験 サブシステム試験計画 サブシステム 設計 コンポーネント要求 コンポーネント 設計 コンポーネント コンポーネント 試験 コンポーネント試験計画 プロダクト 図面 製造 システムエンジニアリング管理 13 [email protected] システム設計とは ステークホルダの要求 システム設計 要求分析 要求仕様 アーキテクティング 下位レベルへの指示、仕様 [email protected] 14 アーキテクチャの定義 • 目的を最大化するような機能と特性の配置 (Ring, 2001) • 構成要素の設計や進化を左右するような、構 成要素の構造、構成要素間の関係、そして原 理や指針(IEEE STD 610.12, 1990) • システムと外界との関係及びシステムを構成 する要素とその構成要素間の関係(白坂) [email protected] 15 アーキテクティングの定義 • アーキテクチャを作り出す行為 • 機能を要素に割り当て、要素の間の関係性(イ ンタフェース)を明確化すること(前野 2010) [email protected] 16 アーキテク チャの例①-1 物理的構成要素 ふるまい(機能) 構成要素 構成要素の関係性 人間 ボールを飛ば す力を加える 力 ボール 飛ぶ 人間がボールを飛ば す力を加える。 ボールが飛ぶ。 人間 道具を動かす 力を加える 力 道具 ボールを飛ば す力を加える 人間が道具を動かす 力を加える。 道具がボールを飛ば す力を加える。 ボールが飛ぶ。 力 ボール 飛ぶ 17 [email protected] アーキテクティングとは アーキテクティングとは、システムに要求されている機能・性能を、シス テムを構成する要素に配分して構成要素の仕様を明確にするとともに、構 成要素間のインタフェースを明確化することである。 ステークホルダの要求 システム設計 要求分析 要求仕様 アーキテクティング 下位レベルへの指示、仕様 [email protected] 18 アーキテクティングプロセス ■アーキテクティングプロセス■ システム仕様書 機能設計 物理設計 ア ー キ テ ク テ ィ ン グ サブシステム仕様書 サブシステム間I/F仕様書 [email protected] 19 アーキテクティングプロセス ■機能設計とは■ システムの要求機能を分割し、その機能を構成する下位 機能の集合に置きかえる作業のことをいう Function 2.1 Function 1 要求機能 機能 設計 Function 2 Function 3 ・・ 機能 設計 Function 2.2 ・・ Function 2.N Function N 抽象化 具体化 [email protected] 20 アーキテクティングプロセス ■物理設計■ 分割された下位機能を、システムを構成する要素に割り付 ける作業をいう システム サブ機能 1 サブ機能 2-1 サブ機能 3-1 サブ システム1 サブ機能 2-2 サブ機能 3-2 サブ システム2 サブ機能 2-3 [email protected] サブ システム3 21 アーキテクティングプロセス ■アーキテクティングのアウトプット■ システム サブ機能 1 サブ機能 2-1 サブ機能 3-1 サブ システム1 サブ機能 2-2 サブ機能 3-2 サブ システム2 サブ機能 2-3 サブ システム3 これより・・・ [email protected] 22 アーキテクティングプロセス ■アーキテクティングのアウトプット■ サブシステム1と2の インタフェース仕様 サブシステム1 サブ機能 3-1 サブ機能 1 サブ機能 2-1 サブ機能 2-2 サブ機能 3-2 サブシステム2 サブシステム1と3 のインタフェース サブ機能 2-3 サブシステム3 [email protected] 23 House : 住宅 [email protected] 24 出典:ISO/IEC42010:2011 [email protected] 25 言葉の定義 “システム”の定義 (階層構造:Building Block) システム 定義によると、SystemとSystemを サブ サブ 組み合わせるとSystemである システム システム では、System of Systemsとは? システム サブ システム [email protected] サブ システム 26 本日のまとめ • 俯瞰的に物事をとらえるためには 武器が必要 • アーキテクティング • 多視点からの構造化 [email protected] 27 System of Systems 以下の5つの特徴をもったシステムをSystem of Systems (SoS)と 呼んでいる。 1. 運用の独立性:SoSの構成システムは、個別に運用。 2. 管理の独立性:構成システムは別々に調達され、インテグ レート。しかし、運用中の構成システムはそのまま運用。 3. 進化的開発:機能や目的が追加/削除されたり、途中で変更 されるなど、開発とシステムが進化的。 4. 創発的振舞い:構成システム単独では実現できない目的を、 SoSとして実現。 5. 地理的な分散:構成システムが離れており、構成システム間 では、質量やエネルギーの物理量ではなく、情報を交換。 SoSでないSystemを“Monolithic System”と呼ぶ。 出典: “Architecting Principles for Systems-of-Systems”, Mark W. Maier (1998) [email protected] 28 System of Systems 出典:INCOSE Systems Engineering Handbook [email protected] 29 System of Systems 世の中の動き:つながりはじめたシステム 出典:経済産業省資料より抜粋 出典:テキサスインスツルメント資料より抜粋 出典:「インダストリー4.0 実現戦略報告書」 より抜粋 [email protected] 30 品質保証が困難 複数の企業の製品・サービスを つないで、利用者に提供 「つながるシステムの拡大」 使いやすく 途中から入っ てくる 運用・保守 を簡単に システムの故障で サービス停止は困る 「多岐にわたるステークホルダ」 途中で 出て行く システムがどんどん かわっていく(進化的) 「予定外のシステムの変化」 [email protected] 31 参考となるアプローチ プラットフォーム化 [email protected] 32 Smart Grid Reference Architecture 出典:Smart Grid Reference Architecture [email protected] 33 インダストリー4.0リファレンスアーキテクチャモデル RAMI4.0 : Reference Architecture Model Industrie 4.0 出典:「インダストリー4.0 実現戦略報告書」 [email protected] 34 Smart Grid Reference Architecture RAMI4.0 出典:「インダストリー4.0 実現戦略報告書」 出典:Smart Grid Reference Architecture • 範囲を限定することによって、ArchitectureのReference Modelをつく ることができる • 品質、安全性、相互接続性をこのモデル上に位置づけながら担保するた めの方針 • Architecture Reference Modeは、「時間軸x空間軸x意味軸」で構成 [email protected] 35 まとめ • 対象を俯瞰的にとらえるには武器が必要 • そのときの武器がシステムズエンジニア リング • ただし、IoTシステムは、単なるシステム ズエンジニアリングではなく、System of Systems • プラットフォームの考えるアプローチの ようにSystem of Systemsのアプローチ が役に立つ [email protected] 36
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