おさえておきたい相続対策の基本 平成24年12月月10日 No.403

平成24年12月月10日
No.403
おさえておきたい相続対策の基本
相続対策を実行する場合には、
「相続税の軽減対策」
・
「納税資金対策」
・
「争族対策」の 3 つをバランスよく組み合わせ
て行うことが大切です。
相続対策の軽減対策
相続税が課せられる財産は、先祖から代々引き継がれた財産や何十年かけて苦労して築き上げた財産など誰にとっても
大切な財産です。もちろん、この大切な財産をすべて残すことができればこれに越したことはありませんが、相続税があ
る限りこれは不可能です。しかし、できるだけ多くの財産を次の世代へ承継させるためには、相続税の節税が欠かせませ
ん。さらに、近い将来、相続税の増税も検討されており、より一層の備えが求められます。
相続税は被相続人のすべての財産の合計額に対し超過累進税率を適用して計算されるため不動産や金融資産等も含めた
資産全体を見て対策を考えなければなりません。
これらの対策は、まず相続対策の基本と言われる、①養子縁組の活用、②生命保険契約の活用、③贈与の実行、④賃貸
マンション等の建物の建築などを中心に行っていきます。毎年、贈与を繰り返していくなど、一見地味に思えるかも知れ
ませんが、小さなリスクで大きな効果をあげるためには、これらの基本の対策を積み重ねて行くことが最も重要です。
納税資金対策
所得税や法人税は一年間の所得(もうけ)に対して課税されるのに対し、相続税は財産課税であるため納税資金の準備
が重要です。特に、相続財産のうち不動産や自社株の占める割合が高い場合、これらの財産は換金性が低いことから、相
続税の軽減対策を図ると同時に相続税の納税資金対策を講じなければ、相続税破産に陥る危険性が高いといえます。
例えば、納税資金を確保するために生命保険契約を活用する方法があります。相続人が受け取った一定額までの生命保
険金は、相続税が非課税となり、そのまま相続税の納税資金に充当することができます。
また、相続税は、延納や物納といった納税方法も選択できます。特に、収益性が低く、処分が困難な不動産を物納する
と、相続税評価額で収納してもらうことができ、不良資産の整理にも役立ちます。
地価の下落傾向が続いていることもあり、相続財産に占める不動産の割合は減少していますが、それでも、全体の過半
数が不動産で占められています。地価の下落によって相続税も減少していることになりますが、むしろ不動産の換金処分
が困難となれば、納税資金を限られた期間で準備することが難しくなることから、地価が下落している状況下ほど、納税
資金対策が重要となります。
争族対策
家庭裁判所における家事手続案内件数のうち相続関係は総数の約 3 割を占めており、件数そのものも年間 15 万件を超
えています。さらに、遺産分割の調停・審判に至っているものも 1 割近くあり、相続争いが増えてきている現状を表して
います。明治民法による家督相続の考えのもと育った世代とは異なり、現在の相続人は現行民法により自らの相続分に対
する権利主張が強くなっていることが遺産争いの件数が増加することとなった背景にあるものと考えられます。
しかし、先祖代々守っていかなければならない土地や経営する会社の支配権を維持するための株式などは、特定の者に
承継させたいと考える推定被相続人も少なくないはずです。また、推定被相続人の生活を支えてくれた人に手厚く財産を
承継させたいというケースもあるでしょう。
相続が発生したら、相続財産は共同相続人の共有財産と解されます。このことは、相続財産を管理・処分するのに、相
続人全員の合意が必要となることを意味します。また、この共有状態を脱するためには、やはり相続人全員の合意に基づ
く遺産分割協議が必要となります。しかし、遺産分割協議が調わなければ、何年経過しても、相続人の共有財産のままで
あり、さらにその相続人にも相続があれば合意が必要な相続人の数が増えることにもなりかねません。
このような事態を避けるためには、財産所有者が自らの意思を「遺言書」という形で法的に明らかにしておく必要があ
ります。遺言書があれば、たとえ遺留分の減殺請求が生じたとしても、遺言書どおりの財産承継が行われ、その後、調整
を行えばよいということとなります。
相続対策は早く始めるほど効果的
誰しも自分が亡くなった時のことを考えることは愉快なことではありません。しかし、相続税の納税、事業の承継、遺
産争いなどの問題を考えると、何もしないというのは得策ではありません。
相続対策を立案する場合に、相続対策にかけることのできる時間がどのくらいかを予測し、対策のメニューを選択しな
ければなりません。理想的には、10 年以上の時間をかけて対策を行うことが望ましいのですが、残された時間が短いと
予想される場合には即効性のある対策を中心に行う必要があります。
また、対策の実行にあたっては、本人の意思能力がなければ実行できないものがほとんどです。
相続対策には、常にコストとリスクが伴います。しかし、相続対策にかける時間が長く確保できるのであれば、コスト
とリスクを分散し、軽減することができます。
【日本人の主な年齢の平均余命 平成 23 年簡易生命表(単位:年)
】
〔出典:厚生労働省〕
年齢
男
女
0歳
79.44
85.90
年齢
男
女
年齢
男
女
年齢
男
女
5歳
74.71
81.19
30 歳
50.28
56.56
55 歳
26.95
32.68
80 歳
8.39
11.36
10 歳
69.77
76.24
35 歳
45.47
51.69
60 歳
22.70
28.12
85 歳
5.96
8.07
15 歳
64.81
71.28
40 歳
40.69
46.84
65 歳
18.69
23.66
90 歳
4.14
5.46
20 歳
59.93
66.35
45 歳
35.98
42.05
70 歳
14.93
19.31
95 歳
2.84
3.60
25 歳
55.10
61.45
50 歳
31.39
37.32
75 歳
11.43
15.16
100歳
1.93
2.33
☆詳しくは、弊所の 30 周年記念として発刊しました小冊子「おさえておきたい相続対策の基本」
(@500 円)を御覧ください。
(担当:水品 志麻)