フリック - 新国立劇場

平成28年度(第71回)文化庁芸術祭協賛公演
新国立劇場 2016/2017 シーズン演劇公演
フリック
The Flick
作◎アニー・ベイカー
翻訳◎平川大作
演出◎マキノノゾミ
2016年10月13日(木)~10月30日(日)
新国立劇場 小劇場
2014年ピュリッツァー賞を受賞した話題作の日本初演
フィルムを愛する若者たちの、ちょっと切ない日常をコメディタッチで描く
新国立劇場は近年、わが国で未発表の優れた現代欧米戯曲の日本初演に取り組ん
でいます。2016/2017シーズンのオープニングはその第4弾として、2014年ピュリッツァー
賞を受賞したアニー・ベイカー作『フリック(原題:The Flick)』をお贈りします。
舞台はマサチューセッツ州の寂れた映画館。35mmフィルム上映からデジタル化の波
に飲み込まれるなか、そこで働く3人の若者の不器用な人間関係や葛藤、“なんとしても
生きていかねばならない”という焦燥感を軽快に、かつ細やかに描き出す秀作です。
演出には新国立劇場に14年ぶりの登場となるマキノノゾミ、翻訳には生粋の映画好き
でもある平川大作を迎え、木村了、ソニン、村岡哲至、菅原永二が挑む日本初演にご期
待ください。
【8月7日(日)チケット前売り開始 ☞ 新国立劇場ボックスオフィス 03-5352-9999】
写真・資料のご請求、取材のお問い合わせ
◎新国立劇場 制作部演劇 広報担当 藤沢 花
TEL: 03-5352-5738 / FAX: 03-5352-5709
◎新国立劇場 制作部演劇 制作担当 茂木令子、田中晶子
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◎作品について
2012 年 『負 傷 者 16 人- SIXTEEN WOUNDED - 』 、 14 年 『永 遠の 一 瞬 -Time
Stands Still-』、15年『バグダッド動物園のベンガルタイガー』に続く、現代欧米戯曲の
日本未発表作品を上演する企画。その第4弾として2014年ピュリッツァー賞受賞作を取り
上げます。すでにニューヨーク、シカゴ、ロンドン等でも上演され、高い評価を得ている話
題作です。
マサチューセッツの寂れた映画館を舞台に、アナログからデジタルに移りゆく時代に、
「今をどのように生きなければいけないか」を問われる若者たち。「現実的自然主義者」と評
される作者ならではの筆致で、さまざまな条件を課されながらも"なんとしても生きていかね
ばならない"若者たちの焦燥感あぶり出す、コメディタッチの会話劇です。
演出を手掛けるのは、劇作家・演出家として幅広く活躍し、02年『かもめ』以来、新国立
劇場に14年ぶりの登場となるマキノノゾミ。『OPUS/作品』『バグダッド動物園のベンガル
タイガー』などの翻訳でもお馴染みの平川大作とタッグを組み、繊細かつ大胆に描く意欲
作です。
◎あらすじ
マサチューセッツ州ウースター郡の古びた映画館。いつか映写係になることを夢見て働
くサム。映画狂のエイヴリー。紅一点のローズ。まだ35mmフィルムで映画を映写している
この映画館だからこそ働きたい、とようやく働き口を見つけたにも関わらず、時代の波はデ
ジタル化に向かい、フィルム映写機からデジタル映写機に移行するという話が持ち上がる。
どうせ自分は下流階級に属しているからと卑屈になりながらも、与えられた仕事をそれなり
に、けれど懸命にこなす従業員たちだったが、デジタル化が意味するものは、従業員の数
を減らすという通告でもあった……。
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◎翻訳 平川大作からのメッセージ
いまこの文章を書きはじめる直前に原節子さんが亡くなられたことが報じられました。わたしが生
まれたのは1960年代も末、原さんの最後の出演作は1962年の『忠臣蔵 花の巻 雪の巻』なので、
とても同時代を過ごしたとは言えませんが、昭和の末端に育った人間としては心底哀しくご冥福を
祈る気持ちでいます。少し泣けてきます。
これからの日本の、いや世界の映画ファンは原節子さんの、神聖とたたえるべき美しさにどう触れ
ていくのでしょうか。手の中の端末機器にしろ、映画館での再上映にしろ、それはデジタルリマスタ
リング済みの『東京物語』なり、『晩春』となることでしょう。そこでなら、傷とも埃ともフィルムの経年劣
化とも永遠に無縁な原節子さんと再会できるはずです。
でも、私が知っているのは大学生の頃にフィルムの映写機で観た原さんでした。摩耗し、プツプ
ツとノイズが入り、上映途中に技師が交換したロールを通り抜けたチカチカとする光の先で出会っ
た原節子さんは、もしかしたらいつかフィルムごと滅びてしまいそうだったからこそ美しかった。闇の
中の、奇跡のような時間のなかで美しかった。
アニー・ベイカーの戯曲『フリック』は、そんなフィルムの美を愛する人のための物語です。原題
The Flick はデジタル化の宿命に直面した古い映画館の名称であり、flickとは映画、映画館を指
す少し古風な俗語です。もともとは flicker、すなわち「チカチカする、明滅する」という動詞に語源
があり、1926年頃から使われていたようです。映画に音がつく直前ですね。
もうチカチカするフィルムの時代は終わりました。原さんと再会した小津監督や笠智衆さんの耳に
もその報せは届くことでしょう。悲しいけれど、やっぱり滅んでしまうからこそフィルムは美しい。2016
年秋の東京では、愛とフィルムをめぐる挽歌のような芝居が上演されます。どうぞご期待ください。
◎演出 マキノノゾミからのメッセージ
現代社会で日常を生きるということは、面倒くさくかったるいことの連続でもあります。次々に押し
寄せる様々な事象にいちいち正面からぶつかっていては身が持たないので、たいていの場合、わ
たしたちは目をつぶって「えいや!」といいかげんに処理しています。小さな嘘をついたり、ちょっと
だけズルをしたり、あるいはちょっぴり後ろめたくても「まあ、仕方ないか」と誰かを裏切ったりするな
んてことも日常よくあることです。ただ――それだけで一生を過ごしてしまうというわけでもない。時
には(つらいことだけれど)きちんと目を見開いて自分の矮小さを見つめ、正面から受け止めようと
する瞬間がある。それは、わたしたちが人間だからです。
優れた戯曲には、そのような人間の瞬間を場面としてすくい取ったものが多い。この『フリック』と
いう新しい戯曲もそうです。淡々と滑稽で、しみじみと哀しくて、でも最後にちょっとだけ心に火が灯
るような、そんなお芝居です。ご期待ください。
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◎プロフィール
作◎ アニー・ベイカー (Annie BAKER)
1981年生れ。アメリカの劇作家。
2013年にPlaywrights Horizonsで上演されたオフ・ブロードウェイ作品『フリック(The Flick)』で2014年第
98回ピュリッツァー賞を受賞。マサチューセッツの寂れた映画館を舞台にした3人の従業員たちの物語を丁
寧に描いた。
その他の主な作品に『ボディ・アウェアネス(Body Awareness)』、『サークル・ミラー・トランスフォーメーション
(Circle Mirror Transformation)』、『ザ・エイリアン(The Aliens)』など。
翻訳◎ 平川大作 (ひらかわ・だいさく)
九州大学文学部、大阪大学大学院演劇学専攻で学び、「ひょうご舞台芸術」に調
査研究員として参加。2000年より大手前大学に勤務。メディア・芸術学部教授。
主な翻訳作品に01年『コペンハーゲン』(新国立劇場)、03年『扉を開けて、ミスタ
ー・グリーン』(ひょうご舞台芸術)、12年『アテンプツ・オン・ハー・ライフ』(エイチエ
ムピー・シアターカンパニー)、13年『OPUS/作品』(新国立劇場)、15年『バグ
ダッド動物園のベンガルタイガー』(新国立劇場)など。11年『モジョ ミキボー』(オ
ーウェン・マカファーティ作)で第3回小田島雄志・翻訳戯曲賞受賞。
演出◎ マキノノゾミ
1984 年 劇 団 M.O.P. 結 成 、 2010 年 の 解 散 公 演 ま で 主 宰 を 務 め る 。 1994 年
『MOTHER』で第45回芸術選奨文部大臣新人賞を、97年『東京原子核クラブ』
で第49回読売文学賞、98年『フユヒコ』で第5回読売演劇大賞優秀作品賞、2000
年『高き彼物』で第4回鶴屋南北賞、01年『黒いハンカチーフ』『赤シャツ』で第36
回紀伊國屋演劇賞個人賞、08年『殿様と私』で第15回読売演劇大賞優秀作品賞、
10年『ローマの休日』の演出・脚本の成果に対し第36回菊田一夫演劇賞受賞な
ど、受賞多数。演出のみを手掛けた主な作品に、『淋しいのはお前だけじゃない』
『マリーアントワネット』『雪まろげ』『秘密はうたう』など。新国立劇場では『怒濤』『か
もめ』を演出している。
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エイヴリー ◇ 木村 了(きむら・りょう)
2002年デビュー。04年『ムーンライト・ジェリーフィッシュ』で映画初出演。その後、数々
のドラマ、映画にて活躍している。近年の作品にドラマ『ウォーターボーイズ2』『花ざかり
の君たちへ』『絶対零度』、映画『ワルボロ』『ヒートアイランド』『東京島』『うさぎドロップ』
『サンブンノイチ』などがある。舞台では『蜉蝣峠』『浮標』『ライチ光クラブ』『鉈切り丸』
『神なき国の騎士』『帝一の國』『生きてるものはいないのか』など。8月には『TARO
URASHIMA』に出演する。新国立劇場では「近代能楽集『弱法師』」『朱雀家の滅亡』
『象』(再演)『桜の園』に出演。
ローズ ◇ ソニン
2000年、音楽ユニットで歌手デビュー。02年ソロ・デビュー後、女優としてドラマ、映画
などに出演。第40回ゴールデン・アロー賞音楽新人賞受賞。近年は舞台にもその活動
の場を広げる。12年、文化庁新進芸術家海外研修制度の研修員としてニューヨークに
渡る。
主な出演作に、ドラマ『高校教師』『はつ恋』、テレビ『仁淀川 青の神秘』(ナレーション)、
映画『ゴールデンスランバー』『綱引いちゃった!』、舞台『ミス・サイゴン』『スウィーニー・ト
ッド』『RENT』『トロイラスとクレシダ』『ダンス オブ ヴァンパイア』『1789-バスティーユの
恋人たち-』など。7~9月には『Kinky Boots』に出演する。新国立劇場では「ヘンリー
六世」三部作、『三文オペラ』に出演。2016年、第41回菊田一夫演劇賞を受賞。
スカイラー ◇ 村岡哲至(むらおか・てつじ)
東北大学大学院情報科学研究科博士課程前期2年の課程修了。
新国立劇場演劇研修所第9期生(2016年3月修了)。
第9期生修了公演の『噛みついた娘』では、富田宇之介役を演じた。この夏は、KAAT
神奈川芸術劇場プロデュース やなぎみわステージトレーラープロジェクト2016『日輪
の翼』に出演。特技は、ヴァイオリン。新国立劇場には本作が初出演。
サム ◇ 菅原永二(すがわら・えいじ)
1998年より劇団「猫のホテル」に参加。コントユニット「表現・さわやか」を経て、さまざま
な舞台、映画、テレビにて活躍。近年の作品に、ドラマ『女くどき飯-Season2-』『ストレン
ジャー-バケモノが事件を暴く-』、映画『劇場版 神戸在住』『TOO YOUNG TO DIE!
若くして死ぬ』、舞台『君はフィクション』『TOKYO HEAD~トウキョーヘッド』『ア・フュ
ー・グッドメン』『十一ぴきのネコ』『夫婦』『おとこたち』など。待機作に舞台『浮標』がある。
新国立劇場では『アジアの女』に出演。
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◎マンスリー・プロジェクトについて
一人でも多くの方に気軽に劇場に足を運んでもらいたいと、“開かれた劇場”を目指す芸術
監督の宮田慶子。その一環として、演劇講座あり、リーディングあり、トークショーありの、多彩
な無料プログラムを用意し、その月々に関連した演劇公演に多角的にアプローチしています。
募集期間内に、新国立劇場ウェブサイト所定のフォーマットでのお申し込みが必要です。詳
し く は 、 新 国 立 劇 場 マ ン ス リ ー ・ プ ロ ジ ェ ク ト の ウ ェ ブ サ イ ト
(http://www.nntt.jac.go.jp/play/monthly/)か、情報センター(03-5351-3011(代))でご確
認ください。
演劇講座「アメリカ演劇と映画」
講
師:平川大作(大手前大学メディア・芸術学部教授)
日
時:2016年9月16日(金)19:00、17日(土)11:00
会
場:新国立劇場 情報センター
募集期間:7月21日(木)~
ハリウッドとブロードウェイ、娯楽性と芸術性、新大陸とヨーロッパ、富と名声、まがい物と真
実、アメリカにおいて映画と演劇がお互いをどのように見つめて、対象化し、自らの表現に
取り組んでいるのかを紹介します。
演劇講座「シリーズ 世界の演劇の今Ⅷ -アメリカ3-」
植民地時代からユージン・オニールまで
講
師:内野 儀(東京大学大学院教授)
日
時:2016年10月23日(日)18:00~
会
場:新国立劇場 小劇場
募集期間:7月21日(木)~
「今」を理解するには、歴史を知ることが大事です。ここでは、意外と知られていない植民
地時代から20世紀にいたるまでのアメリカ演劇の歴史をたどります。「今」のアメリカ演劇が
これまでとは違って見えてくるはずです。
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◎公演概要
【タイトル】
フリック
【スタッフ】
作
アニー・ベイカー
翻訳
平川大作
演出
マキノノゾミ
美術
奥村泰彦
村岡哲至
照明
中川隆一
菅原永二
音響
内藤博司
衣裳
三大寺志保美
ヘアメイク
川端富生
演出助手
郷田拓実
舞台監督
澁谷壽久
芸術監督
宮田慶子
主催
新国立劇場
【会場】
新国立劇場 小劇場
【公演日程】
2016年
10月
(原題:The Flick)
ソニン
(京王新線 新宿駅より1駅、「初台駅」中央口直結)
2016年10月13日(木)~10月30日(日)
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木
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水
木
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月
火
水
木
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MP 休演
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13:00
休演
18:00
18:30
木村 了
【キャスト】
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◎=託児室あり(要予約)/★=終演後、シアタートーク/10月23日18:00、マンスリー・プロジェクト
【前売開始】
2016年8月7日(日)10:00~
【料金】
A席6,480円
B席3,240円 (税込)
※11・12月公演「ヘンリー四世」二部作との三作品セット割を8月7日から実施。
『ヘンリー四世 第一部 ‐混沌‐』『ヘンリー四世 第二部 ‐戴冠‐』S席、『フリック』A席をセットで
正価23,760円のところ、セット価格21,300円で販売。
【チケット申し込み・お問い合わせ】
新国立劇場ボックスオフィス
TEL:03-5352-9999 (10:00~18:00)
新国立劇場Webボックスオフィス http://pia.jp/nntt/
【その他チケット取り扱い】
チケットぴあ、イープラス、ローソンチケット、CNプレイガイド ほか
* Z席1,620円 公演当日10時よりボックスオフィス窓口で販売。1人1枚。電話予約不可。* 当日学生割引 公演当日残席がある場合、Z席を除く
全ての席種について50%割引にて販売。要学生証。電話予約不可。*新国立劇場では、高齢者割引(65歳以上5%)、障害者割引(20%)、学生割引
(5%)、ジュニア割引(中学生以下20%)など各種の割引サービスをご用意しています。
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