資料① プロフィール1 氏名 東正平 性別 男 小学 1 年生 6 歳 学校での 地域の小学校へ通い支援員が付いて対応している。他の子どもと関 療育手帳 A 様子 わることはほとんどない。学校のトイレに入ることを嫌がるため、 医療情報 特記事項なし 身長 130 ㎝、痩せ型 オムツを使用している。学校の窓からバスが見えると、走って校外 家族構成・ 本児、母、兄(小学 3 年生、ASD、重度知的障害)の 3 人。両親 へ出て行ってしまう。給食は殆ど残し、家では好んで食べるものも 家族状況 は離婚し交流はない。母方祖母は遠方に住んでいるため、1 年に 1 学校では食べないことが多い。場面の切り替えが難しく、大声で泣 回会う程度。 き叫ぶ。行動を途中で止められると泣き叫ぶことがある。 障害の状況 発声はあるが、発語はない。 福祉サー 小学 1 年生から週に 1 回放課後等デイサービスを利用している。本 生育歴 1 歳半検診で発達の遅れを指摘。2 歳頃、お座りができる。体重が ビス利用 児の兄が利用していることもあり、兄と一緒にいると安心している なかなか増えない。名前を呼ぶと母の方を見ていた。3 歳検診で再 時の様子 様子。窓から電車を見て過ごすことが多い。おやつは本児の好きな 度発達の遅れを指摘され、3 歳から知的障害児通園施設(児童発達 ものを母親から聴き取って準備し、その中から選んでもらうと、少 支援)利用。4 歳児の 1 年間、PTで歩行訓練を受け、きちんと歩 しずつ食べるようになっている。写真や絵カードには興味があり、 くようになったのは 5 歳頃。幼児期は人懐っこく誰にでもついて コミュニケーションの道具としての使用を目指している。予定は写 行き、人にかまってもらいたいという気持ちを持っていた。最近 真を用いて視覚的に伝えるようにしているが、本児の予測がつかな は母親が傍にいなくても気にしていないようなところがある。 いような場面では寝転んで泣くことがある。 家庭での様 発語はなく、発声で要求を伝える。母親の手をもって欲しいもの (支援記録より) 子 を伝える。母親は本児の意思を理解できず、本児ももどかしく思 母親が迎えに来た際、母親から自宅の家電の話などの世間話をし、 っているのではないかと考えている。構って欲しいときや、要求 本児が待てなくて、母親の服を引っ張って帰ろうとアピールする。 が伝わらない時に泣いたり、母親を噛んだりすることがある。家 母親が応じないと一人で先に歩いて帰ろうとし、 「ちょっと待って。」 庭では電車の DVD や本を見るのが好き。時々ひとりで出て行って と制止されて母親をつねる。叱られると大声で泣いていた。母親は マンションのエレベーターで遊んだり、電車を見に行ってしまう。 気にせず話つづけ、職員が泣いているからまたにしましょうと言う 一人で駅の構内に入って保護されたことがある。公園ではブラン と、何事もないように本児を連れて帰る。 コが好きでずっと乗っている。また、水が好きで公園の水道や家 外出行事に行くとき、車に乗ろうとした本児から母親の姿が見え、 のトイレで遊ぶ。食事は偏食があり、野菜は殆ど食べず、毎日同 母親の所へ走っていき、母親の自転車に乗ろうとする。母親から「今 じようなメニューである。スプーン、フォークを使用しているが 日はみんなとお出かけやろ。」といわれ、職員が写真カードを使って 食べこぼしが多い。トイレは自分で行くこともある。遊びに集中 説明すると、泣き出し、しぶしぶ車に乗っていた。母親は外出行事 していると漏らしてしまうが、気にしている様子はない。 への心配から様子を見に来ていたとのことであった。 1 資料② プロフィール2 氏名 ※プロフィール1より7年後の状況です※ 東正平 性別 男 中学 2 年生 13 歳 学校での 小学校では他害行為はほとんどなかったが、中学校に入ると回数 療育手帳 A 様子 が増えてきた。学校では同級生に限らず、自分が不快に思った生 医療情報 特記事項なし 身長 170 ㎝、痩せ型 徒に対して他害行為(噛む・つねる)が見られている。教室、通 障害の状況 知的障害、ASD 学バスなど、場所は様々。行事、授業など集中して取り組んでい 食事は箸を使用しているが、こぼすことも多い。排泄は自立。入浴は る場面もある。先生からは他害が頻繁に見られるため、服薬等を 母親が介助している。発語無し。発声あり。文字に興味があり、文字 含め、色々と対応を検討していきたいと相談を受けている。友達 が示していることを理解できるものもある。本児の好きな事に関する や異性の生徒とのかかわりはなく、他害行為以外で自分から他の 簡単な単語は文字を書いて要求を伝えるといったやり取りが出来る。 生徒に近づくことはない。 家族構成 母、兄(ASD、重度知的障害) 福祉サー 放課後には週に 3 日、放課後等デイサービスを利用しており、嫌 家族状況 本児、母、兄の3人での生活。 ビス利用 がることなく通っている。スタッフとの意思疎通は、「阪神」や 家庭での様 家では、阪神タイガースが大好きで、試合の模様や、応援歌を iPad 時の様子 「電車」など好きな内容であれば、文字を書いて伝えると理解で 子 で見ている。また、スポーツ新聞も大好きで、野球コーナーを好んで きる。また、キッチンタイマーの数字を用いると場面の切り替え 見ている。選手の名前や試合内容を紙に書いていることもある。 がスムーズになる。 要求が通らない時に母親を噛む、つねることが時々ある。母親はそれ 中学生になったころから、放課後等デイサービス利用中にも自分 に対して、噛み返すなどしている。また、兄と同室で、兄が声を出し が不快と感じた他利用者に対しての他害(噛む、つねる)がみら たりしているといらいらして噛むことがある。 れるようになる。理由としては騒がしかった、自分の行動を邪魔 1 歳半検診で発達の遅れを指摘される。3 歳検診で再度発達の遅れを されたなどが考えられるが、一度、他害行為を行った相手に対し 指摘され、3 歳から知的障害児通園施設利用。4 歳児の 1 年間、PT てはその後も他害行為が続く。 で歩行訓練を受け、きちんと歩くようになったのは 5 歳頃。幼児期は 待つことが苦手で、待ち時間にイライラした様子になり、スタッ 人懐っこく誰にでもついて行き、人にかまってもらいたいという気持 フ(女性)をつねることがある。散歩中など、電車が見えると楽 ちを持っている。小学校に上がる頃から、母親が傍にいなくても気に しそうに見ている。電車を見ている時に、笑顔で支援者の傍に来 していない様子。他の子どもや大人との関わりは殆どない。電車、ビ ることがある。 デオ(ヒーロー系)、ミニカーで遊ぶことが好き。小学校、中学校は地 おやつ作り等の集団活動へは参加したがらない。また、人が多く 域の学校へ通学し、特別支援学級の利用や支援員によるサポートがあ 集まっているところからは離れている。 生育歴 る。小学校 4 年生の終わりごろから学校を嫌がることがある。 2 資料③ 家族の状況 氏名 東正平 性別 男 年齢 13 家庭環境 家族は母・兄・本人の 3 人。集合住宅在住。遠方に母方祖母が住んでおりかかわりはない。そのほかの親戚とのかかわりはまったくない。 母親は 29 歳で結婚するまではいくつかの短期間の仕事をしていたが、結婚後は就労経験なし。母親は 34 歳の時に兄を、37 歳の時に本児を出産するが、38 歳の 時に父と離婚し、その後の交流はない。PTA の役員などを積極的に引き受けている。生活保護を受給している。 家庭での本児の様子 家では、阪神タイガースが大好きでテレビや録画で見たり、試合の模様や応援歌を iPad で見たりしている。また、スポーツ新聞も大好きで、野球コーナーを好 んで見ている。選手の名前を紙に書いていることもある。 自分の思い通りにいかないと母親を噛む、つねることが時々ある。母親はそれに対して、噛み返したり、つねられたときにつねり返したりしており、当たり前の ように繰り返されている。また、兄と同室で、兄が声を出したりしているといらいらして噛むことがある。 食事や入浴は 3 人で一緒にしている。 家族(母親)と福祉事業所とのかかわり 母親の相談相手は、学校、事業所、同級生の保護者である。事業所へは週に 1~2 回程度、用事のついでにちょっとした世間話と相談などで電話をかけてくる。 20 分ほどスタッフが話を聞いていると、電話は母親から切ることが多い。家庭内の事情などあけすけになんでも相談する。事業所から電話をした時には応じない ことがあり、事業所から渡した手紙などへの返事はないが、遅れることが多い。事業所では、最近は本人の中学卒業後の進路や、他害についての相談が多い。相 談については、スタッフより他害行為に至らないようにするための具体的な工夫(噛む前に予定表を用いて予定を伝えたり、兄弟の部屋を分けて刺激を減らした りするなど)を伝え、母親からはやってみますという答えを得るが、実行されたことがない。再び相談があり、別の方法を提案すると前向きな返答が返ってくる が、実行されることはない。外部の先生のアドバイスを求めることもあるが、実行されることはない。 母親からの電話で朝からビールを飲んでいると話すことがあり、職員はお酒を控えるように提案するが実行されることはない。 家族(母親)と学校とのかかわり 学校への不満を言うことは少ないが、他害行為について服薬調整を進められたときは落ち込み、その後不満を職員に話していた。 母親のニーズ(中学 1 年生時の面接) ・今後の進路については「漠然と特別支援学校の高等部になるのかなあ。」と言われる。また、「将来は自立して欲しい。」と言われる。 ・現在の生活で困っていることについて聞かれると、「他害行為が無くなればいいですけど。」と言われる。 3 資料④ 不適応行動の状況(中学生時) 氏名 東正平 性別 男 年齢 13 福祉サービス利用中の不適応行動について 小学 1 年生より放課後等デイサービスを利用しているが、噛んだりつねったりする他害行為が目立って見られることはなかった。家庭では時々あったとのこと。 中学1年生より徐々に頻回になり、また噛んだりつねったりする力が強くなってきた。加害行為の対象となった利用児の事業所変更もあった。現在は男性スタッ フが個別対応を行っているが、月に 1~2 回程度、他の利用児や女性スタッフへの他害行為がみられる。 福祉サービス利用時の記録より ①中学 1 年生の 11 月 早くに昼食を食べ終わり、その後すぐにパソコンがしたいということをパソコンの側に行き、ジェスチャーでアピールする。パソコンの 利用時間まで 15 分ほど時間があったため、男性スタッフより時計とタイマーにて待ち時間があることを伝えられる(以前からパソコン開始時間は 13:00~と提示 されていた)。納得したかのようにパソコンの側を離れるが、しばらくすると、他の利用児の昼食の食事介助をしていた、女性スタッフ(本人とのその日の接点は まったくなかった)の腕を強くつねった。男性スタッフが間に入ると他害を止める。別室に移動すると落ち着く。 ②中学 2 年生の 6 月 本人が機嫌よくビデオを見ているときに、その前を中学生の利用児が少し不安定な様子で、スタッフとやり取りしながら通った。その時に、その利用児の腕を強 く噛んでしまう。噛まれた利用児はとくにやり返すようなことはなく、されるがままといった様子。スタッフが別室へ促すとすぐに応じしばらくして落ち着いて から再びビデオを見る。 他害行為の特徴 一度、他害行為の対象になると、翌日以降、対象の利用児との接点がなくても、スタッフの隙をついて他害行為を行おうとしている様子が伺える。スタッフの場 合も、一度他害対象になった女性スタッフは特に関わっていない日であっても他害行為の対象となる。学校や他事業所でも同様な様子があり、マンツーマンで対 応する場面が多い。 音楽やにぎやかな話し声は不快ではないようだが、他の利用児の泣き声や叫び声に対しては、他害行為をしようとする。 家庭での不適応行動(他害行為)について 家庭での他害行為については、母親へ要求を伝えようとするときに噛むことが多く、週に 1~2 回ぐらいの頻度で噛む、つねることがあるとのこと。 学校での不適応行動(他害行為)について 中学校では週に 2~3 回、他の生徒や教員に対して噛んだりつねったりすることがある。多い時には一日に 2~3 回他害行為がある。他害行為を行わないように対 応している教員を強く噛むこともあり、学校としては対応に苦慮している。 4 資料⑤ 支援の経過 ①小学 1 年生からデイサービスを利用開始。小 2 から週 2 日利用。 利用してすぐは、兄と一緒にいることで安心感をもっている様子。偏食が多く少食で、外で用意されたものは好きなものでもほとんど食べない。コミュニケーシ ョンは発語が無く、発声、クレーン、ジェスチャーでアピールする。母も本人の要求を理解しきれておらず、本人ももどかしさを感じている様子。写真や絵カー ドはトイレや教室など日常的な物であれば理解できる。視覚支援を行い、カードを使用しての自己発信を目指す。スタッフに構って欲しい時につねることがある。 屋外ではブランコ、滑り台、プール活動が好き。外では遊んでいた場所から離れていくことが 2 回に 1 回程あるが、手を繋ぐことは嫌がる。自分の行っているこ とを中断された時や、自分の思い通りに行かなかったと思われる時に大きな声を出して泣き叫ぶことがある。静かになれる空間に移動し、見通しがもてるように 支援する。場面の切り替えは苦手で、普段の予定と異なったり、本児の思いと違っていたりするような時には、地面に寝転ぶ、泣く等の行為がある。トイレの水 を流すのが好き。乗り物が好きで電車、バスの車内では興奮して手を叩く事がある。福祉事業所の窓から電車が見えると、喜んでいる。 ②小学 3~6 年生 本人からの発信は指さしやジェスチャーを中心にどんどん増えている。紙と鉛筆があるとスタッフに文字を書いて欲しいとの要求がある。自分の名前や、阪神タ イガースを文字で書くと喜ぶ。自分が拒否したい出来事があると、ズボンとパンツをずらして下半身を少し見せるということがあり、やがて様々な場面で使われ るようになる。野球の打者、ピッチャーの真似をすると喜び、本人も同じポーズを取ろうとする。 ③中学 1 年生 地域の中学校に通学。学校では先生をよく噛んでおり、自宅でも母親や兄に他害があるとの報告を母親より受ける。福祉事業所では他害行為はほとんど見られて いない。学校での他害行為の原因は分からないとのこと。自宅での他害は、母親の話から推測すると自分のやりたいことが出来ない時(テレビで野球が見れない等)、 兄が騒がしい時に見られるようである。母親と一緒に入浴をしており、それはやめるようにスタッフから再三申し入れるが実行されない。サービス利用中は兄と 過ごす場所や空間を完全に分けるとお互いに干渉しあわなくなる。パソコンに関心を持ち好きな阪神タイガースをスタッフと一緒に調べて見ている。切り替えが 難しいのでタイマーでパソコンの利用時間を決めて提示する。終了時に怒ることもある。仮面ライダーや戦隊ヒーローが好きで本や人形を持って過ごしている。 文字を指で触る仕草をしてスタッフに本を読んでほしいことを伝える。電車が好きで散歩で電車を見に行く。外出時も終了時間が分かるように時計やタイマーで 提示する。紙と鉛筆を用意すると、文字を自ら記入(「電車」、「阪神」など)し、それで遊びたいことを伝えるようになる。好きなものの名前を字で書くこと ができ、文字が読めるように思われたためひらがな入力に挑戦するができなかった。集団での企画(調理、工作等)にも積極的ではないが参加している。 ④現在 要求が通らない時、不快な時に他害行為がみられ頻回になっている。スタッフが離れた一瞬の隙に他児への他害行為が続いているためマンツーマン対応をしてい る。自分より大きい利用児や他害行為のある他児は苦手で、所在をスタッフに確認する。苦手な相手への他害行為はない。学校や他事業所でも他害行為が頻回に 見られるため情報交換している。インターネットではユーチューブを利用して自分の好きな動画を見ている。ネットで自分の見たい画像は探せる。集団での企画 (調理、工作等)には参加せず遠くで見ている。野球雑誌や、ヒーローの掲載している本を読む。 5
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