生活習慣病対策研究会 報告書 生活習慣病予防へのヘルスケア ~生活習慣の具体的な行動変容に向けて~ 平成 19 年 10 月 岩手県生活習慣病対策研究会 岩手県環境保健研究センター -1- 巻頭言 生活習慣病対策研究会の報告にあたって 長年の生活習慣を改めることが容易でないことはこれまでの経験からも明らかである。 しかしながら、テレビなどで先進諸国の要人はじめ多くの人々が公園で朝夕にジョギング や自転車に乗っている風景をよく見かける。 これは一人ひとりが「健康の重要性」を強く意識していることや治療費の自己負担の「ダ メージ」の大きさを実感し、自分の健康は自分で守るという自助努力の考えが深く浸透し ているものと推測される。 わが国でも 25 年前に「老人保健法」が制定された。この制度の柱の一つが「ヘルス事業」 である。趣旨は、疾病予防活動や健康づくりを徹底することで、一人ひとりの健康生活を 維持することと医療費の適正化を図ることであった。岩手県沢内村の活動もひとつの事例 と考えられている。 この制度に基づいて市町村や保健医療団体等は膨大なエネルギーを費やし、「健康診査」 をはじめとする様々なヘルス事業が全国的に取り組んできた。しかし、個人の予防活動と 医療費負担の関連性が直接的に「見えない」ことや国民皆保険制度に守られて経済的な「ダ メージ」を深刻に感じることが少なく、たとえ重要性を「知識として理解しても」具体的 行動変容に結びつかず、当初の目的を十分に果たしている状況とはいえない。 今般の医療保健制度の改革はこうした反省も踏まえ、より踏み込んだ「痛み・ダメージ」 と「個人の行動変容」を求めたものではないかと考えられる。 近い将来、巨大な保険医療・介護・年金の費用が必要になることは周知のことである。 この費用を次世代の孫・子に過度の負担させないよう、われわれは、時間はかかっても諸 外国並みに一人ひとりの行動変容に向けて本腰を入れて取り組まなければならない。 こうした情勢を前提に、この研究会では様々な立場の委員からの多くの情報と岩手県環 境保健研究センターが所持するデータをもとに提言をまとめてある。 市町村はじめ多くの関係者の取組みの一助となれば幸いである。 平成 19 年 10 月 生活習慣病対策研究会 会 -2- 長 長山 洋 生活習慣病対策研究会構成委員 今井 博久 国立保健医療科学院 疫学部長 佐藤 豊隆 岩手県国民健康保険団体連合会 健康推進課長 菅原 悦子 岩手大学教育学部 教 授 関 洋一 ザ・オフィスせき 代 表 髙木 彰 JA岩手県厚生連 健康福祉部長 中原 祥皓 岩手大学 長山 洋 岩手県立大学社会福祉学部 福田 吉治 国立保健医療科学院 【事 務 簗田 幸 岩手県環境保健研究センター 前所長(平成 19 年 3 月迄) 阿部 裕行 岩手県環境保健研究センター 所 監 事 教 授 (会 長) 疫学情報室長(オブザーバー) 局】 長 【五十音順・敬称略】 -3- 目 Ⅰ はじめに 次 ………………………………………………………………………………… 4 岩手県の生活習慣病の現状 ………………………………………………………. ~ 生活習慣病対策が重要課題である背景 ~ 1 高齢化の現状 2 医療費増大の現状 3 三大生活習慣病の死亡の現状 4 県民の生活習慣の現状 5 健康日本 21 プラン中間評価 6 医療制度改革と特定健診・特定保健指導 5 Ⅱ Ⅲ 生活習慣病対策の方向性(取り組むべき課題と解決の方策) ~ 県民の健康づくりを推進するための具体的取組み ~ 1 現状の確認と問題周知 (1)県民の健康づくりの関心を高める取組み (2)医療費の適正化に向けた取組み 2 今後に望まれる取組み (1)健診・保健指導実施率の向上に向けた取組み (2)生活習慣に関するデータの積極的活用 (3)ポピュレーションアプローチの進め方 (4)連携体制・関係機関の役割分担 ………… 15 ………………………………………………………………………………….. 28 Ⅳ おわりに Ⅴ 研究会開催要領・経過 Ⅵ 資料編 1 2 3 4 5 6 7 ………………………………………………………………. 29 生活習慣病対策研究会報告の概要及び推進体制 第 1 回研究会議事録 第 2 回研究会議事録 第 3 回研究会議事録 第 4 回研究会議事録 第 5 回研究会議事録 その他情報提供資料 -4- I はじめに 医療制度改革を踏まえ、 「生活習慣病予防の徹底」を図るため、平成 20 年4月から、医 療保険者に対して、40~74 歳の被保険者とその家族など被扶養者を対象とした、糖尿病等 生活習慣病に関する特定健診及びその結果による必要な保健指導の実施が義務づけられま した。また、目標としては初年度からの 5 年間に、糖尿病及びその予備群を 10%、平成 27 年度には 25%減少させることなどが求められています。 糖尿病をはじめとした生活習慣病は、食生活や運動習慣など自分の生活を進んで改善す ることにより、発症を予防することの出来る疾病であり、自らが進んで行動に移していく ことが必要です。健康診査を受け、異常がある場合には病態を良く理解し、進んで生活を 是正することが必要になります。このことにより将来に予想される疾病を回避するととも に、人生のかなり高齢にいたるまで脳卒中や糖尿病合併症による身体の機能障害を経るこ となく、生活の質(QOL)を維持することを目指していく必要があります。県民の一人ひと りが「自分の健康は自分で守る!」という自覚のもとに、末長く健康な生活を送れるなら ば、自分自身のみならず、家族、地域へも貢献することになり、将来的には医療費の適正 化にもつながる可能性があります。 地方の高齢化はこれからも急激に進む一方、人口は減少する推計で、地域の方々が年を とっても、生活に支障ない程度の健康状態で地域に貢献していただくことが必要と考えら れます。そのためには「予防可能な疾病 (preventable disease)」 は、自分の力で防いでい かなければなりません。 そこで、本研究会では、本県の高齢化の進展や生活習慣病に関する現状を分析するとと もに、世代ごとの健康課題の特徴とそれに対応した具体的取組みの方向性と県民、行政、 その他関係機関における推進体制について検討しました。 本研究会では以下の5点の観点から報告書をまとめております。 1)健康に関心の薄い世代等を中心とした健康づくりへの関心を高める取組み 2)医療費増大の現状とそれに伴う生活習慣病予防の重要性について県民への周知 3)健診、保健指導の意義の周知と受診率向上にむけた取組み 4)県民の生活習慣に関する健康課題の分析とわかりやすい情報の提供 5)世代ごとのポピュレーションアプローチの推進とその体制 従来の生活習慣病対策に代わり平成 20 年度から健診、保健指導のあり方が大きく変わり ます。これからは、県民一人ひとりが、「自分自身の健康状態を認識し、自覚症状のない段 階で生活習慣を見直すための機会」として健診を受診すること、更に、医療保険者及び行 政は「行動変容につながる保健指導」と「健康行動を定着させる環境」を提供することが 大きな鍵となります。県民、行政、関係機関が其々の役割を認識し、協働して推進してい くことが元気な人づくり、まちづくりにつながると期待されます。 -5- II 岩手県の生活習慣病の現状 1.高齢化の現状 日本の緊急の課題は「少子高齢化にどう対処するか?」です。年金制度の破綻をどう回 避するかに焦点は当てられますが、我々公衆衛生に携わるものには何が出来るかを考える 必要があります。岩手県の現状を考えると住民一人当たりの所得は日本の都市部と、さら には県内でも市部と町村部で大きな格差が見られます。 経済的な格差については今後の国や地方自治体の政策による期待が大きい部分ではあり ますが、「住民の健康を守る」という公衆衛生の立場では何をすべきなのでしょうか。岩手 県民の平均寿命(0 歳余命)は昭和 60 年~平成 12 年までの推移を見ると、全国同様、男女 とも年々延伸し、平成 12 年都道府県別生命表では男 77.1 歳(全国 39 位)、女 84.5 歳(29 位)となっております。 (図Ⅱ-1-1・2) 図Ⅱ-1-2 平均寿命年次推移 図Ⅱ-1-1 90 80 70 歳 60 岩手県平均寿命男 岩手県平均寿命女 全国平均寿命男 全国平均寿命女 50 40 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 年 平均寿命とは 0 歳平均余命のことを言います。 全 国 男 77.1 歳 女 84.62 歳 岩手県 男 77.09 歳(39 位)女 84・6 歳(29 位) 2.医療費増大の現状 高齢化が進み推計患者数の半数以上を高齢者が占め、医療費の増加が見込まれます。 全国の高齢者の現状を見ると、人口動態統計では 1984 年から 2004 年までの 20 年間に 65 歳以上の高齢化率は 10%から 20%へと 2 倍に増加しています。岩手県では 10%から 25% と増加の幅は大きい。高齢化社会白書によると、都市部では低率の高齢化率も、地方では 高率であり島根県、高知県、秋田県などに続き、岩手県は全国 7 位の高齢化率です。岩手 県内の高齢化率は、釜石圏域の 30.4%を最高に、最低の盛岡圏域 19.7%、岩手県平均では 24.5%です。 (図Ⅱ-2-1~3) 30.0 図Ⅱ-2-1 都道府県別高齢化率 昭和50年 平成16年 25 .0 20 .0 15 .0 10.0 5.0 沖 縄 鹿児島 宮 崎 大 分 熊 本 長 崎 佐 賀 福 岡 高 知 愛 媛 香 川 徳 島 山 口 広 島 岡 山 島 根 鳥 取 和歌山 奈 良 兵 庫 大 阪 京 都 滋 賀 三 重 愛 知 静 岡 岐 阜 長 野 山 梨 福 井 石 川 富 山 新 潟 神奈川 東 京 千 葉 埼 玉 群 馬 栃 木 茨 城 福 島 山 形 秋 田 宮 城 岩 手 青 森 北海道 全国 0.0 -6- 図Ⅱ-2-2 図Ⅱ-2-3 高齢化率の年次推移 圏域別高齢化率(H17) 35.0 30 全国 30.0 岩手県 25 25.0 20 20.0 15.0 15 10.0 5.0 10 0.0 県 盛岡 岩手中 部 胆江 両盤 気仙 釜石 宮古 久慈 二戸 24.5 19.7 24.8 26.5 28.0 28.9 30.4 28.4 24.9 29.0 5 高齢化率 昭 和 昭 59 和 昭 60 和 昭 61 和 昭 62 和 平 63 成 元 平 成 平 2 成 平 3 成 平 4 成 平 5 成 平 6 成 平 7 成 平 8 成 平 9 成 平 10 成 平 11 成 平 12 成 平 13 成 平 14 成 平 15 成 平 16 成 17 - 高齢化率とは 国の総人口に占める高齢者(65 歳以上)人口の割合のことで、各国や地域の高齢化の程度をはかる指標として世 界中で使用されています。 なお、高齢化率に応じて、「高齢化社会:7%~14%未満」「高齢社会:14%~21%未満」「超高齢者社 会:21%以上」の 3 つに分類されています。 この高齢化の進展により医療費は年々増大し、平成 16 年度の国民医療費は 32 兆円を越 え、国民所得に対する割合は 8.9%となっています。国民医療費(一般診療分:24 兆円) の疾患別構成割合を見ると、その 3 割が悪性新生物、脳血管疾患、虚血性心疾患などの生 活習慣病で占めています。(図Ⅱ-2-4.5)) 図Ⅱ-2-5 主な 疾患別一般診療医療費構成割合( H1 6 ) 図Ⅱ-2-4 兆 悪性新生物 9.6% 糖 尿 病 4.6% その他 67.6% 国民医療費の状況 50 40 高血圧性疾患 7.8% 30 虚血性心疾患 2.9% 20 脳血管疾患 7.6% 10 0 S 58 S S 59 60 S 61 S S H H1 H2 H3 H4 H5 H6 H7 H8 H9 62 63 10 H 11 H H 12 13 H 14 H H 15 16 老人以外の医療費 11 11 12 13 13 14 19 19 19 19 19 19 20 21 老人医療費 3.3 3.6 4.1 4.4 4.8 5.2 5.6 5.9 6.4 6.9 7.5 8.2 8.9 9.7 10 11 12 11 12 12 12 12 14 15 15 17 17 18 18 19 % 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 国民所得に 対する割合 6.3 6.2 6.1 6.4 6.4 6.2 6.1 5.9 5.9 6.4 6.6 6.9 7.2 7.5 7.6 7.9 8.4 8.1 8.6 8.7 8.8 8.9 さらに、平成 17 年患者調査結果によると、推計患者数に占める 65 歳以上の高齢者の割 合は、入院で 6 割、外来では 4 割であり、高齢化の状況が明らかとなっています。 (図Ⅱ-2-6.7) 図Ⅱ-2-6 70.0 図Ⅱ-2-7 都道府県別一人当たり老人医療費 推計患者数に占める高齢者の割合 全国値 ( H17 患者調査) 1,200,000 1,000,000 65歳以上 70歳以上 75歳以上 60.0 50.0 平成14年度 平成15年度 平成16年度 800,000 600,000 400,000 40.0 200,000 % 30.0 0 20.0 平成14年度 10.0 0.0 入院患者 外来患者 患者合計 -7- 全国計 長 736,512 596,480 野 青 森 681,925 岩 手 648,281 秋 田 676,179 福 岡 904,564 平成15年度 752,721 612,042 691,453 659,172 704,940 922,667 平成16年度 780,206 634,872 711,792 673,782 728,520 965,415 3.三大生活習慣病の死亡の現状 中高年の死因は三大生活習慣病の占める割合が大きく、働き盛り世代男性で死亡率が高い 全国、県の死因別死亡率の長期推移を見ると、時代の流れや高齢化に伴い、取り組むべき 主要疾患が結核や感染症から悪性新生物、心疾患、脳血管疾患等の三大生活習慣病へとシ フトしています。近年の傾向として、生活習慣病の中でも悪性新生物の増加が著しく、脳 血管疾患、心疾患などの循環器系疾患、肺炎で亡くなる方が増えています。(図Ⅱ-3-1~3) 全国の主要死因別死亡率(人口10万対)年次推移 図Ⅱ-3-1 400 肺炎 350 結核 300 悪性新生物 結核 % 悪性新生物 糖尿病 250 脳血管疾患 200 心疾患 心疾患 (高血圧性を除く) 脳血管疾患 肺炎 150 老衰 不慮の事故 老衰 100 自殺 不慮の事故 自殺 50 糖尿病 9 9 1 98 20 04 4 1 98 1 99 9 1 97 19 94 4 1 97 19 69 9 1 94 19 64 4 1 94 19 59 9 1 93 19 54 4 1 93 4 4 1 91 図Ⅱ-3-2 19 29 9 1 90 1 92 4 1 90 19 19 9 1 89 0 岩手県の主要死因別死亡率( 人口1 0万対)年次推移 350 悪性新生物 肺炎 自殺 30 0 心疾患 老衰 脳血管疾患 不慮の事故 25 0 200 15 0 100 50 和 63 平 成 元 平 成 2 平 成 3 平 成 4 平 成 5 平 成 6 平 成 7 平 成 8 平 成 9 平 成 10 平 成 11 平 成 12 平 成 13 平 成 14 平 成 15 平 成 16 平 成 17 和 62 昭 和 61 昭 和 60 昭 和 59 昭 和 58 昭 昭 昭 和 57 - 図Ⅱ-3-3 平成17年 主要疾病別粗死亡率(人口10万対) 2位 3位 4位 5位 6位 11位 糖尿病 悪性新生物 心疾患 脳血管疾患 肺炎 不慮の事故 自殺 258.3 137.2 105.3 85.0 31.6 24.2 10.8 296.4 179.8 161.6 104.9 39.3 34.1 11.6 12 5 1 15 18 3 23 都道府県順位 区分 疾患 全国 岩手県 1位 -8- 岩手県での人口 10 万人での死亡割合(平成 13-17 年の 5 年平均)を死因別に見ると、1 位が悪性新生物(28.5%)でそれに続いて心疾患(16.1%)、脳血管疾患(15.9%)、肺炎(9.5%)、 不慮の事故(4.0%)、自殺(3.6%)と続いています。年齢階級別死亡割合を見ると中高年 では三大生活習慣病の占める割合が大きくなっています。 (図Ⅱ-3-4~6) 図Ⅱ-3-4 主要疾患別死因割合( H1 3 - 17 ) 0% 20% 40% 16.1 28.5 総数 14.8 31.4 男 図Ⅱ-3-5 脳血管疾患 その他 80% 15.9 9.5 4.0 3.6 14.2 9.4 4.8 4.8 9.6 3.1 2.2 18.0 17.6 25.0 女 悪性新生物 心疾患 不慮の事故 自殺 60% 肺炎 100% 22.4 20.6 24.6 年齢階級別主な死因割合 岩手県 男 H13-17年 0% 20% 40% 60% 80% 0-4歳 100% 悪性新生物 心疾患 脳血管疾患 肺炎 不慮の事故 自殺 その他 10-14歳 20-24歳 30-34歳 40-44歳 50-54歳 60-64歳 70-74歳 80-84歳 90図Ⅱ-3-6 年齢階級別主な死因割合 岩手県 女 H13-17年 0% 10% 20% 30% 40% 50% 0-4歳 60% 70% 80% 90% 100% 悪性新生物 心疾患 脳血管疾患 肺炎 不慮の事故 自殺 その他 10-14歳 20-24歳 30-34歳 40-44歳 50-54歳 60-64歳 70-74歳 80-84歳 90- -9- 4. 県民の生活習慣病の現状 脳血管疾患登録者は 65 歳を境に急増し、その死亡率も全国に比較し高率 ① 脳血管疾患は男女ともに 65 歳からの発症数が急激に増加しています。また、死亡者数は 男性では 75 歳がピークになるのに対し、女性では加齢とともに増加する傾向にあります。 特に、都道府県別に見ると、本県では脳血管疾患の死亡率は全国に比較し非常に高く、平 成 17 年には全国ワースト 1 位で人口 10 万人当たり 161.6 人(全国:105.3 人)が亡くなって います。都道府県別年齢調整死亡率は東高西低の傾向にあり、北東北の死亡率が高率です。 【脳血管疾患登録・死亡の状況】 (図Ⅱ-4-1~4) 人口動態統計・岩手県地域脳卒中登録事業報告 2002 年 図Ⅱ-4-1 人 脳血管疾患登録数・死亡数(男) 300 脳血管疾患登録(H14) 250 脳血管疾患死亡数(H12-16平均) 200 登録数(H14)1,163人 死亡数(H12-16平均)1,043人 150 100 50 4歳 85 歳 - 9歳 4歳 70 -7 75 -7 80 -8 9歳 4歳 9歳 65 -6 9歳 4歳 9歳 60 -6 4歳 55 -5 50 -5 9歳 4歳 45 -4 9歳 40 -4 脳血管疾患登録数・死亡数(女) 図Ⅱ-1-2 人 35 -3 30 -3 4歳 9歳 4歳 25 -2 9歳 20 -2 15 -1 4歳 9歳 10 -1 5- 0- 4歳 0 300 脳血管疾患登録(H14) 250 脳血管疾患死亡数(H12-16平均) 200 登録数(H14)1,072人 死亡数(H12-16平均)1,092人 150 100 50 85 歳 - 4歳 80 -8 75 -7 70 -7 4歳 65 -6 60 -6 9歳 55 -5 4歳 9歳 50 -5 4歳 45 -4 9歳 40 -4 4歳 35 -3 9歳 30 -3 4歳 25 -2 9歳 20 -2 4歳 15 -1 9歳 10 -1 5- 0- 4歳 0 【都道府県別:脳血管疾患年齢調整死亡率 平成 17 年】 図Ⅱ-4-3 図Ⅱ-4-4 男 全国 61.9 ~54.3 54.4~59.7 59.8~65.1 65.2~70.5 70.6~ 女 全国 36.1 ( 9) (12) (11) ( 6) ( 9) ~31.3 31.4~34.5 34.6~37.7 37.8~40.9 41.0~ -8-10- ( 5) (13) (14) ( 7) ( 8) 【脳血管疾患年齢調整死亡率(人口 10 万対)の年次推移平成 7-17 年】 図Ⅱ-4-4 脳血管疾患年齢調整死亡率( 男) 図Ⅱ-4-5 脳血管疾患年齢調整死亡率(女) 140 80 全国 岩手県 120 60 100 40 全国 岩手県 80 20 60 0 40 H7 H8 ② H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H7 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 若年期からの肥満者割合が全国に比較し高率で、更に、基本健診による糖尿病要指導 者が年々増加 岩手県の平成 16 年度の基本健診受診率は約 46%で、全国の約 44%に比較しやや高率で した。その健診結果をみると糖尿病に関する要指導の人の割合が約 23%で、全国の約 18% より高率となっており、本県の課題のひとつと言えます。平成 17 年における糖尿病の粗死 亡率(人口 10 万対)は 11.6(全国 10.8)死因順位 11 位、都道府県順位 23 位となってい ます。糖尿病は自覚症状がなく健診で発見される場合が多い疾患です。また、糖尿病自体 での死亡は少ないものの、これらの合併症による死亡が多いこと、重症化、合併症による 医療費負担が考えられることから、健診による早期発見、早期治療が望まれます。 (図Ⅱ-4-6 ~9) 図Ⅱ-4-6 図Ⅱ-4-7 基本健診受診率の推移 48.0 糖尿病要指導割合 25.0 46.0 20.0 44.0 42.0 15.0 全国 県 40.0 全国 県 38.0 10.0 H14 図Ⅱ-4-8 H15 H16 H17 H14 図Ⅱ-4-9 喫煙率(男)の推移 40.0 40.0 35.0 35.0 30.0 30.0 全国 県 25.0 H16 高血圧症者の割合 25.0 20.0 全国 県 20.0 H14 H15 H16 H14 H17 5. 健康日本21プラン中間評価 ① H15 健康日本 21 の中間評価から見た生活習慣病対策の重要性 -11- H15 H16 H17 国は具体的な目標値を決め国民の健康づくりを推進する取組みを行っていますが、現状 では多くの項目で目標に届いておりません。この計画の生活習慣病対策事業を補填するた めにも、平成 20 年度から始まる特定健診・特定保健指導の意義は大きいと言えます。(図 Ⅱ-5-1~4) 肥満者の割合 図Ⅱ-5-1 図Ⅱ-5-2 日常生活における歩数 % 男 女 35.0 30.0 25.0 20.0 15.0 10.0 5.0 0.0 10000 8000 目標 15.0 7532 7282 4000 20.0 g 400 300 9200 8202 6000 29.0 24.6 24.3 25.2 図Ⅱ-5-3 野菜の摂取量( 成人1日) 男 女 200 8300 6446 2004 1997 2010 2004 1997 2010 2004 2010 国民健康・栄養調査(H9 年・16 年) 図Ⅱ-5-4 朝食の欠食率の年次推移( 1歳以上総数) % 目標 0 0 1997 350 267 100 目標 2000 292 14.0 12.0 10.0 8.0 6.0 4.0 総数 男 女 2.0 0.0 H7 ② H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 がん等疾病予防支援システムから見た県民の生活習慣 環境保健研究センターでは、「健康いわて21プラン」に示される生活習慣に係る指標の 現状を把握するとともに、各年代に応じた健康課題の分析、提供を行なっています。 ここでは、特に、「肥満者の割合」、 「朝食の欠食率」、「運動習慣」に関するデータ(平成 17 年度)について示します。(図Ⅱ-5-5.6) 【肥満者の割合】 年代別肥満者の割合を見ると、中・高校生を除き、男女とも全国平均と比較して肥満割 合が高い状況にあります。成人男性では約 3 割に肥満があり、特に、30 歳代、50 歳代に多 い状況でした。女性では加齢とともに肥満割合が高くなっています。 図Ⅱ-5-5 年代別肥満者の割合(男) 図Ⅱ-5-6 平成 17 年度 50 平成 17 年度 年代別肥満者の割合( 女) 50 全国 38.3 32.3 (%) 30 16.0 10.812.412.312.611.212.812.7 20 8.4 10 36.5 38.0 34.1 32.7 30.8 29.7 28.9 40 平成17年度 28.1 25.5 30 (%) 平成17年度 40 19.9 17.0 16.1 13.3 11.9 10.210.19.2 8.2 9.7 8.7 8.3 8.6 5.4 4.7 20 10 5.4 全国 24.5 17.9 29.4 24.1 34.5 36.1 29.9 26.7 参考 ● 肥満判定基準:小学生から高校生まで 村田式による標準体重に対し肥満度 20%以上の者 :成人 BMI25以上の者 ● 全国値 :小学生から高校生まで 平成18年学校保健統計速報値全国平均 :成人 平成16年国民健康・栄養調査結果 -12- 60 歳 代 70 歳 代 以 上 50 歳 代 40 歳 代 30 歳 代 3 20 歳 代 高 3 中 1 中 小 1 小 上 代 以 60 歳 代 70 歳 50 歳 代 40 歳 代 30 歳 代 高 3 20 歳 代 3 中 4 1 中 小 1 小 4 0 0 【朝食の欠食率】 朝食の欠食率では、男女とも中学生以降高くなり、全国と同様に 20 歳代で最も高い状況 にあります。男女とも 30 歳代以降年代を追うごとに欠食率は低くなっていますが、働き盛 り世代の男性は、女性に比べて高い状況にあります。特に 20 歳代の男女とも 2 割以上の方 が朝食を摂っていない状況にあります。(図Ⅱ-5-7.8) 図Ⅱ-5-7 40 34.3 30 岩手県 23.6 4.5 3.1 8.0 全国 21.1 20.1 18.3 20 10 平成 17 年度 年代別朝食欠食率(男) 13.1 12.9 9.9 6.8 9.8 2.9 4.7 1.3 2.9 以 上 代 5 6 0歳 0歳 代 0歳 0歳 代 代 4 7 2 3 0歳 0歳 代 3 高 3 中 1 中 小 小 4 1 0 図Ⅱ-5-8 年代別朝食欠食率( 女) 平成 17 年度 40 岩手県 30 15.8 20 10 全国 23.0 22.0 3.6 2.7 8.1 10.7 9.8 15.0 7.5 7.8 5.0 9.1 5.0 2.0 1.4 2.9 0歳 以 上 0歳 0歳 代 代 7 6 4 5 0歳 代 代 3 2 0歳 0歳 代 3 高 3 中 1 中 小 小 1 4 0 【運動習慣の状況】 日頃からいつも身体を動かすよう「いつも心がけている者」は、20 歳代~30 歳代で最も 低く、40 歳代以降では年代が高いほど「いつも心がけている者」の割合が高い状況にあり ます。(図Ⅱ-5-9) 図Ⅱ-5-9 日頃からいつも意識的に身体を動かすように心がけて いる者の割合 平成 17 年度 70 62.4 55.8 60 50 65.2 62.8 54.4 54.4 46.2 40 男 女 42.8 37.4 33.6 34.7 27.9 30 22.1 20 21.1 13.0 17.9 24.5 21.9 10 0 中1 中3 高3 20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳以上 【地域別生活習慣の現状】 地域別に比較すると、肥満者の割合では、成人男女とも沿岸・県北地域で高い傾向にあ ります。男性では宮古地域が、女性では久慈地域で約 4 割の方が肥満者という状況でした。 また、運動習慣の状況では男女とも釜石地域が意識的に身体を動かしており、大船渡、 -13- 久慈地域といった沿岸地域で高い傾向にあり、漁業など職業に影響しているかと考えられ ます。(図Ⅱ-5-10~13) 図Ⅱ-5-10 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 38.5 宮古 35.2 盛岡 33.9 久慈 33.3 大船渡 32.7 岩手県 31.7 30.5 30.2 29.0 二戸 一関 釜石 花巻 30.1 28.8 一関 大船渡 肥満者の割合( 成人 女) 図Ⅱ-5-11 40 平成 17 年度 肥満者の割合(成人 男) 37 35 35 34.4 31.8 31.7 30.7 30 26.9 25 20 15 10 5 0 久慈 二戸 宮古 岩手県 盛岡 釜石 花巻 図Ⅱ-5-12 地域別いつも意識的に身体を動かすよう心がけてい る者の割合(2 0歳以上男) 70 60 60.1 56.0 54.1 52.2 52.1 52.1 51.8 久慈 岩手県 花巻 二戸 盛岡 50 49.0 48.8 宮古 一関 40 30 20 10 0 釜石 大船渡 図Ⅱ-5-13 地域別いつも意識的に身体を動かすよう心がけてい る者の割合(2 0歳以上女) 70 60 53.6 52.4 50.9 50 49.8 47.5 46.9 45.3 45.2 44.7 二戸 岩手県 一関 宮古 盛岡 花巻 40 30 20 10 0 釜石 大船渡 久慈 6.医療制度改革と特定健診・特定保健指導 -14- 前述したように、高齢化の進展と生活習慣の変化により、糖尿病などの生活習慣病の有 病者・予備群が増加し、国民医療費が増加していることが問題となってきています。この ような状況により、国民皆保険を存続可能なものとするために行われた今回の医療制度改 革では、生活習慣病対策の推進が重要なポイントとなっています。 糖尿病等生活習慣病は、早期発見・治療により発症や重症化を防ぎ、生活習慣の改善に よって予防することが可能であり、中長期的に見て医療費抑制の効果は大きいと考えられ ます。また、この予防重視の考え方は、治療重視の医療から、疾患予防を重視し、単に医 療費適正化を図るためではなく、国民の生活の質(QOL)の確保を図ることも目的として います。 この改革における具体的対策としては、医療保険者に 40 歳から 74 歳の被保険者に対す る特定健診、保健指導が義務付けられることになりました。生活習慣病対策はポピュレー ションアプローチとハイリスクアプローチの両輪からなり、この特定健診、保健指導はハ イリスクアプローチの一つです。また、生活習慣病対策のターゲットは大きく3つの視点 があり、①不健康な生活習慣を送っている者が生活習慣病の予備群になるのを予防するこ と、②生活習慣病の予備群が有病者になることを予防すること、③有病者の重症化や合併 症を予防することです。 今回の特定健診、保健指導の主なターゲットは②の予備群ですが、①に対しては市町村 等が行なうポピュレーションアプローチで、③に対しては医療によるフォローといった、 ターゲットごとに有効な対策が講じられることが期待されています。 -15-
© Copyright 2024 ExpyDoc