3- (1)研究目的・内容 研究目的 北極域では、永久凍土下で貫入し成長

【派遣支援期間中の研究計画】図表を含めてもよいので、わかりやすく記述してください。2ページ以内で記述して下さい。
(1)研究目的・内容
①研究目的、研究方法、研究内容についてわかりやすく記述して下さい。
②どのような研究で、何を、どこまで明らかにしようとするのか記述して下さい。
■ 研究目的
北極域では、永久凍土下で貫入し成長した氷
が地表面を盛り上げて形成されるマウンド地形
(凍土丘:ピンゴやパルサ)が数多く発達して
いる。本研究では、研究例が非常に乏しい西シ
ベリア平原(図 2)に発達する「凍土丘の空間
分布・サイズと永久凍土層の温度場の関係性」
の解明を目的としている。
■ 研究方法
上記の問題を解明するために、用いる手法と
その役割を以下に挙げる。なお、申請者は以下
の全事項の施行実績があり、問題は生じない。
観測井での温度測定
既存の掘削孔のデータ
は入手しやすいが、空間分解能が不十分であ
図 2 ロシアにおける凍土中の地下氷の厚さ分布と凍土丘が
見られる地域。
る。西シベリア中部 Urengoy 地域を中心に温度測定を追加で行うほか、Vorkuta 地域(西部)や Kuyumbinskaya
地域(東部)でも新たに温度測定を行い、温度データを取得する。既存の掘削孔データについては、受入
研究者や受入の共同研究者の協力を得て交渉して取得する。
堆積物試料の採取
地盤の物性と化学組成を調べるために、Vorkuta 地域で凍土丘とリファレンスサイトより
堆積物試料を採取する。なお、採取した試料の測定は帰国後に行う。
凍土丘のマッピング
デジタルマップや衛星データおよびデータが欠損している西シベリア平原のフィー
ルドを訪れて凍土丘の分布と径・高さをマッピングし、ArcGIS を用いてコンパイルする。
数値シミュレーション
永久凍土層の効果を加味した Basin Analysis 手法を開発する。具体的には、受入研
究者の共同研究者が開発した Basin analysis 手法(GALO System)を改良し、永久凍土層の効果と地表面の
起伏などの 3 次元的地形効果による温度場の影響を考慮したもの(X-GALO)を開発する。上記で得られ
る温度データは境界条件、堆積物の物性はパラメータに組み込み、シミュレーションを行う。
■ 研究内容
凍土丘の分布密度や大きさは貫入氷の成長度合いの影響を受けている可能性がある。一方、開発する
X-GALO によって、最終氷期-間氷期の気候変動に伴う、地下温度場の変化、永久凍土層底部の深度変動、
ガスハイドレート安定領域層の深度変化を推定できる。よって、これらの結果と凍土丘の空間分布・サイズ
のマッピング結果を比較し、長期スケール(> 数 10 年)での地温や永久凍土層厚の変動が凍土丘の分布・
サイズにどのように影響を及ぼしているかを理解することを目指す。
■ 研究計画
本申請では 7 月〜9 月にかけて 2 ヶ月程度の渡航を予定している。西シベリアのフィールドを訪れデータ
や試料を取得するとともに、派遣先機関の研究者を訪問しシミュレーション手法の改良、解析や議論を行う。
ロシア語の文献調査(7 月)
ロシアの文献は国外では入手しにくく、また英語化されているものが少ない。そこで、受入研究者 Isaev
氏の共同研究者の協力を得て、凍土丘の分布やサイズに関するロシア語の文献を閲覧し、知見を習得する。
同時に、下記の凍土丘のマッピングにおいてデータが欠損している地域をピックアップし、必要なフィー
ルドワークの計画を立てる。また、西シベリア平原の地質をレビューする。
凍土丘のマッピング(7 月〜9 月)
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デジタルマップや衛星データから西シベリア平原の凍土丘をマッピングする。また、ロシアの文献より、
凍土丘の径・高さをコンパイルし、凍土丘のマッピングを進める。また、文献調査で欠損している地域
(Urengoy, Vorkuta, Kuyumbinskaya 地域周辺など)は実際にフィールドを訪れる(温度測定や試料採取と同
時期を予定、受入研究者と要相談)
。
モデリング手法の改良(7 月・8 月)
派遣先機関の研究者の協力の下、X-GALO の開発を進める。この研究者は 7 月〜8 月中旬頃まで出張が
多いため、基本的にはメールとのやり取りによって進めるが、申請者は数値計算の実績が多いため支障は
ないと考えている。
観測井の温度測定(8 月・9 月)
受入研究者 Isaev 氏と共同研究者の協力を得て Urengoy, Kuyumbinskaya, Vorkuta 地域で温度測定を行い、
表層の温度データを取得する。既存の掘削孔データ入手については、共同研究者の協力を得て交渉して取
得する。
堆積物試料の採取(9 月)
受入研究者とともに、Vorkuta 地域のフィールド調査に 3 週間程度(9/1~9/23)参加する。凍土丘を含む
多くのサイトで堆積物試料を採取する予定である。その一部の試料を提供していただき、本派遣の帰国後
に分析を行う。
(2)研究の特色・独創的な点
① これまでの先行研究等があれば、それらと比較して、本研究の特色、着眼点、独創的な点を記述して下さい。
② 国内外の関連する研究の中での当該研究の位置づけ、意義を記述して下さい。
■ 本研究の特色、着眼点、独創的な点
近年、地球物理的手法による凍土丘の構造探査は進んでいるが、地下の温度場と凍土丘の研究例は乏しい。
例えば、シベリアのピンゴの大半は北極海沿岸に近いツンドラ域の連続永久凍土帯に分布し、湖水の排出後
に成長した「閉鎖型」である(Grosse & Jones, 2011)。また、約 3 割が永久凍土分布の南限に位置し、今世紀
中に崩壊に向かう可能性があることが指摘されている。周氷河プロセスは、温度、水、地盤物性、地形場の
関数であり、特に温度場、水条件を詳細に知る必要がある。なぜなら地温、水は時間的に大きく変動し、同
時に地盤物性や地形場の関数にもなり得るからである。そこで、本研究では観測とモデリングによって、周
氷河プロセスにおいて最重要である温度場や水分布に着目することにより、地温・水が凍土丘の分布や大き
さにどのように影響を及ぼすのかを考察することを目指している。また、観測手法の高度化が進んでいる一
方で、観測域の格差が著しい。例えば、世界最大のガス埋蔵量を誇る西シベリア平原の周氷河地形、永久凍
土、活動層の深度変化の研究において、どれをとってもカナダ、アラスカ、スバールバル、アルプスと比べ
ると非常に少ない。そこで西シベリアをフィールド対象としている。条件が異なる周氷河環境での考察は周
氷河プロセスの全容理解の一助となるとともに、火星で推定されている類似の周氷河地形の理解にも資する
ことができる。そして本研究は、文献調査、観測、堆積物試料の分析、数値計算と手法が多岐にわたってお
り、全事項において実績がある申請者でしか遂行できないであろう点も本研究のウリである。
■ 当該研究の位置づけ、意義
凍結丘に関する変位観測や構造調査に関しては、J. Ross Mackay 氏らによる長期の詳細な研究(e.g., Mackay
& Burn, 2011)があるが、最近の進展は他の周氷河プロセスと比べると非常に少ない。これは、規模が大きい
ために、地形の変位の機器連続観測には適さないためである。一方で、近年の気候変動に伴う永久凍土の融
解が凍土丘崩壊による「ビッグホール」を形成し、インフラ、建築物崩壊の誘発することから、ここ数年で
西シベリアにおいて特に騒がれるようになった。よって、温度場と凍土丘の分布・大きさの関係の理解は、
周氷河現象の形成プロセスのみならず自然災害科学的研究においても喫緊の課題である。また、本研究は、
これまで研究例の少ない周氷河プロセスの空間的変化、観測可能な期間を超えるスケール(> 100 年)での
時間的変化の理解に大きく寄与する。そして、本研究の温度・水条件の理解は、周氷河プロセスを過去の気
候プロキシとして利用することにおいて、将来的に高い有用性を持つことが期待される。
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