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食料問題
と環境 12
農村における
女性―エンパ
ワーメントと
価値の創造
農作業においても女性の役割は重要だ.第6次産業化では中心になる.
前回のWORK!
1. あなたは将来,農業に従事してみたいと思
いますか? どうしてそう思うのか,理由も書
いてください.
専業になるという前提での答えが多かった.
退職後にという回答も幾つか.
兼業,退職後,趣味などで,自給的に農業を行
うだけでも環境保護や食料自給には有意味.
前回のWORK!
2. 若い人が新規就農するには,どのような条
件が必要でしょうか.考えてみましょう.
助成金,教育,農地貸与などは既に実施中.
地方分権を進める.
→ 地方の独自性を活かした施策
→ 若者の都会志向を和らげる
300
農業就業人口(万人)
250
200
男性
150
女性
100
50
0
2009
2010
2011
2012
2013
2014
ジェンダー gender
• 社会的性差
• 女性性 femininity
• 男性性 masculinity
これらは社会的につくられた概念
個としての男性が女性を抑圧するのではなく
社会構造が抑圧を生みだすという視点
5
社会的につくられるとは?
実在論 vs 唯名論(中世欧州哲学の普遍論争)
• 実在論:概念やカテゴリは実在
• 唯名論:概念やカテゴリは人間が付けた名前
例:「果物」というカテゴリは実在?名前?
「昆虫」は? 「人間」は? 「酸素」は?
「女」は? 「男」は? ・・・・・
6
社会的につくられる=社会構築主義
概念やカテゴリが名前に過ぎないとすると,
• 名前は,その社会の文化や歴史のなかでつく
られてきた.
• 社会が異なれば,概念やカテゴリも異なる.
• 現在,当たり前だと思われている概念やカテ
ゴリは,別のあり方でもあり得る.
7
ジェンダーが社会的につくられる過程
•
•
•
•
家族:家父長制
労働関係:資本主義的家父長制 主婦化
子どもの社会化
コミュニケーション
8
家父長制 patriarchy
• 男性が女性に対して,政治的権力,経済的所
有権,道徳的権威,社会的特権を行使するこ
とを正当なものとする社会制度.
• 家族においては,父親の権力となって現れ,
父系制を伴う場合が多い.
• 家族の財産も男性に継承される.
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家父長制の起源
遊牧民
男性が女性と
家畜を所有
狩猟民
男性が狩猟
女性が採集
女性の役割は
サブシステンス
男性による
武力の独占
農耕民
男性が土地所有
女性が労働
10
サブシステンス subsistence
• 生命維持,生存のための活動,または生活
そのものを表わす.
• 具体的には,自給的な衣・食・住,育児,家事
など.
• あらゆる人間活動の根底にある.
11
資本主義的家父長制
capitalist-patriarchy
• マルクス主義フェミニズムの用語
• 前近代的な家父長制による女性の抑圧,近
代資本主義における労働者の抑圧が一体と
なっている現代の社会構造.
12
資本主義的家父長制と主婦
女性=主婦
• 出産,育児,家事等を
無償労働で行う.
• 「愛」に基づくという理
由で無報酬が正当化さ
れる.
男性=賃労働者
• 資本所有者の生産手
段として,男性は自ら
の労働力を売る.
• 家事を女性に任せて労
働に専念する.
家族における労働力の再生産
• 女性による無賃の家事労働が男性労働者を低コス
トで再生させる.=サブシステンス
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日本における専業主婦の誕生
1960年代~70年代の夫側の雇用環境の変化
• 「サラリーマン」化=職住分離の被雇用者
• 景気スライド賃金上昇 ← 労働組合運動
欧米のフォード主義と同様
• 男性を前提とした日本型雇用システム
企業への忠誠と年功序列,「企業戦士」
女性の排除 「寿退社」 ⇒ Mカーブ
• 配偶者控除の制度化
14
専業主婦化 Mカーブ
80
70
1993~7年生まれ
60
1988~92年生まれ
1983~87年生まれ
50
1978~82年生まれ
40
1973~77年生まれ
パート化
1968~72年生まれ
30
1963~67年生まれ
20
1953~57年生まれ
1958~62年生まれ
1948~52年生まれ
10
70歳以上
65~69歳
60~64歳
55~59歳
50~54歳
45~49歳
40~44歳
35~39歳
30~34歳
25~29歳
1938~42年生まれ
20~24歳
0
1943~47年生まれ
15~19歳
女性の年齢階級別労働力率(%)
90
15
サラリーマンの夫が外でフルに働き
妻が家事に専従する制度
• 1970年前後に5割近くが「専業主婦」化.
• 1950年前後生まれ世代が最も多い.
• 1980年代後半の雇用条件の変化から今度は
「パート」化して社会復帰する.
• 農村の場合,「専業主婦」ではなく,無賃金・
無償の農業労働+家事労働で,より深刻な
ジェンダー差別を受けた.
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1961年農業基本法後の
農家の女性像
• 専業農家(米):機械化による省力化
→ 男性による稲作 → 一部専業主婦化
• 兼業農家:男性は会社員または出稼ぎ
→ 女性による自給的農業(サブシステンス)
→ 農業の担い手としての女性
• どちらの場合も,家父長制のもとで,女性の経
済的・社会的地位は低かった.
農村の資本主義化と家父長制
女性=自給的農業者
=かつ主婦
• 自給的農業
• 出産,育児,家事
これらを無償労働で行う.
男性(専業)=経営者
(兼業)=賃労働者
• サブシステンス労働を
女性に任せて労働に専
念する.
家族における労働力の再生産
• 女性による無賃の家事労働が男性労働者を低コス
トで再生させる.=サブシステンス
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1980年代後半からの農村女性
• 専業農家男性の経営困難
• 兼業農家男性の農業からの完全な離脱
• 1961年基本法下での農業への反省
– 有機農業運動
– 消費者運動
– 反公害運動
• 女性による農産加工品,食生活の見直し
農村女性起業へ
資本主義的農業の失敗と
農村女性起業=有償労働化
•
•
•
•
自給的農業(地場野菜)
家事(伝統食=味噌・醤油など加工食品)
家事(料理=農家レストラン)
家事(家屋の管理・掃除=農家民宿)
女性=自給的農業者
=かつ主婦
• 自給的農業
• 出産,育児,家事
これらを無償労働で行う.
男性(専業)=経営者
(兼業)=賃労働者
• サブシステンス労働を
女性に任せて労働に専
念する.
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農村女性のエンパワーメント
(empowerment)
• 社会的な力を持たず,意思・方針決定への影
響力や直接参加の機会を持たなかった農村
女性たちが,さまざまな活動を通して社会・政
治・経済の変化の担い手となっていく過程の
こと。(教科書p.241)
事例
• 岡山県高梁市宇治町の元仲田邸くらやしき
http://uji-irodori.info/
• 農林水産省「女性の活動を応援します」
http://www.maff.go.jp/j/keiei/danjyo.html
• 農林水産省「農業女子プロジェクト」
http://nougyoujoshi.jp/
農村女性起業数の動向(件数)
10000
8000
6000
グループ経営
個人経営
4000
2000
0
1997 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012
農業・農村の第6次産業化
事業体数
年間販売金額
(100万円)
従業者数
(100人)
地場産割合
%
農産物の加工
30390
823730
1606
62.6
農産物直売所
23560
844818
2149
83.7
観光農園
8850
37932
560
100.0
農家民宿
1960
5731
73
54.3
農家レストラン
1480
27207
113
64.0
2012年度 農業・農村の6次産業化総合調査 (農水省)
WORK!
女性が,都市で企業に勤務しつつ家庭を持つ
場合と,農村で農業に従事しつつ家庭を持つ場
合では,一般的に言って,どちらでより差別を受
けるでしょうか? 具体的な場面(職場,家庭,
出産,育児,離婚など)に即して考えてみましょ
う.