大乗温葉經にあらわれた 小乗戒の意味 - J

大 乗浬 架 に あ ら わ れ た小 乗 戒 の意 味 (久
保
大 乗 浬・
樂 経 にあ ら わ れ た
小 乗 戒 の意 味
久
保)
縫 成
本論 では大乗浬葉経 の小乗戒にた いする態度を検 討する。この経
一六 二
経 に は律 藏 と異 な る圭 張 も あ る。 た と え ば食 肉 を 一切禁 ず る こと
薩 の戒 と し て説 か れ て は いな い。
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は よ く知 ら れ てい る。 し か し こ の場 合 に も、 迦葉 を し て ﹁で はど う
し て先 に 三 種 浄肉 を ゆ る さ れた か ﹂ と問 わ し め る な ど、 律 藏 を 充 分
知 り な が ら 敢 て これ と異 る態 度 を 打 出 し て いる 貼 を 強 調 し て いる。
他 に も律 藏 と異 る 圭 張 が あ る が、 そ のす べ て に於 て、こ の こ と は同
様 であ る。 これ は、 律 藏 を知 りな がら、 聲 聞 僧 伽 に封 し戒 の 上 で猫
自 の姿 勢 を 示 す も の と いえ よ う。 し か し廣 律 の間 に も相 異 が あ る以
場 と はあ い い れな い こ と がわ か る。 経 は各 所 で聲 聞 の腐 敗 ・堕落 を
さ ら に経 文 を 検 討 す る と、 前 期 の戒 観 は律 藏 と異 な り、 律 藏 の立
上、 これ の み で は経 の猫 自 性 を明 確 にす る こと は 出 來 な い。
この検討により大乗 による小乗戒受 容 の 一形態を知りうると思う。
は小乗戒に關 し豊富 に語る ので経 の態度 が捉 え易 い。その意味 では
大乗浬繋経 の成立 は、龍樹以後世親以前 であり大きく二期 に分 か
論 は そ の典 型 であ る。 経 を よく 讃 む と、 こ の経 の捲 手 は、 聲 聞 と は
述 べ、 戒 に つい ても 一般 にそ の 一端 と し て説 か れ る。 八種 不 浮 の議
れるとみるのが 一般的 である。前期成 立部分は四十巻大般 浬藥経 の
第十巻 ・一切大衆所問品ま でであり、相當する法顯課 ・佛説泥 恒経
⋮⋮﹂と あ げ、 又、 波 羅 夷 ・楡 蘭 遮 ・突 吉 羅 な ど、 律 藏 の用語 に よ
た議 論 を 行 う。 た と えば 波 羅 提 木 叉 の構 成 を ﹁四 波 羅 夷 ・十 三僧 残
藏 の戒観 からは納得出來ず、律藏 の立場とは劃立するも のである。
かる態度 が現實的要請 に基くも のであ るに せよこのような態度 は律
護持 の立場 を優先 させ、その爲 には破戒もやむをえな いとする。か
聞を攻撃す る爲 に戒 を論ず る傾向が つよい。自分達 については教法
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別 の存 在 で彼 ら と身 近 に接 燭 し つ ユ、 これ と 封 立 し、 し か も 聲 聞 に
つて説 く。 律 藏 用語 を示 さ ず に 律 藏 の内 容 に關 す る 議 論 を 行 う 個
かかる立場 を波羅夷 を語 る個所 でみ よう。大般浬契経如來性品第
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るを えな い場合 もあ つた。経 では自分達 の生活を規定する よりも聲
封 して弱 い立場 にあ つたことがわかる。身を守る爲 には戒 は破らざ
所 も多 い。 そ し て こ れら の場 合、 内 容 を 検 討 す る と経 が實 際律 藏 に
四 の 四 にあ た る個 所 に妄 語 戒 に封 比 す べき 議 論 が あ る。 経 は未 得 を
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六巻、猫立の藏課もある。戒に關し ても前 期成立部分と後期 の部分
では相異がある ので、
本論 でも成立を二期に分け て考え てゆきたい。
そ つた議 論 を し てい る こ と が わか る。 前 期 の澹 手 は己 れを 菩 薩 と稻
(3)
前期菩薩の戒 は具ハ
足戒 である。経 は菩薩 の戒 について律藏にそつ
し つ つ律 藏 の具 足戒 を こ こ ろ え、 少 く と も表 面 的 に は これ を 守 り う
得 と いう 行 爲 が過 人 法 - 波 羅 夷 であ る と の前 提 に 立 つ。 と ころ が こ
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る 出家 者 であ つた と考 え る。 在 家 は菩 薩 と匠 別 さ れ五 戒 ・十善 を守
一方、 正 法- 印 ち こ の経 の立 場 であ る- を 建 立 し 流 布 す る爲 であ れ
の経 で は律 藏 と異 な り利 養 な ど の爲 に主 張 す る 場 合 が 問 題 とな る。
(4)
と同様 であ る。 さ ら に、 律 藏 と別 の菩 薩 戒 ・大 乗 戒、 又 十善 道 は菩
る べき も のと さ れ る。 印 ち菩 薩 と の關 係 は部 派 の此 丘 と在 家 の關係
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教 理 と し て奉 持 さ れ た と考 え ら れ る。 彼 ら が前 期 成 立 の経 か ら く み
以 上、 後 期 に お いて は、 前 期 の戒 と戒 観 は異 つた 環 境 の中 で理想 ・
し た。 か か る微 妙 な 關係 は後 期 成 立 の経 文 か ら は 伺 え な い。 一方、
所 説 であ る と読 く。 か か る行 爲 は律 藏 の立 場 か ら は波 羅 夷 であ る か
と つた教 え は、 第 二に出 家 菩 薩 は律 藏 の具 足 戒 に よる べき こと、 第
大 般 浬 葉 経 が 前 牛 の部 分 に泥 渣経 な ど の部 分 を お き、 し か も 大 し た
ら、 こ の経 の立 場 は律 藏 を絶 封 の依 り ど ころ とす る聲 聞僧 伽 の立 場
二 に 聲 聞 は具 足 戒 の受 持 に於 て過 誤 ・堕 落 を 犯 し てお り、 眞 の具 足
ば、 同 様 の行 爲 も 波 羅 夷 と は な ら な い。 か か る條 件 ず け の態 度 は、
に 眞向 か ら封 立 し、 これ を魔 教 の輩 と断 ず る も の であ る。 経 の態 度
戒 は前 期成 立 の経 が読 く戒 の理 解 に基 く べ き こ と の二 黙 で あ つた。
聲聞 戒 とは異 質 であ る。 と ころ で、 か か る経 の立 場 が ﹁佛 説 ﹂ で あ
は さ ら に獲 展 し、衆 生 に佛 性 有 り と 説 く のは 過 人 法 に ふ れ ず、悉 有 佛
特 に第 二 の鮎 は、 聲 聞 と の封 立 の申 で 云 わ れた 護 法 優 先 の意 味 が、
が彼 ら の所依 の経 典 と し て尊 重 さ れた も の と考 え てよ いで あ ろ う。
性 の教 理 を と ら な い こ と こそ が 過 人 法 で あ り 波 羅 夷 で あ る と い う。
改 攣 も な く お さ め て い る の は、 大 般 浬 盤 経 成 立 當 時、 前 期 成 立部 分
こ こ に至 つて行 爲 の問 題 が、 教 理 上 の封 立 の場 に 置 き か え ら れ た。
大 乗 的 精 紳 主義 と し て 思 想 的 に昇 華 さ れ、 理 解 さ れ た であ ろう。 以
り、 異 な る立 場 は ﹁魔 読 ﹂、從 うも の は魔 教 の輩 と さ れ る。 あ る い
こ の よう に、 こ の経 前 期 の戒 律 は、 内容 的 に は律 藏 と 全 く異 質 なも
上、 経 の ﹁具 足 戒 ﹂ と は律 藏 の傳 統 的 理 解 であ る聲 聞 戒 では な く、
は 正法 建 立 の爲 にか か る行 爲 を なす 者 を 波 羅 夷 と いう こと こそ 魔 の
の であ り、 これ を 否 定 す る も の で あ る。
に特 に 出家 菩 薩 の爲 に聲 聞 の具 足 戒 を も受 け 入 れ る形 とな つた。 し
四 十 巻 本 成 立時 の戒 に封 す る立 場 は、 表 面 上、 猫 自 の菩 薩 戒 の外
か し後 者 が律 藏 的 戒 観 と は異 質 な戒 観 に よ るも の であ る こ とが 重 要
前 期 の澹 い手 が読 く出 家 菩 薩 の立 場 で の菩 薩 戒 と いう こ と にな る。
濃 厚 な戒 名 が数 多 く読 か れ る。 内 容 的 に も息 世 談 嫌戒 な ど、 猫 自 の
で あ る。 そ れ は律 藏 の立 場 と は本 質 的 に相 異 す るも ので あ り、 聲 聞
後 期 の小乗 戒 に 封 す る 態度 は、 前 期 と異 る。 後 期 に成 立 し た大 般
禮 系 に な る戒 が多 く、 そ の内 容 は出 家 ・在 家 を混 然 と し た菩 薩 の爲
僧伽 の立 場 と は封 立 し、 彼 ら か ら は認 め え な い はず のも の であ る。
浬葉 経 の後 牛 で は、 菩 薩戒、 大 乗 戒 の名 が あ ら わ れ、 大 乗 的 色 彩 の
の菩 薩 戒 であ る。 こ れ は、 律 藏 の學 庭 な ど と は 全 く異 り、 前 期 の立
一六 三
鉄。) 4 別 に論 じ た い。 5 大12.404 (c
6;
26a); 北
168-1.6 大12.404 c;(645-6
)12.404北1
c8
;54-187. 7 大12.404 c; 及 び、大404(835b).
正12.626c)
涯泥経、 大 正12.869 藏
b繹
c、
.影 印 北 京 Vol.31,
169-1
(以 下 同 順 ) 及 び、 大12.404 (c
6;
45 bc);北
881
186-1
(構 成数 一様 に 丑分 律 と の み 一致、前 例 藏 課 二不 定
1 北 京 No. 782
8.他 に梵 文 断 片、 大 正12.604
壺.
月全集
上pp.574-3
5. 四 十 巻 本、 大 正12.386c
(三
;十六 巻 本、 大
場 とも 異 る も の であ る。 十 善 も 菩 薩 戒 の 一側 面 と し て考 え ら れ る。
菩 薩 は出 家 ・在 家 を含 み、 前 期 とち が つ て僧 伽 の出 家 と封 比 出 來 な
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と ころ が、 出 家 の菩 薩 に つ い て は白 四掲 磨 で得 ら れ る具 足 戒 が要
い大 乗 的 概念 と な つた。
求 さ れ る。 そ こ で こ の ﹁具 足 戒 ﹂ の意 味 が問 題 で あ る。 こ れを 正 し
く理 解 す る爲 に は前 期 の戒 律 と 戒 観 を 想 起 す る必 要 があ る。 そ れ は
具 足 戒 で あり、 し か も 律 藏 と異 る 理 解 に よ るも の であ つた。 こ の前
保)
期 の戒 と戒 観 は、 聲 聞 と の身 近 な 交渉 と 封 立 關 係 の所 産 とし て登 場
大 乗 浬 架 にあ ら われ た 小 乗 戒 の意 味 (久
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