ドイチェ・ロシア・レポート

ドイチェ・ロシア・レポート
投資環境資料
2016年7月25日発行
ロシア経済の構造変化
インベロ アドバイザーズ株式会社
代表取締役 アブジケエフ・タメルラン
ブルームバーグによるとロシア経済は、プーチン大統領が
1月~4月の農家による無機質肥料の購入額は、前年同期
15年以上前に権力を握って以来、最も真剣に大幅な構造改
比で27.5%増加した。また、ロシアの大手肥料メーカーの一
革に取り組んでいるとのことである。重要なことは、このよう
つであるフォスアグロの国内売上は、約2倍となった。
なロシアの変化が、「石油時代の終焉」として広く喧伝された
サウジアラビアの脱原油依存に向けた計画と違い、不必要
な宣伝や約束なしに起こっていることである。
こういった農業分野における最近の成功は、欧米諸国に
よる制裁に対抗する措置としてロシアが発動した食品の禁
輸と、通貨ルーブルの下落によって引き起こされている。も
原油価格の急落によりロシア経済全体は落ち込んだもの
う一つ重要な要因としては、民間セクターによる農業分野へ
の、新たな成長分野が出現し、成果をあげている。ロシア財
の投資が挙げられる。政府からの補助金もあり、新たな生
務副大臣のマキシム・オレシュキン氏はブルームバーグと
産設備の開発や古い設備の改修を2014年以前から行って
のインタビューで、「農業、食料品、化学、国内観光がすでに
いる。実際、2005年頃から徐々に農業分野の再開発が進み、
今後の新しい成長分野としての兆しを見せている。」と語っ
2014年の食品禁輸措置スタート時には十分対応できる体制
ており、このような分野での成長は、輸出セクターの落ち込
が整っていた。食品禁輸措置は国内メーカーにとって小売
みをカバーするまでには至っていないものの、それは構造
流通網へのアクセスを可能にしたが、これは生産量を増加
的要因によるところが大きいとしている。
させるための必要条件となるであろう。以前は専売制のもと
しかし、これらの新しい成長分野のおかげで、ロシア経済
全体の減速は緩やかになっている。例えば、2016年第1四
半期のGDP成長率は前年比-1.2%と事前予想よりも落ち込
で厳しい競争環境のなか、商品を陳列するためにはかなり
の労力とコストが必要であったが、現在の状況は国内メー
カーにとってかなり好都合となっている。
み幅が小幅となり、2015年の景気後退が始まってから最も
通貨ルーブルの下落は、輸出企業のなかでも特に穀物と
マイナス幅が小さくなった。また、ブルームバーグによれば、
植物油のメーカーに恩恵をもたらした。ロシアは世界最大規
ロシア経済はここ20年間で最も長く続いた景気後退期から
模の穀物輸出国となったが、植物油においても輸入国から
早ければ第3四半期にも脱け出す可能性があるとされてい
世界でトップクラスの輸出国となった。さらに輸出先地域も
る。インフレ率は前年比7.3%と2015年3月の16.9%でピーク
拡大しており、例えば最近ロシアから日本へのとうもろこし
をうってから低下している。
輸出を開始している。
ロシアのGDP成長率における農業分野の寄与度は4.4%と
2003年からの間で最大の水準で、同分野の利益は2015年
に45%も増加した。加えて肥料市場においてもそのような傾
向が追い風となっている。ロシア農業省によると、今年
当資料は、情報提供を目的として作成した参考資料であり、特定の投資商品の推奨や投資勧誘を目的としたものでは
ありません。当資料は、当社が信頼できると思われる情報に基づいて作成しておりますが、その正確性及び完全性を
保証するものではありません。当資料中の第三者のコメントは著者個人の見解であり当社の運用方針等とは関係無く、
また、その内容について当社が責任を負うものではありません。当資料の市場見通し及び金融指標等に関する予測
値について、当社が将来の結果を保証するものではなく、また将来予告なく変更されることがあります。当資料中のい
かなる情報も将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。当資料に記載されている個別の銘柄・企
業名については、あくまで参考として述べたものであり、その銘柄または企業の株式の売買を推奨するものではありま
せん。当資料に関する著作権は情報提供元のクレジット記載があるものを除きすべてドイチェ・アセット・マネジメント㈱
に属しますので、当社に無断で資料の複製、転用等を行うことはできません。D-160721-5
■レポートの作成・配信は
ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社
1
ドイチェ・ロシア・レポート
投資環境資料
2016年7月25日発行
今年のロシアの穀物輸出量は、過去最高となるであろう。
農業分野における成長に続いて、食品加工や化学の分野、
米国農務省によると、2016年の小麦輸出量は、ロシアが
さらにはトラクター等の農業機械やトラック等の輸送機器を
2,350万トン、米国が2,180万トン、カナダが2,050万トンと、ロ
製造する機械分野でも明るい傾向が見られる。ロシア農業
シアが米国とカナダを抜いて世界1位になるとの見通しであ
機械生産者協会“Rosagromash”によると、ロシア生産業者
る。原油価格の下落が輸送コストの大幅な低下につながっ
による穀物収穫機の生産高は倍増、トラクターは45%増、
たことに加えて、通貨ルーブルの下落によりロシアの価格
耕運機は21%増となった。また、大型トラックの今年3月の
競争力が増したことは確かであろう。
売上げは40%増を記録した。
食肉業界においても進展が見られる。2014年以来ロシアの
上記に述べてきたロシア経済における変化は、エネルギー
食肉輸入は減少しており、昨年は鶏肉の自給自足を達成し
輸出依存から脱却し多様化に向けた構造的転換であり、こ
た。近い将来に豚肉も自給自足の達成が見込まれている。
れまで見られなかった新たな投資機会をもたらすであろう。
一方で食肉輸出は増加し、特に東アジアへの輸出が増加
しかしながら、いまだ残る構造上の不均衡やボトルネックは、
傾向にある。
これらの前向きな進展を中長期的に妨げる可能性もある。
このような農業・食品業界の成長には、政府のサポートが重
要な役割を担っている。2015年は補助金があるセクターの
平均収益率が20%であったが、もしサポートがなければ
したがって、ロシア経済が安定した成長軌道を確かなものに
するためには、そのような問題の解決に向けて政府の一貫
した着実な取り組みが必要不可欠となる。
11.5%となっていたとみられる。具体的な成果として、農業
関連のホールディングカンパニー”Rusagro”は、昨年多くの
製糖工場と油脂抽出施設を合併し世界で最も収益性の高
い企業の一つとなった。また、ロシア最大の食肉生産企業
である“Miratorg”の2015年における純利益は25%増加し、
今年は更なる成長が見込まれている。
コラムニスト
アブジケエフ・タメルラン
インベロ アドバイザーズ株式会社 代表取締役
現ロシア連邦モスクワ州立大学卒業。米ステート・ストリート銀行、PIMCO等、米大手金融機関のアジア、米国、欧州拠点において複
数の業務に従事した後、2010年に東京にて投資戦略コンサルタント業務を手がけるインべロ アドバイザーズ株式会社を設立。
また、同年には、サン・インベストメント・合同会社へもパートナーとして参加し、プライベート・エクィティ業務に従事し、現在に至る。
英オックスフォード大学にて、国際関係学修士課程修了。
当資料は、情報提供を目的として作成した参考資料であり、特定の投資商品の推奨や投資勧誘を目的としたものでは
ありません。当資料は、当社が信頼できると思われる情報に基づいて作成しておりますが、その正確性及び完全性を
保証するものではありません。当資料中の第三者のコメントは著者個人の見解であり当社の運用方針等とは関係無く、
また、その内容について当社が責任を負うものではありません。当資料の市場見通し及び金融指標等に関する予測
値について、当社が将来の結果を保証するものではなく、また将来予告なく変更されることがあります。当資料中のい
かなる情報も将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。当資料に記載されている個別の銘柄・企
業名については、あくまで参考として述べたものであり、その銘柄または企業の株式の売買を推奨するものではありま
せん。当資料に関する著作権は情報提供元のクレジット記載があるものを除きすべてドイチェ・アセット・マネジメント㈱
に属しますので、当社に無断で資料の複製、転用等を行うことはできません。D-160721-5
■レポートの作成・配信は
ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社
2
ドイチェ・ロシア・レポート
投資環境資料
2016年7月25日発行
ご留意事項
● 投資信託に係るリスクについて
投資信託は、主に国内外の株式や公社債等の値動きのある証券を投資対象とし投資元本が保証されていないため、当該資産
の市場における取引価格の変動や為替の変動等により投資一単位当たりの価値が変動します。したがってお客様のご投資さ
れた金額を下回ることもあります。
また、投資信託は、個別の投資信託毎に投資対象資産の種類や投資制限、取引市場、投資対象国等が異なることから、リスク
の内容や性質が異なりますので、ご購入に際しては、事前に最新の投資信託説明書(交付目論見書)や契約締結前交付書面
の内容をご確認の上、ご自身で判断して下さい。
● 投資信託に係る費用について
【お申込みいただくお客様には以下の費用をご負担いただきます。】
■購入時に直接ご負担いただく費用 ・・・ 購入時手数料 上限3.78%(税抜3.50%)
■換金(解約)時に直接ご負担いただく費用 ・・・ 信託財産留保額 上限1.0%
■投資信託の保有期間中に間接的にご負担いただく費用 ・・・ 運用管理費用(信託報酬) 上限2.0404%程度(税込)
■その他費用 ・・・ 上記以外に保有期間等に応じてご負担いただく費用があります。
投資信託説明書(交付目論見書)、契約締結前交付書面等でご確認下さい。
《ご注意》
上記に記載しているリスクや費用項目につきましては、一般的な投資信託を想定しております。費用の料率につきましては、
ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社が運用するすべての投資信託のうち、徴収するそれぞれの費用における最高の料率を
記載しております。投資信託の運用による損益は、すべて受益者に帰属します。投資信託は、金融機関の預貯金と異なり、
元本及び利息の保証はありません。投資信託は、預金または保険契約ではないため、預金保険及び保険契約者保護機構の保
護の対象にはなりません。登録金融機関を通じてご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。投資
信託に係るリスクや費用は、それぞれの投資信託により異なりますので、ご購入に際しては、事前に最新の投資信託説明書
(交付目論見書)や契約締結前交付書面の内容をご確認の上、ご自身で判断して下さい。
なお、当社では投資信託の直接の販売は行っておりませんので、実際のお申込みにあたっては、各投資信託取扱いの販売会
社にお問合せ下さい。
ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第359号
加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、
一般社団法人第二種金融商品取引業協会
当資料は、情報提供を目的として作成した参考資料であり、特定の投資商品の推奨や投資勧誘を目的としたものでは
ありません。当資料は、当社が信頼できると思われる情報に基づいて作成しておりますが、その正確性及び完全性を
保証するものではありません。当資料中の第三者のコメントは著者個人の見解であり当社の運用方針等とは関係無く、
また、その内容について当社が責任を負うものではありません。当資料の市場見通し及び金融指標等に関する予測
値について、当社が将来の結果を保証するものではなく、また将来予告なく変更されることがあります。当資料中のい
かなる情報も将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。当資料に記載されている個別の銘柄・企
業名については、あくまで参考として述べたものであり、その銘柄または企業の株式の売買を推奨するものではありま
せん。当資料に関する著作権は情報提供元のクレジット記載があるものを除きすべてドイチェ・アセット・マネジメント㈱
に属しますので、当社に無断で資料の複製、転用等を行うことはできません。D-160721-5
■レポートの作成・配信は
ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社
3