研 究 分 野 5 いわてブランドの確立を支援する水産 部 名 利用加工部 加工技術の開発 研 究 予 課 算 題 区 名 (4)素材特性に関する研究 2) ワカメ産地判別技術開発試験 分 県単(一般行政経費) 試験研究実施年度・研究期間 担 当 協 力 ・ 分 担 関 係 平成 21 年度∼平成 23 年度 (主)上田 智広 (副)田老 孝則、小野寺宗仲 岩手県漁連、独)岩手県工業技術センター、農林水産消費安全技術セ ンター、水産振興課 <目的> 湯通し塩蔵ワカメについては加工食品品質表示基準において原料原産地表示が義務付けされているが、産 地偽装が発覚し摘発された事例もある。そこで岩手産ブランドを保持するために、原産地表示の真正性を検 証する科学的判別法に基づいた分析体制を確立し、その岩手産地を表示する製品について本法によるモニタ リングを行うことをもって産地偽装を抑制することを目的とする。 <試験研究方法> 分析は農林水産消費安全技術センター(FAMIC)が開発したステップワイズ法で選択した微量元素5成分 (Rb,Y,Cd,Nd,Ba)の ICP-MS による分析定量値に基づく線形判別分析法により行った(湯通し塩蔵ワカメの 原産国判別技術の検討第 3 報) 。本報告の判別結果(精度)を考慮し、判別は中国産と三陸産の 2 群判別を行 うこととしたため、同報告にある4産地の判別式ではなく、判別式のもとになった三陸産試料及び中国産試 料の分析結果から作成した2群判別式を FAMIC から提供を受け、由来が明確な三陸産 20 検体、中国産 17 検 体を判別した。その後、この三陸産 20 検体、中国産 17 検体から判別式を作成し、市販製品 24 製品を判別し た。なお、一連の判別において、用いた分析機器が異なるため FAMIC と水技において同じ試料を用いて得ら れた定量値をクロスチェックするとともに、標準添加試験による確認、分析精度を分析値の相対標準偏差、 Horwitz 修正式代入等により精度検証している。 <結果の概要・要約> FAMIC の 2 群判別式を用いて、由来の明確な中国産試料、三陸産試料の判別分析を行った結果、三陸由来の 20 試料は全て三陸産と判別したが、中国由来の試料では 17 試料中 13 試料が三陸産と判別され、誤判別となっ た。各産地の元素定量値を元素別に示した。FAMIC の判別式は、 5.174[Rb]+289.8[Y]-37.66[Cd]-8.995[Ba]-149.4[Nd]+42.42(正値で三陸産、負値で中国産と判別)で示され るが、Rb、Y は中国産試料より三陸産試料の方が定量値は概ね高く、判別式へ定量値を代入すると中国産試料 の方が三陸産試料よりも三陸産への判定に寄与することになる。そのため、中国産試料と三陸産試料の比較に おいて、今回の分析結果と判別式のもとになった FAMIC での分析値の傾向は異なっていると考えられる。すな わち、元素組成の傾向が FAMIC の判別式作成にあたり基準となったワカメ試料と今回判別に供した試料とで異 なっていたと考えられる。ワカメ生育環境の経年変動や採集場所の違いに加え、ワカメ原料だけでなく塩漬に 用いる塩の種類など加工条件の違いが影響していることも考えられる。この誤判別に対応するため、表1にあ る判別評価した試料を基に判別式を作成した(図1) 。 −158− Nd Rb 0.16 0.16 0.8 0.14 0.14 0.7 0.12 0.12 0.6 0.1 0.1 0.5 0.08 0.08 0.4 0.06 0.06 0.3 0.04 0.04 0.2 0.02 0.02 0.1 0 中国産 2.5Cd 1.5 0 0.5三陸産 1.5 0.6 7 0.5 6 中国産2.5 0 0.5 三陸産 中 国産 1.5 Ba 2.5 5 0.4 μg/g 0.5 三陸産 μg/g μg/g Y 0.3 4 3 0.2 2 0.1 0 1 0.5 三陸産 1.5 中国産 2.5 0 0.5 三陸産 中国産 1.5 2.5 図1 三陸及び中国産試料の元素分析値 本判別式をもとに、市販製品の分析を行ったところ、試料数は少ないが中国産表示の試料は全て産地が一致 し、三陸産表示製品も高い割合で産地が一致した。本法は産地特定手法として有効と考えられる。 10 判別式:70.9485[Nd]+9.8508[Cd]− 116.9425[Y]−76.7145[Rb]−5.4185[Ba]+43.8826 9 8 7 6 三陸産 中国産 5 4 3 2 1 0 -50 - 45 - 40 -3 5 - 30 -25 -2 0 -1 5 -10 <今後の問題点> -5 0 5 10 15 20 25 30 図 1 ワカメ判別式と判別得点の分布(三陸産 20 試料、中国産 17 試料) 判別精度を高めるため、試料数をさらに増やして判別式を作成することが望ましい。 <次年度の具体的計画> 本判別式の精度を確認するほか、由来の明確な試料を追加分析し、試料数を増やして判別式を作成する。 <結果の発表・活用状況等> 特になし −159−
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