ループス腎炎における治療と尿中バイオマーカーの 新

近畿大医誌(MedJKi
ndaiUni
v)第41巻1,2号
5
5∼6
0 2
0
16
5
5
ループス腎炎における治療と尿中バイオマーカーの
新展開
野 﨑 祐
近畿大学医学部内科学教室
血液膠原病内科
Pr
os
pect
soft
heur
i
nar
ybi
omar
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upusnephr
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Yuj
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抄
録
ループス腎炎は末期腎不全に至り,透析導入を余儀なくされる全身性エリテマトーデスにおける重篤な合併症の
一つである.I
nt
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nat
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onalSoci
et
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hol
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i
e
t
y2
0
0
3によってループス腎炎は c
l
as
s
ⅠからⅥに
類され,cl
as
s別の治療法選択が推奨されている.そのためには腎生検での組織診断を行う事が望まし
いが,侵襲的なために施行できない症例が存在する.以上の理由から腎組織における糸球体および尿細管間質性障
害と相関する簡
な検査が望まれており,尿中バイオマーカーに対する研究が現在まで行われてきた.我々は急性
腎障害の尿中バイオマーカーとして報告されている Ki
dne
yi
nj
ur
ymol
e
c
ul
e1についてループス腎炎疾患活動性
との相関を検討したところ,尿中 Ki
dneyi
nj
ur
ymol
e
c
ul
e1は活動性ループス腎炎では非活動性ループス腎炎に
比べて上昇を認め,また腎病理組織において尿細管 Ki
dne
yi
nj
ur
ymol
e
c
ul
e1発現と糸球体および尿細管間質性
障害との相関を認めた.本稿ではループス腎炎における治療ガイドラインやトピックス,さらに新規に尿中バイオ
マーカーとして注目されている Ki
dneyi
nj
ur
ymol
e
c
ul
e1を中心に,ループス腎炎における尿中バイオマーカー
の疾患活動性評価の有用性について概説する.
Ke
ywor
ds:ループス腎炎,尿中バイオマーカー,Ki
dne
yi
nj
ur
ymol
e
c
ul
e1
はじめに
腎炎において赤血球,白血球,顆粒円柱,白血球円
柱などの各種細胞成
や円柱成
を広範に認める多
ループス腎炎は全身性エリテマトーデス(SLE)
の約30
-50%に合併する腎炎であり ,多彩な自己抗
彩な尿沈 (t
)を呈する所見を
e
l
es
c
ope
ds
e
di
me
nt
認めることがあるが,腎病理組織像まで予測し得る
体産生と免疫複合体の全身への結合組織,特に腎組
訳ではない.アメリカリウマチ学会の SLE 類基
織における糸球体や血管壁に沈着する病変を特徴と
準やそれを基にした我が国の特定疾患認定基準で
する.また,本邦では年間250300
名が透析導入に至
は,0
.5g/日以上の持続性蛋白尿,または細胞円柱の
ることは合併症として重篤であり,透析導入年齢も
他の慢性腎臓病と比べて若く,医療経済において問
出現を基準としているが,SLEの病変は多彩である
ことに加えて抗リン脂質抗体症候群を合併している
題である .
場合では血栓性病変や二次性血栓性微小血管症によ
SLE疾患活動性指標として抗 DNA 抗体や血清
補体価などが挙げられるが,必ずしも経過中に病勢
る腎病変が生じることもある.また,ループス腎炎
と一致しないことは,しばしば日常診療において経
球体腎炎など非常に炎症の程度が強い腎炎まで広範
験する.また,疾患活動性の上昇しているループス
囲であり,すべての原発性糸球体腎炎の型がみられ
の病理組織像は,ほとんど正常から半月体形成性糸
5
6
野
﨑
祐
るのが特徴ある.I
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y (I
SN/
RPS)
決定に重要であることは言うまでもない.そのため
2
0
03 類(表1)が日常診療に用いられており,ル
ープス腎炎は cl
as
s Ⅰから c
l
as
s Ⅵに 類され ,
ましいが,腎生検は侵襲的な手技であり,治療経過
c
l
as
s間で腎予後が異なるため ,cl
as
s別に治療法
が推奨されている .従って,詳細に腎組織病変を評
検査の同意が得られない場合や抗凝固剤内服中によ
価することは,ループス腎炎の腎予後予測や治療法
で,尿検査は非侵襲的で簡
には可能な限り腎生検による組織診断を行う事が望
中に何度も繰り返し施行できる検査ではない.
また,
る出血傾向など禁忌となる症例も少なくない.一方
であり,何度でも繰り
返し採取が可能である.ループス腎炎における尿中
表
ループス腎炎の I
SN/RPS2
003 類の概略
Ⅰ型 微小メサンギウムループス腎炎
Ⅱ型 メサンギウム増殖性ループス腎炎
Ⅲ型 巣状ループス腎炎 (5
0%未満の糸球体に管内
性・管外性病変)
Ⅳ型 びまん性ループス腎炎 (50
%以上の糸球体に
管内性・管外性病変)
Ⅳ-S型;びまん性 節性
Ⅳ-G型;びまん性全節性
Ⅴ型 膜性ループス腎炎
Ⅵ型 進行した 化性ループス腎炎(9
0%以上の糸球
体が全節性 化)
増殖性病変がメサンギウムに限局している場合
活動性病変(A)
,活動性・慢性病変(A/C)
,慢性病変
(C)を付記する.
病変を有する糸球体50%以上が 節性病変を示す場合
をⅣS型,5
0%以上が全節性病変を示す場合をⅣG型
とする.
Ⅲ型,Ⅳ型にⅤ型が併存する場合は,膜性病変が広範
(5
0%を超える糸球体で,50%を超える係蹄に病変)
であ
れば,Ⅲ+Ⅴ型,Ⅲ+Ⅳ型と併記する.
(文献3より作成)
バイオマーカーの疾患活動性評価としての有用性の
報告は現在まで多くみられるが(表2)
,我々は
急性腎障害(AKI
)の尿中バイオマーカーとして有
用性が報告されている Ki
(Ki
m1
dne
yi
nj
ur
ymol
e
-1
)
に着目し,ループス腎炎における疾患活動性
cul
e
評価としての有用性を検討した.本稿ではループス
腎炎における治療ガイドラインやトピックス,さら
に新規に尿中バイオマーカーとして注目されている
Ki
m1を中心に,ループス腎炎における尿中バイオ
マーカーの疾患活動性評価の有用性について概説す
る.
ループス腎炎の治療
近年,アメリカリウマチ学会,KDI
GO,欧州リウ
マチ学会と腎臓透析移植学会の合同組織(EULAR/
,アジアループス腎炎ネットワーク
ERA-EDTA)
(ALMN)からループス腎炎治療に関するガイドラ
イン・リコメンデーションが発表されている
.
各ガイドラインはこれまでの臨床成績を基礎に作成
されているが,人種・民族に適合するように配慮さ
表
れており,エビデンスが不十
ループス腎炎における尿中バイオマーカー
バイオマーカー
I
L-6
MCP1
Foxp3mRNA
TNFLi
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Apopt
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,OPG,MCP-1
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VCAM,s
I
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VCAM,MCP-1,CXCL16
Fr
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CD4
,CD8
CD4
NGAL
Ki
m1
発表年
症例数
文献
19
93
20
05
200
9
2
01
1
29
98
25
73
8
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1
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4
)
1
5
)
1
6
)
1
7
)
1
8
)
な点に関しては各委
員の意見が採用されている.主要なガイドラインと
して1
9
60
年代より米国 NI
H において,活動性増殖
性ループス腎炎を対象とした,副腎皮質ステロイド
(以下ステロイド)
と免疫抑制剤に関する一連のラン
ダム化比較試験(RCT)が報告された .本項ではス
テロイド以外の免疫抑制剤について解説する.
略語
,
I
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m-1
ki
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1
A.Cycl
ophos
phami
de
ス テ ロ イ ド 単 独 群 に 対 し て cycl
ophos
phami
de
(CY)
間欠静注療法
(I
の有効性が示され,NI
VCY)
H
方式による治療法が確立し,当教室においても本ガ
イドランに準じるプロトコールにて治療を行ってき
た.点滴による I
.0g/
VCY 投与量はおよそ1
m(体
表面積)
×6回(または1
2
回)で10g近く(または以
上)の投与量になり,感染症や不可逆的卵巣機能不
全などが認められ,妊娠可能年齢の女性において副
作用が問題となる.現在における標準的治療法とし
ては,I
VCY/
mont
h×6回にて導入療法を行い,以降
は az
(
2mg/
at
hi
opr
i
ne AZA)1kgによる維持療法
を行うプロトコールであるが,副作用の問題は解決
ループス腎炎における治療と尿中バイオマーカーの新展開
57
したわけではない.副作用軽減目的にてより低用量
.
5g×隔週×4回)の治療成績を検討した
I
VCY(0
(ELNT)が欧州で行
Eur
oLupusNe
phr
i
t
i
sTr
i
al
われ,同等の治療成績が示された .本試験結果は
Eur
oLupus方式の I
VCY 療法としてガイドライン
でも採用されている.
B.Mycophe
(MMF)
nol
at
emof
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t
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l
MMFの 活 性 体 で あ る mycophenol
i
c aci
d
(MPA)はプリン生合成経路内の i
nos
i
ne mono(I
phos
phat
ede
hydr
oge
nas
e
MPD)を不競合的・可
逆的かつ特異的に阻害することにより DNA 合成を
阻害することが知られている.香港のグループから
MMFが経口 CY とほぼ同等の寛解導入効果を示す
ことが20
0
0
年に示された .その後 Gi
nz
l
e
rらが米
国で報告した試験では MMFは NI
H 方式の I
VCY
図
ループス腎炎における多剤併用療法の治療効
果
多剤併用療法において有意に反応性が I
VCY
に比べて優れていた. P<0
.
0
5.
よりも2
4
週間後の寛解率が優れていたが,世界2
0
カ
国で施行された ALMS試験では有意差は認められ
なかった
.この結果では対象症例が前者の試験
尿中バイオマーカーについて
は黒人・ヒスパニック系が多く,また後者の試験解
バイオマーカーとは通常の生物学的過程,病理学
析では黒人・ヒスパニック系の I
VCY の有効性が低
的過程,もしくは治療的介入に対する薬理学的応答
かったことが影響しており,民族間において治療反
の指標として,客観的に測定され評価される特性と
応性が異なると
えられ,ガイドラインを参
に治
定義されている .重要な役割として疾患の重症度
療する際には注意を要する.一方,I
VCY か MMF
のどちらかによって寛解導入されたループス腎炎
の評価,早期の非侵襲的なスクリーニングと診断,
2
2
7例において,維持療法において AZA(1
11
例)に
比して MMF(1
1
7
例)の有用性(死亡,腎障害また
応性評価などがある.日常臨床においてはバイオマ
疾患の層別化,予後予測および治療介入に対する反
は腎炎再燃までの時間)が勝っていることが示され
ーカーとして血液検査,尿検査,CT や MRIなどの
画像検査が挙げられる.ループス腎炎における尿中
た.また欧州からも ELNT プロトコールにおける
バイオマーカーでは,1
99
3
年に I
wanoらが報告した
I
VCY に引き続き AZA と MMF維持療法における
有 効 性 を 比 較 し た 試 験 が あ る が,内 容 と し て
尿中 I
9
症例において
L-6は,活動性ループス腎炎2
非活動性ループス腎炎に比べて有意に上昇し,治療
I
VCY+ステロイドにて寛解導入を施行された後,
1
2
週目から MMF
(2g/
(2mg/
day)と AZA
kg/
day)
尿中 I
L6は腎組織
にランダムに振り
けられ,維持療法が行われた.
り上昇していることが示された.最近の報告では
結果として有意差は両群間において認められなかっ
知申請が認可され,臨床現場におい
Dol
f
fらが尿中 CD8+T 細胞数が活動性ループス腎
炎4
6症例において非活動性ループス腎炎に比べて有
用可能となり,当教室において以下の多剤併用
意に上昇し,ループス腎炎寛解中に尿中 CD8+T 細
た .2
01
5
年に
て
療法を積極的に施行している.
C.多剤併用療法(mul
t
i
t
ar
ge
tt
he
r
apy)
治療が不十 であるループス腎炎 cl
as
sⅤ+Ⅳに
に反応することで低下することが示された .また,
類 WHO Ⅳ型で他の組織型よ
胞は消失していることを報告した .また,Enghar
d
らが,活動性ループス腎炎1
8
6
症例において尿中
おいて新しい概念を導入した治療法が中国から報告
個/
1
0
0ml以上でならば,感度
CD4+T 細胞数が800
10
0
%,
特異度9
8
%の確率で活動性ループス腎炎であ
されている .ループス腎炎 c
l
as
sⅤ+Ⅳと診断され
ることを報告した .このようにループス腎炎の疾
た40
例が多剤併用
(MMF,t
,ステロイド)
ac
r
ol
i
mus
もしくは I
VCY のどちらかにランダムに振り け
患活動性評価に有用な尿中バイオマーカーの報告は
られた.結果として I
VCY 群に比して多剤併用療法
群は,6ケ月後または9カ月後の寛解率が有意に高
用可能な尿中バイオマーカーの発見には至っていな
かったことが示された(図1)
.
現在までに数多く報告されているが,未だに臨床応
いのが現状である.
そこで,我々はループス腎炎の疾患活動性評価と
尿中バイオマーカーとして尿細管上皮に発現する
Ki
m1の有用性について検討した .
58
図
野 﨑 祐
Ki
m-1の構造
Ki
m-1を構成するタンパク質は,シグナルペ
プチドで I
g領域とムチン領域から成る細胞
外領域と膜成 および膜内領域を有する膜貫
通型タンパク質である.このタンパク質はメ
タロプロテイナーゼという酵素によって切断
され,外領域(90kDa)は尿に排泄される.
そして,チロシン燐酸化された14kDaの断片
のみを膜に残すとされている.
Ki
m-1は尿細管障害の際に近位尿細管刷子縁に
発現し,メタロプロテナーゼと呼ばれる酵素によっ
て細胞膜から切断され,尿中に排泄される(図2) .
そして排泄された Ki
m-1を測定することで尿中バ
イオマーカーとして定量評価する.また,腎組織に
おいて細胞膜に発現した Ki
m-1を免疫組織染色す
ることで発現量を病理組織において定量化すること
が可能である.Ki
m-1の尿中バイオマーカーとして
過去の報告では,虚血性急性尿細管性壊死における
尿中 Ki
m-1量は造影剤腎症やその他の急性腎不全,
慢性腎臓病症例および
常人に比べて有意に上昇し
ていることを報告した .また Chengらは I
gA 腎症
において尿中 Ki
m-1はループス腎炎,ANCA 関連
図
ループス腎炎における Ki
m1の発現
非活動性ループス腎炎に比べて活動性ループ
ス腎炎では間質性障害によって萎縮拡張した
尿細管において Ki
ま
m1が染色されている.
た,Ki
m-1染 色 は 凍 結 切 片 に お い て pol
yc
l
onalgoat ant
i
TI
M1抗体(R&D Sys
t
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ms
,
Mi
nne
apol
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s
,
MN)を 用し,ABC法
によって染色した(×4
0
0
倍)
.尿中,腎組織
における尿細管 Ki
m-1は活動性ループス腎
炎 に お い て 増 加 を 示 し て い た.I
SN/
RPS
2
0
0
3 類において c
l
as
sⅣが最も尿中,尿細
管 Ki
m1は発現が増加していた.
いて尿中バイオマーカーとして尿中 Ki
m-1の有用
性を検討した .結果として,尿中および尿細管 Ki
m
-1発現は活動性ループス腎炎では非活動性ループ
ス腎炎に比べて増加していた.I
SN/
RPS20
0
3 類
類や糸球体,間質性組織障害程度などの詳細な記述
において c
l
as
sⅣでは他の c
l
as
sに比べて尿中,尿
細管 Ki
発現は共に上昇傾向を示していた(図
m 1
3)
.また,腎組織において糸球体メサンギウム細胞
はなく,その結果について議論の余地を有する.ま
増殖,糸球体
た,I
gA 腎症の尿中 Ki
m1は腎組織におけるメサン
ギウム細胞増殖,糸球体 化,半月体形成および間
性間質障害程度と尿細管 Ki
m-1発現は相関を示し
質における細胞浸潤程度との相関を示し,尿中 Ki
m
は認めなかったが,CD3+T 細胞と相関を示した.
また,血清学的指標である補体価,ant
i
dsDNA ab,
腎炎および特発性膜性腎症に比べて有意な上昇を示
している .しかし,ループス腎炎について cl
as
s
-1が4.17ng/mgur
i
nar
yCr以上で腎生存率の予後
不良が示されている.以上から尿中 Ki
m1を評価す
化,糸球体半月体形成および尿細管
ていた.間質細胞浸潤ではマクロファージとの相関
血沈,SLEDAIと尿細管 Ki
m-1発現は相関を示さ
ることで腎組織障害の程度や腎生存率の予後規定因
なかった.さらに,ループス腎炎において半月体形
子となり得る可能性が慢性腎臓病である I
gA 腎症
成や尿細管性間質障害程度は腎予後に重要な因子で
で示されている.
あるが,ROC曲線にて尿中 Ki
1.
2ng/
日以
m-1が1
上であれば感度1
0
0
%,
特異度6
2.
5
%の確率で半月体
尿中 Ki
m-1のループス腎炎疾患活動性評価と
しての有用性について
我々は腎生検を施行したループス腎炎57症例にお
形成が1個以上の存在を認めた.また,3
.2ng/
日以
上で感度8
7
.
5%,特異度6
0.
8
%の確率で尿細管性間
質障害が Gr
ade2以上認め,その数値は正の相関を
ループス腎炎における治療と尿中バイオマーカーの新展開
示していた.また,腎生検施行時における尿中 Ki
m
-1は腎生検施行6か月後で随時尿中蛋白量とは相
関は認めなかったが,6か月後での e
GFRと s
Crと
は相関を示しており,腎機能障害の進行を予測しう
る可能性を認めた.
結論として尿中 Ki
m-1測定は腎
生検を完全に代用できる訳ではないが,一定の腎組
織障害程度を予測可能なことから,侵襲的な腎生検
が何らかの理由で施行できない場合や外来でのルー
プス腎炎疾患活動性評価のフォローアップに有用と
なる可能性があると
えられる.
おわりに
ループス腎炎は難治性病変であり,治療法につい
ては I
SN/RPS 類の組織型に応じた治療方針の決
定が重要である.しかし,腎生検を施行できない症
59
10.Wang G,et al
.(20
09) Ur
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7
例や維持療法における治療経過を評価する指標とし
15.Dol
+ T-ce
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fS,etal
.(2
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3) Ur
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て尿中バイオマーカーの研究が発展し,将来におい
di
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upusnephr
i
-
て治療方針決定する評価項目としての指標となりる
得ることを期待する.
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