メタマテリアルアームから成るライン,ループ - ieice

解説論文
メタマテリアルアームから成るライン,ループ,及びスパイラルアン
テナからの放射
中野
久松† a)
Line, Loop, and Spiral Antennas Composed of Metamaterial Arms
Hisamatsu NAKANO†a)
あらまし メタマテリアルアンテナの定義を述べ,最近のメタマテリアルアンテナの特性に言及している.(1)
メタラインアンテナは後方・正面・前方走査機能を有する.2 重メタラインは広帯域にわたりブロードサイドビー
ムを形成する.(2) 開形メタループアンテナは 2 重バンド反円偏波素子として動作する.他方,閉形メタループ
は自然系ループとは異なる多重バンド直線偏波放射素子として動作する.(3) メタスパイラルアンテナは,開形
メタループと同様,2 重バンド反円偏波素子として動作する.推移周波数以下における最大利得は推移周波数以
上における最大利得に比べ低い.この利得差は誘電体スラブをメタスパイラル前方に配置することで縮小される.
キーワード
解説論文,メタラインアンテナ,メタループアンテナ,メタスパイラルアンテナ
1. ま え が き
媒質における誘電率 ε と透磁率 μ の対は,電気磁
気学上,四つに分類される:(ε > 0, μ > 0), (ε > 0,
μ < 0), (ε < 0, μ > 0), (ε < 0, μ < 0).これらの
うち,波動伝搬が可能となる媒質は,誘電率と透磁率
がともに正の値をとる場合,及び,ともに負の値をと
Fig. 1
る場合である.つまり,これらの媒質中では伝搬位相
図 1 媒質と位相定数との関係
Relationship between medium and phase constant β.
定数 β が存在し,β は前者では正,後者では負の値と
なっている.図 1 参照.ただし,後者の媒質 (ε < 0,
合,このアンテナを自然系アンテナとよび,前者と区
μ < 0) は自然界には存在しないが,最近,人工的に造
別する.
ることができるようになった媒質である [1].
図 2 (a)(b) はメタマテリアルアンテナと自然系アン
誘電率と透磁率がともに正である媒質(材料)を自
テナの概念を示している.アンテナ (a) では,多数の
然系媒質(材料)と定義し,それ以外の媒質(材料)
同じ金属小片が金属平板 (conducting plate) 上に周期
を超自然系媒質(材料)と定義する.この定義に連動
的に配列されている.これらの周期金属小片に工夫を
して,超自然系アンテナ(メタマテリアルアンテナ)
施すことにより,給電素子上(周期金属小片上)の電
を次のように定義する.給電素子上の電流伝搬位相定
流伝搬位相定数を,特定の周波数帯域で負にすること
数 β が特定の周波数帯で β < 0,または,0 でない周
ができる [2].したがって,このアンテナはメタマテリ
波数において β = 0 であるアンテナ.これに対して,
アルアンテナに属する.他方,アンテナ (b) は,連続
給電素子上の電流伝搬位相定数 β が常に正である場
した金属アームで構成されている.電流伝搬位相定数
は正である.定義に従い,このアンテナは自然系アン
†
テナに属する.
法政大学理工学部,小金井市
Faculty of Science and Engineering, Hosei University, 3–7–2
Kajino, Koganei-shi, 184–8584 Japan
a) E-mail: [email protected]
564
電子情報通信学会論文誌
給電アンテナとメタマテリアルから成る複合アンテ
ナも提案されている.例えば図 3 では,給電素子が接地
c 一般社団法人電子情報通信学会 2016
B Vol. J99–B No. 8 pp. 564–571 解説論文/メタマテリアルアームから成るライン,ループ,及びスパイラルアンテナからの放射
板 (ground plane) 上の微小モノポールアンテナ,球殻
が (ε < 0, μ > 0) のメタマテリアルとなっている [1].
2. メタマテリアルライン(メタライン)ア
ンテナ
本複合アンテナは,給電アンテナが自然系であり,そ
の電流伝搬位相定数が正であるので,本論文のメタマ
図 4 に自然系ラインアンテナを示す.アーム導体が
テリアルアンテナの定義からは外れる.このようなメ
接地板に平行して配置されている.F はアーム始点で
タマテリアルを利用した複合アンテナをメタマテリア
あり,終点 T は抵抗 ZB を介して接地板に接続され
ル基盤アンテナ (metamaterial-based antenna) とよ
ている.アーム上の電流は終点に進行しながら自由空
ぶ.また,メタマテリアルの概念を利用し,周期構造を
間に電磁波を放射する.このとき,電流の伝搬位相定
ともなわない複合アンテナをメタマテリアルインスパ
数 β は正であり,したがって位相 (−βx) は +x 方向
イアドアンテナ (metamaterial-inspired antenna) [3]
に沿って遅れる.よって,放射電磁波の最大放射方向,
とよび,本論文のアンテナ定義と区別する.
つまり放射ビームは前方にかたむく.
以下の 2. から 4. で述べるメタマテリアルアンテナ
図 5 はメタマテリアルライン(メタライン)アンテ
は低姿勢マイクロストリップ伝送線路の変形であり,
ナであり,自然系ラインアンテナと同様に,アーム始
上部の線路が図 2 (a) のように多数の金属小片で構成
点 F から流出した電流は T において終端抵抗 ZB に
されている.その際,通常のマイクロストリップ伝送
よって吸収される.電流伝搬位相定数が特定の周波数
線路と異なり,隣り合う金属小片間隙からの漏れ波が
領域で負の値をとるように,周期的に水平導体には
放射形成に貢献する.このため,アンテナ高を低減で
キャパシタンス 2CZ を,水平導体と地板との間には
きる.本論文のメタマテリアルアンテナは,1/100 波
インダクタンス LY を挿入している.電磁界解析から
長程度の極小アンテナ高において,30%を超える放射
効率を達成している.
図 4 自然系ラインアンテナ
Fig. 4 Natural line antenna.
図 2
アンテナの分類例.(a) 超自然系アンテナ(メタマ
テリアルアンテナ).(b) 自然系アンテナ
Fig. 2 Antenna categorization examples. (a) Metamaterial antenna. (b) Natural antenna.
図5
図 3 メタマテリアルを利用した複合アンテナ
Fig. 3 Metamaterial-based antenna.
メタマテリアルライン(メタライン)アンテナ.(a)
透視図.(b) 側面図
Fig. 5 Metamaterial line (metaline) antenna. (a)
Perspective view. (b) Side view.
565
電子情報通信学会論文誌 2016/8 Vol. J99–B No. 8
Fig. 6
図 6 メタラインの分散特性
Dispersion diagram for a metaline.
図 7 メタラインからの放射.Eφ < −20 dB
Fig. 7 Radiation from a metaline. Eφ < −20 dB.
S パラメータを求め,これより算出した分散特性の一
図 8 自然系グリッドアレーアンテナ
Fig. 8 Natural grid array antenna.
図 9 2 重メタラインアンテナ
Fig. 9 Double metaline antenna.
これに対し,周波数が中心周波数から増加するにつれ,
例を図 6 に示す [2].ただし k0 は自由空間波数.伝搬
素子入力端励振位相は,アンテナ右端(+x 方向)に
位相定数 β は,推移周波数 fT 以下の帯域で負となっ
向かい,順次遅れるので前方放射となる.
ている.伝搬位相定数が fT 以上で正となるのは,メ
図 9 の 2 重メタラインの点 F1 と F2 を逆位相等振
タラインを構成している導体本来の右手系特性による
幅で励振すると,両ラインからの放射ビームは,x-z
ものである.
面において,z 軸に関し互いに逆方向を向く.推移周
メタラインからの放射を図 7 に示す.fT 以下の周
波数 fT 付近での両ビームは z 軸に近接しており,これ
波数では,伝搬位相定数が負であるため,放射は後方
らの合成界は z 軸に関して対称なブロードサイドビー
放射となる.fT では伝搬位相定数がゼロとなるため,
ムを形成する.ライン 1 本が放射する z 軸対称ブロー
ブロードサイドビームが形成される.fT 以上の周波数
ドサイドビームは fT においてのみ生じるが,ライン
では,伝搬位相定数が正となるため,自然系ラインア
2 本による合成対称ブロードサイドビームは fT 及びそ
ンテナと同様に,前方放射となる.このように,メタ
の近傍で生じる.結果として,正面方向への放射が確
ラインからの放射は,周波数の増加とともに,後方空
保され,利得帯域は 30%を超す [6].なお,自然系 2 重
間から正面空間を経て前方空間へと移動する.これを
ラインも類似のビームを形成するが,アンテナ高が約
BBF 走査とよぶ [4].
1/100 波長での放射効率は極めて低く実用にならない.
図 8 に示すグリッドアンテナも,このような BBF
走査機能を有するが [5],アンテナ導体上の電流伝搬位
相定数は正であり,このアンテナは自然系アンテナに
3. メタマテリアルループ(メタループ)ア
ンテナ
属する.この BBF 走査は,アンテナを構成する個々
図 10 (a) に金属平板上に置かれた自然系ループア
の x 方向直線状放射素子の入力端励振位相の変化によ
ンテナ [7] を示す.このループアンテナは,外周が 1
るものである.中心周波数では正面方向への放射とな
波長程度のときに,z 軸の周りに放射ビームを形成す
るが,周波数が中心周波数から減少するにつれて,x
る.通常,ループと金属平板との間隔は,ループから
方向直線状放射素子入力端励振位相は,アンテナ左端
の直接波と金属平板からの反射波との合成が正面方向
(−x 方向)に向かい,順次遅れるので後方放射となる.
において相加されるように,1/4 波長に選ばれる.放
566
解説論文/メタマテリアルアームから成るライン,ループ,及びスパイラルアンテナからの放射
図 10
自然系ループアンテナ.(a) 直線偏波ループ.(b)
円偏波ループ
Fig. 10 Natural loop antennas. (a) Linearly polarized loop. (b) Circularly polarized loop.
図 12 メタループの導波波長と周波数との関係
Fig. 12 Relationship between guided wavelength and
frequency for a metaloop.
図 13
メタループの放射パターン.(a) 周波数 fLH .(b)
周波数 fRH
Fig. 13 Radiation pattern for the metaloop. (a) At
frequency fLH . (b) At frequency fRH .
本メタループアンテナは,メタラインの変形である.
F はループ始点,T はループ終点であり抵抗を介して
接地板に接続されている.電流伝搬位相定数は fT 以
図 11
円偏波メタマテリアルループ(メタループ)アン
テナ.(a) 透視図.(b) 側面図
Fig. 11 Circularly polarized metamaterial loop (metaloop) antennas. (a) Perspective view. (b)
Side view.
下の周波数において負,fT 以上において正になってい
る.このことは,二つの異なる周波数帯において,放
射界の回転方向が互いに逆になることを意味する.
正面方向への円偏波はループ周囲長が 1 導波波長
(1λg ) のときに得られる.図 12 に,導波波長と周波数
射ビームは y 方向の直線偏波となる.
ループアンテナからの放射を円偏波とするためには,
の関係の一例を示す.ここでは,周囲長が周波数 fLH
と fRH で 1 導波波長となるように設計されている.fL
図 10 (b) に示されるように,ループに摂動素子を装荷
と fU は,それぞれ,速波の下限,上限周波数であり,
する方法がとられる [8].この場合,放射ビームの円偏
放射は fL と fU の間の周波数において起こる.fLH で
波回転方向は摂動素子の位置により,右旋または左旋
は左旋円偏波が,fRH では右旋円偏波が放射される.
のいずれかになる.もし,両円偏波が望まれる場合に
は,給電点が二つ必要となる.
上記の円偏波発生は特定の一つの周波数帯でおこな
図 13 に放射パターンを示す.左旋円偏波 EL と右旋
円偏波 ER のビーム半電力幅に差がある.低周波 fLH
での半電力幅は高周波 fRH でのそれに比べると広い.
われる.したがって,ある周波数帯で左旋円偏波を,
これは,ループの実周囲長を自由空間波長で正規化し
他の異なる周波数帯で右旋円偏波を得ようとする場合
た電気的周囲長が,低周波 fLH では高周波 fRH のそれ
(送受信波の混信を防ぐために,異なる周波数帯で互い
に逆回転の円偏波を使用する場合)には使用できない.
に比べ小さいことに起因する.
左旋・右旋円偏波利得 (GL · GR ) の周波数特性を
このことを解決するために,図 11 に示すメタループ
図 14 に,VSWR の特性を図 15 に示す.3 dB 利得帯
アンテナが提案されている [9].
域は,左旋円偏波で約 13%,右旋円偏波で約 12%であ
567
電子情報通信学会論文誌 2016/8 Vol. J99–B No. 8
り,これらの帯域で VSWR は 2 以下となっている [9].
上述の円偏波メタループは開形ループであり,点 F
の周波数においても共振し,このとき放射強度はアン
テナ正面から離れた方向で最大値をとる.このように,
と点 T は分離されている.補足として,点 F と点 T
メタループは,自然系ループとは異なる多重バンド特
を結合した閉形ループ [10] の特性を以下に述べる.
性を呈する.
ループ外周長 Cant が 1 導波波長 (1λg ) となる周波
数において,メタループは直線偏波ブロードサイド
ビームを形成する.例えば,ループアームセルが図 16
4. メタマテリアルスパイラル(メタスパイ
ラル)アンテナ
に示す分散特性を有する場合,Cant = 1λg となる周
図 17 に示す自然系スパイラルアンテナでは,アン
波数が fL と fU との間に二つ存在し,これらの周波数
テナ高 h が 1/4 波長より低くなると,放射特性が劣
において,ブロードサイドビームが形成される.自然
化する.この劣化は,吸収体をスパイラルアーム外周
系ループではこのような 2 重動作は起こらず,1 重動
直下に挿入する方法 [11],金属平面板を EBG 板で置
作のみとなる.メタループは Cant = 2λg となる二つ
き換える方法 [12] によって軽減される.通常,給電は
内部の 2 端子からおこなわれ,アンテナ外周長が使用
周波数において 1 導波波長となると,円偏波が発生す
る.その回転方向は内部から外側に向かうスパイラル
の巻き方向によって一義的に決まる.本図の場合は右
旋円偏波となる.
最近,この円偏波回転の一義性を解消する低姿勢メ
タマテリアルスパイラル(メタスパイラル)アンテナ
が創出された [13], [14].アンテナアームがメタライン
から構成されているので,給電点が固定された状態
図 14 メタループの利得特性
Fig. 14 Gain for the metaloop.
で,一つの周波数帯で左旋円偏波,他の異なる周波数
帯で右旋円偏波が得られる.図 18 にその構造例を示
す.アームフィラメントの総数を M, その最大長を LM
としている.アンテナ高 B は下限周波数において約
1/100 波長のレベルにあり,従来の高さに比べるとか
なり低い.
アンテナ外周と動作周波数との関係を図 19 に示す.
ただし,アンテナ外周を最外辺長の 4 倍 (4LM ) で近似
し,これを導波波長 λg で正規化している.4LM /λg = 1
を満たす二つの周波数をナイオン周波数(N 周波数),
図 15 メタループの電圧定在波比(60 Ω で正規化)
Fig. 15 VSWR for the metaloop (normalized to
60 Ω).
図 16 閉メタループの分散特性
Fig. 16 Dispersion for a closed metaloop.
568
ハイオン周波数(H 周波数)とよぶ.ただし,N 周波
図 17 金属平面板上の自然系スパイラルアンテナ
Fig. 17 Natural spiral antenna above a conducting
plate.
解説論文/メタマテリアルアームから成るライン,ループ,及びスパイラルアンテナからの放射
図 18
メタマテリアルスパイラル(メタスパイラル)ア
ンテナ
Fig. 18 Metamaterial spiral (metaspiral) antenna.
図 20 メタスパイラルの利得特性例 (M = 6)
Fig. 20 Gain example for a metaspiral (M = 6).
図 21
誘電体スラブを装荷したメタスパイラルアンテナ
Fig. 21 Metaspiral with a dielectric slab.
図 19 メタスパイラル正規化外周と周波数との関係
Fig. 19 Relationship between the metaspiral normalized peripheral length and frequency.
数は推移周波数 fT より低い.他方,H 周波数は fT よ
り高い.円偏波放射は N 周波数以下及び H 周波数以
上の周波数でおこる.
メタスパイラル上の電流の導波波長と周波数の関係
は,既出の図 12 に似ている.そこで図 12 を使用して
N 周波数と H 周波数を補説する.縦軸に外周 4LM の
点を取り,そこから横軸に対し平行に線を引き,曲線
との交点をもとめる.このときの交点の周波数を読む
と,低い方の周波数が N 周波数であり,高い方の周波
数が H 周波数である.外周 4LM が増えると,前述の
平行線が上に移動し,曲線との交点は新たな N, H 周
図 22
メタスパイラル利得差の縮小化.使用スラブは正方
形であり,その一辺は 2.6 GHz において約 1 波長
Fig. 22 Reduced difference in the gain for the
metaspiral. A square slab is used, where the
side length is approximately 1 wavelength at
2.6 GHz.
波数をあたえる.このとき N 周波数と H 周波数の間
隔が前のものより狭くなっている.このことは,図 19
図 21 に示す方法がとられる.一枚の誘電体スラブを
でも示しているように,NH 周波数間隔がアンテナの
アンテナ前方に装荷する方法である [15].このとき
大きさによって制御できることを意味する.
Fabry-Perot の原理を適用するために,アンテナから
図 20 に左旋円偏波利得 GL と右旋円偏波利得 GR
スラブまでの距離を,利得増強希望周波数において,
の周波数特性を示す.メタループにおいて見いださ
半波長となるように選ぶ.他の周波数における利得も
れたように,右旋円偏波利得と左旋円偏波利得に差
スラブの影響を受けるが,スラブの厚みを適宜に選ぶ
のあることがわかる.この差を縮小したい場合には,
と,目的である両円偏波利得の差を縮小できる.図 22
569
電子情報通信学会論文誌 2016/8 Vol. J99–B No. 8
5. む す び
放射に寄与する給電素子上の電流位相に基づいて,
メタマテリアルアンテナを定義した.具体的なメタマ
テリアルアンテナとして,はじめに,メタラインアン
テナからの BBF 走査を概説した.BBF 走査による放
射最大方向の移動は,メタラインの 2 重化により,正
面方向放射に固定化される.次に,開形メタループア
ンテナからの円偏波放射姿態を明らかにした.本アン
テナは,給電点を固定したままで,特定の周波数帯域
で左旋円偏波を,更に,別の周波数帯域で右旋円偏波
を放射する.移相器や外部印加電磁界を用いないで両
円偏波を発生できることが,開形メタループの特長で
ある.続いて,閉形メタループアンテナを補足した.
開形メタループと異なり,閉形メタループは直線偏波
図 23
メタスパイラルからの放射.(a) スラブ装荷あり.
(b) スラブ装荷なし
Fig. 23 Radiation from a metaspiral. (a) With a
slab. (b) Without a slab.
を放射する.しかも,閉形メタループが共振する数は,
自然系ループアンテナのそれに比べ,倍となり得る.
最後に,メタスパイラルアンテナに言及した.N 周
波数以下での円偏波回転と H 周波数以上での円偏波
回転は互いに逆になる.NH 周波数間隔は,スパイラ
ル外周長が増すにつれて縮小する.外周長の増加は利
得を増加させるが,一般には N 周波数における利得は
H 周波数における利得より低い.両円偏波の利得差を
縮小するには,誘電体スラブの装荷が有効である.
文
献
[1]
N. Engahta and R. Ziolkowski, Metamaterials, Wiley,
[2]
C. Caloz and T. Itoh, Electromagnetic metamateri-
[3]
P. Jin and R.W. Ziolkowski, “Multi-frequency, linear
2006.
als, Wiley, NJ, 2006.
図 24 メタスパイラルの VSWR(80 Ω で正規化)
Fig. 24 VSWR for a metaspiral (normalized to 80 Ω).
and circular polarized, metamaterial-inspired nearfield resonant parasitic antennas,” IEEE Trans. Antennas Propag., vol.59, no.5, pp.1446–1459, May
にその一例を示す.ここでは有限の広がりをもつ正方
形スラブを使用している.図 23 は,利得差縮小化後
2011.
[4]
metamaterials: fundamental principles and applica-
の放射パターンを示している.低周波での放射パター
ンは,スラブ装荷によって尖鋭化され,正面方向での
tions, Wiley, NJ, 2005.
[5]
利得の増加が著しい.高周波での放射パターンもまた,
スラブ装荷により電力半値幅はせばまるが,前者の電
力半値幅の変化量に比べると少ない.
利得増強希望周波数において,アンテナ–スラブ間
距離を半波長に選んでいるので,アンテナ入力へのス
G. Eleftheriades and K. Balmain, Negative-refraction
J.D. Kraus and R. Marhefka, Antennas, 3rd ed.,
Chapter 16, McGraw-Hill, 2002.
[6]
坂田和駿,山内潤治,中野久松,“2 重メタラインアンテ
ナ,
” 2015 信学総大,B-1-93, March 2015.
[7]
W. Stutzman and G. Thiele, Antenna theory and de-
[8]
H. Nakano, “A numerical approach to line anten-
sign, Wiley, NY, 1981.
ラブ装荷の影響は少ない.図 24 に VSWR の周波数
nas printed on dielectric materials,” North-Holland:
特性を,スラブ装荷なしの場合とともに示す.左旋円
Computer Physics Communications, vol.68, pp.441–
偏波利得帯域 GL -BW,右旋円偏波帯域 GR -BW での
VSWR は 2 以下と良好である.
570
450, Aug. 1991.
[9]
H. Nakano, K. Yoshida, and J. Yamauchi, “Radiation
解説論文/メタマテリアルアームから成るライン,ループ,及びスパイラルアンテナからの放射
characteristics of a metaloop antenna,” IEEE AWPL,
vol.12, pp.861–863, 2013.
[10]
H. Nakano, M. Miura, K. Yoshida, and J. Yamauchi,
“Metaloop for linearly polarized radiation,” IEEE
APWC, pp.15–17, Aruba, Netherlands, 2014.
[11]
H. Nakano, S. Sasaki, H. Oyanagi, and J. Yamauchi,
“Cavity-backed Archimedean spiral antenna with
strip absorber,” IET Proc. Microwaves, Antennas
and Propagation, vol.2, no.7, pp.725–730, Oct. 2008.
[12]
H. Nakano, K. Hitosugi, N. Tatsuzawa, D. Togashi,
H. Mimaki, and J. Yamauchi, “Effects on the radiation characteristics of using a corrugated reflector
with a helical antenna and an electromagnetic bandgap reflector with a spiral antenna,” IEEE Trans. Antennas Propag., vol.53, no.1, pp.191–199, Jan. 2005.
[13]
H. Nakano, J. Miyake, M. Oyama, and J. Yamauchi,
“Metamaterial spiral antenna,” IEEE AWPL, vol.10,
pp.1555–1558, 2011.
[14]
H. Nakano,
J. Miyake,
T. Sakurada,
and J.
Yamauchi, “Dual-band counter circularly polarized
radiation from a single-arm metamaterial-based spiral antenna,” IEEE Trans. Antennas Propag., vol.61,
no.6, pp.2938–2947, June 2013.
[15]
H. Nakano, T. Shimizu, and J. Yamauchi, “Metaspiral antenna system,” Proc. ISAP, pp.1–3, Tasmania,
Nov. 2015.
(平成 27 年 12 月 23 日受付,28 年 2 月 25 日再受付)
中野
久松
(正員:フェロー)
昭 43 法大・工・電気卒.昭 48 同大学院
博士課程了.昭 59 法政大学教授.現在に
至る.この間,マイクロ波アンテナ,光導
波路の研究に従事.衛星放送受信用として,
昭 62 センターフィードパラボラアンテナ,
平 3 高開口効率平面アンテナの実用化に成
功.ほかに,GPS,携帯電話,RFID カードアンテナなどの実
用化をおこなう.昭 56 シラキュース大学客員助教授.昭 61・
2∼9 月マニトバ大学客員教授.昭 61・9∼昭 62・3 月カリフォ
ルニア大学客員教授.昭 61 カナダ International Science Exchange Award,昭 62 IEE-ICAP 最優秀論文賞,平 6 IEEE
H.A. Wheeler 論文賞,平 18 IEEE C.T. Tai Distinguished
Educator Award,平 22 科学技術分野・文部科学大臣表彰な
どを受ける.著書「Helical and Spiral Antennas (Research
Studies, Wiley)」他 9 冊.現 IEEE Life Fellow.
571