ミスから気付く事 - 株式会社 JECC

ミスから気付く事
東芝ITサービス株式会社
ITO第一サービス部 LCMサービス部 キッティングセンタ
横
川
進
一
私が入社して21年経過しました。保守サービ
「修理終わったら、内線で呼びだして!」「分
スから5年程度離れてしまい、現在は構築業務
かりました。作業が終わったらご連絡させて
に従事しています。保守サービスの第一線から
もらいます」
。お客様にはラックが8本設置さ
離れてはいますが、過去にはいろいろな経験を
れていますが、各ラックへのIAサーバ実装も
してきました。某役場のお客様は大変古くから
私が担当させて頂いていたため、各サーバがど
のお客様で、私が入社する以前よりお付き合い
のラックに実装されているかも配置図を見ずと
があり、私の前の担当者・前々担当者ともに贔
も、おおよそ検討が付く状態でした。この日も
屓にして頂いているお客様です。
そのお客様へ、
対象サーバを正面から確認し、少し狭いラック
私と以前担当していた先輩の二人でお伺いした
の後ろ側に回りこみ、対象サーバを確認し電源
際には、業務と関係のない話で盛り上がり、気
装置交換する予定でした。お客様にシステムを
が付けば保守している時間より長く話をしてい
停止していただき、対象サーバを正面から確認
る事があるくらいでした。修理や点検で訪問さ
し電源が落ちている事を確認後、ラック後ろへ
せて頂いた際も、
お客様から「修理終わったら、
回りこみ、対象サーバの電源ケーブルを取り外
内線で呼んで!」「分かりました!システム立
し…。
「あっ!!!」気づいた時には遅く、抜
上げる前にお呼びします」という位、信頼を頂
いた電源ケーブルは対象サーバの一段下のサー
いていました。先輩に
「信頼されていますよね!
バ用電源ケーブルであることにすぐに気づきま
昔からですか?」と聞くと、「俺が担当になっ
した。
「しまった…」3秒程固まっていたかも
た時には、もうバッチリ信頼されていたよ!前
知れません。
「とりあえず、お客様に伝えなけ
任の先輩もよく来ていたみたいだからね。今度
れば…」
ラックの背面から飛び出し、いつも
は君が担当じゃない? 顔も覚えてもらってい
お借りしている内線の番号を急ぎで打込み連絡
るし…」とのこと。お客様も気さくに話しかけ
しました。
てくださる方でしたので、私が担当させていた
しばらくするといつものお客様が、
「もしも
だく事に全く抵抗はありませんでした。
それが、
し?」
「A会社のYです。申し訳ないのですが、
、
私のミスによりお客様にご迷惑をお掛けすると
間違って違うサーバの電源ケーブルを抜いてし
は夢にも思いませんでした。
まったのです。申し訳ありません。確認をお願
その日は、IAサーバの電源装置故障の障害
いしたいのですが…」
「どのサーバ?コンセン
対応で、業務終了後にシステムを停止させてか
ト抜いただけ?」
「修理させて頂くサーバの真
ら電源交換をおこなう予定にしていました。お
下にあるサーバです。コンセント抜いただけで
客様はいつもと同じようにシステムを停止し、
すけど、稼動中に電源を抜いてしまった為、電
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源が落ちているはずです」
「すぐに行くよ!コ
りません。意気消沈で帰社した私に、
上長は「ミ
ンセント入れて電源入れておいて!」
「すみま
スした事実は、もう消えない!きちんと反省し
せん!よろしくお願いします!」お客様はサー
お詫びして、今後もお客様を担当する立場とし
バ室に到着されると私の謝罪も聞かないうちに
て誠意を示すしかないだろ!」と励ましてくれ
コンソールの前でシステム確認を開始されまし
ました。
た。「この時間であれば、使用している人はい
翌日、上長と二人でお客様を訪問し、今後の
ないはずだけど…。確認するから、Y君は作業
対応・対策について報告させて頂き、ご承認を
続けて!」
「本当に申し訳ありません。作業を
頂くことが出来ましたが、報告後に私は一人
進めさせてもらいます」
。いつもは保守対応中
残って昨日作業したサーバのログを確認し、異
にも気さくに話しかけてくれるお客様ですが、
常のない事を確認させて頂くことにしました。
当然無言でコンソールと向き合い、私が今まで
作業も無事に終わり、引上げさせてもらおうと
経験した事が無い様な空気が張り詰めていまし
考えていたとき、お客様に呼び止められまし
た。OSやファイルに異常が無い事を祈りなが
た。
「ミスした時は話をしなかったけど、過去
ら…。ちょうど私の作業が半分くらい終わった
担当してくれたMクンもミスはあったけど、そ
頃、お客様が「やはり使用していた人が居なかっ
の後は実に丁寧な作業をしてくれたんだよ。Y
たみたいだ。良かった!」「そうですか!本当
君も今後は、注意して作業してくれるだろうか
に申し訳ありませんでした」
「うん。じゃ作業
ら、これからもよろしく頼むよ」
。私は深く頭
終わったら、また声かけて」
。当然いつもより
を下げ、お客様から引き上げました。この作業
愛想はなく、電算室から出て行かれました。
「ホ
で起こしてしまったミスで、今まで先輩が築き
ント申し訳ない事をしてしまった…」
。明らか
上げた信頼の上で自分は作業を行っていたとい
に自分のミスでした。この後の作業は無事終了
う事、ちょっとした不注意でその信頼を簡単に
しお客様へ報告し、いつもなら世間話をしてく
壊す事を知る事が出来ました。
れるお客様でしたが、この日は全く話もありま
私が、保守を離れる少し前に、長年担当して
せん。「申し訳ありませんでした。
」
と頭を下げ、
頂いたお客様は転勤されてしまいましたが、私
お客様より引き上げましたが、お客様へご迷惑
が壊してしまった“信頼”は、そのお客様の中
をお掛けした事、今まで信頼を築き上げてきた
で完全に修復出来たか分かりません。ですが、
先輩に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。今
今でもお客様より確実な作業を期待して頂いて
にして思えば、通い慣れたお客様、経験のある
いる事を忘れず、自分の業務が出来ているか振
作業で、緊張感が薄れていたのは言うまでもあ
返り、確実な業務を進めたいと思います。
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