平成 28 年度 一般社団法人山形県農業会議 Ⅰ 事業方針 1 農業・農政及び組織をめぐる情勢と課題 事業計画 昨年の第189回通常国会において「農業協同組合法等の一部を改正する等の法律」 が成立し、農協法、農業委員会法、農地法等の改正法が本年4月1日より施行されること となった。農業委員会系統組織にとっては、委員選出の選任制への移行や農地利用最適化 推進委員の新設、全国農業会議所と都道府県農業会議の農業委員会ネットワーク機構への 衣替えなど、これまでにない大きな変革と再出発の時を迎えた。 TPP(環太平洋連携協定)交渉については、昨年10月の大筋合意により、農業・農 村現場への不安と動揺が広がったが、11月には「総合的な TPP 関連政策大綱」が閣議 決定され、農業者の不安払拭と重要産業としての農業の成長産業化と再生産を確保するた めの施策が推進されようとしている。 このような情勢の中、農政の重要課題に対する政策提案等を引き続き行う必要があり、 TPP 協定に関しては他の団体とも連携しながら、関連対策に意見が反映されるよう取り 組みを進める必要がある。 また、新しい農業委員会に期待されている農地利用の最適化の推進、農地情報の収集・ 提供、担い手の育成・確保に向けても新たな展開が期待されており、取り組みを一層強化 していく必要がある。 2 事業推進の重点方針 上記の情勢と課題を踏まえ、関係機関・団体との連携を図りながら、以下の事項を今 年度の重点方針として事業を展開する。 (1)新たな農業委員会制度への対応 農業委員会が新体制へ円滑に移行し、適切な運営が行われるよう助言・協力に努 めるとともに、農業委員・農地利用最適化推進委員・農業委員会事務局職員の資質 向上を図る取り組みを行う。 また、改正農地法における農地転用許可に関する意見聴取・回答など、農業会議 に課せられた役割を果たし、活動の更なる強化に向けた取り組みを行う。 (2)農業者・地域の声を農政に反映させる活動の推進 「農業者等との意見交換会」や農業経営者組織との連携など、現場に立脚した活 動を通して農業者や農村地域の意見を積み上げ、現場の意見を政策に反映させる取 り組みを推進する。 (3)農地の面的集積・遊休農地対策に向けた農業委員会の取り組みへの支援 農地中間管理機構と連携した「人・農地プラン」に基づく農地の面的集積の推進、 農地パトロール(農地の利用状況調査)や遊休農地所有者への利用意向調査に基づ く遊休農地対策等、農業委員会の農地の確保・有効利用に向けた取り組みを支援す る。 また、法定化された農地台帳の整備と公表に関しても取り組みを推進し、農地情 報公開システムの整備による情報提供や情報交換を含め、その支援を強化する。 (4)担い手・経営対策及び新規就農・人材確保対策の推進 認定農業者・農業法人等の担い手を中心に、新規就農者・就業者・参入者等も含 めた、多様な担い手を確保するとともに、法人化の推進とその経営力強化、青年層 の法人への就業促進・能力向上対策を重点とした農業経営力向上対策を推進する。 その際、農業者年金の加入推進も併せて実施する。 また、農業経営者組織への活動支援と、認定農業者の今後の活動のあり方につい て検討を行う。 (5)農業・農業者に関する情報の受発信活動の強化 農業委員会法に定められた「情報提供」活動の一環として、 「全国農業新聞」と「全 国農業図書」の普及・拡大に努めるとともに、農業委員会だより等も活用し、現場 が必要とする情報を的確に提供する活動を展開する。また、農地制度や農業委員会 の活動についての情報発信活動の強化を図る。 Ⅱ 事業計画 1 会議の開催 (1)通常総会 (2)理事会 (3)監事会 (4)常設審議委員会 (5)農業委員会会長会議 (6)農業委員会事務局長会議 (7)その他必要な会議 2 法定所掌事項の推進 次に掲げる法令に基づく市町村長、市町村農業委員会会長等からの意見聴取に対して 適正かつ正確な回答を行うため、農業委員会及び県と密接に連携し、常設審議委員会に 諮るほか、必要に応じて現地調査を実施する。 (1)農地法に基づく事項 (2)農業経営基盤強化促進法に基づく事項 (3)農業振興地域の整備に関する法律に基づく事項 (4)土地改良法に基づく事項 (5)土地区画整理法に基づく事項 (6)特定農山村法その他法令に基づく事項 3 農政対策活動 「農業者等との意見交換会」等により積み上げた農業委員会の意見を農業会議に集約 し、意見の提出活動につなげるとともに、会員団体や農業経営者組織の声を汲み上げ、 政策提言に反映させる。この際、山形県農業委員大会や全国農業委員会会長大会の場を 活用するとともに、要請活動として県選出国会議員との懇談会を実施する。 また、遊休農地対策、TPPに係る国内対策等について、 「農政・TPP対策委員会」 を中心に議論を深め、意見を取りまとめたうえで、農政に反映させる活動を実施する。 4 農業委員会組織・制度対策 農業委員会は、遊休農地所有者等に対する「利用意向調査」や、法定化された農地台 帳の整備・公表など、新たに付与された役割を十分に発揮し、農地を有効活用する体制 を整備することが期待されている。 また、農地中間管理機構等と連携し、担い手への農地の面的集積の取り組みを推進す る必要がある。 このようなことから、以下の事業を実施する。 (1) 機構集積支援事業 ① 農地台帳の整備・公表への支援 ② 農地・農業委員会に関する相談員の設置と相談活動の充実 ③ 農業委員・農地利用最適化推進委員・農業委員会職員の資質向上を目指した各種 研修会の開催 ④ 巡回や各種会合への参加による農業委員会活動への指導・協力 ⑤ 関係機関に対する農地情報の提供及び広域農地利用調整活動 ⑥ 中央研修会への参加 ⑦ その他農業委員会活動への支援や農地法に基づく業務処理に必要な活動 (2) 調査事業 ① 田畑売買価格等に関する調査 ② 農作業料金、農業労賃に関する調査 ③ 農作業料金、農業労賃に関する協定額の調査 ④ 賃借料情報に関する調査 ⑤ その他農政、農業振興上必要な調査 (3) その他の事業 ① 「第6次農委組織活動改革プログラム」の実践 5 ② 「新・農地を活かし、担い手を応援する全国運動」の推進 ③ 各地区協議会、女性農業委員の会、農業委員会事務研究会等への活動支援 農業経営体育成支援事業 (1) 経営体育成支援活動 国内農業における構造変革や TPP が大筋合意に至り、地域創生とグローバル化が急 速に進展を迎える時代へと突入している。現場では、時代に対応し地域に貢献・持続 できる地域戦略と農業経営の体質強化対策が一層重要な位置づけとなってきている。 このような社会的ニーズへの対応や、地域農業・担い手対策の事業を展開するため、 経営支援関係の専任マネージャーを設置し、相談窓口を開設する。 (2) 担い手経営発展支援事業 地域農業の振興と農業経営の発展に関する取り組みを支援するため、農業経営各分 野の専門家を登録し、地域農業戦略構築や新事業をはじめ、販路拡大、新商品開発等 の取り組みへ専門家を派遣し、具体的アドバイスを実施する。 また、県・農業関係機関と連携し、事業推進を図っていくとともに、農業者等から の要請により、現地経営相談を実施する。 6 農の雇用事業 若者等(45 歳未満)の農業での雇用を促進し、担い手の確保・育成を図るため、全国 農業会議所からの委託を受け、以下のとおり実践的な研修の実施を支援する。 (1) 受入れ経営体と研修生の合同説明会・研修会の開催 (2) 応募申請・研修実施計画の書類確認 (3) 研修実施状況の現地確認・調整 (4) 助成金交付申請書の確認・取りまとめ (5) 定着状況の確認調査 また、増加している農業法人への就業相談対応と、円滑な農の雇用事業の実施のため、 雇用支援専門員を設置し、事業の推進を図る。 7 雇用就農促進事業 農業法人等が中高年者(45 歳以上)の就農希望者を雇用し、法人の経営発展と中高年 者の能力発揮(生産、加工、販売等)を図り、5 年後には売上高 10%以上の増加を図る 計画について研修経費を支援し、雇用の安定と人材育成、農業産出額の増加を図ってい く。 8 農業者年金委託事業 農業者年金基金より委託を受け、農業者年金事業の事務処理の精度向上と迅速化・加 入推進が図られるよう、会議や研修会を開催し、農業委員会への指導・助言を行うとと もに、情報提供や巡回相談などを実施する。 また、農業者年金基金第 3 期中期計画にある「加入者累計 13 万人」 「20 歳から 39 歳の 基幹的農業従事者の被保険者割合の 20%への拡大」の達成に向け、県独自の加入推進目 標を設定し以下の支援を行う。 (1)加入推進部長等を対象とした加入推進特別研修会の開催 (2)戸別訪問等の組織的活動の強化と安定化のための支援 (3)加入推進活動支援のための情報提供 9 農業法人経営発展総合支援事業 農業経営者を対象に、行政、農業団体、専門家、金融機関等が連携し、県域及び地域 ごとに農業経営法人化の支援体制を整備し、動機付けから準備、設立、経営発展までの 段階に応じた総合的支援を行い、法人化を加速して競争力の高い農業のトップランナー の育成を図る。 (1) 農業経営法人化啓発 地域農業経営法人化支援協議会(仮)で、管内の認定農業者組織等に呼びかけを行 い、法人化の意義や企業会計の基礎を学ぶ研修会を開催し、法人化希望者の掘り起 こしを図る。 (2) 農業経営法人化実現講座 法人経営に必要な知識を学習し、講師による具体的なアドバイスのもと、受講し た農業者が自身の農業経営力を活かせる経営計画を策定し発表を行う講座を開催す る。 (3) 農業経営法人化支援 担い手への経営継承の円滑化を図るとともに、法人設立のための定款・就業規則 等、各書類や規則の作成を支援するためのアドバイザーを派遣し、法人経営の安定 化を促進する。 10 循環型産地システム構築事業(仮称) 食と農の自立経済圏と美しい景観を次世代へ継承するため、山形大学農学部との連 携により、耕畜連携・農工連携・地産地消の事業を展開する。本会では主に、同大学農 場の展示圃で実証する耕畜連携の生産革新データをもとに、現場での耕畜連携モデルの 調整活動と普及推進を実施する。 (1)実施農業者と農地の利用調整 (2)モデルの普及推進に必要な研修会や調査活動 (3)農業委員会との連携による農地利用の最適化 (4)農地中間管理機構や関係機関団体との連携による実施 11 情報提供活動 (1) 情報提供推進事業 本事業では、農業委員会法第 43 条第 1 項第 6 号に基づき、農業一般に関する情報の 提供を行う。その柱である「全国農業新聞」と「全国農業図書」の普及推進を図り、 正確な情報提供に努める。また、今年度は新たな農業委員会制度に関する幅広い周知 も目指し、下記事業について積極的に取り組む。 ①農業委員・農地利用最適化推進委員はもとより、認定農業者等の担い手や農業者年 金加入者・受給者に対する「全国農業新聞」 「全国農業図書」の農業委員会と一体と なった普及推進 ②各種研修会において、より研修内容の理解を深めるため、「全国農業新聞」「全国農 業図書」の効果的な活用促進 (2)その他の情報提供活動 「山形県農業会議ホームページ」「山形県農業会議ファイル登録・配信システム」を 活用し、素早い情報の発信に努める。また、その内容の充実と適時の更新を行い、 幅広い情報の発信に努める。
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